セミナー室

脊椎動物の季節感知機構の解明とその応用動物たちの季節適応戦略の謎に迫る

Tomoya Nakayama

中山 友哉

名古屋大学大学院生命農学研究科動物統合生理学研究室

基礎生物学研究所季節生物学研究部門

Yusuke Nakane

中根 右介

名古屋大学大学院生命農学研究科動物統合生理学研究室

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所

Takashi Yoshimura

吉村

名古屋大学大学院生命農学研究科動物統合生理学研究室

基礎生物学研究所季節生物学研究部門

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所

Published: 2019-01-20

はじめに

私たち日本人は古来より季節の変化を敏感に感じとり,四季を生活に取り入れ,その変化を楽しんできた.春,夏,秋,冬とはっきりした四季が繰り返される地域では,季節に応じて旬の山菜や魚介類を取り入れた料理を楽しんだり,お花見や花火大会といったように季節に密着した行事がある.また,桜,梅,鶯といえば春,稲刈りや松茸,秋刀魚といえば秋といったように,日本語には季語が存在する.このように,われわれ日本人は季節の変化を愛でる国民であるが,多くの動物にとって季節の環境変化は,生命の危機を及ぼしうる重大な変化といえる.動物は繁殖,渡り,冬眠,換羽など,その環境変化にあった行動や生理機能を調節することで適応している.人間は,カレンダーや新聞を見ることで現在の暦を把握することができるが,それらをもたない動物はどのように季節の変化を感知し,これから起きる変化を予測しているのだろうか?

季節によって変動する環境因子には,日長,気温,降水量などが挙げられるが,多くの動物は「日長」を指標として季節の変化を感知し,その変化に適応しており,この性質は光周性(photoperiodism)と呼ばれている(1)1) W. Rowan: Nature, 115, 494 (1925)..気温や降水量は猛暑,冷夏,暖冬,空梅雨など,年によってばらつきがある情報である.一方,春分,夏至,秋分,冬至は毎年同じ時期に訪れ,ばらつきの少ない情報であるため,多くの動物が日長を季節の指標としているのは合理的である.しかし,動物がいかにして日長の変化を感知しているか,その分子メカニズムは長い間謎に包まれたままであった.

ウズラから明らかになった光周性の制御機構

ある生命現象のしくみを解き明かすには,多様な生き物の中からその研究に最適な種を選ぶことが近道である.モデル動物の代表ともいえるマウスやショウジョウバエは生物学の発展に多大な貢献してきたが,季節の変化に対して明瞭に反応しないとされてきた.一方,鳥類は高度に洗練された光周性を示すことが知られている.多くの鳥類は空を飛ぶため,非繁殖期には不要な精巣や卵巣などの生殖腺を性成熟前の未分化な状態まで退縮させ,軽量化している.一方,繁殖期には子孫を残すため繁殖状態に移行する必要がある.鳥類は繁殖期を迎えると,たった数週間で生殖腺を急速に発達させ繁殖活動に備える.この変化は,人工環境下でも日長を制御することで再現することができ,鳥類は光周性研究の優れたモデルになりうると考えられてきた(2)2) B. K. Follett & P. J. Sharp: Nature, 223, 968 (1969)..鳥類のなかでもニワトリは昔から研究に用いられてきたが,原産地が季節の明瞭でない熱帯地域であることから明瞭な光周性を示さない.一方,ウズラは温帯である日本から朝鮮半島,中国にかけて生息する渡り鳥であるため,明瞭な光周性を示す.1960~90年代にはウズラを用いて生理学的な実験が行われ,視床下部内側基底部(mediobasal hypothalamus; MBH)の破壊実験により光周性が失われること(3)3) P. J. Sharp & B. K. Follett: Neuroendocrinology, 5, 205 (1969).,長日刺激によって,細胞の活性化マーカーであるc-FosがMBHで強く発現すること(4)4) S. L. Meddle & B. K. Follett: J. Neurosci., 17, 8909 (1997).,MBHの電気刺激により性腺刺激ホルモンの分泌が促進される(5)5) H. Konishi, R. G. Foster & B. K. Follett: J. Comp. Physiol. A Neuroethol. Sens. Neural Behav. Physiol., 161, 315 (1987).ことが示されていたため,MBHが光周性の制御中枢であることが示唆されていた.

