解説

ビタミンB12を利用する光センサータンパク質細菌カロテノイド研究からの発見

B12-Based Transcriptional Regulator with Photosensory Function: Novel Type Photosensor Discovered by Study on Bacterial Carotenoid

Hideaki Takano

髙野 英晃

日本大学生物資源科学部

Published: 2019-02-01

非光合成細菌の光応答現象として,光が誘発するカロテノイド色素合成が知られていたが,最近になって分子メカニズムの詳細が明らかにされた.それによりビタミンB12をクロモフォアに利用する新しいタイプの光センサー型転写調節タンパク質LitR/CarHファミリーが発見された.さまざまな細菌種ゲノムに見つかることからLitR/CarHは普遍性の高い光センサーと考えられる.ここでは,非光合成細菌におけるカロテノイド光応答現象とその分子メカニズム,およびオプトジェネティクス(光遺伝学)における応用について解説する.

細菌が見せる光応答現象

光は普遍的な環境因子の一つであり,動植物,真核微生物,光合成細菌において多様な光応答現象が知られていた.その一方で,光合成能をもたない細菌の青色光応答現象としては抗酸化活性を有するカロテノイド色素生産が主に観察されていた.カロテノイド色素は細菌によって広く生産され,地球上において生産量が多い二次代謝産物の一つである.その役割は抗酸化活性によって反応性の高い活性酸素種に対する防御物質として働き,細胞を守ることである.カロテノイドの生産タイプは次の3タイプが知られている.(1)環境条件に影響されない構成的発現タイプ,(2)光によって誘導される光誘導タイプ,(3)合成遺伝子は有するものの生産が認められない休眠タイプである.これまでに化学構造が決定されたカロテノイド群は主に構成的発現タイプが作るものである.休眠タイプはいくつかの放線菌で知られている.

光によるカロテノイド誘導現象は,1938年にJ. A. BakerによってMicrococcusと考えられる細菌で発見された(1)1) J. A. Baker: J. Bacteriol., 35, 625 (1938)..1960年代には粘液細菌Myxococcus,結核菌が含まれるMycobacterium属細菌などでも同様の現象が報告されている(2~4)2) R. P. Burchard & M. Dworkin: J. Bacteriol., 91, 535 (1966).3) H. C. Rilling: Biochim. Biophys. Acta, 60, 548 (1962).4) H. Takano, D. Asker, T. Beppu & K. Ueda: J. Ind. Microbiol. Biotechnol., 33, 88 (2006).Mycobacterium属細菌においては,カロテノイド色素の光誘導は光発色性(photochromogenic)として知られ,細菌分類指標の一つとして利用されてきた(5)5) E. H. Runyon: Med. Clin. North Am., 43, 273 (1959)..また,放線菌Streptomyces属細菌においては1970年代の先駆的な研究によって,光応答能が広く備わっていることが示されていた(6)6) Y. Koyama, F. Kato, S. Oshibi, T. Takamatsu & S. Yamagishi: Jpn. J. Microbiol., 19, 387 (1975)..このように光応答現象はいくつかの菌群における特徴的な性質として認識されていたといえる.ゲノム時代を迎える以前においては,後述するように粘液細菌において遺伝学的な研究がなされ,カロテノイド合成遺伝子およびその制御遺伝子が同定されていた.しかしながら,その経路全容や光センサーの実体が明らかになったのはごく最近のことである.

ゲノム情報が明らかにした光センサーの多様性

非光合成細菌における青色光センサーの存在は,モデル株のゲノム解読が盛んになってきた2002年頃から報告されるようになった.現在では,青色光センサータンパク質として,光情報変換を行うLOVタンパク質,BLUFタンパク質,イエロータンパク質に加えて,光エネルギー変換を行うプロテオロドプシンなどが知られている(コラム参照).LOVタンパク質とBLUFタンパク質はユビキタスなフラビンを介して光を感知し,実に約10~15%の細菌ゲノムから見つかり(7)7) G. P. Pathak, A. Losi & W. Gärtner: Photochem. Photobiol., 88, 108 (2012).,LOVが植物病原性細菌などにおける新しい光応答現象にかかわる報告が相次ぎ注目を集めている.また,2000年に発見された光駆動型プロトンポンプ“プロテオロドプシン”が,光合成をしない海洋性細菌に広く分布していることで大きな注目を集めている.急激に増大してきたゲノム情報は,非光合成細菌における多様な光センサーの存在を明らかにしてきたといえる.しかしながら,LOVやBLUFといった従来型の光センサーが上述したカロテノイドの光誘導現象に関与するという報告は見つからない.このことから,カロテノイド制御を担う光センサーはフラビンのような従来タイプのクロモフォアを使わない,新しい光感知機構をもつことが示唆されていた.

