解説

多剤耐性細菌に有効な次世代型抗菌薬耐性細菌の出現しない抗菌薬の開発は可能か

The Challenge for Antibacterial Drugs Against Multidrug-Resistant Bacteria: Antibacterial Drugs without Causing Resistance

Toshihide Okajima

岡島 俊英

大阪大学産業科学研究所生体分子反応科学研究分野

Masayuki Igarashi

五十嵐 雅之

微生物化学研究会微生物化学研究所第2生物活性研究部

Yoko Eguchi

江口 陽子

近畿大学生物理工学部食品安全工学科

Ryutaro Utsumi

内海 龍太郎

大阪大学産業科学研究所生体分子反応科学研究分野

Published: 2019-07-01

抗菌薬は病原菌による感染症の治療になくてはならない薬剤であるが,各抗菌薬に対する多剤耐性細菌の出現に加え,近年,腸内細菌叢(マイクロビオーム)に及ぼす2次的な健康被害(免疫疾患など)が報告されている.これらの欠点を克服した次世代型抗菌薬の一つとして,病原菌の情報伝達(two-component signal transduction: TCS)を標的にしたヒスチジンキナーゼ阻害剤の開発が期待されている.本稿では,ヒスチジンキナーゼ阻害剤の開発の現状と重要性を解説する.

「抗生物質」が効かない時代

化学療法は1907年Ehrlichが提唱し,人体には無害だが微生物には有効な化学薬品による治療法であり,医学を大きく変えていくことになる概念となった.化学療法の概念のもとサルバルサンをはじめサルファ剤が開発され,そしてペニシリンの開発につながっていく.ペニシリンの発見は,サルファ剤より前の1928年に,Flemingが青カビからの分泌物に黄色ブドウ球菌の生育が阻止されることを発見したことから始まる.ついで1940年初頭にChainやFloreyらがペニシリンを再発見し,感染症治療に対して応用することによって,化学療法を大きく発展させた(1, 2)1) A. Fleming: Br. J. Exp. Pathol., 10, 226 (1929).2) E. Chain, H. W. Florey, A. D. Gardner, N. G. Heatley, M. A. Jennings, J. Orr-Ewing & A. G. Sanders: Lancet, 236, 226 (1940)..このペニシリンの成功は多くの科学者を新たな化学療法剤の探索へと駆り立て,そして1944年Waksmanは結核に著効を示すストレプトマイシンを土壌微生物である放線菌の代謝物より発見し「抗生物質」という名称を提唱した(3)3) A. Schatz, E. Bugie & S. A. Waksman: Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 55, 66 (1944)..ストレプトマイシンの発見は,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,エリスロマイシンなど多くの「抗生物質」発見の先駆けとなり,「抗生物質」の時代を開いた.さらに衛生環境の改善も伴って,それまで死因の上位を占めていた肺炎,結核,消化管感染症などの主要な感染症は激減していく.

このペニシリンの発見以来,さまざまな「抗生物質」やそれをもとにした合成化合物が抗菌薬として開発され,世界中で無数の命を救い,感染症による死の恐怖の時代は終わったかのように思われた.しかし,Chainらによるペニシリンの開発の過程ですでにペニシリンを分解する酵素(ペニシリナーゼ)の存在が確認されている(4)4) E. P. Abraham & E. Chain: Nature, 146, 837 (1940)..すなわち,ペニシリンの開発研究の段階で耐性菌が予測されていたことになる.黄色ブドウ球菌の薬剤耐性進化を例に挙げると,ペニシリンが使用され始めると臨床でもペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌が出現する.このペニシリン耐性菌に対抗するために,1960年代にペニシリナーゼ抵抗性ベータラクタムであるメチシリンが開発されたが,まもなくメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureu: MRSA)が出現する.MRSAはメチシリンなどのベータラクタムと親和性の低い新たな細胞壁合成酵素ペニシリン結合タンパク質2′(PBP2′)を獲得し耐性化を示す(5)5) M. P. Jevons: BMJ, 1, 124 (1961)..現在では多くのMRSAは,セフェム系,カルバペネム系,ニューキノロン系,アミノグリコシド系抗菌薬などに耐性を獲得し多剤耐性となり,市中の感染例においてもそれらの存在が問題となっている.MRSAはほんの一例に過ぎず,現在ではほとんどの抗菌薬に対して耐性菌が出現している(図1図1■抗菌薬の開発と薬剤耐性の出現).さらに,複数の抗菌薬に対して耐性を示す多剤耐性細菌が出現しており,超多剤耐性結核菌(Extensively Drug Resistant: XDR)や汎耐性(Pan-Drug Resistance:既存薬すべてに耐性)化した緑膿菌なども知られている.

図1■抗菌薬の開発と薬剤耐性の出現

微生物が,薬剤から身を守る遺伝子を獲得すると,自らのみならず,水平伝播により種,属を超えて耐性遺伝子を周囲に広める.微生物が「抗生物質」を含む抗菌薬への耐性を獲得するのは不可避であるため,新規抗菌薬の開発と薬剤耐性(Antimicrobial resistance: AMR)の出現は“いたちごっこ”に例えられる.ところが,1990年代以降,低い収益性と創薬ターゲット・新規骨格の不足のため新規抗菌薬の開発が停滞を始め(6)6) 舘田一博:日本内科学会誌,102, 2908 (2013).,一方AMR発生は増加をしている.2013年に米国疾病対策センターは,対応する抗菌薬の開発に緊急性があり重要なAMRに関連する15の病原菌を列挙している(7)7) Centers for Disease Control and Prevention: https://www.cdc.gov/drugresistance/pdf/ar-threats-2013-508.pdf (2013)..また,2017年にはWHOが新規抗菌薬の開発において緊急性が高い薬剤耐性菌12種のリストを初めて公表し新規抗菌薬の開発の必要性を提言している(8)8) World Health Organization: http://www.who.int/medicines/publications/global-priority-list-antibiotic-resistant-bacteria/ Accessed 27 February 2017 (2017).