1. 光周性を制御する甲状腺ホルモン

ウズラにおいて生殖腺の発達には必ずしも連続した明期は必要ではなく,短日条件下でも光感受相あるいは光誘導相と呼ばれる特定の位相(時間帯)に光が当たることで,ウズラは長日と認識し,生殖腺を発達させることができることが知られていた(2)2) B. K. Follett & P. J. Sharp: Nature, 223, 968 (1969)..また,この光感受相は24時間周期で現れることから,約24時間の内因性のリズム(概日リズム)を刻む体内時計,「概日時計」の関与が示唆されていた.そこで,光感受相に光を照射したウズラと,照射していないウズラから採取したMBHを用いて,ゲノム情報の有無に関係なく研究を展開できるディファレンシャル解析が行われ,光周性を制御する鍵遺伝子が探索された.その結果,MBHの第3脳室周囲に位置する脳室上衣細胞において発現するDIO2(2型脱ヨウ素酵素)遺伝子が光照射により発現上昇するとともに,DIO3(3型脱ヨウ素酵素)遺伝子が発現減少することが明らかとなった(6, 7)6) T. Yoshimura, S. Yasuo, M. Watanabe, M. Iigo, T. Yamamura, K. Hirunagi & S. Ebihara: Nature, 426, 178 (2003).7) S. Yasuo, M. Watanabe, N. Nakao, T. Takagi, B. K. Follett, S. Ebihara & T. Yoshimura: Endocrinology, 146, 2551 (2005).DIO2遺伝子は甲状腺ホルモン活性化酵素をコードしており,甲状腺から分泌される低活性型の甲状腺ホルモンのチロキシン(thyroxine: T4)を,活性型ホルモンのトリヨードチロニン(triiodothyronine: T3)に変換する酵素である.一方,DIO3遺伝子は甲状腺ホルモン不活性化酵素をコードしており,T4, T3をそれぞれ不活性型のリバースT3, T2へと変換する.つまり長日条件下では,MBHでT3が局所的に合成されるのである.脊椎動物の生殖腺は,視床下部-下垂体-生殖腺(hypothalamus–pituitary–gonadal axis; HPG)軸によって制御されており,視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormone; GnRH)によって,下垂体前葉から黄体形成ホルモン(luteinizing hormone; LH)と卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone; FSH)が分泌され,生殖腺に作用することで発達する.MBHの最下部で下垂体と接している正中隆起(median eminence; ME)には,GnRHニューロンの神経終末が投射している.また,MEに位置するグリア細胞には甲状腺ホルモン受容体の発現が確認された(6)6) T. Yoshimura, S. Yasuo, M. Watanabe, M. Iigo, T. Yamamura, K. Hirunagi & S. Ebihara: Nature, 426, 178 (2003)..甲状腺ホルモンは脳の発達や可塑性に関与することが知られているため,MBHで局所的に産生されたT3が,GnRHニューロンの形態変化を促すことでGnRHの分泌を制御している可能性が考えられた.電子顕微鏡でMEの超微細構造を検討した結果,短日条件ではGnRHニューロンの神経終末はグリア細胞によって包まれていたのに対し,長日条件ではグリア細胞の包み込みが減少し,GnRHニューロンの神経終末が下垂体門脈と隣接する基底膜に直接接していた(8)8) T. Yamamura, K. Hirunagi, S. Ebihara & T. Yoshimura: Endocrinology, 145, 4264 (2004)..また,短日条件で飼育したウズラの脳内にT3を投与したところ,これらの脳の形態変化と精巣の発達を誘起することができたことから,MBHで局所的に合成されたT3が,MEの形態を変化させ,GnRHが分泌されることで,精巣の発達が起こることが明らかとなった.つまり,春から夏にかけてMBHにおいて起こるDIO2とDIO3のスイッチングによってMBHにおいて局所的に活性型の甲状腺ホルモン(T3)の濃度が上昇することが光周性制御の鍵であることが示された(図1a図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).