粘液細菌におけるカロテノイド生産の光誘導機構

グラム陰性菌の粘液細菌Myxococcus xanthusにおけるカロテノイド光誘導の分子メカニズムは細菌では最もよく研究されてきた.粘液細菌は運動性を有し,多様な生理活性物質を生産するとともに,細菌でありながら子実体形成をともなう複雑な生活環をもつことで知られる.1990年代に行われた遺伝学的な解析によって,カロテノイド合成遺伝子に加えて,その光誘導にかかわる制御遺伝子(carQ, carR, carS, carA, carHなど)が同定されていた.その後の精力的な研究によって,粘液細菌における2経路の存在が明らかになっている(図1図1■粘液細菌におけるカロテノイド生産の光誘導メカニズム).一つは光照射によってプロトポルフィリンIXから発生した活性酸素種から始まる経路である.もう一つは,最近明らかになった光に感受性の補酵素コエンザイムB12(5′-デオキシアデノシルコバラミン;AdoB12)を用いる経路である.

図1■粘液細菌におけるカロテノイド生産の光誘導メカニズム

1. プロトポルフィリンIX経路(8)

細胞内膜に存在するプロトポルフィリンIXが青色光を吸収すると,光が一重項酸素(1O2)のシグナルとして変換される.発生した1O2はアンチ–アンチシグマ因子CarFを活性化し,アンチシグマ因子CarRを不活性化する.CarRから解離してフリーとなったシグマ因子CarQを含むRNAポリメラーゼが,アンチリプレッサーCarSのmRNAを合成する.発現したCarSが2つのMerRファミリー転写調節タンパク質であるCarAとCarHと相互作用し,それらのリプレッサー機能を不活化する.そのため,カロテノイド合成遺伝子プロモーターからの転写が開始する.

2. AdoB12経路(9)

本経路はB12の外部添加によって初めて光誘導が確認されたことで発見された.そのアイディアはCarHがビタミンB12結合ドメインを有することに基づいていたと予想される.CarHタンパク質はDNA認識を担うHTHドメインをN末端領域に,B12結合ドメインをC末端領域に有する.暗条件におけるCarHタンパク質はAdoB12と複合体を形成し,リプレッサーとして機能するためカロテノイドプロモーターはオフとなる.それに対して,明条件では,CarHに結合した光感受性物質AdoB12が破壊され,CarHの不活性化を引き起こす.青色光による2経路の活性化によって,CarAとCarHによる2重抑制は解除され,カロテノイド合成が開始する.CarAとCarHは互いに相同性を有し,CarAもB12と相互作用することが明らかになっている.しかし,そのリプレッサー機能はB12に依存せず,CarAにおけるB12の具体的な役割は明らかになっていない.

放線菌におけるカロテノイド生産の光誘導機構

放線菌は土壌に生息するグラム陽性細菌であり,多様な生理活性物質を生産するとともに,カビに類似した複雑な形態分化を行う.そのため上述した粘液細菌と対比的な位置づけでよく取り上げられる.筆者は放線菌モデル株Streptomyces coelicolor A3(2)のカロテノイド色素生産が光によって誘導される現象を大学院生のときに偶然見いだした(10, 11)10) H. Takano, S. Obitsu, T. Beppu & K. Ueda: J. Bacteriol., 187, 1825 (2005).11) H. Takano: Biosci. Biotechnol. Biochem., 80, 1264 (2016).図2図2■放線菌におけるカロテノイド生産の光誘導メカニズム).この菌はアクチノロージンという抗生物質を作るため青色のコロニーを形成するが,捨てようと思って放置しておいたアクチノロージン抑制株が黄色を呈していた.この発見をきっかけとして,S. coelicolor A3(2)が作る色素はカロテノイドであり,光による制御は転写レベルであることが明らかになった(10)10) H. Takano, S. Obitsu, T. Beppu & K. Ueda: J. Bacteriol., 187, 1825 (2005)..また,粘液細菌とは異なってAdoB12経路のみからなるシンプルな制御系が予想されている.

