解説

ポリフェノールの機能解明に関する研究とその応用開発植物ポリフェノールの秘めたる力

Elucidation of the Effects of Polyphenols on Human Health and Implications for the Development of Healthy Food: The Blessing of Nature: The Secret Power of Plant Polyphenols

Yoshiko Ono

小野 佳子

サントリーウエルネス株式会社健康科学研究所

Published: 2019-09-01

植物はさまざまな外敵やストレスから自分自身の身を守るためポリフェノールをその体内に合成する能力を有している.サントリーではこれらの植物を原料とする酒類や飲料の開発を手掛けており,ポリフェノールに関する研究を商品の品質保持に応用してきた.その後,食品の三次機能(健康の維持や向上に関与する生体調節機能)が注目されるようになったことも相まって,われわれは,古くから健康に良いとされる食品に含まれる機能性成分に着目し,その効能とメカニズムに関する研究を長年にわたり続け,特に植物に含まれるポリフェノールの生理機能について精力的に研究を進めてきた.ポリフェノールは反応性の高い水酸基をもち,ベーシックな機能として抗酸化作用を有する点は共通しているが,化合物によって,吸収・分布・代謝・排泄(ADME)などが異なり,それぞれに固有の特性を有している.ADMEを理解したうえで効能特性を捉えることで,より効果的に健康維持に役立つ商品を開発することができた.筆者らが行ってきたポリフェノール(図1図1■植物ポリフェノールの構造式)に関する研究開発をいくつか紹介する.

図1■植物ポリフェノールの構造式

ゴマリグナン(セサミン,エピセサミン)

セサミンとその立体異性体であるエピセサミンはアラキドン酸の発酵生産研究の過程で,Δ5不飽和化酵素阻害作用をもつ物質としてゴマ油の中から同定された.われわれはこれまでに,セサミンとエピセサミンを含むゴマリグナンの研究を精力的に行っており,多くの研究者によりさまざまな効能が明らかにされている.

セサミン・エピセサミン自身は抗酸化作用をもたないが,生体内で抗酸化作用を発揮することがわかっていた.セサミン・エピセサミンは経口摂取後,門脈より肝臓に運ばれて速やかに代謝され,それらの代謝物が強い抗酸化作用を示す(1, 2)1) M. Nakai, M. Harada, K. Nakahara, K. Akimoto, H. Shibata, W. Miki & Y. Kiso: J. Agric. Food Chem., 51, 1666 (2003).2) M. Nakai, N. Kageyama, K. Nakahara & W. Miki: Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 1273 (2006)..さらに,PC12細胞を用いた評価で,セサミン・エピセサミンのモノカテコール代謝物(SC1, EC1)がNrf2/AREを活性化し,ホモオキシゲナーゼー1などの抗酸化酵素類を誘導することを確認した(3)3) N. Hamada, A. Tanaka, Y. Fujita, T. Itoh, Y. Ono, Y. Kitagawa, N. Tomimori, Y. Kiso, Y. Akao, M. Ito et al.: Bioorg. Med. Chem., 19, 1959 (2011).図2図2■セサミン・エピセサミン代謝物のNrf2/AREシグナル活性化作用).さらに,SC1がangiotensin II刺激で上昇するNADPHオキシダーゼ活性を抑制し,スーパーオキサイドの産生を抑制することを明らかにした(4)4) S. Takada, S. Kinugawa, S. Matsushima, D. Takemoto, T. Furi-hata, W. Mizushima, T. Yokota, Y. Ono, H. Shibata, H. Tsutsui et al.: Exp. Physiol., 100, 1319 (2015).図3図3■SC1によるNADPHオキシダーゼ活性抑制作用).また,In vivo電子スピン共鳴法(ESR)法を用いて,静脈内投与したニトロキシラジカル(NR)の生体内での還元反応をモニターしたところ,NR投与前にゴマリグナンを投与することで,肝臓でのNRの半減期が有意に短縮した(5)5) M. Tada, Y. Ono, M. Nakai, M. Harada, H. Shibata, Y. Kiso & T. Ogata: Anal. Sci., 29, 89 (2013)..ゴマリグナンは肝臓のレドックス状態に影響を与えていると考えられる.このように,セサミン・エピセサミンは生体内において代謝をうけ,おそらくそれらの代謝物が,直接的なラジカル補足,Nrf2/ARE signalingなどを介した抗酸化酵素の活性化,NADPHオキシダーゼ抑制による活性酸素産生抑制などにより,酸化ストレスを軽減するものと推察された.