図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性

a鳥類の光周性を制御する情報伝達経路.脳深部光受容器によって感知された光情報は,下垂体隆起葉(PT)へと伝えられる.PTでは甲状腺刺激ホルモン(TSH)が誘導され,上衣細胞で2型脱ヨウ素酵素(DIO2)の発現が上昇する.その結果,T4は活性型甲状腺ホルモンT3に変換される.T3は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)神経終末およびグリア細胞の形態変化を誘導することで,GnRHの分泌を促進する.b哺乳類の光周性を制御する情報伝達経路.cサクラマスの光周性を制御する情報伝達経路.

2. 春告げホルモンTSHの発見

DIO2, DIO3が鍵遺伝子として発見された2003年当時,鳥類の研究ではゲノム情報の欠如が大きな障壁となっていた.しかし,2004年12月になると,ニワトリの野生原種と考えられている赤色野鶏のドラフトゲノムが解読されるとともに,約3万8千個の転写産物の発現量を一度に解析できるニワトリマイクロアレイが発売された.ウズラはニワトリと同じキジ目キジ科に属しており近縁なため,DNA塩基配列が高度に保存されている.そこでニワトリマイクロアレイを用いてウズラでゲノムワイドなトランスクリプトーム解析が行われ,DIO2遺伝子の発現を制御する遺伝子が探索された.短日条件にて飼育したウズラを長日条件に移行した際の時系列サンプルのマイクロアレイ解析によって,長日1日目の明期開始から14時間後に,下垂体の付け根にある下垂体隆起葉(pars tuberalis; PT)において甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone; TSH)βサブユニット遺伝子(TSHB)の発現が誘導されることが明らかとなった(9)9) N. Nakao, H. Ono, T. Yamamura, T. Anraku, T. Takagi, K. Higashi, S. Yasuo, Y. Katou, S. Kageyama, Y. Uno et al.: Nature, 452, 317 (2008)..TSHはαサブユニットとβサブユニットからなるヘテロ二量体のホルモンであるが,機能解析の結果,PTにおいて産生されたTSHがMBHに存在するTSH受容体を介してDIO2遺伝子の発現を制御することが明らかとなった.つまり,長日刺激によってPTで産生されたTSHがウズラの脳に春を知らせ,季節繁殖の開始の引き金となる「春告げホルモン」として働くことが明らかとなった(図1a図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).これまで甲状腺刺激ホルモンTSHはその名のとおり,甲状腺を刺激し,甲状腺ホルモンの合成,分泌を促進するホルモンであるというのが常識であった.しかしわれわれのウズラの光周性の研究から,TSHには「春告げホルモン」としての新しい機能があることが明らかとなった.また,長い間機能がわかっていなかったPTが,日長の情報を伝達する重要な中継地点であることも明らかとなった.