図2■放線菌におけるカロテノイド生産の光誘導メカニズム

放線菌における光誘導機構では2つの転写調節因子LitRとLitSが中心的な役割を担う(図2図2■放線菌におけるカロテノイド生産の光誘導メカニズム).MerRファミリーのLitRは粘液細菌CarHと全長にわたって低いものの相同性を有し,N末端領域にDNA認識を担うHTHドメイン,C末端領域にビタミンB12結合ドメインをもつ.LitSはRNAポリメラーゼECF型シグマ因子である.暗条件においてLitRはLitS発現を抑制するリプレッサーとして働く.光が照射されることによってLitRはアクチベーター型に切り替わり,LitS発現を促進する.発現したLitSを含むRNAポリメラーゼが,合成遺伝子プロモーターからの転写を開始することでカロテノイドが合成される.litR機能にはB12の関与が予想され,B12合成経路を欠損させた変異株では,予想どおりカロテノイド生産量と合成遺伝子の発現レベルが低下していた(12)12) H. Takano, K. Hagiwara & K. Ueda: Appl. Microbiol. Biotechnol., 99, 2329 (2015)..また,異種ホストS. griseusにおけるメラニン色素生産を指標としたLitRとLitSの機能解析によって厳密な光制御が確認された(13)13) H. Takano, T. Beppu & K. Ueda: Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 2320 (2006)..しかし,活性をもった組換えタンパク質の調製ができなかったため,放線菌におけるLitR研究はいまだに遺伝学的な証拠にとどまっている.

LitR/CarHはアデノシルB12を用いる光センサータンパク質である

上述した遺伝学的な解析によって,粘液細菌CarHと放線菌LitRがビタミンB12を利用する光センサーであることが予想されていた.当時, B12をクロモフォアに使う光センサーは知られていなかったことから,その分子機構に注目が集まっていた.そして,タンパク質機能が解明されたのは全く別の高度好熱性菌Thermus thermophilusのホモログタンパク質であった(14, 15)14) H. Takano, M. Kondo, N. Usui, T. Usui, H. Ohzeki, R. Yamazaki, M. Washioka, A. Nakamura, T. Hoshino, W. Hakamata et al.: J. Bacteriol., 193, 2451 (2011).15) J. M. Ortiz-Guerrero, M. C. Polanco, F. J. Murillo, S. Padmanabhan & M. Elías-Arnanz: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 108, 7565 (2011)..それによって,CarH/LitRは補酵素コエンザイムB12であるAdoB12をクロモフォアとして利用する新しい光センサーであることが明らかになった.AdoB12の特性として,コバルトと5′-デオキシアデノシル基(図1図1■粘液細菌におけるカロテノイド生産の光誘導メカニズムの赤色)をつなぐ結合が光に対して感受性であり,光分解にともなってヒドロキシB12に変換される.この光感受性を利用したのがLitR/CarHタンパク質である.

図3図3■光受容が引き起こすLitR/CarH-アデノシルB12複合体のコンフォメーション変化に示したように,暗条件においては,AdoB12と複合体を形成したLitR/CarHはホモ4量体の活性型リプレッサーとして機能する.そのためRNAポリメラーゼが認識する−35もしくは−10領域に存在するオペレーター配列に結合し,カロテノイド合成遺伝子の発現を抑制する.それに対して,光照射下では,AdoB12のコバルト–炭素結合が光分解によって切断され,ヒドロキシB12に変換される.そのためホモ4量体は単量体に解離し,DNAに対する親和性が低下することで標的遺伝子が発現する.なお,LitR/CarHは細胞質で働き,AdoB12の特性によりUV光,青色光,緑色光を感知することができるが,赤色光は感知できない.

図3■光受容が引き起こすLitR/CarH-アデノシルB12複合体のコンフォメーション変化

光によって誘発されるLitR/CarHタンパク質の立体構造変化が2015年にNature誌に発表された(16)16) M. Jost, J. Fernández-Zapata, M. C. Polanco, J. M. Ortiz-Guerrero, P. Y. Chen, G. Kang, S. Padmanabhan, M. Elías-Arnanz & C. L. Drennan: Nature, 526, 536 (2015)..AdoB12ドメインはヘリックスバンドルとロスマンフォールドと呼ばれる2ドメインから構成されている.AdoB12の5′-デオキシアデノシル基は暗条件におけるヘリックスバンドルの移動をブロックしている.しかし,光分解によって5′-デオキシアデノシル基を失うと,ヘリックスバンドルの向きが大きく変化する.それによりホモ4量体を構成している2量体同士の表面構造が変化し,単量体に解離する.そのためDNA結合能が低下し,標的遺伝子からの転写が開始する.

