生物コーナー

アフリカツメガエル卵成熟過程における細胞骨格制御の分子機構卵細胞内で一方向に進行する細胞骨格再構築

阿部 洋志

Hiroshi Abe

千葉大学大学院理学研究院先進理化学専攻生物学コース

山岸 由佳

Yuka Yamagishi

千葉大学大学院融合科学研究科ナノサイエンス専攻ナノバイオロジーコース

Published: 2019-04-01

私たちヒトを含め脊椎動物においては,精子と卵との融合により生じた受精卵が個体発生の出発点となる.精子と卵は生殖細胞が減数分裂を行うことにより形成されるが,その形成過程は大きく異なる.一つの一次精母細胞からは4つの精子が形成されるが,一つの一次卵母細胞からは一つの卵しか形成されない.これは,卵が減数分裂過程において卵と極体という際だった非対称分裂を行うためである.この卵の減数分裂過程を卵成熟過程と呼ぶ.ここでは,この過程で起こる紡錘体形成に至る細胞骨格成分の相互作用について,アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵成熟過程に焦点を当て新たな知見を紹介し,その分子機構について考察したい.

なぜXenopus卵母細胞なのか?

卵成熟過程における細胞骨格の果たす役割については,これまで哺乳類のマウスや棘皮動物のヒトデの卵母細胞での研究が重要な知見を提示してきた(Namgoong & Kim(1)1) S. Namgoong & N. Kim: Cell Cycle, 15, 1830 (2016).).いずれにおいても,微小管系細胞骨格とアクチン系細胞骨格の相互作用が染色体の分配装置である紡錘体形成に深くかかわっていることが見いだされてきたが,その相互作用の局面はそれぞれで異なっている.マウスでは紡錘体の表層への局在化や卵細胞質全体で起こっている極性のある流れにアクチン繊維の存在が必要であることが示され,ヒトデ卵では,核膜の崩壊の直前に形成される核内アクチン繊維のネットワークが,細胞質全体に分散してしまわないように染色体を捕捉し,微小管への受け渡しに働くという報告であった(Mori et al.(2)2) M. Mori, N. Monnier, N. Daigle, M. Bathe, J. Ellenberg & P. Lénárt: Curr. Biol., 21, 606 (2011).).このように,動物種ごとに細胞骨格の働きは多様で,卵成熟という重要な生命現象のより深い理解のためには,さまざまな動物種で解析し知見を積み上げていくことが必要であると考えられる.Xenopus卵母細胞は,これまでさまざまな生命現象の解析に用いられてきた.特に,細胞質をほとんど希釈することなく得られるXenopus卵抽出液は,紡錘体の形成や細胞周期のメカニズムの研究だけに留まらず,核膜再構成,核内外の物質輸送,タンパク質の合成制御機構,細胞分化の初期化などの研究にも非常に有用なモデル系を提供してきた.しかしながら,Xenopus卵母細胞自体の卵成熟過程での細胞骨格間の相互作用の機構についてはほとんど研究されていなかったのである.その原因の一つには,卵が巨大で不透明なことが挙げられる.したがって今のところ,ライブイメージングの手法を卵母細胞内部の観察には用いることができない.小さく透明なウニの分裂の研究で多大な貢献をなされた故団 勝磨先生は,「カエル卵? あれは炭団だよ」と仰ったと聞く(炭団(タドン)とは炭の粉を固めて作られる固形燃料で,昭和30年代生まれには馴染みが深い).一面言い得て妙ではあるが,巨大な卵ならではのシステムがきっと隠れているに違いないと考え,研究を進めていくことにした.単純素朴な考えだが,物質の拡散距離は時間の平方根に比例するので,巨大な卵であればあるほど,ある現象が効率よく進行するためには方向性をもった調節タンパク質の移動が必要となるはずである.