3. ウズラの光周性を制御する脳深部光受容器

哺乳類では,眼が唯一の光受容器官とされているが,鳥類を含む哺乳類以外の脊椎動物は松果体でも光を感知していることが知られている.しかし,鳥類では,眼や松果体を除去しても季節繁殖に影響はない(10)10) T. D. Siopes & W. O. Wilson: Poult. Sci., 53, 2035 (1974)..また,墨汁を頭皮の下に注入し,光が脳深部へ届かないようにすると,長日刺激による生殖腺の発達が阻害される(11)11) M. Menaker, R. Roberts, J. Elliott & H. Underwood: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 67, 320 (1970)..一方で,MBHの局所的な光刺激が生殖腺を発達させる(12, 13)12) J. Benoit: C. R. Soc. Biol. Paris, 118, 669 (1935).13) K. Homma, M. Ohta & Y. Sakakibara: “Photoinducible phase of the Japanese quail detected by direct stimulation of the brain.” In: M. Suda, O. Hayaishi & H. Nakagawa (eds.): “Biological rhythms and their central mechanism”, Elsevier/North-Holland Biomedical, 85–94 (1979).ことがわかっていた.これらのことから,眼や松果体以外にも,脳深部に光受容器が存在することが示唆されていた.脊椎動物の眼の網膜には,薄明視にかかわる桿体細胞と,明所視にかかわる錐体細胞が存在し,これらの細胞には光受容分子として機能するロドプシンや錐体オプシンといったロドプシン類がそれぞれ含まれている.これらの形態視にかかわる光受容分子に加え,最近の研究により非形態視に重要なピノプシンやVA-オプシン,概日時計の調節にかかわるメラノプシンが新たに発見された(14~17)14) T. Okano, T. Yoshizawa & Y. Fukada: Nature, 372, 94 (1994).17) S. Hattar, H.-W. Liao, M. Takao, D. M. Berson & K.-W. Yau: Science, 295, 1065 (2002)..OPN5(オプシン5)も新規ロドプシン類としてマウスの脳などから単離されていたものの,その光応答性や機能は未知のままであった.われわれはウズラの脳におけるロドプシン類の網羅的な発現解析によって,OPN5が脳室周囲の脳脊髄液接触ニューロンに発現していることを報告した(18)18) Y. Nakane, K. Ikegami, H. Ono, N. Yamamoto, S. Yoshida, K. Hirunagi, S. Ebihara, Y. Kubo & T. Yoshimura: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107, 15264 (2010).図1a図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).脳脊髄液接触ニューロンはその形態が発生段階の眼の視細胞に似ていることから,数十年前より脳深部光受容器の候補として考えられてきたため,光周性の起点となる脳深部光受容器である可能性が考えられた.そこで次に,本来光に反応しないアフリカツメガエルの卵母細胞にOPN5を強制発現させ,光応答性を検討した結果,OPN5は短波長の光に応答を示す光受容器であることが明らかになった.また,スライスパッチクランプ法による解析においてもOPN5を発現する脳脊髄液接触ニューロンは光受容能があることが示された(19)19) Y. Nakane, T. Shimmura, H. Abe & T. Yoshimura: Curr. Biol., 24, R596 (2014)..さらにOPN5を発現する脳脊髄液接触ニューロンが春告げホルモンTSHが分泌されるPTに投射していること,OPN5のノックダウンにより長日刺激で誘導されるTSHの合成が抑制されることから,OPN5が鳥類における季節繁殖を制御する脳深部光受容器であることが明らかとなった(図1a図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).

光周性の制御機構の普遍性と多様性

1. 哺乳類の光周性制御機構

一般的にマウスやラットは季節性が顕著でないため,季節適応の研究に適していないと考えられてきた.しかし,日長や気温が制御されているはずの飼育環境下でもマウスは毎年冬になると繁殖効率が落ちるというわれわれの経験から,マウスも潜在的には季節の変化に対して応答する能力があると考えられた.そこで,ウズラで明らかにした仕組みがマウスにおいても保存されているか否かを検討することとした.哺乳類では,眼が唯一の光受容器であり,眼で受容した光の情報は概日時計の存在する視床下部の視交叉上核を通じて松果体に伝えられることで,松果体から夜間のみ,メラトニンが分泌される.哺乳類では松果体除去により光周反応が消失し,メラトニンの投与によって短日条件下で飼育したときと同じ表現型を再現できることから,哺乳類ではメラトニンが季節繁殖の制御に必須の役割を果たしている(20)20) R. J. Reiter: Endocr. Rev., 1, 109 (1980)..しかし,哺乳類においてメラトニンがどのようにしてGnRHの季節性分泌を制御しているかは謎だった.哺乳類においてはメラトニンの受容体がPTに強く発現していることが報告されていたことから(21)21) H. Ono, Y. Hoshino, S. Yasuo, M. Watanabe, Y. Nakane, A. Murai, S. Ebihara, H.-W. Korf & T. Yoshimura: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105, 18238 (2008).,メラトニンがPTに作用することでTSHの分泌を制御し,PTから分泌されたTSHがDIO2/DIO3のスイッチングを制御している可能性が考えられた.そこでTSH受容体ノックアウトマウスおよびメラトニン受容体ノックアウトマウスを用いて,DIO2/DIO3のスイッチングに対するメラトニンの影響を検討した.その結果,TSH受容体およびMT1メラトニン受容体のノックアウトマウスではメラトニンによるDIO2/DIO3のスイッチングが起こらなかった.以上の結果から,哺乳類では眼で受け取った光情報がメラトニンの分泌パターンへと変換された後,メラトニンがPTのMT1メラトニン受容体に結合することで,PTからの春告げホルモンTSHの分泌を制御し,DIO2/DIO3のスイッチングが制御されることが明らかとなった(図1b図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).