グラム陽性細菌Bacillus megateriumにおいてもLitR/CarHの機能が明らかにされている(17, 18)17) H. Takano, K. Mise, K. Hagiwara, N. Hirata, S. Watanabe, M. Toriyabe, H. Shiratori-Takano & K. Ueda: J. Bacteriol., 197, 2301 (2015).18) J. Fernández-Zapata, R. Pérez-Castaño, J. Aranda, F. Colizzi, M. C. Polanco, M. Orozco, S. Padmanabhan & M. Elías-Arnanz: J. Biol. Chem., 293, 17888 (2018).図3図3■光受容が引き起こすLitR/CarH-アデノシルB12複合体のコンフォメーション変化).基本的な機能はサーマスとほぼ同じであるが,大きく異なる点が一つ見いだされている.暗条件において4量体を形成することはサーマスと同じだが,光を受容することで2量体に解離することである.グラム陽性と陰性においてLitR/CarHの機能が明らかにされ,機能と役割の両面で類似点が多いことから,また後述するようにさまざまな細菌ゲノムに高く保存されていることから,LitR/CarHファミリーは普遍的な光センサー型転写調節タンパク質として認識されつつある.

B12は細菌群集における環境応答の共生因子として働く?

ビタミンB12は,コバルト原子が配位したテトラピロール環構造をもち,細菌が作る化合物としては複雑な構造をもつことで知られる(19)19) H. Fang, J. Kang & D. Zhang: Microb. Cell Fact., 16, 15 (2017)..さまざまな生物においてアデノシルB12とメチルB12が補酵素として働き,動物においてB12欠乏症は悪性貧血を引きおこす.興味深いことに,B12合成は生物界において一部の細菌とアーケアによってのみ担われている.LitR/CarHをもつ放線菌,サーマス属,バチルス属細菌はB12合成に必要な遺伝子セットを有し,自前でB12の合成・供給ができる.それに対して,粘液細菌は完全な合成系をもたない代わりに,中間体からAdoB12を合成する酵素やB12トランスポーターをもっている.このことから,粘液細菌は同じ土壌環境に生息する放線菌やバチルスが死滅したときに放出されるB12を取り込んで,AdoB12をLitR/CarHのクロモフォアとして利用することで,光応答が初めて可能となるとが考えられる.このことは,B12がビタミンやクロモフォアを超えた働きをもち,微生物群集の環境応答に必須なビタミン的共生因子としても働いていることを想起させる.

B12結合ドメインを有するタンパク質は,細菌,アーケア,真核生物において約5万個の存在が予想されている(20)20) Z. Cheng, H. Yamamoto & C. E. Bauer: Trends Biochem. Sci., 41, 647 (2016)..最も多いのは,メチオニン合成酵素に代表されるB12依存性酵素であり全体の21.5%を占める.遺伝子やタンパク質の調節にかかわることが予想されるタイプも全体の13%を占めるが,機能が明らかになっているのはLitR/CarHとAerRタンパク質である(21)21) M. Fang & C. E. Bauer: MBio, 8, e00261 (2017)..AerRは,紅色非硫黄細菌Rhodobacter capsulatusのB12結合タンパク質であり,光合成遺伝子の光依存的な発現に関与することが最近示され,LitRに続く2例目のB12型転写調節タンパク質として報告された.分子機構も解明され,光励起に伴うAdoB12の光加水分解によって生じたヒドロキシB12中のコバルトがAerRのヒスチジン残基と強い共有結合を形成する.生じたAerR–ヒドロキシB12複合体は相互作用を介して光合成遺伝子のリプレッサーCrtJ機能を不活性化する.これによりCrtJの発現抑制が解除されることで光合成遺伝子の発現が開始する.これらを除いて,ほとんどの調節タイプのB12タンパク質は手つかずと言ってよいほど研究されていないのが現状である.

