学界の動き

鹿児島大学大学院連合農学研究科の歩み創造性豊かな農水産学系博士人材の養成

Kazuro Momii

籾井 和朗

鹿児島大学農水産獣医学域農学系

Published: 2019-11-01

設立の経緯と目的

鹿児島大学大学院連合農学研究科は,昭和62年4月鹿児島大学大学院連合農学研究科設置準備委員会を発足,翌昭和63年4月,各構成大学が連合して教育を実施する新制度として,東京農工大,愛媛大に続き,全国で3番目に設置された(1)1) 鹿児島大学五十年史編集委員会:“鹿児島大学五十年史”,鹿児島大学,1999, p. 797..発足時は,佐賀大学,宮崎大学,鹿児島大学の3大学4修士課程研究科(3つの農学研究科と一つの水産学研究科)が連合し,4専攻9連合講座,学生定員18名の博士課程独立研究科であった.このように説明すると,1年程度でスムーズに設立に至ったとの感がするが,実際には,昭和52年以降,連合農学研究科設立に至る10年間において,「長くて,険しかった道のり」と,当時の設置準備委員会委員は回顧している(2)2) 鹿児島大学大学院連合農学研究科:Newsletter第2号,鹿児島大学大学院連合農学研究科,1989, p. 29..九州地区農水産系学部が連合大学院構想に参加したのは,昭和52年6月の西日本地区国立大学農水産系博士課程連合大学院設立準備委員会であり,当時は,「新制大学農水産学部に博士課程を創ろう!」というエネルギーに満ちていた.さらに,

などの時代背景のもと,多くの議論を重ね,最終的には,「設置大学と参加大学で構成し,平等の資格で各構成大学は学生の教育研究指導に参加するという方式」に落ち着き,連大が発足した.

その後,平成4年,琉球大学が加わり,11連合講座学生定員22名と充実され,4大学5研究科から構成され,全国6連合農学研究科(岩手,東京農工,岐阜,鳥取,愛媛,鹿児島)のなかで最大規模の組織となった.平成16年4月,国立大学法人化に伴い,4つの大学は鹿児島大学大学院連合農学研究科に参加することを新しい協定書で再確認し,平成17年4月,タカラバイオ株式会社と本研究科との教育研究に関する協定を締結し,連携大学院を発足させ,学生定員を現在の23名とした.平成19年4月,宮崎大学の離脱に伴い,佐賀大学,鹿児島大学,琉球大学の3大学4研究科による構成となり,平成21年4月の改組により,現在の3専攻9連合講座の構成となった.

以上の経緯のもと,鹿児島大学大学院連合農学研究科は,日本の食料生産基地である九州・沖縄において,農水産業のさらなる発展を目指し,環境と調和した安定的な食料生産および技術革新を担う指導者を養成するために,3構成大学が連合し,多彩な教員組織を構築し,研究施設・設備も連合しながら教育研究体制を作り,社会・世界に貢献する博士を輩出する博士課程大学院である.温帯から亜熱帯資源の生産・利用を中心に,地域・国際農水産学,環境農水産学および先端生命科学に関する高度の専門的能力と豊かな学識ならびに倫理観を備えた研究者を養成し,農学,農水産業および地域の発展に寄与することを目的としている.さらに,社会人ならびに外国人留学生を積極的に受け入れ,アジアにおける農学の教育研究の中核となることを目標とする.社会人に関しては,平成26年度より社会人早期修了制度を実施し,これまでに5名の社会人が,2年間の課程で学位を取得している.また,本研究科は,九州・沖縄地区の食料生産基地としての重要性に立脚し,その専攻に,農学分野に加え,ほかの地区の連合農学研究科にはない水産学系専攻を設けていることが大きな特色となっており,幅広い農学,水産学に関する研究・教育を行うことができる.平成30年10月現在で,農学811名,水産学194名,学術47名,合計1,052名の博士人材を養成している(表1表1■課程博士および論文博士の学位取得者数参照).

表1■課程博士および論文博士の学位取得者数
課程博士論文博士合計
農学704107811
水産学17321194
学術38947
合計9151371,052
(留学生)(537)(24)(561)
1988年から2018年の累計人数

連合農学研究科の特徴

1. 専攻および連合講座

表2表2■設立時および現在の専攻・連合講座に,設立時と現在の専攻および連合講座を示す.現在の3専攻9連合講座の教育・研究指導の内容と特徴は以下のように要約できる(3)3) 鹿児島大学大学院連合農学研究科:“鹿児島大学大学院連合農学研究科概要”,鹿児島大学大学院連合農学研究科,2018, p. 33.