図2■セサミン・エピセサミン代謝物のNrf2/AREシグナル活性化作用

図3■SC1によるNADPHオキシダーゼ活性抑制作用

ゴマリグナンが抗高血圧作用を示すことがさまざまなモデルで明らかになっている.メカニズムを検討したところ,セサミン代謝物の抗酸化作用が一部関与していることが確認された(6)6) D. Nakano, C. J. Kwak, K. Fujii, K. Ikemura, A. Satake, M. Ohkita, M. Takaoka, Y. Ono, M. Nakai, Y. Matsumura et al.: J. Pharmacol. Exp. Ther., 318, 328 (2006)..ヒトにおいてもゴマリグナンの血圧低下作用を確認している(7)7) T. Miyawaki, H. Aono, Y. Toyoda-Ono, H. Maeda, Y. Kiso & K. Moriyama: J. Nutr. Sci. Vitaminol. (Tokyo), 55, 87 (2009).

高脂肪食摂取による糖尿病モデルにおいて,持久力改善作用を検討した.高脂肪食摂取により持久力が顕著に低下し,セサミンはこの低下を有意に抑制した.筋肉における活性酸素の発生を見たところ,セサミンは高脂肪食摂取により増大した活性酸素を明らかに抑制した(4)4) S. Takada, S. Kinugawa, S. Matsushima, D. Takemoto, T. Furi-hata, W. Mizushima, T. Yokota, Y. Ono, H. Shibata, H. Tsutsui et al.: Exp. Physiol., 100, 1319 (2015).図4図4■セサミンの高脂肪食摂取による糖尿病モデルにおける,(A)走行距離,(B)走行時間,(C)スーパーオキサイド産生改善効果).NADPHオキシダーゼの阻害により,スーパーオキサイドの産生を抑制し,高脂肪食による酸化ストレスを軽減したものと考えられる.

図4■セサミンの高脂肪食摂取による糖尿病モデルにおける,(A)走行距離,(B)走行時間,(C)スーパーオキサイド産生改善効果

ND:通常食,HFD:高脂肪食.

ゴマリグナン含有食品のヒトにおける抗酸化作用と体感改善効果を二重盲検プラセボ並行群間比較試験により評価した.日常的に疲労を感じる健常男女を2群に割り付け,ゴマリグナン含有食品(ゴマリグナン10 mg,ビタミンE 55 mg含有)もしくはプラセボ食品を8週間摂取させ,摂取4, 8週目に疲労,睡眠,美容に関するアンケートを実施した.その結果,ゴマリグナン含有食品の摂取により,疲労,睡眠,美容の主観的状態が摂取前に対し改善し,睡眠の質や美容の項目についてはプラセボ食品摂取群と比較し有意に改善した(8)8) D. Takemoto, Y. Yasutake, N. Tomimori, Y. Ono, H. Shibata & J. Hayashi: Glob. J. Health Sci., 7, 1 (2015).図5図5■ゴマリグナン含有食品(SVE)の体感改善効果).また,一部の被験者を対象とし,LDL酸化ラグタイムを指標として抗酸化力を評価したところ,ゴマリグナン含有食品の摂取において,酸化耐性がプラセボ食品摂取群と比較して有意に向上することを確認した(8)8) D. Takemoto, Y. Yasutake, N. Tomimori, Y. Ono, H. Shibata & J. Hayashi: Glob. J. Health Sci., 7, 1 (2015).図6図6■ゴマリグナン含有食品(SVE)のLDL酸化ラグタイム延長効果).1993年にサプリメントとして上市し,今年で発売26年目を迎える.研究の過程で,新たに発見した効能や他成分との組み合わせについて特許を取得するとともに,商品リニューアルへとつなげ,現在は玄米由来成分オリザプラスを配合した商品「セサミンEX」として発売している.