AMRは今や世界の公衆衛生や世界経済に対する大きな脅威として捉えられるようになった(9)9) L. B. Steven: Expert Opin. Pharmacother., 16, 151 (2015)..WHOは2011年の世界保健デーにおいてAMRを取り上げ,“Antimicrobial Resistance: No Action Today, No Cure Tomorrow”なるメッセージを発信し,国際社会にワンヘルス・アプローチに基づいた世界的な取り組みの必要性を訴えている(10)10) M. Chan: World Health Day 2011. http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2011/whd_20110407/en/(2011).英国オニール委員会の報告によると,このまま何も対策を取らないとすると,2050年には全世界でAMRに起因する死者数が1,000万人へと爆発的に増加することが警告されている(11)11) J. O’Neill: The Review on Antimicrobial Resistance, London. https://amr-review.org/sites/default/files/160518_Final%20paper_with%20cover.pdf (2016)..このような警告にもかかわらず,すでにAMRに対抗しうる抗菌薬の研究開発からは多くの企業が撤退しており,そのため新規抗菌薬のパイプラインが枯渇してきているのが現状である(12)12) 八木澤守正:日化療会誌,65, 149 (2017)..先に述べたように,抗菌薬停滞の一因は創薬ターゲット・新規骨格の不足と言われている.これまでに細胞壁合成阻害,細胞膜障害,タンパク質合成阻害,DNA・RNA合成阻害などを作用点とする多くの抗菌薬が発見され実用化されてきた.このような標的特異的な抗菌薬は,病原菌に対する抗菌性を指標にして探索後,動物さらにヒトに対する感染治療効果を確認して開発されてきた.一方,近年,抗菌性を指標とせず,病原菌の病原性遺伝子の発現を抑制する病原性抑制剤(antivirulence agents: AV薬)の感染症治療薬としての開発が期待されている(13~19)13) L. Cegeiski, G. R. Marshall, G. R. Eldridge & S. J. Hultgren: Nature Rev. Microbiol., 6, 17 (2008).14) D. A. Rasko & V. Sperandio: Nature Rev. Drug Discov., 9, 117 (2010).15) Y. Gotoh, Y. Eguchi, T. Watanabe, S. Okamoto, A. Doi & R. Utsumi: Curr. Opin. Microbiol., 13, 232 (2010).16) R. J. Worthington, M. B. Blackledge & C. Melander: Future Med. Chem., 5, 1265 (2013).17) B. K. Johnson & R. B. Abramovitch: Trends Pharmacol. Sci., 38, 339 (2017).18) B. Francois, C. E. Luyt, C. K. Stover, J. O. Brubaker, J. Chastre & H. S. Jafri: Semin. Respir. Crit. Care Med., 38, 346 (2017).19) T. Defoirdt: Trends Microbiol., 26, 313 (2018)..AV薬は,“耐性菌の出現を抑制し,腸内フローラを乱さずに,感染症治療効果”が期待される「次世代型抗菌薬」として提唱されている.本稿では,病原菌の病原性遺伝子の発現を制御する主要な分子機構であるTCSについて,最新の研究成果を紹介するとともに,TCSを分子標的にしたセンサーヒスチジンキナーゼ(HK)阻害剤の開発の現状と将来展望を行う.

新規抗菌薬の分子標的としてのTCS

1. TCSとは

細菌は環境変化に適応して生存するための戦略として,環境変化(因子)を迅速に感知して,さまざまな環境応答遺伝子の発現を制御する遺伝子発現制御機構をもっている.すなわち,HKとレスポンスレギュレーター(RR)の2種のタンパク質のペアであり,さまざまな応答遺伝子発現(細胞増殖・分裂,病原性,薬剤耐性,クオラムセンシング,バイオフィルム形成,酸耐性,胞子形成,窒素固定など)が制御されている(20~23)20) A. M. Stock, V. L. Robinson & P. N. Goudreua: Annu. Rev. Biochem., 69, 183 (2000).21) J. A. Hoch & T. J. Silhavy (Eds): “Two-component signal transduction,“ ASM Press, 1995.22) M. Inouye & R. Dutta (Eds.): “Histidine kinases in signal transduction,” Academic Press, 2002.23) R. Utsumi (Ed.): “Bacterial signal transduction: networks and drug targets,” Springer, 2008.図2図2■細菌の情報伝達(TCS)).たとえば,大腸菌には約30種のHKとRRが存在しており,さまざまな環境要因に対応して,大腸菌が生育するのを可能にしている.1986年,Nixon(24)24) B. C. Nixon, W. Ronson & F. M. Ausbel: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 7850 (1986).らはこのようなペアになっている制御タンパク質の遺伝子の相同性を解析した.その結果,HKのC末端領域やRRのN末端領域のアミノ酸配列が高い相同性を示すことから,異なる刺激応答に対して,細菌は共通の分子機構を用いて,種々の遺伝子発現制御を行っていることを明らかにした.HKとRRを介する細胞外刺激(リガンド,環境変化など)による遺伝子発現制御システムは二成分情報伝達(two-component signal transduction: TCS)と命名された.

図2■細菌の情報伝達(TCS)

TCSの共通の伝達機構を解明するために,これらのHKやRRの生化学的な性質が研究された(25~28)25) A. J. Ninfa & B. Magasnik: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 5909 (1986).26) V. Weiss & B. Magasanik: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8919 (1988).27) R. Utsumi, R. E. Brissette, A. Rampersaud, S. A. Forst, K. Osawa & M. Inouye: Science, 245, 1246 (1989).28) M. G. Surette, M. Levit, Y. Liu, G. Lukat, E. G. Ninfa, A. Ninfa & J. B. Stock: J. Biol. Chem., 271, 939 (1996)..HKはN末端領域で刺激応答を認識すると,ATPを用いた自己リン酸化(ヒスチジンキナーゼ)活性を誘起し,各HKに共通のDHpドメインに存在するHis残基がリン酸化(His-P)される.形成されたN-P結合は不安定であるために,HKのHis-Pからリン酸基がRRのAsp残基の側鎖カルボキシル基へ転移する(His-Aspリン酸基転移反応:リン酸リレー)(図3図3■TCSにおける自己リン酸化とリン酸基転移反応(His-Aspリン酸リレー)).高等生物のキナーゼカスケードとは異なり,この反応にはATPは不用である.リン酸化されたRR-Pは標的遺伝子の制御領域に結合して,その遺伝子発現を制御する(20)20) A. M. Stock, V. L. Robinson & P. N. Goudreua: Annu. Rev. Biochem., 69, 183 (2000).

図3■TCSにおける自己リン酸化とリン酸基転移反応(His-Aspリン酸リレー)

HKのHis残基の自己リン酸化は,側鎖イミダゾール基のN-3位窒素原子がATPのγ位リン酸に求核攻撃することによって起きる.HKのリン酸化His残基からRRのAsp残基へのリン酸基転移は,RRのRECドメインがもつリン酸基転移活性によるものと考えられる.