表2■設立時および現在の専攻・連合講座
昭和63年度~平成3年度平成21年度~現在
佐賀大学・宮崎大学・鹿児島大学佐賀大学・鹿児島大学・琉球大学
専攻連合講座専攻連合講座
生物生産科学植物生産学生物生産科学熱帯資源・植物生産科学
動物生産学動物資源生産科学
農林資源・経営学地域・国際資源経済学
生物資源利用科学応用生物化学応用生命科学生物機能化学
資源利用化学食品機能科学
生物環境保全科学生物環境保護学先端応用生命科学
生物生産工学農水圏資源環境科学生物環境保全科学
水産資源科学海洋生産環境学地域資源環境工学
水産資源利用学水産資源環境科学

〇生物生産科学専攻

農産物の生産向上と熱帯・亜熱帯資源の活用,農林水産物の流通および国際政策,食料生産システムの構築,品種改良および新作物の創生ならびに効率的な家畜生産において専門的な教育を行い,農水産業の発展に寄与できる高度の専門的能力と豊かな学識を備えた人材を養成する.

  • 1) 熱帯資源・植物生産科学連合講座
    • 九州・沖縄地域を中心とした温帯から亜熱帯までの植物資源の分類・導入・収集・保存・利用,生理生態機能の解明,栽培管理技術の向上,先端技術による育種,種苗の増殖,施設栽培の高度化による作物の生産能力向上と栽培技術の改良・高度化に加え,熱帯島嶼の環境と生態系に関する研究についての基礎から応用までの教育と研究を行う.
  • 2) 動物資源生産科学連合講座
    • わが国有数の畜産地帯である九州・沖縄を背景に,動物遺伝資源の保護と活用,家畜の育種,繁殖,飼養,管理,粗飼料の生産・利用について,動物の生理・生態機能や生体機構の解明から家畜生産分野における先端技術領域までも含めて,基礎研究から応用生産技術までを統合した教育と研究を行う.
  • 3) 地域・国際資源経済学連合講座
    • 九州・沖縄地域を中心としながら,世界における(国際的な)農林・水産資源の生産,流通,保護および農林業と水産業に関する生産から流通までの政策と経済,経営主体と組織のあり方,生産物の所有や分配の構造に関する基礎から応用までの教育と研究を行う.

〇応用生命科学専攻

生物資源の有効活用,未利用資源および廃棄物の有効利用,食品の機能開発,食の安全管理,食と健康,先端的バイオサイエンスおよびバイオテクノロジーならびに分子から個体に至る機能開発において専門的な教育を行い,農水産業の発展に寄与できる高度の専門的能力と豊かな学識を備えた人材を養成する.

  • 4) 生物機能化学連合講座
    • 微生物から高等動・植物にいたる生物および生体成分の機能を化学的,物理化学的,酵素学的および生物工学的手法により,分子,細胞,組織および生体レベルで究明して生命現象の解明に役立てるとともに,有用成分を食品,化粧品,医薬品およびそのほかの分野に開発・利用して人間の健康生活の向上に役立てる教育と研究を行う.
  • 5) 食品機能科学連合講座
    • 農産物・水産物・畜産物など,資源生物の生体成分と代謝機構および資源生物に含有される機能性成分やそれら成分間の相互作用などについて,主として生化学および微生物学的側面から追究し,それら資源生物の食品としての栄養生理機能の解明,機能性食品の開発,食品としての付加価値を高めるための加工,保蔵,安全性評価ならびにバイオマスの利用について教育と研究を行う.
  • 6) 先端応用生命科学連合講座
    • 目覚ましい発展を遂げているライフサイエンスを分子,細胞および生体レベルで追究し,遺伝子,タンパク質および生体成分などの機能解明,生体調節機構や分子間相互作用の解明,新機能生理活性物質の探索と利用,食と生活習慣病予防,新バイオテクノロジー技術の開発に関するなどの研究を基礎から応用までの教育と研究を行う.

〇農水圏資源環境科学専攻

農水圏における食料資源環境の整備・保全,食料生産の向上および貯蔵・輸送の効率化,農作物の生物防御,森林環境の保全と資源保護ならびに水産資源および環境の保全において専門的な教育を行い,農水産業の発展に寄与できる高度の専門的能力と豊かな学識を備えた人材を養成する.