Xenopus卵成熟過程の進行

まずは図1図1■Xenopus卵母細胞の卵成熟過程を模式的に示すXenopusの卵成熟過程を概観しよう.卵巣内の生殖細胞は一次卵母細胞になったところで細胞周期の進行を停止する.この時期は第一減数分裂前期で,体細胞分裂でいえばG2期に相当する.この時期に多くの動物では受精後の発生のために必要な物質をその細胞内に蓄積し成長する.十分に成長した卵母細胞を卵巣から単離してプロゲステロン(progesterone)を加えた生理的塩溶液中でインキュベートすると,卵母細胞は減数分裂を再開し卵成熟過程に入る.卵成熟の再開により卵母細胞は第一減数分裂中期へと進行し始めるが,まず核膜の崩壊(NEBD: nuclear envelope breakdown)が誘起される.NEBDが始まると動物極頂点付近の表層に成熟斑と呼ばれる白斑が生じる.これにより卵成熟を開始したことが卵母細胞の外観から判断できる.その後,後述するようにMicrotubule-organizing center and transient microtubule array(MTOC-TMA)と呼ばれる構造が染色体を捉え動物極へと移動していく.これは形を変えて表層直下で第一減数分裂中期紡錘体となり,後期,終期へと染色体の分配が進行し,僅かな細胞質とともに一方の染色体のセットを含む第一極体が放出される.卵母細胞の染色体は核膜に包まれることはなく,引き続き第二減数分裂中期紡錘体へと組み込まれていく.そして第二減数分裂中期紡錘体は細胞膜直下にアンカーされ,再び細胞周期は停止する.生体ではこの第二減数分裂中期で停止した状態で排卵され受精を待つことになる.そしてこの状態の卵がいわゆる未受精卵である.以上のような減数分裂の再開にはmaturation-promoting factor(MPF)が,第二減数分裂中期での再停止にはCytostatic factor(CSF)がそれぞれ働いている(コラム参照).

図1■Xenopus卵母細胞の卵成熟過程を模式的に示す

Progesterone添加後およそ6時間で成熟斑の形成が確認されるが,この時間経過は卵母細胞によってかなりの幅があり,早いものでは3時間で始まる場合もある.図では第一減数分裂中期紡錘体形成は省略してある.図中卵核胞の写真は,単離した卵核胞をAlexa-488標識phalloidin(アクチン繊維が染まる)と抗lamin B抗体で蛍光染色したもので,MTOC-TMAの写真は成熟斑形成直後の卵母細胞の凍結切片の抗tubulin抗体による染色像である.

卵成熟過程における細胞内構造の変化

卵母細胞内には巨大な核が存在し,特別に卵核胞とも呼ばれている.Xenopusでは卵母細胞の直径はおよそ1.2 mmであるが,核の直径は0.4 mmもある.このような巨大な核をもつということは動物の卵母細胞に共通の現象で,そもそも卵母細胞は一般的な体細胞に比べると極めて大きい細胞であるが,その大きさに比例して核の直径も大きくなっている.核膜は,中間径繊維のカテゴリーに属するラミン(lamin)と呼ばれるタンパク質が集合してできた繊維構造により裏打ちされ,そしてXenopusの場合,核内にはアクチン繊維の密なメッシュ構造が存在している(図2図2■A. 卵成熟過程における細胞骨格構造の変化を模式的に示す.B. 卵成熟開始初期の卵母細胞の凍結切片のAlexa-488標識phalloidinと抗lamin B抗体で蛍光二重染色したもの.核の植物極側細胞質に細胞質アクチン繊維の集積が見られる(矢印).C. 卵核胞崩壊時の卵母細胞の凍結切片の抗lamin B抗体による蛍光染色像.Lamin繊維の分散が植物極から開始していることがわかる.D. MTOC-TMA形成時の卵母細胞の凍結切片をrhodamine-phalloidinと抗tubulin抗体で蛍光二重染色したもの.核内アクチン繊維とMTOC-TMAが相補的なパターンを示していることが明らかである.MTOC基部は微小管とアクチン繊維が共局在しているため黄色の染色像となっている.E. 卵母細胞表層直下に形成された第二減数分裂中期の紡錘体のDAPI(DNAを染色)と抗tubulin抗体による蛍光染色像, AおよびB).このように未成熟卵母細胞の核内にアクチン繊維が密に存在しているのは,今のところ両生類の卵母細胞の特徴でほかの動物では報告されていない.アクチンの一次構造中には核外移行シグナル配列が存在し,核外輸送を担うexportin 6というタンパク質によりフリーのアクチン分子は本来核から積極的に排除される運命にある.ところが,Xenopus卵母細胞にはexportin 6が存在しないためアクチンは核内にとどまり,アクチン繊維の密なメッシュ構造が形成可能なのである.本来存在しないexportin 6を卵母細胞内で人為的に発現させると核内アクチン繊維は消失し,核は非常に壊れやすくなってしまうことが報告されている(Bohnsack et al.(3)3) M. T. Bohnsack, T. Stüven, C. Kuhn, V. C. Cordes & D. A. Görlich: Nat. Cell Biol., 8, 257 (2006).).