His-Aspリン酸リレーによる外界の環境変化に対する適応応答システムは,細菌における主要な情報伝達システムと考えられる.実際,1,087種の細菌ゲノム解析の結果63259種のTCS制御タンパク質が見いだされている(29)29) L. E. Ulrich & I. B. Zhulin: Nucleic Acids Res., 38 (Suppl. 1), D401 (2010)..平均すると,1細菌あたり,29種のHis-Aspリン酸リレー系をもっていることになる.一方,真核生物では,His-Aspリン酸リレー系の数は少ない.たとえば,出芽酵母,1;分裂酵母,3;アカパンカビ,1;細胞性粘菌,5;シロイヌナズナ,8種のHis-Aspリン酸リレー系が見いだされているが,ヒト,線虫,ショウジョウバエでは知られていない(30, 31)30) H. Saito: Chem. Rev., 101, 2497 (2001).31) P. Thomson & R. Kay: J. Cell Sci., 113, 3141 (2000)..細菌は長い進化の過程で,さまざまな環境変化に対応して,HK–RR間のHis-Aspリン酸リレーを用いて,遺伝子発現を「on, off」して適応生存してきたものと考えられる.

2. TCSの分子機構

2.1. HKの構造と機能

TCSを構成するHKは,基本的にホモ二量体として機能し,複数のドメインの組合せによって3種のタイプに分類される(32, 33)32) R. Dutta, L. Qin & M. Inouye: Mol. Microbiol., 34, 633 (1999).33) O. Adebali, M. G. Petukh, A. O. Reznik, A. V. Tishkov, A. A. Upadhyay & I. B. Zhulin: J. Bacteriol., 199, e00218-17 (2017).図4図4■HKのドメイン構成).主要なHKはクラスIに属しており,ペプチド鎖のN末端側にセンサードメインが位置する.センサードメインは膜貫通ヘリックス領域にはさまれることが多く,細胞膜表面あるいは膜の外側に配置される.HKのペプチド鎖は膜貫通領域を経て細胞質内に入り,HAMPドメイン,DHpドメイン(リン酸化されるHisを含む2量体化ドメイン)を介してC末端のHK触媒ドメイン(CAドメイン,ATP結合ドメイン)に連結する(図4図4■HKのドメイン構成).一方クラスIIに属するHKは膜タンパク質ではなく,細胞質に局在する.クラスII HK(大腸菌CheA)では,N末端領域にセンサードメインがなく,HPtドメイン(リン酸化されるHis残基を含む),Dドメイン(二量体ドメイン),CAドメインと連結している.さらに最近,新しいタイプのHK,クラスIIIが見いだされている(33)33) O. Adebali, M. G. Petukh, A. O. Reznik, A. V. Tishkov, A. A. Upadhyay & I. B. Zhulin: J. Bacteriol., 199, e00218-17 (2017)..クラスIII HKには,DHpドメインがなく,代わりにHPtドメインがCAドメインに連結している.このようなHKの構造と機能を理解するために,各ドメインの立体構造が明らかにされている(34)34) C. P. Zschiedrich, V. Keidel & H. Szurmant: J. Mol. Biol., 428, 3752 (2016).

図4■HKのドメイン構成

ドメイン構成はHKの各クラス内で差異があるが,典型的なものを記載する.PAS : Per-Arnt-Sim domain, HAMP: a domain found in Histidine kinases, Adenyl cyclases, Methyl-accepting proteins and Phosphatases:,DHp: Dimerization and Histidine phosphotransfer domain (H1: 2量体化ドメイン内のリン酸化されるヒスチジン残基),CA: Catalytic and ATP-binding domain(アスパラギン残基(N),フェニルアラニン残基(F),および2つのグリシン残基(G1とG2)が一定のアミノ酸残基を挟んで共通に保存されている),HPt: Histidine Phosphotransfer domain (H2: Hpt ドメイン内のリン酸化されるヒスチジン残基),TM: trans membrane, R: Regulatory domain, S: substrate-binding domain, D: Dimerization domain.

センサードメインは,個々のHKにおいて異なるシグナルを認識する必要性があるため,その配列および構造上の多様性は高いが,多くはPASドメインから構成されている.たとえばサルモネラ菌のPhoQ(HK)のセンサードメイン中のPASドメインに抗菌ペプチドやMg2+イオンが作用すると,PhoQにアロステリックな作用を及ぼすことになり,HK活性が制御される.このように,PASドメインはさまざまな刺激応答に重要な構造となっている.

HAMP, DHpドメインはα-ヘリックス-ターン-α-ヘリックス構造からなり,2量体形成においては,これらの2本のα-ヘリックス間の相互作用により4-helix bundle構造をとっている(図5図5■HKの立体構造とDHpドメイン–Hbox阻害剤Waldiomycinの複合体モデル).DHpドメインのα-へリックスI(N末端側α-へリックス)上には自己リン酸化されるHis残基が存在している.クラスI HK全般においては,このHis残基周辺配列はよく保存されており,Hbox(図4, 5B図5■HKの立体構造とDHpドメイン–Hbox阻害剤Waldiomycinの複合体モデル図4■HKのドメイン構成)と呼ばれている.この領域はHis自己リン酸化反応に必須であり,リン酸化RRに対する脱リン酸化酵素活性にも重要な作用を示す(35)35) R. Dutta, T. Yoshida & M. Inouye: J. Biol. Chem., 275, 38645 (2000)..したがって,DHpドメイン全体は,二量体形成に必要であるばかりでなく,HKの有する酵素活性(リン酸化,脱リン酸化)ならびにHis-Aspリン酸リレーに重要な役割を果たす構造領域と考えられる.

図5■HKの立体構造とDHpドメイン–Hbox阻害剤Waldiomycinの複合体モデル

(A) VicKとNarQの全体構造を示す.VicK(PDBコード:4I5S)とNarQ(PDBコード:5IJI)のX線結晶構造に加え,決定できていない領域の構造は模式的に示している.(B)大腸菌EnvZ DHpドメインの結晶構造(PDB: 5B1N)をもとに,waldiomycinとの複合体モデル構造を構築した.Hbox: ヘリックスI上のHis243周辺にclass I HKに共通に保存されたアミノ酸領域(Asp244, Arg246, Thr247, Thr250, Arg251)

CAドメインは5本のβストランド,3本のα-ヘリックスから構成されている.CAドメインには4種のアミノ酸残基N(アスパラギン),G1(グリシン),F(フェニルアラニン),G2(グリシン)が一定の距離を置いて配置されており,それぞれNbox, G1box, Fbox, G2boxと呼ばれている領域が存在する(20, 36)20) A. M. Stock, V. L. Robinson & P. N. Goudreua: Annu. Rev. Biochem., 69, 183 (2000).36) R. Gao & A. M. Stock: Annu. Rev. Microbiol., 63, 133 (2009)..CAドメインは,これらの4種のboxに囲まれた領域にATPを結合し,DHpドメインのHis残基のイミダゾール基N3位をリン酸化する触媒活性を有する.その反応機構は,イミダゾール基N3原子上の孤立電子対がATPのγリン酸基へ求核攻撃することによると考えられている(図3図3■TCSにおける自己リン酸化とリン酸基転移反応(His-Aspリン酸リレー)).また,CAドメインはSer/Thrキナーゼ,Tyrキナーゼドメインとは相同性はないが,ATP分解活性(ATPase)を示すDNA gyrase, Hsp90(熱ショックタンパク質),MutL(DNAミスマッチ修復酵素)などのATP結合領域には相同性があり,HKはATPase/kinase GHKLスーパーファミリーに含まれる(22, 37)22) M. Inouye & R. Dutta (Eds.): “Histidine kinases in signal transduction,” Academic Press, 2002.37) R. Dutta & M. Inouye: Trends Biochem. Sci., 25, 24 (2000).