  • 7) 生物環境保全科学連合講座
    • 生物資源の生産性向上と保護のため,土壌の理化学性,合理的施肥法および病原体,害虫,天敵などの分類,生理生態などを主として化学的,生物学的方法により解明し,さらに森林生態系ならびに自然生態系を維持しながら有用植物の最適な管理方法を確立するための教育と研究を行う.
  • 8) 地域資源環境工学連合講座
    • 生物生産の基礎となる土地の整備・保全,水資源の有効利用と水環境の保全,農業施設の構築,労働生産性を高めるための機械の開発や作業の体系化,生産物の貯蔵・輸送施設などの改良・開発,環境情報の収集,生物と機械および森林環境保全,砂防,木質資源の有効利用について,主として物理学的,工学的方法により達成するための教育と研究を行う.
  • 9) 水産資源環境科学連合講座
    • 近年,食糧タンパク源としてのみならず,われわれの健康をまもり,あるいは増進する食品としてその重要性が注目されている水産資源,特に九州から熱帯・亜熱帯における維持・管理・利用について,水産生物,漁業学,海洋学,漁場環境学,水産増養殖学などの専門分野から究明するため,幅広い視野から高度な教育と研究を行う.

2. 指導体制と特徴的な教育プログラム

連合農学研究科教員の専門分野は,教員の在籍する専攻,連合講座および教育研究分野とともに公表されており,入学生の希望を参考にし,学生1人について,主指導教員1人と副指導教員2人,および必要に応じて指導教員を補助する教員1人を選定し,学生に対し効率的な指導体制をとる.学生は,主指導教員の在職する大学で,博士課程の研究指導を受けるが,随時,他大学の副指導教員の指導も受ける.主指導教員は,学生の入学時に教育研究指導計画書を作成し,それにしたがって常に副指導教員と密接な連絡を取りながら,研究指導を行う.学生は各構成大学の研究設備や施設を利用できる.また,本研究科の教育の理念に基づき,広く農学,水産学に関する最新の知識を得るとともに,専門分野に関連の深い分野の知識を習得するために,研究科共通科目の農学特別講義I(一般セミナー)2単位,論文研究科目の特別演習2単位,特別研究6単位,専門分野科目の特別講義や特論などの2単位以上合わせて12単位以上を修得する.この履修は学位論文提出の必須条件である.このなかで,農学特別講義I(一般セミナー)では,主に1年生,2年生が2泊3日で一堂に会し,他大学などから招聘した先生から最新の研究成果を含む講義を受け,さらにポスターセッションなどを通じて各自の研究内容や成果の紹介を行う.3日間のセミナーを通じて,日本人学生,留学生,社会人学生および他大学の教員と討論し情報交換を行うことは,農学研究を軸に同じ時代で切磋琢磨し,学位取得そして研究者を目指す博士課程の学生にとって,有意義な教育プログラムとなっている.

連大で取り組んでいる教育に関する特色ある事項として,博士号取得後の学生の進路,就職支援に関し,3構成大学の連大教員が協力して,大学,研究所,企業などの第1線で活躍する講師を選定し,毎年,90分4コマの講義形式で行う「人材養成学生支援セミナー」がある.近年では,たとえば,「企業が期待する博士人材とは(日本たばこ産業株式会社)」(平成29年度),「種苗業界の現状と課題(タキイ種苗株式会社)」(平成30年度)などを実施した.さらに,「農学共通講義(英語)」では,全国6連大から選出された教員(鹿児島連大からは2名選出)による先端研究に関する講義を英語で実施し,学生は,専門知識の習得に加えて,全国6連大のさまざまな地域の学生と同一の講義を共有し,幅広い視野をもつことができるユニークな教育連携に取り組んでいる.このような連大組織ならではの教育連携をさらに強固にするために,平成29年10月に,全国6連合農学研究科の博士課程学生の教育・研究指導委託に関する覚書を取り交わした.