2. サケ科魚類の光周性の制御機構

鳥類や哺乳類では,PTが光周性の中枢として働くことを紹介してきた.しかし,魚類には解剖学的にPTに相同な部位が存在しないため,魚類における光周性の中枢やその制御機構は不明のままであった.魚類においても光周性の制御に甲状腺ホルモンが重要であることはよく知られている.そこでサクラマスにおいて季節繁殖の制御に重要なTSH, TSH受容体,DIO2の発現部位を検討してみたところ,血管嚢(saccus vasculosus)と呼ばれる器官の王冠細胞において日長の変化により発現変動していることが明らかとなった(22)22) Y. Nakane, K. Ikegami, M. Iigo, H. Ono, K. Takeda, D. Takahashi, M. Uesaka, M. Kimijima, R. Hashimoto, N. Arai et al.: Nat. Commun., 4, 2108 (2013).図1c図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).血管嚢は,魚類においてのみ確認されている器官であり,視床下部の最下部,下垂体の背側に位置する器官である.17世紀に初めて報告(23)23) S. A. Collins: “Systeme of Anatomy,” Thomas Newcomb. (1685).されて以来,その生理学的な機能は明らかとなっていなかった.さらにロドプシン類の発現を検討したところ,少なくとも4種類のロドプシン類が血管嚢の王冠細胞に発現していることが明らかとなった(図1c図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).これらの結果から,血管嚢の王冠細胞には光受容器(入力系)からホルモン(出力系)まで存在することが明らかになったため,血管嚢を取り出して,短日条件,もしくは長日条件にて培養したところ,器官培養下において,血管嚢が日照時間の変化に応答できることがわかった.さらに,血管嚢を除去したサクラマスは本来生殖腺が発達するはずの短日条件下においても,生殖腺が発達しなかった.これらのことから,血管嚢が日照時間の変化を感知し,繁殖活動を制御する「季節センサー」として働いていることが明らかとなった(図1c図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).

以上,述べてきたように,動物の光周性の制御機構は長い間謎に包まれていたが,われわれの近年の研究により,鳥類,哺乳類,魚類の光周性を制御する情報伝達経路が明らかとなり,脊椎動物における光周性の制御機構の普遍性と多様性が見えてきた.すなわち,哺乳類では眼,鳥類では脳深部光受容器,サクラマスでは血管嚢が光情報の入力系として機能しているほか,光周性の制御中枢は鳥類,哺乳類ではPTに,サクラマスでは血管嚢に存在するなど,多様性が認められた.一方で,光周性を制御しているTSH, DIO2,甲状腺ホルモンなどの役者には普遍性が認められた(図1図1■脊椎動物の光周性を制御する情報伝達経路の共通性と多様性).

