Kagaku to Seibutsu 58(2): 105-110 (2020)
セミナー室
プラスチックごみへ挑戦する海洋科学これまでの海洋科学はどのように海洋プラスチックごみ問題に取り組んできたか
Published: 2019-02-01
© 2020 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2020 公益社団法人日本農芸化学会
海岸漂着した海ごみのうち,個数比にして約7割は廃棄プラスチックである(1)1) J. G. B. Derraik: Mar. Pollut. Bull., 44, 842 (2002)..漂着したプラスチックごみを半年ほど放置すれば紫外線などによる劣化が進行する(2)2) A. L. Andrady: Mar. Pollut. Bull., 62, 1596 (2011)..これに海岸砂との摩擦や寒暖差による伸縮といった物理的な刺激が加わって,破砕が繰り返されるらしい.こうして生成されるプラスチック微細片のうち,特に大きさ5 mm以下のプラスチック片を,私たちはマイクロプラスチックと呼んでいる.ただ,地球環境下で劣化・破砕が進行する速さや,破砕を繰り返して至るサイズの下限など,マイクロプラスチックの発生過程は,ほとんど研究されていない.
大きなプラスチックごみが大量に漂着すれば,海岸の景勝地や海水浴場としての経済的価値が損なわれる.また,プラスチックごみへの海生哺乳類の絡まりや,プラスチック片を誤食した海鳥のへい死する事例は,これまで数多く報告されてきた(1)1) J. G. B. Derraik: Mar. Pollut. Bull., 44, 842 (2002)..大きなプラスチックゴミだけでなく,最近ではマイクロプラスチックによる環境負荷も指摘されている.プラスチック表面に吸着しやすい海水中の化学汚染物質が,マイクロプラスチックの誤食を通して海洋生物に移行する.そして,これが体内で脱着したのち何らかのダメージを与える危惧である(3)3) L. C. de Sá, M. Oliveira, F. Ribeiro, T. L. Rocha & M. N. Futter: Sci. Total Environ., 645, 1029 (2018)..加えて,未使用のプラスチックビーズを水棲生物に摂食させ,何らかのダメージを発現させた実験結果も数多く報告されている(3)3) L. C. de Sá, M. Oliveira, F. Ribeiro, T. L. Rocha & M. N. Futter: Sci. Total Environ., 645, 1029 (2018)..毒ではないが栄養にもならないプラスチックの大量摂取は,生物にとって負担なのだろう.
ただ,限度を超えて摂取すれば何であっても有害である.実海域でのマイクロプラスチックの浮遊量は,生物に負担となる水準なのだろうか.いまのところは,実海域で海洋生物への影響は報告されていない.それでも,増え続けるプラスチック消費量を考えれば,今後は,海域でのマイクロプラスチック浮遊量の監視や,発生・輸送機構の解明が重要である.本稿では,最近になって研究が進んだマイクロプラスチックに話題を絞って,浮遊量の現状や将来予測,あるいは現在の研究課題を概説する.
海に漂うマイクロプラスチックの発見は,米国の東海岸沖において1970年代初頭にまで遡る(4)4) E. J. Carpenter & K. L. Smith Jr.: Science, 175, 1240 (1972)..ただし,その浮遊数は海面1 km2あたり数千個程度であった.ところが最近では,太平洋や大西洋の中ほどや(5, 6)5) A. Cózar, F. Echevarría, J. I. González-Gordillo, X. Irigoien, B. Ubeda, S. Hernández-León, A. T. Palma, S. Navarro, J. García-de-Lomas, A. Ruiz et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 111, 10239 (2014).6) M. Eriksen, L. C. M. Lebreton, H. S. Carson, M. Thiel, C. J. Moore, J. C. Borerro, F. Galgani, P. G. Ryan & J. Reisser: PLOS ONE, 9, e111913 (2014).,あるいは生活圏から最も遠い北極海(7)7) A. L. Lusher, V. Tirelli, I. O’Connor & R. Officer: Sci. Rep., 5, 14947 (2015).や南極海(8)8) A. Isobe, K. Uchiyama-Matsumoto, K. Uchida & T. Tokai: Mar. Pollut. Bull., 114, 623 (2017).ですら,2桁から3桁は多い浮遊数が確認されている.ここで,わが国における海洋マイクロプラスチックのモニタリングについて紹介しよう.