LitR/CarHファミリーはさまざまな細菌ゲノムから見つかる

LitR/CarHファミリーはゲノム解読株の約3割近くにコードされ,それらの大半はB12を利用するタイプと予想されている.その一方で,B12結合ドメインをもたないホモログも多く見つかり,光感知ドメインの系統解析によって,現在クラスIからVに分類されている(22)22) S. Sumi, H. Shiratori-Takano, K. Ueda & H. Takano: J. Bacteriol., 200, e00285 (2018)..クラスIはB12を利用し,デイノコッカス-サーマス,プロテオバクテリア,バクテロイデテス,アクチノバクテリア,ファーミキューテス門などから見つかり,最も広く分布している.クラスIIは主にグラム陰性細菌Pseudomonas属から見つかり,青色光センサーLOVのエフェクタータンパク質として機能することが筆者らの研究で明らかになりつつある.クラスIIIは環境浄化にかかわるグラム陰性細菌Burkholderia属に主に分布し,後述するようにUV-A光センサーとして葉酸合成への関与が示唆されている(22)22) S. Sumi, H. Shiratori-Takano, K. Ueda & H. Takano: J. Bacteriol., 200, e00285 (2018)..ほかのクラスについても光による発現誘導が認められるが,ドメインの相同性が低くクロモフォアの予想ができないため,分子メカニズムの解明は進んでいないのが現状である.

LitR/CarHファミリーはほかの光センサーの発現をコントロールする?

LitRはローカルスイッチとして働き,周辺遺伝子の発現をコントロールするケースが多い.そのことを支持するようにLitR近傍には光センサーや光適応遺伝子が見つかる.光センサーとしては,プロテオロドプシン,LOV,BLUF,イエロータンパク質である.一方,光適応遺伝子としてはカロテノイド遺伝子に加えて,活性酸素種の防御にかかわるフラン脂肪酸合成遺伝子,DNA修復を行う光回復酵素,一次代謝産物の葉酸合成遺伝子などである.光センサーについては,LitRの働きによって暗条件の不要なタンパク質合成を防いでいることが考えられる.つまり,LitRは光センサーでありながら,夜間に働くタンパク質であり,ほかの光センサーとは役割が異なるといえる.しかしながら,明るい条件でも発現するLitRが存在することは,暗くなったときに遺伝子を速やかにオフにすることで,無駄なエネルギー消費を抑えているものと予想される.

葉酸合成にかかわるクラスIII LitR

最近,クラスIII LitRにおいて新たな展開が見られた(22)22) S. Sumi, H. Shiratori-Takano, K. Ueda & H. Takano: J. Bacteriol., 200, e00285 (2018)..クラスIIIはグラム陰性のBurkholderia属細菌に主に分布している.他クラスと同じくDNA結合ドメインを有しているが,C末端領域に既知のドメインをもたないことから,その光感知機構に興味がもたれた.大腸菌から精製した組換えタンパク質はAdoB12と相互作用しないことが確認されたが,一般的な組換えタンパク質には見られない340 nm付近に極大吸収を示し,UV-A光センサーであることが強く示唆されている.また,光センサータンパク質に見られる特徴を有していた.(1)暗・明条件において吸収スペクトルが変化するフォトサイクルを示すこと,(2)光照射によるオリゴマーの解離である.タンパク質吸収スペクトルと菌の光応答作用スペクトルが一致していることから,細胞内で作られる物質がクラスIIIに結合して,クロモフォアとして働くことが予想されているが,残念ながら同定には至っていない.今後の研究進展によって新しい光センサーとして仲間入りする可能性が高いと考えられる.

クラスIIIの役割においてもユニークな知見が得られた(22)22) S. Sumi, H. Shiratori-Takano, K. Ueda & H. Takano: J. Bacteriol., 200, e00285 (2018)..それはビタミンの一種である“葉酸”合成遺伝子の発現にかかわることである.この菌からカロテノイド合成遺伝子は見つからないが,葉酸合成の初発反応にかかわるFolE酵素がlitR近傍にコードされている.FolEの発現は光照射によって20倍に上昇し,クラスIII遺伝子の破壊によって葉酸量は20倍ほど増加した.なぜ葉酸が明条件でたくさん作られる必要があるのだろうか?葉酸はDNA合成に必要な一次代謝産物であり,また光回復酵素のクロモフォアとして働く.大腸菌やBurkholderiaの光回復酵素は葉酸型と呼ばれ,FADH2と5,10-メテニルテトラヒドロ葉酸をクロモフォアとして利用する.光回復酵素遺伝子もlitR近傍にコードされ,LitRの制御下にある.つまり,光によってLitR抑制がはずれることで,まずfolE遺伝子の発現が起こり,細胞内の葉酸量が増加する.少し遅れて生じる光回復酵素は葉酸をクロモフォアとして利用することで機能を発揮する.folElitR遺伝子セットはグラム陰性細菌の多くに見つかる.