3. 2つの異なる働きをもつTSHが情報の混線を起こさない仕組み

TSHは一般的に下垂体前葉(pars distalis; PD)から分泌される糖タンパクホルモンとして古くから知られており,甲状腺に作用し,甲状腺ホルモンの合成・分泌を促すホルモンである.一方,前述したようにPT由来のTSHは脳に作用する場合に「春告げホルモン」という全く異なる機能をもつが,PTとPDから分泌された2つのTSHが身体の中で情報の混線を起こさない仕組みは謎だった.PDにあるTSH分泌細胞は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(thyrotropin-releasing hormone; TRH)受容体および甲状腺ホルモン受容体を発現しており,視床下部-下垂体-甲状腺(hypothalamus–pituitary–thyroid axis; HPT)軸によって制御されている(24)24) M. W. Szkudlinski, V. Fremont, C. Ronin & B. D. Weintraub: Physiol. Rev., 82, 473 (2002)..つまりPDのTSHはTRHによって正に,甲状腺ホルモンによって負の制御を受けていることでネガティブフィードバックループを形成している.一方,PTにあるTSH分泌細胞はPDにあるTSH分泌細胞と異なり,TRH受容体,甲状腺ホルモン受容体を欠いている.またその代わり,PTのTSH分泌細胞はメラトニン受容体を密に発現しており,メラトニンによって制御されていた(25~27)25) J. Bockmann, T. M. Böckers, C. Winter, W. Wittkowski, H. Winterhoff, Th. Deufel & M. R. Kreutz: Endocrinology, 138, 1019 (1997).27) K. Ikegami, X.-H. Liao, Y. Hoshino, H. Ono, W. Ota, Y. Ito, T. Nishiwaki-Ohkawa, C. Sato, K. Kitajima, M. Iigo et al.: Cell Rep., 9, 801 (2014)..最近の研究により,PT由来のTSHは脳に作用するだけでなく,末梢血中にも分泌されていることが明らかになったが,驚いたことに末梢血中に分泌されたPTのTSHは甲状腺を刺激する能力を欠いていた(27)27) K. Ikegami, X.-H. Liao, Y. Hoshino, H. Ono, W. Ota, Y. Ito, T. Nishiwaki-Ohkawa, C. Sato, K. Kitajima, M. Iigo et al.: Cell Rep., 9, 801 (2014)..そこで,この仕組みを明らかにするために,PDとPTのTSHの構造を検討してみたところ,両者の糖鎖修飾に違いがあることが明らかとなった.糖鎖修飾の違いは糖タンパクホルモンの半減期や生理活性に影響を及ぼすことが知られている(28, 29)28) J. U. Baenziger & E. D. Green: Biochim. Biophys. Acta Rev. Biomembr., 947, 287 (1988).29) C. A. Strott: Endocr. Rev., 23, 703 (2002)..たとえば,性腺刺激ホルモンであるLHは硫酸基が付加したN結合型糖鎖が結合している一方,FSHはシアル酸修飾のある糖鎖が結合している.LHもFSHもパルス状に分泌されるGnRHによる制御を受けているにもかかわらず,LHのみがパルス状の分泌を示す.これは,LHに付加したN結合型糖鎖の硫酸基が,肝臓で認識されると速やかに分解されるため半減期が短い一方で,FSHのN結合型糖鎖にはシアル酸が付加しているため分解が遅く半減期が長いためである.PD由来のTSHには硫酸基が付加した2本鎖のN結合型糖鎖が結合していたのに対し,PT由来のTSHにはシアル酸が付加した3本鎖あるいは4本鎖の糖鎖が結合していることが明らかとなった.興味深いことにPDとPT由来の2つのTSHそのものの生理活性には違いはなかった.しかし,血液中での2つのTSHの動態についてさらに検討したところ,PT由来のTSHは血液中に分泌されるとその糖鎖構造を認識する免疫グロブリンやアルブミンと複合体を形成することで血液中で活性を失い,体内でPD由来のTSHとの情報の混線を防いでいることが明らかとなった(27)27) K. Ikegami, X.-H. Liao, Y. Hoshino, H. Ono, W. Ota, Y. Ito, T. Nishiwaki-Ohkawa, C. Sato, K. Kitajima, M. Iigo et al.: Cell Rep., 9, 801 (2014).図2図2■甲状腺刺激ホルモンTSHが一人2役を演じる仕組み).

図2■甲状腺刺激ホルモンTSHが一人2役を演じる仕組み

下垂体隆起葉(PT)由来のTSHは組織特異的なN-グリカン修飾があり,末梢血液中で免疫グロブリンやアルブミンと複合体を形成する.複合体を形成することで血液中で生理活性が失われ,甲状腺を刺激することを防いでいる.

メダカから明らかとなった季節適応機構のメカニズム

1. 季節適応研究の優れたモデル,メダカ

これまで光周性の制御機構について紹介してきたが,光周性の根源ともいえる概日時計を使った日長測定機構,すなわち「臨界日長」の設計原理はいかなる動物においても未解明である.過去の研究から,ウズラは11.5時間の日長で飼育すると生殖腺を発達させないが,12時間の日長で飼育すると生殖腺を発達させることが知られている(30)30) B. K. Follett & S. L. Maung: J. Endocrinol., 78, 267 (1978)..このようにウズラは30分の違いを見分ける精巧な体内時計をもっている.しかし,この謎を解明するにあたり,ウズラでは遺伝学を使うのが困難であるうえに,遺伝子改変動物の作出が依然ルーチンワークとして行えないという限界があった.一方,メダカは,春になると繁殖を開始し,秋になると繁殖を停止するように明瞭な季節性を示すうえに,順遺伝学的手法を駆使でき,ゲノム編集技術が確立しているという大きな利点があった.