図5■ゴマリグナン含有食品(SVE)の体感改善効果

図6■ゴマリグナン含有食品(SVE)のLDL酸化ラグタイム延長効果

なお,14C標識したセサミンを用いることにより,セサミンのADMEの詳細についても最近解明されている(9)9) N. Tomimori, T. Rogi & H. Shibata: Mol. Nutr. Food Res., 61, 8 (2017).

ウーロン茶重合ポリフェノール(OTPP)

1981年にサントリーは缶入りウーロン茶を発売し,市場を牽引してきた.並行して長年にわたり,ウーロン茶に含まれるポリフェノールの研究を精力的に続けている.

ウーロン茶ポリフェノールの抗酸化活性(LDL lag time延長ならびにoxygen radical absorbance capacity(ORAC)活性上昇効果)をin vitroin vivoで明らかにした(10, 11)10) H. Kurihara, H. Fukami, Y. Toyoda, N. Kageyama, N. Tsuruoka, H. Shibata, Y. Kiso & T. Tanaka: Biol. Pharm. Bull., 26, 739 (2003).11) H. Kurihara, H. Fukami, S. Asami, Y. Toyoda, M. Nakai, H. Shibata & X. S. Yao: Biol. Pharm. Bull., 27, 1093 (2004)..さらにウーロン茶重合ポリフェノール(OTPP)を機能性関与成分とした特保ウーロン茶の開発をめざし,ウーロン茶ポリフェノールのなかでも,茶葉を半発酵させる過程でカテキン類が重合したウーロン茶特有の成分OTPPがin vitroで強いリパーゼ阻害作用をもつこと(12)12) M. Nakai, Y. Fukui, S. Asami, Y. Toyoda-Ono, T. Iwashita, H. Shibata, T. Mitsunaga, F. Hashimoto & Y. Kiso: J. Agric. Food Chem., 53, 4593 (2005).,リンパ管からの脂肪の吸収を抑制すること(13)13) Y. Toyoda-Ono, M. Yoshimura, M. Nakai, Y. Fukui, S. Asami, H. Shibata, Y. Kiso & I. Ikeda: Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 971 (2007).,さらに,OTPPの脂肪吸収抑制作用は緑茶のエピガロカテキンガレート(EGCG)よりも強いことを明らかにした(13)13) Y. Toyoda-Ono, M. Yoshimura, M. Nakai, Y. Fukui, S. Asami, H. Shibata, Y. Kiso & I. Ikeda: Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 971 (2007).表1表1■ウーロン茶重合ポリフェノール(OTPP)のリンパ管からの脂肪吸収抑制効果).OTPPは分子量が大きく小腸からの吸収性は極めて低いため,腸管内で効率的に脂肪吸収抑制効果を発揮したものと考えられた.また,脂肪摂取後の血中中性脂肪の上昇抑制効果をin vivo(13)13) Y. Toyoda-Ono, M. Yoshimura, M. Nakai, Y. Fukui, S. Asami, H. Shibata, Y. Kiso & I. Ikeda: Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 971 (2007).で確認した.OTPP強化ウーロン茶のヒトにおける食後の中性脂肪上昇抑制効果をプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験により評価した.血中中性脂肪が高めの健常男女を無作為に,OTPP強化ウーロン茶(OTPP 68 mg含有)摂取群もしくはプラセボ飲料摂取群に割り付けた.試験当日は10時間以上の絶食時間を設けたのち,早朝空腹時にいずれかの試験飲料と高脂肪食(脂肪含有量40 g, 434 kcal)を同時に摂取させ,摂取5時間後までの血中中性脂肪濃度を測定した.1週間の摂取休止期間の後,被験者は飲料を変えて同様の評価を行った.その結果,いずれの飲料を摂取した場合も血中中性脂肪の上昇が認められたが,OTPP強化ウーロン茶摂取群でその上昇は緩やかであり,摂取3時間後および5時間後でプラセボ飲料摂取群に対して有意な血中中性脂肪の低値を認めた(14)14) 原祐 司,森口盛雄,楠本 晶,中井正晃,小野佳子,阿部圭一,太田裕見,柴田浩志,木曽良信,頴川一忠:薬理と治療,32, 335, (2004).図7図7■OTPP強化ウーロン茶の中性脂肪の上昇抑制作用).2006年に「食後の血中中性脂肪の上昇を抑える」という特定保健用食品のヘルスクレームを取得し,「黒烏龍茶」として上市されている.その後,ヒトにおいて体脂肪低減効果も明らかにし,現在は「脂肪の吸収を抑え,体に脂肪がつきにくくなる」特定保健用食品として販売されている.