環境省の委託事業として,私たちは2014年から東京海洋大学の練習船「海鷹丸」と「神鷹丸」の2隻を運用する体制で,わが国沖合で浮遊マイクロプラスチックの調査を実施している.この調査は,2017年から,北海道大学,長崎大学,そして鹿児島大学も参加して,5隻体制に拡大された.世界でも,これだけの規模で組織だった観測を継続している例はなく,わが国は海洋プラスチック汚染のモニタリングにおいて疑いなく先端的である.さらに,私たちの研究グループは,浮遊マイクロプラスチック調査を世界で初めて南極海で成功させ(8)8) A. Isobe, K. Uchiyama-Matsumoto, K. Uchida & T. Tokai: Mar. Pollut. Bull., 114, 623 (2017).,また,南極海から東京に至る西太平洋の南北横断調査も行った(9)9) A. Isobe, S. Iwasaki, K. Uchida & T. Tokai: Nat. Commun., 10, 417 (2019)..
私たちは,目合い0.3 mmの表層浮遊生物を採取する観測網(ニューストンネット)を船でひきつつ,網を通過した海水ごとマイクロプラスチックをこし採った.いまのところ,ほとんどの研究において,この網の目合いである0.3 mm程度が,観測できるマイクロプラスチックの下限サイズである.海水よりも軽く浮遊するマイクロプラスチック採取のため,網は深さ1 m程度までの海面近くに固定した.浮遊物を含む海水ごと研究室に持ち帰り,まず,海水に含まれる浮遊物の中からプラスチック片を目視で確認し,ピンセットで抽出した.その後,目視できる浮遊物を取り除いた海水を吸引ろ過して,フィルタに付着した固形物を注意深く採取した.プラスチックかどうか目視判定できない場合は,フーリエ変換赤外分光光度計で材質判定を行った.その後,1粒ずつのマイクロプラスチックを写真撮影し,サイズ(最大長さ)の計量を行った.以上の観測・分析手順をまとめた英文のガイドラインが,最近になって環境省ウェブサイトから世界に向けて公開されている(http://www.env.go.jp/en/water/marine_litter/guidelines/guidelines.pdf)(10)10) Y. Michida et al.: Ministry of the Environment Japan, 2019..さらに,環境省の委託事業として,私たちはマイクロプラスチック個数の計量について誤差判定を行った(11)11) A. Isobe, N. T. Buenaventura, S. Chastain, S. Chavanich, A. Cózar, M. DeLorenzo, P. Hagmann, H. Hinata, N. Kozlovskii, A. L. Lusher et al.: Mar. Pollut. Bull., 146, 831 (2019)..人工的に作成した模擬マイクロプラスチックと,木片や養殖プランクトンなど夾雑物や海水を混ぜたサンプルを世界の12研究室に配布し,それぞれの研究室で抽出されたマイクロプラスチック数を比較したのである.サイズ1 mmを下回るマイクロプラスチックは,分析過程で見過ごされることが多いらしく,個数で20%程度の過小評価であった.