2. 季節によってダイナミックに変化するメダカの色覚の役割

われわれは現在,異なる緯度に由来するメダカ集団を用いた順遺伝学的なアプローチで臨界日長の謎の解明に取り組んでいる.その一連の実験のなかで,メダカは春から夏は活発に泳ぎまわり,ほぼ毎日配偶行動をするが,冬は水槽の底でじっと息をひそめて厳しい環境をやり過ごすことに気が付いた.この行動の季節変化に興味をもち,光に対する応答性を夏のメダカと冬のメダカで比較してみたところ,冬のメダカは光感受性が低下していることがわかった.また,メダカは繁殖期の春から夏にかけて体色の橙色や赤色が濃くなる婚姻色を示すことが知られているため,季節によって光感受性が異なるなら,婚姻色の見え方(色覚)も季節によって異なる可能性が考えられた.そこで,3Dコンピュータグラフィックスを用いて婚姻色のヴァーチャルメダカと白黒のヴァーチャルメダカを作成し,実物のメダカにヴァーチャメダカを見せることで婚姻色に対する嗜好性を評価した(図3a図3■季節によってダイナミックに変化するメダカの色覚).その結果,夏のメダカは婚姻色のヴァーチャルメダカに強い興味を示したのに対して,冬のメダカは婚姻色,白黒のいずれのヴァーチャルメダカにも興味を示さないことがわかった(図3b図3■季節によってダイナミックに変化するメダカの色覚).このことから,メダカは冬と夏では光感受性や色覚が異なり,季節によって世界の見え方が異なっている可能性が考えられた.そこで,メダカを冬の環境から夏の環境に移した際の時系列サンプルにおいて,眼におけるマイクロアレイ解析を行った結果,視覚をつかさどるロドプシン類やその下流の情報伝達経路の遺伝子の発現が冬には著しく低下していたのに対し,夏には一斉に上昇することが明らかとなった.婚姻色の橙色や赤色を主に感知するのは赤錐体オプシンであるため,赤錐体オプシンを欠損するメダカを用いて光に対する応答性や婚姻色の配偶者に対する嗜好性を評価したところ,赤錐体オプシン欠損メダカは野生型のメダカと比べて光応答性や配偶者嗜好性が低下していた.これらの結果から,夏のメダカで観察された行動が現れるためには,夏に赤錐体オプシンが発現誘導されることが重要であることが明らかとなった(31)31) T. Shimmura, T. Nakayama, A. Shinomiya, S. Fukamachi, M. Yasugi, E. Watanabe, T. Shimo, T. Senga, T. Nishimura, M. Tanaka et al.: Nat. Commun., 8, 412 (2017).

図3■季節によってダイナミックに変化するメダカの色覚

aヴァーチャメダカを用いた体色に対する嗜好性の評価.形,移動軌跡,体軸運動など,実物そっくりに再現したヴァーチャルメダカをモニターに映して,配偶者嗜好性試験を行った.bヴァーチャルメダカの体色を変えて実験を行ったところ,夏のメダカは婚姻色のメダカに誘引されたのに対し,冬のメダカは誘引されなかった.

概日時計を調節する化合物の創製

概日時計の分子基盤は十数個からなる時計遺伝子・タンパク質による転写・翻訳のネガティブフィードバックループであり,これが約24時間周期で一周する.概日時計はわれわれの身体のほとんどの細胞に存在し,それぞれの組織においてさまざまな遺伝子が一日のなかでリズミックに発現することで,代謝や睡眠覚醒,ホルモン分泌などさまざまな生理現象を制御している.