図2■A. 卵成熟過程における細胞骨格構造の変化を模式的に示す.B. 卵成熟開始初期の卵母細胞の凍結切片のAlexa-488標識phalloidinと抗lamin B抗体で蛍光二重染色したもの.核の植物極側細胞質に細胞質アクチン繊維の集積が見られる(矢印).C. 卵核胞崩壊時の卵母細胞の凍結切片の抗lamin B抗体による蛍光染色像.Lamin繊維の分散が植物極から開始していることがわかる.D. MTOC-TMA形成時の卵母細胞の凍結切片をrhodamine-phalloidinと抗tubulin抗体で蛍光二重染色したもの.核内アクチン繊維とMTOC-TMAが相補的なパターンを示していることが明らかである.MTOC基部は微小管とアクチン繊維が共局在しているため黄色の染色像となっている.E. 卵母細胞表層直下に形成された第二減数分裂中期の紡錘体のDAPI(DNAを染色)と抗tubulin抗体による蛍光染色像

さて,プロゲステロン添加により卵成熟を誘起させるとどのような変化が起こるであろうか? 図2A図2■A. 卵成熟過程における細胞骨格構造の変化を模式的に示す.B. 卵成熟開始初期の卵母細胞の凍結切片のAlexa-488標識phalloidinと抗lamin B抗体で蛍光二重染色したもの.核の植物極側細胞質に細胞質アクチン繊維の集積が見られる(矢印).C. 卵核胞崩壊時の卵母細胞の凍結切片の抗lamin B抗体による蛍光染色像.Lamin繊維の分散が植物極から開始していることがわかる.D. MTOC-TMA形成時の卵母細胞の凍結切片をrhodamine-phalloidinと抗tubulin抗体で蛍光二重染色したもの.核内アクチン繊維とMTOC-TMAが相補的なパターンを示していることが明らかである.MTOC基部は微小管とアクチン繊維が共局在しているため黄色の染色像となっている.E. 卵母細胞表層直下に形成された第二減数分裂中期の紡錘体のDAPI(DNAを染色)と抗tubulin抗体による蛍光染色像に示すように順を追って見ていこう.NEBDが起こる直前には核直下の植物極側細胞質にアクチン繊維の集積が始まる.そして,その部位に微小管も集積してくる.やがて微小管の集積が強まり,そこから核の方向へも微小管の伸長が起こる.これがMTOC-TMAである.この微小管の核方向への伸長が始まるときには,核膜の崩壊が植物極側から開始している(図2, C図2■A. 卵成熟過程における細胞骨格構造の変化を模式的に示す.B. 卵成熟開始初期の卵母細胞の凍結切片のAlexa-488標識phalloidinと抗lamin B抗体で蛍光二重染色したもの.核の植物極側細胞質に細胞質アクチン繊維の集積が見られる(矢印).C. 卵核胞崩壊時の卵母細胞の凍結切片の抗lamin B抗体による蛍光染色像.Lamin繊維の分散が植物極から開始していることがわかる.D. MTOC-TMA形成時の卵母細胞の凍結切片をrhodamine-phalloidinと抗tubulin抗体で蛍光二重染色したもの.