3. 主指導教員

学生への教育・研究指導を行う主指導教員の責務は重要である.鹿児島大学大学院連合農学研究科主指導教員資格者として備えるべき条件は,

  • 1) 博士の学位を有し,現在当該分野において活発な研究活動を行っている者で,かつ,十分な研究能力を有すること
  • 2) 学位のない場合でも,学会賞受賞者または公刊された論文・研究著書により研究業績が極めて顕著であり,十分な研究指導能力ありと認められた者は,前項に準じて加えることができる

としている.さらに,論文発表数として,学会誌またはこれに準ずる権威あるものに発表した論文が20編以上で,特に最近5年間の研究活動が活発であることとしている.全国6連大では,おおむねこの条件に沿って,教員の資格審査を行っている.ここで,「現在当該分野において活発な研究活動を行っている者」,「十分な研究能力を有すること」,「学会誌またはこれに準ずる権威あるもの」,「特に最近5年間の研究活動が活発であること」は,個々の研究者に対して等しく公平に判断することは難しく,鹿児島連大では,以下の基準を設け運用している:

  • 主指導教員(教授)
    • 1. 論文Iが20編以上
    • 2. 1のうち,ファーストオーサーが10編以上
    • 3. 最近5年間の論文Iが5編以上

平成21年には,この論文Iの定義を明確にし,論文Iを,原則,以下の①~③の学術雑誌に掲載された査読付き原著論文とした:

  • ①PubMedに登録されている学術雑誌
  • ②Clarivate AnalyticsのInCites Journal Citation Reportsのリストに掲載されているインパクトファクター付き学術雑誌
  • ③日本学術会議協力学術研究団体または第19期日本学術会議登録学術研究団体が発行する学会誌

学位申請する学生の主論文2編もこの申し合わせに準じている.また,平成19年に,連合農学研究科における教育・研究水準の維持・向上のために,主指導教員資格取得後も5年毎に資格「再」審査を義務づけている.なお,全国6連大相互の連携協力を広く推進するために,学位論文審査委員の主査1名,副査4名に対して,ほかの全国連大の主指導教員資格者を副査として選出できるように検討している.

4. 構成大学間の研究連携

研究面では,各構成大学の研究活動を著しく活性化させるという特色がある.本連合農学研究科においては,3構成大学が連合して教育研究を実施している.それにより従来は個々の専門領域を通じての交流が主であった各構成大学の教員が,共通の博士課程の教育研究を実施するということを通じて,密接に関連をもつようになり,大学の枠を超えかつ専門の領域を超えた協力関係が生じ,共同研究や学際研究の推進の気運が醸成される.これにより,構成大学教員相互のプロジェクト研究の編成が極めて容易になり,その結果,研究活動の組織化が盛んになっており,研究レベルが向上し,各構成大学の活性化を著しく促進している.近年では,平成26年度以降,構成大学間での研究連携を深めるために,連大資格教員に対して,研究科長裁量経費による「連合農学研究科先進的研究推進事業」を実施している.一例であるが,平成30年度先進的研究推進事業として,

  • 「麹菌研究ネットワークを基盤とした地域に特徴的な発酵食品製造に適した紅麹菌・白麹菌・黒麹菌の育種開発」
    • (佐賀大学,鹿児島大学,琉球大学の連携研究)
  • 「養殖漁場現場におけるノリ関連微生物叢の網羅的解析」
    • (佐賀大学,鹿児島大学の連携研究)
  • 「イネ白葉枯病抵抗性遺伝子の特定と作用機作の解明」
    • (佐賀大学,鹿児島大学の連携研究)
  • 「水産物および水生生物の利活用に関する実験衛生学的側面からの基礎研究」
    • (鹿児島大学応用生命科学および農水圏資源環境科学の連携研究)

の4件に支援(総額1,170万円)した.先端研究から地域課題解決型研究まで,ユニークな研究成果が得られた.今後,3構成大学が連携した新たな研究の展開(大型の競争的外部資金獲得)が期待できる.

結び

鹿児島大学大学院連合農学研究科は,複数の大学が連合して博士課程大学院を設置することを可能にした大学設置基準の改定により,東京農工大学,愛媛大学に続き,昭和63年4月に設置され,わが国を代表する農学系博士課程教育を担う大学院として機能し,発展してきた.構成大学間の連携により,これまで切磋琢磨してきた結果,設立から平成30年10月現在までに,915名の課程博士,そのうち,外国人留学生は537名と,課程修了生全体の約6割であり,本研究科の大きな特色である(表1表1■課程博士および論文博士の学位取得者数参照).また,137名が論文博士の学位を取得し,総計で1,052名が博士の学位を取得した.教育の国際化が叫ばれるなかで,日本人学生と外国人留学生がともに切磋琢磨し,世界の食料,資源,生命,環境など,農学関連の諸課題の解決に取り組めるグローバル・リーダーを養成しており,これは連合農学研究科の輝かしい実績である.