オプトジェネティクスへの応用

オプトジェネティクス(光遺伝学)は光学と遺伝学の方法論を融合させた分野であり,2005年に高度好塩菌の光駆動型のイオンチャネルを用いて神経細胞の光活性化に成功したことに端を発する.その特徴として,外部からのインデューサー化合物の添加によるものではなく,安価な光刺激によって非侵襲的・迅速・可逆的・正確・局所的に制御することができる.現在では,さまざまな生物種における細胞内のタンパク質機能を光でコントロールする技術の開発も進められている.微生物分野においてはLOVタンパク質を用いた系が複数開発されている.近年になって,青~緑色光を感知するLitR/CarHの真核生物(ヒト細胞,モデル植物シロイヌナズナ,ゼブラフィッシュ)における応用利用の報告が相次ぎ(23~26)23) S. Padmanabhan, R. Pérez-Castaño & M. Elías-Arnanz: Curr. Opin. Struct. Biol., 57, 47 (2019).24) S. Kainrath, M. Stadler, E. Reichhart, M. Distel & H. Janovjak: Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 56, 4608 (2017).25) C. Chatelle, R. Ochoa-Fernandez, R. Engesser, N. Schneider, H. M. Beyer, A. R. Jones, J. Timmer, M. D. Zurbriggen & W. Weber: ACS Synth. Biol., 7, 1349 (2018).26) R. Wang, Z. Yang, J. Luo, I. M. Hsing & F. Sun: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 114, 5912 (2017).,緑色光刺激が利用可能なオプトジェネティクス法が考案された.

1. 真核生物の遺伝子発現制御(23~25)(図4A)

図4■LitR/CarHの応用

(A)真核生物の遺伝子発現制御(VP16-LitR/CarHの融合タンパク質),(B)光応答性ヒドロゲル.参考文献23より改変.

LitR/CarH全体もしくはB12ドメインを,単純ヘルペスウイルスのVP16転写活性ドメインや受容体型チロシンキナーゼドメインと融合させたキメラ体が構築されている.暗条件で培養した哺乳類細胞では,B12ドメインを介してキメラ体がオリゴマー化するため,遺伝子発現やシグナル伝達が誘導される.しかし,緑色光照射でキメラ体が解離してモノマーとなるため,発現や伝達はオフとなる.このような光制御はゼブラフィッシュ胚の生物個体でも確認されている.

2. 光応答性ヒドロゲル(23, 26)(図4B)

SpyTag/SpyCatcherテクノロジーと光解離性B12ドメインを組み合わせた光応答性ヒドロゲル(成型可能な高分子材料)が開発されている.SpyTagのアスパラギン酸とSpyCatcherのリジン残基間に形成されるイソペプチド結合は,共有結合的に直鎖状に連なったタンパク質ポリマーを生み出すことができる.それらをB12ドメインと融合させることで,直鎖状ポリマー中のB12ドメイン同士の相互作用によってヒドロゲルとして集合させることができる.それに対して,光を照射した場合,B12ドメインが解離するためヒドロゲルは離散する.ゲルと溶液間の速やかな状態移行がコントロールできるようになった.光で制御できるタンパク質やカプセル化細胞の放出は,細胞組織培養などへの応用が見込まれている.

おわりに

非光合成細菌の光センサー研究は,ゲノム時代になってから発展し始めた新しい分野といえる.光センサー群の生化学的性質については共通点が多いと予想されるのに対して,それぞれの細菌における役割はモデル株を除いてほとんど明らかになっていないのが現状である.研究が進むことによって光が誘発する細菌の新たな個性が明らかになることが期待される.それぞれの個別研究に加えて,昼–夜間の微生物活動の変動を地球規模でグローバルに理解することは,光生態学として農学分野における実用的基礎知見となると信じている.自然界に見つからず眠っているユニークな光応答現象や光センサー掘り起こし,応用につなげていきたい.

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