これまでの調査によれば,日本周辺の東アジア海域は,特に重点的に調査が行われた夏季において,海面近くの海水1 m3当たりに浮遊する個数(以降,浮遊密度)は3.7個を数える(12)12) A. Isobe, K. Uchida, T. Tokai & S. Iwasaki: Mar. Pollut. Bull., 101, 618 (2015)..この値は他海域と比べて1桁高い(表1表1■マイクロプラスチックの観測浮遊密度).水深方向に積分をした海表面1 km2の浮遊個数に換算しても,世界の海洋における平均値の27倍である(12)12) A. Isobe, K. Uchida, T. Tokai & S. Iwasaki: Mar. Pollut. Bull., 101, 618 (2015).(図1図1■海表面1 km2あたりに浮遊するマイクロプラスチックの浮遊個数(12)).先に述べたとおり,いまのところマイクロプラスチック由来のダメージが実海域の生物に見つかったとの報告はない.ただ,現状での高い浮遊密度を見る限り,世界で最初に報告されるのは東アジアの海になるかもしれない.
海域 | 浮遊密度(個m−3) |
---|---|
東アジア海域 | 3.70 |
北大西洋(収束域) | 1.70 |
瀬戸内海 | 0.39 |
北極海 | 0.34 |
地中海 | 0.15 |
北太平洋 | 0.12 |
南極海 | 0.031 |
南極海における浮遊密度は,東アジア海域に比べて2桁は少ないものであった(8)8) A. Isobe, K. Uchiyama-Matsumoto, K. Uchida & T. Tokai: Mar. Pollut. Bull., 114, 623 (2017).(表1表1■マイクロプラスチックの観測浮遊密度).浮遊するサイズは,ほとんどが2 mm以下で,これはほかの海域と比べてかなり小さい.このことは,採取したマイクロプラスチックの多くが,長い年月をかけて漂流と漂着を繰り返し,その過程で十分に微細片化が進行したことをうかがわせる.このように,生活圏から最も遠い南極海ですら,マイクロプラスチックの浮遊が確認された.すでに世界中でプラスチック片が浮遊しない海など存在しないのだろう.
最近になって私たちは,現状のマイクロプラスチック浮遊量をコンピュータ・シミュレーションで再現し,さらに太平洋全域における50年先までの浮遊量の予測結果を発表した(9)9) A. Isobe, S. Iwasaki, K. Uchida & T. Tokai: Nat. Commun., 10, 417 (2019)..別のシミュレーションで計算した表層海流と波浪に,マイクロプラスチックに見立てた仮想粒子を流すシミュレーションである.シミュレーションでは,太平洋を囲む陸地から,それぞれの地域の廃棄プラスチック量(13)13) J. R. Jambeck, R. Geyer, C. Wilcox, T. R. Siegler, M. Perryman, A. Andrady, R. Narayan & K. L. Law: Science, 347, 768 (2015).に比例させた数で仮想粒子を投入した.また,最近までの観測結果と整合するよう,3年程度の時間規模で,マイクロプラスチックが海洋表層から消失すると仮定した.消失過程については次章に詳述する.
シミュレーションの結果,廃棄プラスチックの海洋流出がこのまま続くならば,日本近海や北太平洋中央部の広い範囲で,2060年までに海水中の浮遊マイクロプラスチックの重量濃度が1 g/m3を超えることがわかった(図2図2■シミュレーションで求めた海表面に浮遊するマイクロプラスチック(サイズが0.3 mm以上, 5 mm以下)の重量濃度分布(9)).実のところ,未使用のプラスチックビーズを用いた多くの室内実験(3)3) L. C. de Sá, M. Oliveira, F. Ribeiro, T. L. Rocha & M. N. Futter: Sci. Total Environ., 645, 1029 (2018).で,生物に影響が出始める浮遊マイクロプラスチックの重量濃度は,1 g/m3程度なのである(9)9) A. Isobe, S. Iwasaki, K. Uchida & T. Tokai: Nat. Commun., 10, 417 (2019)..ただし,これまでマイクロプラスチックによる海洋生物への影響を指摘した実験のほとんどは,観測やシミュレーションの対象となったプラスチック片(>0.3 mm)より,1桁から4桁以上小さな粒を使用している.今後は,実験で用いるほどサイズの小さなマイクロプラスチックを実海域でも監視し,浮遊量の将来を予測することが,海洋生物への影響を考えるうえで重要である.ただ,いまのところ,実環境において数μmやナノレベルまでマイクロプラスチックの微細片化が進行するか明らかではないし,また,たとえ微細片化しても,それらを観測する技術が確立されていない.