2.2. RRの構造と機能

RRの構造は,N末端側レシーバー(REC)ドメインとC末端側エフェクタードメイン(多くはDNA結合ドメイン)の2つから構成されている(36)36) R. Gao & A. M. Stock: Annu. Rev. Microbiol., 63, 133 (2009)..RECドメインは約120アミノ酸残基から構成され,一般的に5本のβストランドと4本のα-ヘリックスからなる.リン酸基を受けとるAsp残基はRECドメインのN末から3番目のβ-シートとαヘリックスの間のループ上に位置している.HKのHis残基から直接的な反応によって,このAsp残基の側鎖カルボキシル基にリン酸基が転移され,アシルリン酸結合が形成される(図3図3■TCSにおける自己リン酸化とリン酸基転移反応(His-Aspリン酸リレー)).エフェクタードメインはDNA結合に必要な領域で,リン酸化されていないときには,そのDNA結合部位が内部に埋もれたり,DNA結合時とは異なるドメイン配置をとることによって不活化されている.RECドメインのリン酸化は内部の相互作用を変化させ,エフェクタードメインの構造変化,あるいはRECドメイン同士の相互作用変化による二量体化を促進する.このような構造変化はDNA結合ドメインを解放し,RRが標的遺伝子の制御領域へ結合することが可能となる(36)36) R. Gao & A. M. Stock: Annu. Rev. Microbiol., 63, 133 (2009).

2.3. HKのシグナル伝達機構とリン酸基リレー

HKがどのようなメカニズムで細胞膜を超えてシグナルを伝え,自己リン酸化能を活性化するのか,最近徐々に明らかになりつつある.Gushchin(38)38) I. Gushchin, I. Melnikov, V. Polovinkin, A. Ishchenko, A. Yuzhakova, P. Buslaev, G. Bourenkov, S. Grudinin, E. Round, T. Balandin et al.: Science, 356, 1043 (2017).らは,リガンドである硝酸イオンが結合することによって,NarQセンサードメインのα-ヘリックスが0.5~1 Åほど移動し,それによって膜貫通へリックスが2.5 Å押し込まれ,細胞質内のHAMPドメインの構造が変化することを見いだしている.さらに,HAMPドメイン変化はDHpドメインのα-ヘリックスの構造変化を導き,それによってCAドメインの可動性が高まり,自己リン酸化反応が活性化される(39)39) A. E. Dago, A. Schug, A. Procaccini, J. A. Hoch, M. Weigt & H. Szurmant: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 109, 10148 (2012)..ATPを結合したCAドメインがDHpドメインに接近し,His残基のリン酸化を触媒すると同時に,RRがDHpドメインに接近して,リン酸化されたHis残基からリン酸基をRRのAsp残基へ転移する反応が同時に進行する(40, 41)40) F. Jacob-Dubuisson, A. Mechaly, J. M. Betton & R. Antoine: Nat. Rev. Microbiol., 16, 585 (2018).41) F. Trajtenberg, J. A. Imelio, M. R. Machado, N. Larrieux, M. A. Marti, G. Obal, A. E. Mechaly & A. Buschiazzo: eLife, 5, e21422 (2016).図6図6■HKのHis-Aspリン酸基リレーのダイナミズム).すなわち,片方のサブユニットでHis残基が自己リン酸化され,もう一方のサブユニットにおけるRRのRECドメインへのリン酸基転移とカップルして同時進行するモデルが提唱されている.DHpドメインの大きなコンフォメーション変化によって,自己リン酸化とリン酸基転移が交互に起こると推定されている.TCSは,外界でのリガンドの結合を,膜内に構造変化として伝え,そのシグナルをいったん化学変化(リン酸化)に変換し.最終的にはRRのDNAへの結合に再変換する精密なナノマシーンの働きをしている.

図6■HKのHis-Aspリン酸基リレーのダイナミズム

予測されているHKのDHpおよびCAドメインのコンフォメーション変化とHis-Aspリン酸基リレーの機構を模式的に示している.HKの片方のサブユニットの自己リン酸化と,もう一方のサブユニットのRRへのリン酸基転移がリンクして起きる.非対称的な構造変化によって,基本的に片方のサブユニットのみの自己リン酸化が交互に起きる.対応する反応状態にトラップされた立体構造,DesK (HK)/DesR (RR) (PDBコード:5IUK)とCpxA (HK) (PDBコード:5LFK)を併せて示す.

3. 病原菌におけるTCSの役割

ヒトを含めて動植物細胞に病原菌が感染して発病するためには,病原菌は自らの病原性遺伝子を周囲の環境に応じて発現させている.病原性遺伝子として,1)宿主に接着して増殖するのに必要な接着因子(adhesin)やバイオフィルム形成遺伝子,2)毒素タンパク質(たとえば,腸管出血性大腸菌のベロ毒素は感染細胞内に入り,リボソームに作用して,宿主細胞のタンパク質合成を止める),3)TypeIII分泌システム(TypeIII secretion system; T3SS:エフェクタータンパク質を宿主細胞へ注入して,宿主細胞中の免疫反応などを抑制する)などが存在する.このような病原性遺伝子は,適切な環境とタイミングで発現するようコントロールされ,さまざまなTCSによって制御される(15, 42)15) Y. Gotoh, Y. Eguchi, T. Watanabe, S. Okamoto, A. Doi & R. Utsumi: Curr. Opin. Microbiol., 13, 232 (2010).42) A. E. Bem, N. Velikova, M. T. Pellicer, P. van Baarlen, A. Marina & J. M. Wells: ACS Chem. Biol., 10, 213 (2014)..たとえば,肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は,ゲノム上に13組のTCSと1個のRRをもつが,このなかで,10組ものTCSと1個のRRが,マウス感染実験で病原性にかかわることが報告されている(43)43) G. K. Paterson, C. E. Blue & T. J. Mitchell: J. Med. Microbiol., 55, 355 (2006).