核内アクチン繊維とMTOC-TMAが相補的なパターンを示していることが明らかである.MTOC基部は微小管とアクチン繊維が共局在しているため黄色の染色像となっている.E. 卵母細胞表層直下に形成された第二減数分裂中期の紡錘体のDAPI(DNAを染色)と抗tubulin抗体による蛍光染色像).このような方向性のある核膜の崩壊過程は,Xenopus卵母細胞で初めて観察された.核膜の崩壊に伴い微小管は核内へと伸長していくが,この微小管が存在する領域からはアクチン繊維が消失している.つまり,核内においては微小管と核内アクチン繊維は重ならず相補的な局在を示す(図2, D図2■A. 卵成熟過程における細胞骨格構造の変化を模式的に示す.B. 卵成熟開始初期の卵母細胞の凍結切片のAlexa-488標識phalloidinと抗lamin B抗体で蛍光二重染色したもの.核の植物極側細胞質に細胞質アクチン繊維の集積が見られる(矢印).C. 卵核胞崩壊時の卵母細胞の凍結切片の抗lamin B抗体による蛍光染色像.Lamin繊維の分散が植物極から開始していることがわかる.D. MTOC-TMA形成時の卵母細胞の凍結切片をrhodamine-phalloidinと抗tubulin抗体で蛍光二重染色したもの.核内アクチン繊維とMTOC-TMAが相補的なパターンを示していることが明らかである.MTOC基部は微小管とアクチン繊維が共局在しているため黄色の染色像となっている.E. 卵母細胞表層直下に形成された第二減数分裂中期の紡錘体のDAPI(DNAを染色)と抗tubulin抗体による蛍光染色像).こうした核膜の消失からMTOC-TMAの形成の過程で,核の体積は減少していく.つまり,球状の核内アクチン繊維のメッシュは収縮性の構造なのである.さらに,MTOC-TMAは動物極方向へ移動し,動物極側の核膜も崩壊し,核内アクチン繊維は植物極側からさらに消失していくが,MTOC-TMAの基部に存在しているアクチン繊維束は残り続ける.また,MTOC-TMAもコンパクトな形態に変化して行き,核内アクチン繊維が完全に消失すると,MTOC-TMAは染色体とともに紡錘体へとその形態を変えていく(図2, E図2■A. 卵成熟過程における細胞骨格構造の変化を模式的に示す.B. 卵成熟開始初期の卵母細胞の凍結切片のAlexa-488標識phalloidinと抗lamin B抗体で蛍光二重染色したもの.核の植物極側細胞質に細胞質アクチン繊維の集積が見られる(矢印).C. 卵核胞崩壊時の卵母細胞の凍結切片の抗lamin B抗体による蛍光染色像.Lamin繊維の分散が植物極から開始していることがわかる.D. MTOC-TMA形成時の卵母細胞の凍結切片をrhodamine-phalloidinと抗tubulin抗体で蛍光二重染色したもの.核内アクチン繊維とMTOC-TMAが相補的なパターンを示していることが明らかである.MTOC基部は微小管とアクチン繊維が共局在しているため黄色の染色像となっている.E. 卵母細胞表層直下に形成された第二減数分裂中期の紡錘体のDAPI(DNAを染色)と抗tubulin抗体による蛍光染色像).