表1■ウーロン茶重合ポリフェノール(OTPP)のリンパ管からの脂肪吸収抑制効果
SampleAbsortption
Dose3h5h24h
mg/head
Oolong tea extract055.6±6.175.8±4.5101.0±5.7
10043.3±4.359.3±4.4*85.3±5.4
20033.7±2.3**46.7±3.8**87.0±5.6
Green tea extract055.0±4.174.9±4.1108.9±2.9
10055.0±2.771.5±2.1107.4±4.5
20038.4±1.4**60.6±2.4**104.6±7.0
Caffeine055.8±3.073.7±3.4105.0±5.2
6.656.3±2.669.2±2.5101.0±5.2
13.250.1±2.068.2±2.1108.5±2.5
OTPP063.3±2.886.6±4.5109.6±5.1
2043.0±3.7**64.3±6.2*111.4±5.4
EGCG046.7±3.967.8±3.9104.3±4.5
2046.0±3.168.6±5.797.8±6.6
Mean±SE. * p<0.05, ** p<0.01 vs. control.

図7■OTPP強化ウーロン茶の中性脂肪の上昇抑制作用

ケルセチン配糖体

ケルセチン配糖体はエンジュから抽出したルチンを原料に酵素処理して得られた素材である.水溶性に優れ,生体利用率が非常に高いことが期待されるため,生体内吸収性と血中抗酸化活性の上昇作用について評価した.その結果,水溶性の溶媒条件下でケルセチンアグリコンやイソクエルシトリンと比較して優れた経口吸収性と血中抗酸化力向上作用を有することが確認できた.ヒトにおいても45 mgのケルセチン配糖体の摂取で血中ORAC活性が上昇することを確認し,その抗酸化・抗炎症作用を期待して「グルコサミン&コンドロイチン」に配合して販売された.

さらに近年,ケルセチン配糖体の筋委縮抑制効果がin vivoで確認されたため,ケルセチン配糖体含有食品のヒトにおける運動機能に及ぼす影響をランダム化二重盲検プラセボ並行群間比較試験により評価した.膝に痛みを感じる40歳から75歳未満の男女にケルセチン配糖体含有食品(ケルセチン配糖体90 mg,グルコサミン塩酸塩1,200 mg,コンドロイチン硫酸60 mg含有食品)あるいはプラセボ食品を4カ月間摂取させ,摂取2, 4カ月後に通常歩行速度,膝伸展筋力を評価した.その結果,ケルセチン配糖体含有食品の4カ月間の継続摂取により,通常歩行速度がプラセボ食品摂取群に対して有意に向上することを明らかにした(15)15) N. Kanzaki, Y. Ono, H. Shibata & T. Moritani: Clin. Interv. Aging, 10, 1743 (2015).図8図8■ケルセチン配糖体含有食品(GCQID)の通常歩行速度に対する改善効果(0週からの変化量)).また,膝伸展筋力はケルセチン配糖体含有食品摂取群のみで8週以降に摂取前に対して有意な上昇が認められた(15)15) N. Kanzaki, Y. Ono, H. Shibata & T. Moritani: Clin. Interv. Aging, 10, 1743 (2015)..これらの結果をもとに,「ロコモア」の上市を実現した.

図8■ケルセチン配糖体含有食品(GCQID)の通常歩行速度に対する改善効果(0週からの変化量)

その後,「グルコサミン&コンドロイチン」は,2016年12月に「グルコサミンアクティブ」という商品名で機能性表示食品として受理され,現在,販売されている.さらに「ロコモア」も2018年12月に機能性表示食品として受理された.