サルモネラ属菌では,病原性遺伝子群がゲノムDNA上の特定領域(Salmonella pathogenicity island: SPI)に存在している.SPI1とSPI2には,T3SSを構成するタンパク質をコードする遺伝子のほかに,SPI1には腸管上皮細胞への侵入に必要な遺伝子など,SPI2にはマクロファージに貪食されてから殺菌されずに増殖するのに必要な遺伝子などが含まれる.SPI1の発現にはEnvZ/OmpRとBarA/SirAのTCSが,SPI2の発現にはPhoQ/PhoPとEnvZ/OmpRのTCSがそれぞれに関与する.通常,細菌がマクロファージに貪食されると,ファゴソーム(膜小胞)に取り込まれて殺菌される.ところが,サルモネラ属菌では,ファゴソーム内の弱酸性環境(pH 5~5.5)によってHKのEnvZやPhoQが活性化し,SPI2が発現誘導されて殺菌を免れる(44, 45)44) M. Rhen & C. J. Dorman: Int. J. Med. Microbiol., 294, 487 (2005).45) L. R. Prost & S. I. Miller: Cell. Microbiol., 10, 576 (2008)..このように,宿主細胞内の環境変化をTCSがいち早く感知して,病原菌はさまざまな病原性遺伝子を発現する.

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)では菌密度の上昇とともにペプチド(AIP: autoinducing peptide)が産生,分泌される(クオラムセンシング,コラム欄参照).AIPはAIP合成遺伝子の発現を誘導生産するので,オートインデューサーと呼ばれている.AIPが生産されだすと,AgrC(HK)はAIPを感知してAgrC/AgrA TCSが活性化する.その結果,AIP合成遺伝子だけでなく毒素やプロテアーゼなどの病原性因子も誘導生産される(46)46) S. Y. Queck, M. Jameson-Lee, A. E. Villaruz, T. H. Bach, B. A. Khan, D. E. Sturdevant, S. M. Ricklefs, M. Li & M. Otto: Mol. Cell, 32, 150 (2008)..このようなクオラムセンシングによる病原性遺伝子発現は腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)でも知られている(47)47) M. B. Clarke, D. T. Hughes, C. Zhu, E. C. Boedeker & V. Sperandio: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103, 10420 (2006)..EHECのゲノムDNA上のLEE(locus of enterocyte effacement)領域には病原性遺伝子群(T3SSを含む)が存在する.HK QseCはLEE領域の病原性遺伝子群だけでなく,ベロ毒素遺伝子やべん毛遺伝子の発現制御にも関与する(48)48) D. T. Hughes, M. B. Clarke, K. Yamamoto, D. A. Rasko & V. Sperandio: PLoS Pathog., 5, e1000553 (2009)..EHECが生産分泌するオートインデュ—サーはAI3と呼ばれている.QseCがAI3を感知すると,QseCの自己リン酸化が活性化される.リン酸化QseCからQseB, QseF, KdpEといった一連のRRへのリン酸基転移反応が生じる.リン酸化によって活性化したQseBはべん毛形成遺伝子(fli),QseFはベロ(志賀)毒素遺伝子(stx),KdpEはLEE領域の遺伝子(ler)発現を誘導する.また,LEE領域の遺伝子発現誘導にはRcsC(HK)/RcsD(Htp)/RcsB(RR)TCSも関与する(49)49) T. Tobe, H. Ando, H. Ishikawa, H. Abe, K. Tashiro, T. Hayashi, S. Kuhara & N. Sugimoto: Mol. Microbiol., 58, 320 (2005).

薬剤耐性に関与するTCSも数多く報告されている(表1表1■二成分情報伝達系に制御される抗生物質耐性).黄色ブドウ球菌では,バンコマイシンやベータラクタムなどの細胞壁合成阻害剤が添加されると,VraS/VraR TCSを介して細胞壁合成関連遺伝子の発現が増大し,菌がバンコマイシンなどに耐性化する(50)50) M. Kuroda, H. Kuroda, T. Oshima, F. Takeuchi, H. Mori & K. Hiramatsu: Mol. Microbiol., 49, 807 (2003)..また,ペプチド系抗生物質のバシトラシンはBceS/BceR TCSを介して,薬剤排出ポンプBceABやABCトランスポーターのVraDE遺伝子の発現を誘導する(51)51) Y. Yoshida, M. Matsuo, Y. Oogai, F. Kato, N. Nakamura, M. Sugai & H. Komatsuzawa: FEMS Microbiol. Lett., 320, 33 (2011)..その結果,黄色ブドウ球菌内に取り込まれたバシトラシンは菌体外へ排出されるため,バシトラシン耐性菌となる.アシネトバクター菌(Acinetobacter baumanii)でも,TCSのAdeS/AdeRが多剤排出ポンプのAdeABCの産生を増大させて菌を耐性化している(52)52) I. Marchand, L. Damier-Piolle, P. Courvalin & T. Lambert: Antimicrob. Agents Chemother., 48, 3298 (2004)..AdeS/AdeRは,宿主への定着や宿主外における菌の生残にかかわるバイオフィルム形成にも関与する(53)53) G. E. Richmond, L. P. Evans, M. J. Anderson, M. E. Wand, L. C. Bonney, A. Ivens, K. L. Chua, M. A. Webber, J. M. Sutton, M. L. Peterson et al.: MBio, 7, e00430 (2016)..さらに,細胞表層の電荷を変えることで,陽性に帯電したペプチド系抗生物質に対する耐性化もある.カルバペネム耐性腸内細菌科菌群の一員であるKPC型カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌(KPC-Klebsiella pneumoniae: KPC-KP)では,ペプチド系抗生物質のコリスチンへの耐性化が,PhoQ/PhoPのHKであるPhoQに対してリプレッサーとして働くMgrBという膜タンパク質の変異によって生じる.変異が入ると,PhoQに対するMgrBの阻害能が低下し,PhoQ/PhoPが過剰に活性化して制御下のpmrHFIJKLMオペロンが発現誘導さされる.さらに,細胞壁のリポ多糖が修飾されてコリスチンが作用しにくくなるのである(54)54) A. Cannatelli, T. Giani, M. M. D’Andrea, V. D. Pilato, F. Arena, V. Conte, K. Tryfinopoulou, A. Vatopoulos, G. M. Rossolini & COLGRIT Study Group: Antimicrob. Agents Chemother., 58, 5696 (2014).