アクチン繊維形成の動的な振る舞いとラミン・微小管との相互作用

さて,問題はこのように進行していく構造形成がどのように制御されているかである.アクチン繊維が担う構造変化のためには,既存の繊維を壊し,必要な場所に新たに再構築することが求められるわけだが,そのようなアクチン繊維形成のターンオーバーを担う因子としてADF(actin-depolymerizing factor)/cofilinが知られている(図3, A図3■A. ADF/cofilinおよびWASH, Arp2/3 complexによるアクチン繊維形成の動的制御機構の模式図.ADF/cofilinはLIM-kinaseによりリン酸化され不活性型となるが,Slingshot phosphataseにより脱リン酸化されると活性型となり既存のアクチン繊維を切断・脱重合する.ADF/cofilinと結合したモノマーのアクチンは他の因子との相互作用により速やかにADF/cofilinから解離し重合可能なアクチンとなる.次いでWASHなどのアクチン重合核形成促進因子がArp2/3 complexを活性化し,新たなアクチン繊維の形成が促進される.これらの機構が必要な場所で起こることにより,連続したアクチン繊維の集合・脱集合がダイナミックに引き起こされる.B. Phalloidinを注入した卵母細胞では,卵成熟を誘導しても核(GV)が崩壊しない.controlは同時期の注入していない卵母細胞で完全に核の崩壊が起こっている.C. Slingshotに対する抗体を注入した卵母細胞で,卵成熟を誘導してもMTOC-TMAの形成が阻害され核内アクチン繊維が残存し続ける.D. 微小管形成阻害剤nocodazole処理を行った卵母細胞では,MTOC-TMAの形成が起こらず,核内アクチン繊維の消失が阻害される).ADF/cofilinは分子量19 kDaほどの小さなタンパク質であるが,酵母からヒトまで真核生物に存在する生存に必須のタンパク質で,その生化学的な機能はアクチン分子と1対1で結合してアクチン繊維を切断・脱重合することである(Kanellos & Frame(4)4) G. Kanellos & M. C. Frame: J. Cell Sci., 129, 3211 (2016).).脱重合したアクチンは再び重合可能なアクチンに再生され,Arp2/3(actin-related protein 2 and 3)complexなどのアクチン重合核形成因子の働きにより新たなアクチン繊維の構築へと組み込まれていく.われわれはまず,卵母細胞内のアクチン繊維形成のダイナミクスを抑制するために,アクチン繊維に結合し繊維を安定化してしまうキノコ毒の一種であるファロイジン(phalloidin)を卵母細胞に注入してからプロゲステロン処理を行った.その結果は予期せぬものであった(図3, B図3■A. ADF/cofilinおよびWASH, Arp2/3 complexによるアクチン繊維形成の動的制御機構の模式図.ADF/cofilinはLIM-kinaseによりリン酸化され不活性型となるが,Slingshot phosphataseにより脱リン酸化されると活性型となり既存のアクチン繊維を切断・脱重合する.ADF/cofilinと結合したモノマーのアクチンは他の因子との相互作用により速やかにADF/cofilinから解離し重合可能なアクチンとなる.次いでWASHなどのアクチン重合核形成促進因子がArp2/3 complexを活性化し,新たなアクチン繊維の形成が促進される.これらの機構が必要な場所で起こることにより,連続したアクチン繊維の集合・脱集合がダイナミックに引き起こされる.B. Phalloidinを注入した卵母細胞では,卵成熟を誘導しても核(GV)が崩壊しない.controlは同時期の注入していない卵母細胞で完全に核の崩壊が起こっている.C. Slingshotに対する抗体を注入した卵母細胞で,卵成熟を誘導してもMTOC-TMAの形成が阻害され核内アクチン繊維が残存し続ける.D. 微小管形成阻害剤nocodazole処理を行った卵母細胞では,MTOC-TMAの形成が起こらず,核内アクチン繊維の消失が阻害される).MPF活性やc-Mosは存在するので卵成熟は生化学的には進行しているは間違いないのだが,いつまで経っても核が残存していたのである(Okada et al.(5)5) I. Okada, S. Fujiki, S. Iwase & H. Abe: Cytoskeleton (Hoboken), 69, 312 (2012).).そして,核は収縮して体積は減少しているが核膜を裏打ちするラミン繊維は分散せず残ったままであった(Yamagishi & Abe(6)6) Y. Yamagishi & H. Abe: Mol. Biol. Cell, 26, 4387 (2015).).これまでは,MPFがラミンをリン酸化することでラミン繊維は分散し,その結果NEBDが起こるとされてきた.しかし,アクチン繊維が安定化してしまうとラミン繊維の分散が抑制されてしまうことが示唆されたわけである.近年,LINC(linker of the nucleoskeleton and cytoskeleton)complexと呼ばれる核膜を貫通して細胞質側のアクチン繊維と核膜下のラミン繊維をつなぐタンパク質複合体の存在が明らかにされている.また,ラミン自体がアクチン繊維と結合するという報告もあり,現在こうしたタンパク質との相互作用も視野に入れ解析を進めている.