また,今日強く求められている教育内容の質的充実の面でも,連合農学研究科では,設立当初から,異なる大学の教員が学生の研究指導にあたる制度を確立し,緊張感をもちながら高度な質を維持した教育・研究指導を行ってきた.さらに,全国連合農学研究科のすべての構成17大学(弘前,岩手,山形,宇都宮,茨城,東京農工,静岡,岐阜,鳥取,島根,山口,香川,高知,愛媛,佐賀,鹿児島,琉球の各大学)の共同による衛星通信大学間ネットワークや多地点遠隔講義システムを活用した講義を実施しており,ほかの農学系研究科には見られない特色ある大学間教育連携(平成26年4月全国6連合農学研究科の連携協定書参照)を進め,成果を上げてきた.このように,連合農学研究科では,国内外における農学系博士人材の養成に大きな役割を果たしてきた.この連合農学研究科の教育システムは,大学の枠を超えた組織,関係教職員の努力により,この30年の年月をかけて構築されてきた.

鹿児島大学大学院連合農学研究科は,平成30年11月30日に,設立30周年記念式典,記念講演会および祝賀会を実施した.記念講演会では,ボゴール農科大学Arif Satria学長(インドネシア,鹿児島大学配属,平成18年3月学位取得),スリジャヤワルダナプラ大学Sampath Amaratunge総長(スリランカ,佐賀大学配属,平成15年3月学位取得),中国科学院植物研究所王亮生教授(中国,鹿児島大学配属,平成13年9月学位取得),およびスマトラ・ウタラ大学Mohammad Basyuni准教授(インドネシア,琉球大学配属,平成20年3月学位取得)の4名の本研究科修了生に,当時の連大での研究活動,研究成果,そしてその後の展開について講演をお願いした.学位を取得した連大修了生が,各国の農水産学分野で活躍している例であり,連大が国際的に魅力ある大学院教育を3構成大学で連携して実践し,国際社会に貢献できる博士人材を養成してきた成果である.また,連大では,毎年,留学生を受け入れ,入学定員23名中半数は,国費外国人留学生・政府派遣外国人留学生である.これは,連大教員が,海外の大学と協力・連携して,留学生の受け入れに積極的に取り組んでいる成果であり,連大は,国際性豊かな大学院となっている.今後は,多くの連大修了生間のつながりを深めるために,留学生ネットワーク交流会を構築し,修了生のいる海外の大学や研究所において連大国際セミナー(仮称)を実施していく計画である.以上,鹿児島大学連合農学研究科「連大」は,30周年を一つの節目として,本研究科に寄せられる期待を重く受け止め,これまでの歴史と伝統を受け継ぎながら,佐賀大学,鹿児島大学,琉球大学の3構成大学が連携協力し,地域の農林水産業の発展に貢献するとともに,グローバル化時代のなか,各国の将来を担う新進気鋭の研究者の養成をさらに目指していく.

本稿を終えるにあたって,以下の点を強調したい.鹿児島連大は,佐賀,鹿児島,沖縄の各地域に存在する大学の研究力を強化し,多様性のある研究成果を,この30年間,学生の教育・研究指導を通じて,世界に発信してきた.設立30周年で1,000名を超える農水産学系の博士を輩出している.連大は,各構成大学がもつ強みの分野を核とし,ほかの構成大学とのネットワークを形成して,幅広い優れた研究者が交流できる拠点形成に大きく貢献している.設立当初に掲げた

を目指して,平成の時代に築き上げてきたすばらしい連大の仕組みを維持しながら,令和の時代,さらに発展していく.最後に,鹿児島大学大学院連合農学研究科のこれまでの発展にかかわった多くの教職員のご尽力と文部科学省からの多大なご支援に感謝いたします.

Reference

1) 鹿児島大学五十年史編集委員会:“鹿児島大学五十年史”,鹿児島大学,1999, p. 797.

2) 鹿児島大学大学院連合農学研究科:Newsletter第2号,鹿児島大学大学院連合農学研究科,1989, p. 29.

3) 鹿児島大学大学院連合農学研究科:“鹿児島大学大学院連合農学研究科概要”,鹿児島大学大学院連合農学研究科,2018, p. 33.