表1■二成分情報伝達系に制御される抗生物質耐性
病原菌獲得される耐性耐性化に関わるTCS (HK/RR)
Staphylococcus aureusフルオロキノロンArlS/ArlR
バシトラシン,ナイシンBceS/BceR (BraS/BraR)
バンコマイシンVraS/VraR, GraS/GraR
カチオン性抗菌ペプチドGraS/GraR
Klebsiella pneumoniaeテトラサイクリン,ナリジクス酸,トブラマイシン,ストレプトマイシン,スペクチノマイシンPhoR/PhoB
β-ラクタム剤,クロラムフェニコールCpxA/CpxR
Acinetobacter baumanniiアミノグリコシド,フルオロキノロン,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,エリスロマイシン,トリメトプリムAdeS/AdeR
Pseudomonas aeruginosaカルバペネムCzcS/CzcR
Enterococcus faecalisセフトリアキソンCroS/CroR
バンコマイシンVanS/VanR
Salmonella typhimurium抗菌性ペプチドPhoQ/PhoP, PmrB/PmrA
シプロフロキサシンBaeS/BaeR
Escherichia coliノボビオシン,デオキシコール酸BaeS/BaeR
参考文献42より抜粋して作成.

このように,病原菌におけるTCSはさまざまな病原性遺伝子の発現制御や薬剤耐性制御に深く関与し,いずれも宿主内での生存適応するために重要な働きをしている.一方,病原菌の増殖に必須な遺伝子を発現制御するTCSも知られている.WalK(HK)/WalR(RR)TCSは,最初,枯草菌(Bacillus subtilis)で見つけられたが,その後,黄色ブドウ球菌(S. aureus),肺炎球菌(S. pneumoniae),虫歯菌(Streptococcus mutans),レンサ球菌(Streptococcus pyogenes),表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis),腸球菌(Enterococcus faecalis),Listeria monocytogenesなどにも見いだされている.WalK/WalR TCSは細胞壁合成代謝を制御し,これらのグラム陽性細菌が増殖するために必須である(15, 55, 56)15) Y. Gotoh, Y. Eguchi, T. Watanabe, S. Okamoto, A. Doi & R. Utsumi: Curr. Opin. Microbiol., 13, 232 (2010).55) S. Dubrac, P. Bisicchia, K. M. Devin & T. Msadek: Mol. Microbiol., 70, 1307 (2008).56) H. Takada & H. Yoshikawa: Biosci. Biotechnol. Biochem., 82, 741 (2018).

TCS阻害剤

前章で示されたように,TCSはさまざまな病原菌の病原性遺伝子の発現に主要な働きをしているので,TCSを阻害することにより,複雑な病原性遺伝子群を一斉に制御することが可能になり,多剤耐性細菌の病原性を阻害して,感染を防ぐことが期待された.現在までに,多くのTCS阻害剤が報告されてきた(16, 42)16) R. J. Worthington, M. B. Blackledge & C. Melander: Future Med. Chem., 5, 1265 (2013).42) A. E. Bem, N. Velikova, M. T. Pellicer, P. van Baarlen, A. Marina & J. M. Wells: ACS Chem. Biol., 10, 213 (2014)..本章では,特に,TCSに対する阻害作用の特異性が明らかなHK阻害剤の特性と多剤耐性病原菌に対する作用について紹介する.

1. クオラムセンシング阻害剤

腸管出血性大腸菌(EHEC)は1996年大阪府堺市で起きた食中毒の原因菌(O157)として知られている.EHECが腸内に生息後に産生されるベロ毒素は,腸管上皮細胞に作用して出血性の下痢を起こす.さらに,血液中に吸収されて全身に移行し腎臓に作用すると,溶血性尿毒症症候群(HUS)となる.前章で示したように,QseC/QseB TCSはEHECの病原性遺伝子群:lee1-5(TypeIII分泌システムや付着因子遺伝子を含む)やstx2(ベロ毒素遺伝子),fli(べん毛遺伝子)などの発現を制御している.このような複雑な病原性遺伝子群の発現は,QseCの細胞膜外のセンサー領域にリガンド分子(たとえば,アドレナリン,ノルアドレナリン,AI-3:オートインデューサー3)が作用して,QseCのHKの自己リン酸化の活性化により生じる.SperandioらはQseCのHK活性化を阻害すれば,EHECの病原性を抑制することが可能になると考え,QseC阻害剤の探索を行った(57)57) D. A. Rasko, C. G. Moreira, R. Li, N. C. Reading, J. M. Ritchie, M. K. Waldor, N. Williams, R. Taussig, S. Wei, M. Roth et al.: Science, 321, 1078 (2008).lee1-lacZ遺伝子融合株(EHEC)を用いてスクリーニングが実施され,150,000の化合物ライブラリーからリガンドによるQseCの活性化を抑制する化合物LED209(図7図7■HKのドメインを標的にしたHK阻害剤)が見いだされた.LED209はリガンドのHK活性作用を阻害することによってEHECの病原性遺伝子の発現を抑制した.さらに,マウスを用いて,LED209はEHECのほかに,QseC/QseBを有するサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)や野兎病菌(Francisella tularensis)の増殖を阻害せずにそれらの発病を抑制する作用(AV)をもつことが確認された.QseC/QseB TCSは多剤耐性のグラム陰性細菌であるK. pneumoniae, Pseudomonas aeruginosaにも存在している.このような多剤耐性グラム陰性細菌に対してもLED209はAV作用を示すことが期待される(58)58) M. M. Curtis, R. Russell, C. G. Moreira, A. M. Adebesin, C. Wang, N. S. Williams, R. Taussig, D. Stewart, P. Zimmern, B. Lu et al.: MBio, 5, e02165 (2014).

図7■HKのドメインを標的にしたHK阻害剤

同様の試みは腸球菌のFsrC(HK)/FsrA(RR)TCSを標的にしても行われた(59, 60)59) J. Nakayama, E. Tanaka, R. Kariyama, K. Nagata, K. Nishiguchi, R. Mitsuhata, Y. Uemura, M. Tanokura, H. Kumon & K. Sonomoto: J. Bacteriol., 189, 1358 (2006).60) P. Ma, K. Nishiguchi, H. M. Yuille, L. M. Davis, J. Nakayama & M. K. Phillips-Jones: FEBS Lett., 585, 2660 (2011)..最初に,腸球菌の病原性因子の一つであるゼラチナーゼ(GelE)の発現抑制を指標にして,放線菌生産物がスクリーニングされた.その結果,既知ラッソペプチドであるSiamycin I(図7図7■HKのドメインを標的にしたHK阻害剤)が腸球菌の増殖を阻害しない濃度でゼラチナーゼの発現を阻害するものとして見いだされた.Siamycin IはFsrCの誘導ペプチドであるGBAPによる自己リン酸化活性を非競合的に阻害することが示された.

