Kagaku to Seibutsu 57(9): 549-553 (2019)
生物コーナー
褐藻の有性生殖における複合的走性システムの解明泳ぐ褐藻の配偶子に迫る
Published: 2019-09-01
© 2019 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
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海藻や海産顕花植物(海草)が高密度に群落を形成する場所を藻場(もば)と呼び,藻場は魚介類の餌や生息場,繁殖場であると同時に海中の栄養分を吸収して水質を浄化する機能も有するため,海洋沿岸域における生態系の基盤となる.藻場を形成する海藻の代表例として,褐藻類が挙げられる.褐藻類は1,500種類以上報告されている.ほとんどが海産で,淡水産のものは数属だけ知られている.陸上では,南北で陸上植物の分布と景観が異なる様子が見られるが,海中に生育する褐藻類でも地域ごとに固有の藻場景観が見られる.北海道や東北地方の太平洋沿岸には亜寒帯性の褐藻(マコンブ,ミツイシコンブ,ヒバマタなど)が広がっており,大型のものも多く含まれる(図1A図1■海藻が繁茂する干潮時の海岸の様子(A)北海道室蘭(B)静岡県下田).特に,コンブ類の一種では葉体の長さが15 mを超えるものもある.南西諸島は亜熱帯性の褐藻が生育し小型のものが多い.本州中南部,四国,九州では温帯性の褐藻(アラメ,ワカメ,ヒジキ,ホンダワラ類など)が生育する(図1B図1■海藻が繁茂する干潮時の海岸の様子(A)北海道室蘭(B)静岡県下田).