先述のとおり,季節繁殖動物が日の長さを測定する際に概日時計は深く関与しているため,概日時計を調節する化合物を開発できれば,季節繁殖動物の繁殖を自在に制御できる可能性が期待されている.また,近年の研究から概日時計の不調が肥満やがんのリスクを高めることが明らかにされている.さらに概日時計の障害は季節性気分障害などヒトの中枢性疾患との関連が知られていることから,創薬の基盤研究にもなり得る.たとえば,時計遺伝子の一つClockのドミナントネガティブ変異体であるClockΔ19マウスは概日時計の異常に起因してさまざまな行動を示す.ヒトの双極性障害への影響を評価するのに用いられる行動指標のマニア様行動がその一つであり,時計タンパク質PERのリン酸化酵素カゼインキナーゼI δ/εの阻害剤CK01の投与によって改善されることが報告されている(32)32) R. Arey & C. A. McClung: Behav. Pharmacol., 23, 392 (2012).

われわれの研究グループは有機合成化学者,計算科学者との共同研究により,時計タンパク質CRYを標的とする化合物KL001の構造活性相関を検討したところ,側鎖の種類をC-Hカップリングによって変えることで,概日リズムの周期を延長することも短縮することも可能であることを報告した(33)33) T. Oshima, I. Yamanaka, A. Kumar, J. Yamaguchi, T. Nishikawa-Ohkawa, K. Muto, R. Kawamura, T. Hirota, K. Yagita, S. Irle et al.: Angew. Chem. Int. Ed., 127, 7193 (2015)..また,新薬の開発は膨大なコストと時間がかかり,成功率も年々低下しているため,近年注目を集めているドラッグリポジショニング(既存薬再開発)のアプローチも検討している.ヒトに臨床応用されている1,000種類以上の承認薬の中から,概日リズムに影響を与える化合物を網羅的に探索した結果,全体の約5%に当たる承認薬がヒト由来の培養細胞の概日リズムを変化させることを見いだした.そのなかで,概日リズムの周期を短縮するDHEAに着目した.DHEAはヒトの血液中に最も豊富に含まれ,男性ホルモン,女性ホルモンの前駆体となるステロイドホルモンである.DHEAは加齢とともに,減少するため,米国では「若返りのサプリメント」としてスーパーで処方箋なしで販売されている.DHEAはヒト由来の培養細胞だけでなく,マウスの培養組織のリズムも短縮したため,マウスに混餌投与した.その結果,行動リズムの周期を短縮させるだけでなく,12時間明期12時間暗期の明暗サイクルを6時間前進させた新規明暗サイクルへの同調(時差ぼけの解消)についても必要な日数を半分以下に短縮することにも成功した(34)34) T. K. Tamai, Y. Nakane, W. Ota, A. Kobayashi, M. Ishiguro, N. Kadofusa, K. Ikegami, K. Yagita, Y. Shigeyoshi, M. Sudo et al.: EMBO Mol. Med., 10, e8724 (2018).図4図4■体内時計を調節する薬DHEAの発見).今後,研究をさらに発展させていくことで,概日時計を調節する化合物によって,季節繁殖やヒトの疾患を制御することが可能となることが期待される.

図4■体内時計を調節する薬DHEAの発見

a明暗周期を6時間前進させた際のマウス回転輪活動リズム.グレーの網掛けは暗期を示す.夜行性のマウスは暗期に活動し,それが黒いバーとして記録される.明暗周期を前進させたときにDHEAを餌に混ぜて投与すると,新しい明暗周期にすぐに合わせて活動を開始した(右図).b明暗周期を6時間前進させたときに通常食もしくはDHEAを与えたときのマウスの活動開始時間のプロット.DHEAを投与したマウスは,通常食を与えたマウスと比較して,時差ぼけが大幅に軽減した.

おわりに

本稿では,脊椎動物が季節の変化を感知し,繁殖を開始する情報伝達カスケードや,TSHが一人2役を演じる仕組み,色覚の季節変化,体内時計を制御する分子の探索などについて紹介してきた.脊椎動物の季節感知機構については理解が進んできたものの,光周性の根源をなす概日時計を使って日長を測定する「臨界日長」の設計原理や,動物が環境温度の変化を感知して季節の変化に適応する仕組みは解明されていない.今後これらの謎を解明していきたい.

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