2. WalK阻害剤

WalK/WalR TCSを標的にした阻害剤は,細胞壁合成代謝に関与する遺伝子群を一斉に制御して,正常な細菌細胞増殖・分裂を阻害し,抗菌性を示すことになる.特に,多剤耐性細菌であるMRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant Enterococci: VRE)の増殖もWalK/WalR TCSによって制御されているので,WalK(HK)阻害剤は,MRSAやVREに対する新規抗菌薬の標的として研究されてきた(61)61) R. Utsumi: Biosci. Biotechnol. Biochem., 81, 1663 (2017)..最初のHK阻害剤の開発では,合成化合物ライブラリーとKinA(HK)を用いて,in vitroで,KinAのHK活性を阻害する化合物(RWJ-49815)が選択された(62)62) J. F. Barrett, R. M. Goldschmidt, L. E. Lawrence, B. Foleno, R. Chen, J. P. Demers, S. Johnson, R. Kanojia, J. Bernstein, L. Licata et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 5317 (1998)..RWJ-49815はMRSAやVREに対して抗菌活性を示した最初のHK阻害剤であった.しかしながら,その後の詳細な作用機構研究により,RWJ-49815はじめ,当初開発されたHK阻害剤の多くはHK特異的な阻害作用を示さず,ヒト細胞への毒性や溶血性作用を示した(63, 64)63) K. Stephenson, Y. Yamaguchi & J. A. Hoch: J. Biol. Chem., 275, 38900 (2000).64) J. J. Hilliard, R. M. Goldschmidt, L. Licata, E. Z. Baum & K. Bush: Antimicrob. Agents Chemother., 43, 1693 (1999).

その後,合成化合物ライブラリーではなく土壌微生物が生産する抽出物(10,000サンプル)に対して,選択的WalK阻害剤単離法(野生型枯草菌とwalR温度感受性変異株のスクリーニングサンプルに対する増殖感受性の差を利用する)(65)65) A. Okada, Y. Gotoh, T. Watanabe, E. Furuta, K. Yamamoto & R. Utsumi: Methods Enzymol., 422, 386 (2007).を用いて,スクリーニングが実施された.その結果,WalK阻害剤(Walkmycin A, Walkmycin B, Signermycin B, Waldiomycin)(図7図7■HKのドメインを標的にしたHK阻害剤)が単離され(61)61) R. Utsumi: Biosci. Biotechnol. Biochem., 81, 1663 (2017).,いずれも多剤耐性細菌であるMRSAやVREに対しても抗菌性を示した.これらのHK阻害作用が解析された結果,Signermycin B(66)66) T. Watanabe, M. Igarashi, T. Okajima, E. Ishii, H. Kino, M. Hatano, R. Sawa, M. Umekita, T. Kimura, S. Okamoto et al.: Antimicrob. Agents Chemother., 56, 3657 (2012).とWaldiomycin(67, 68)67) M. Igarashi, T. Watanabe, T. Hashida, M. Umekia, M. Hatano, Y. Yanagida, H. Kino, T. Kimura, N. Kinoshita, K. Inoue et al.: J. Antibiot. (Tokyo), 66, 459 (2013).68) Y. Eguchi, T. Okajima, N. Tochio, Y. Inukai, R. Shimizu, S. Ueda, S. Shinya, T. Kigawa, T. Fukamizo, M. Igarashi et al.: J. Antibiot. (Tokyo), 70, 251 (2017).はWalK細胞内ドメインのDHpドメイン(図5図5■HKの立体構造とDHpドメイン–Hbox阻害剤Waldiomycinの複合体モデル)に特異的に作用して,HK阻害作用を示す新規なキナーゼ阻害剤であることが示された(図8図8■選択的HK阻害剤の作用と応用).ヒト細胞におけるSer/ThrキナーゼとTyrキナーゼ阻害剤の作用点の多くはATP結合領域であることが知られている.(69)69) 木下誉富:日本結晶学会誌,59, 174 (2017). 一方,Signermycin B, WaldiomycinはWalKのATP結合領域ではなく,細菌HK特有のDHpドメインに作用して,WalKのHK活性を阻害する.その結果,細胞壁代謝関連遺伝子群の発現が制御され,細胞増殖分裂が阻止されることが明らかにされた.特にWaldiomycinはDHpドメイン内のHbox領域に特異的に作用して,CAドメインによるHbox内のHis残基のリン酸化を阻害した(図5B図5■HKの立体構造とDHpドメイン–Hbox阻害剤Waldiomycinの複合体モデル).WaldiomycinはHKのHboxに作用するHK阻害剤(Hbox阻害剤と命名)であることがわかった.今後,WalK以外のHKに対するHbox阻害剤の特異性を利用すると,多剤耐性細菌の病原性や薬剤耐性遺伝子の発現を抑制する抗菌薬の開発も期待される.さらにSignermycin Bは白菜軟腐病菌の増殖に影響を与えずに,病原性遺伝子(ペクチナーゼ)の発現を抑制して,軟腐病の防除効果を示した(70)70) 五十嵐雅之,内海龍太郎:植物病害防除剤,特許第5254097号(2013)..ぺクチナーゼ遺伝子の発現はPehS(HK)/PehR(RR)TCSによって制御されている.Signermycin BはWalK以外にもDHpドメインを有するHK(PehSを含む)を阻害して,植物病害防除剤として作用した.Signermycin Bは最初の植物病原菌に対するAV剤として特許化されている(70)70) 五十嵐雅之,内海龍太郎:植物病害防除剤,特許第5254097号(2013).

図8■選択的HK阻害剤の作用と応用

一方,WalKのCAドメインを標的にしたHK阻害剤を開発するために,コンピューターを用いて,化合物ライブラリーの電子データをスクリーニング(in silico screening)してHK阻害剤候補を選択することも試みられてきた.残念ながら,現在のところCAドメインを標的にした特異的な阻害剤は見いだされていない(71)71) N. Velikova, S. Fulle, A. S. Manso, M. Mechkarska, P. Finn, J. M. Colon, M. R. Oggioni, J. M. Wells & A. Mariana: Sci. Rep., 6, 26085 (2016)..現在用いられている化合物ライブラリーは主としてヒト細胞を標的にしているので,細菌細胞への親和性は乏しく,今後,細菌細胞に特化した化合物ライブラリーの構築が必要かもしれない.