オリーブとブドウ種子ポリフェノール

地中海式食事法は地中海地域で日常的に摂取されている食習慣であり,心血管疾患(CVD)の予防に効果的であると示唆されている.そこで地中海地域で好んで食されているオリーブとブドウ種子ポリフェノールに着目し,動脈硬化およびCVDの代理マーカーとしての血管内皮機能に対する作用を評価した.その結果,オリーブとブドウ種子ポリフェノールがDOCA-salt高血圧モデルに対して,それぞれ単独で,あるいは相加的に血管内皮機能障害を抑制することを明らかにした.オリーブポリフェノールであるヒドロキシチロソールは,水溶性で,速やかに吸収され,単回摂取後1時間以内に最高血中濃度に達し,その後速やかに消失していく.一方,ブドウ種子ポリフェノールの主要成分であるOligomeric proanthocyanidinsは,分子量が大きく,そのままの形ではほとんど吸収されないものの,小腸下部~大腸に運ばれ,腸内細菌により代謝され,3,4-Dihydroxyphenyl acetic acid(DOPAC)などに分解されることが報告されている.そこで,DOPACの血管内皮機能への影響をみたところ,DOPAC投与により,有意に血管内皮機能障害を抑制することを確認した.このことから,Oligomeric proanthocyanidinsは摂取した後,腸内細菌により代謝を受けたのち,生体内に吸収され,代謝物が血管内皮機能障害抑制効果に寄与した可能性が考えられた.次に,オリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品のヒトにおける血管内皮機能への影響を調べるため,プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験を実施した.30~69歳の健常男女を,オリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品(オリーブ果実抽出物50 mg(ヒドロキシチロソールおよびその誘導体:ヒドロキシチロソールとして6 mg含有),ブドウ種子抽出物100 mg(Oligomeric proanthocyanidins 60 mgを含む)およびビタミンC 100 mgを配合)群もしくはプラセボ食品摂取群に無作為に割り当てた.各食品をそれぞれ4週間摂取し,血管内皮機能の指標であるFlow-mediated vasodilation(FMD)を測定した.2週間の摂取休止期間の後,被験者はもう一方の食品を4週間摂取し,同様の検査を行った.その結果,オリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品を摂取した群では,FMDが有意に改善された(16)16) 小南 優,安武瑤子,小野佳子,坂野克久,海老原淑子,柴田浩志:薬理と治療,43, 1181 (2015).図9図9■オリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品(OGE)による血管内皮機能改善作用).さらに,酸化ストレスマーカーである尿中8-OHdG,および炎症マーカーである血漿高感度C反応性タンパク質(hsCRP)は,プラセボ食品摂取群と比較してオリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品摂取群で有意に減少した(16)16) 小南 優,安武瑤子,小野佳子,坂野克久,海老原淑子,柴田浩志:薬理と治療,43, 1181 (2015).図10図10■オリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品(OGE)による抗酸化・抗炎症作用).これらのADMEの異なるポリフェノールの組み合わせが,おそらく相加的に有効性を発揮したものと考えられる.このオリーブとブドウ種子ポリフェノールを含有するサプリメントは「サンオレア」として上市されている.

図9■オリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品(OGE)による血管内皮機能改善作用

図10■オリーブとブドウ種子ポリフェノール含有食品(OGE)による抗酸化・抗炎症作用

おわりに

入社以来,植物に含まれるポリフェノールを中心に効能評価を続けてきた.植物に含まれる成分は多種多様で,それぞれに特徴的な成分が含まれることは興味深い.そしてわれわれ人間がこれらの植物を長年にわたり食してきたことには意味があると信じている.研究を通じてこれらの作用を科学的に明らかにでき,少しでも皆様の健康維持のお役に立つことができれば幸いである.

Acknowledgments

多くの研究は,共同研究として研究を推進していただきました諸先生方のご指導とご助力のもと,成し遂げられたものであります.また,社内の各プロジェクト遂行にあたっては,上司・先輩方の指導のもと,プロジェクトメンバーとの協力によって得られた結果です.改めて,皆様に心から感謝を申し上げます.

Note

付記:本発表に含まれる一連のヒト試験および動物実験は,関連法令を遵守し,該当する委員会の審査を経て機関の長が承認した計画に基づき実施しました.

Reference

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