おわりに

多剤耐性細菌であるESKAPE(Enterococcus faecium, Enterococcus faecalis: VRE, MRSA, K. pneumoniae, A. bamannii, P. aeruginosa, Enterobacter species)が感染治療の脅威になっている(72)72) L. B. Rice: J. Infect. Dis., 197, 1079 (2008)..最近,ESKAPEに対して有効な抗菌薬としてTeixobactin(73)73) L. L. Ling, T. Schneider, A. J. Peoples, A. L. Spoering, I. Engels, B. P. Conlon, A. Mueller, T. F. Schberle, D. E. Hughes, S. Epstein et al.: Nature, 517, 455 (2015).やG0775(74)74) P. A. Smith, M. F. T. Koehler, H. S. Girgis, D. Yan, Y. Chen, J. J. Crawford, M. R. Durk, R. I. Higuchi, J. King, J. Murry et al.: Nature, 561, 189 (2018).が開発された.Teixobactinは多剤耐性グラム陽性細菌:VRE, MRSAに対して,G0775は多剤耐性グラム陰性細菌:K. pneumoniae, A. baumannii, P. aeruginosa, Enterobacter speciesに対して有効な抗菌性を示した.両抗菌薬ともマウスを用いた感染実験において治療効果を示した.Lewisらは難培養性微生物(通常の実験室で用いられる培養法では,培養できない微生物の総称)を培養できる方法(iChip)を開発して,従来の抗菌性を指標にしたスクリーニング方法を用いて,Teixobactinを見いだした.地球上に存在する微生物の99%は難培養性微生物といわれている(75)76) 野中健一:化学と生物,57, 108 (2019)..難培養性微生物生産物は今まで探索されていない新規抗菌薬の宝庫と考えられる.今後,難培養性微生物の新しい培養方法の開発は,多剤耐性細菌に有効な抗菌薬だけでなく天然物創薬のブレークスルーとなることが期待される(76)77) K. Lewis: Nature Rev. Drug Discov., 12, 371 (2013).

一方,G0775はarylomycinと大腸菌シグナルぺプチダーゼ(LepB)の共結晶構造をもとに最適化合成された.LepBが細菌増殖に必須であることから,LepBを標的にした阻害剤が多剤耐性細菌に有効な抗菌薬になりうると考えられた.その結果開発された最初の分子標的薬の可能性を秘めた化合物がG0775である.病原菌のゲノム解析をもとに,多くの病原菌の増殖に必須な標的タンパク質(酵素)が知られている.Arylomycinの最適化によるG0775の成果は,標的タンパク質に作用する化合物がみつかれば,合成化学と構造生物学をジョイントさせることにより,多剤耐性細菌に有効な抗菌薬の開発が可能であることを示している.

TeixobactinもG0775のいずれにおいても,開発の原理は抗菌(MIC,最少生育阻止濃度)を指標にしている.この手法は半世紀前にWaksmanが結核の特効薬ストレプトマイシンを土壌微生物生産物から見いだしたときから,抗菌薬開発にも用いられた方法であり,「Waksman platform」と呼ばれている(77)78) S. Tiwari, S. B. Jamal, S. S. Hassan, P. V. S. D. Carvalho, S. Almeida, D. Barh, P. Gohsh, A. Silva, T. L. P. Castro & V. Azevedo: Front. Microbiol., 8, 1878 (2017)..TeixobactinやG0775の開発成果は今後も新規抗菌薬の開発に「Waksman platform」が有効であることを示している.

一方,本解説で紹介したHK阻害剤の開発では,「Waksman platform」に従わないで,細菌の病原性や増殖を制御するHK阻害活性を指標にTCS阻害剤の可能性を示したものである.TCS阻害剤の特徴は「細菌の情報伝達経路を特異的に阻害して,多剤耐性細菌の病原性や増殖を抑制して,感染治療効果を期待する」という,全く新しい概念に基づいた開発手法である.LED209をもとにしたQseC阻害剤はQseC/QseB TCSを保持する多剤耐性グラム陰性細菌(K. pneumoniae, A. baumannii, P. aeruginosa, Enterobacter speciesなど)に対してもAVとして作用して感染治療効果を示すことが期待される.

WalK阻害剤からは,多剤耐性グラム陽性細菌(MRSA, VREなど)に対して,選択的な抗菌薬の開発が可能である.また,waldiomycinをもとにしたHbox阻害剤はWalK/WalR TCSを有しない病原菌に対してもAV薬,バイオフィルム阻害剤,クオラムセンシング阻害剤として作用することが期待される(図8図8■選択的HK阻害剤の作用と応用).実際AVとしては,病原菌が分泌するトキシンタンパク質,宿主細胞への侵入,免疫応答回避,宿主細胞への接着に関与するタンパク質に対するモノクロナール抗体が開発されて,臨床試験がなされている(Phase 1, 2)(18)18) B. Francois, C. E. Luyt, C. K. Stover, J. O. Brubaker, J. Chastre & H. S. Jafri: Semin. Respir. Crit. Care Med., 38, 346 (2017)..しかしながら,抗体医薬は特定の病原菌にしか効力が期待できないために,限定的な利用となる.本解説で,紹介したように,QseC阻害剤(QseC相同遺伝子は24種の病原菌ゲノムで見いだされている)やHbox阻害剤(Hboxは細菌のTCSに広く保存されている)は広範囲な病原菌を対象にしたAV薬としても開発可能であるので,抗体医薬と合わせて多剤耐性細菌感染治療に効果的であると考えられる.このように,HKを含めた細菌情報伝達(TCS)阻害剤はAVのコンセプトである「耐性菌の出現しない,腸内フローラーを乱さないで,病原菌の病原性を抑制する」によく合致し,21世紀,多剤耐性細菌に有効な次世代型抗菌薬として期待が高まっている(13~19, 78, 79)13) L. Cegeiski, G. R. Marshall, G. R. Eldridge & S. J. Hultgren: Nature Rev. Microbiol., 6, 17 (2008).19) T. Defoirdt: Trends Microbiol., 26, 313 (2018).79) S. T. Cardona, M. Choy & A. M. Hogan: J. Membr. Biol., 251, 75 (2018).75) T. Kaeberlerin, K. Lewis & S. S. Epstein: Science, 296, 1127 (2002).

Acknowledgments

黒田俊一先生(大阪大学産業科学研究所生体分子反応科学研究分野・教授)に本解説を執筆する機会とご指導,ご鞭撻いただきました.中山二郎先生(九州大学大学院農学研究院生命機能科学部門システム生物工学講座微生物工学分野・准教授)には原稿に関して,適切なご助言賜りました.ここに感謝します.

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