自然で分解しづらいプラスチックごみであれば,次第に破砕が繰り返されることで地球に蓄積するマイクロプラスチックが,今後も増え続けることは疑いない.しかし,今のところ私たちは,マイクロプラスチックが地球の何処を循環し,何処に滞留するのか明快に答えることができない.
実海域から採集したマイクロプラスチックの浮遊密度を,サイズごとにプロットしてみよう(図3図3■東アジア海域で採集したマイクロプラスチックのサイズ別浮遊密度(12)).サイズが小さくなるほど,浮遊密度(棒グラフ)の増加が著しい.一片のプラスチックが破砕を繰り返せば,次第に細片数は増えていくだろう.したがって,この浮遊密度の増加は当然である.ここで,5 mmサイズのマイクロプラスチック(図3図3■東アジア海域で採集したマイクロプラスチックのサイズ別浮遊密度(12)の白丸の位置)の総体積(プラスチック密度を一定とすれば総質量)を計算する.続いて,この総体積を一定に保ったまま破砕が繰り返されると仮定し,サイズの減少に応じた浮遊密度を求めた(図中の破線;サイズを直径,その1/10を高さとした円柱換算で体積を計算).すなわち破線は,5 mmサイズの浮遊密度から期待される各サイズでの浮遊密度である.サイズが1 mm程度までは,棒グラフは破線の変化におおむね対応している.ところが,1 mmを下回ったあたりから両者の乖離が目立つ.海面近くで採取された1 mm以下のマイクロプラスチックは,20%の過小評価では説明がつかないほど,はるかに少ない浮遊密度であった.海へと流出した廃棄プラスチックは,漂流と漂着を繰り返しつつ,大型ごみからマイクロプラスチックに破砕を重ね,最後は私たちの前から姿を消すのである.先の予測シミュレーションで私たちは,マイクロプラスチックの消失に至る時間規模を,生成から数えて3年程度と推算した(9)9) A. Isobe, S. Iwasaki, K. Uchida & T. Tokai: Nat. Commun., 10, 417 (2019)..
1 mm以下のマイクロプラスチックは,どこへ消えたのだろうか.一つの可能性は,採集からの漏れである.網の目合いよりも小さな浮遊物は,採集されず網をくぐり抜けてしまう(図3図3■東アジア海域で採集したマイクロプラスチックのサイズ別浮遊密度(12)の横軸下限も,目合いの0.3 mmであることに注意).たとえサイズが0.3 mmより長くとも,細長い形状であれば網をすり抜けることができる.一方で,実際にマイクロプラスチックが海洋表層から消失する可能性も指摘されている.海洋を長く漂ううち,生物が表面に付着することで重くなったマイクロプラスチックは,次第に沈降を始めるとの報告がある(14, 15)14) M. Long, B. Moriceau, M. Gallinari, C. Lambert, A. Huvet, J. Raffray & P. Soudant: Mar. Chem., 175, 39 (2015).15) D. Kaiser, N. Kowalski & J. Waniek: Environ. Res. Lett., 12, 124003 (2017)..体積–表面積比の大きな微細マイクロプラスチックほど,その効果も大きいだろう.あるいは,海洋生物が摂食したのち,糞や死骸に混じって沈降するのかもしれない.高緯度では海氷への取り込みが報告されている(16)16) R. Obbard, S. Sadri, Y. Q. Wong, A. A. Khitun, I. Baker & R. C. Thompson: Earths Futur., 2, 315 (2014)..砂浜海岸での吸収も無視できない(17)17) A. Turra, A. B. Manzano, R. J. S. Dias, M. M. Mahiques, L. Barbosa, D. Balthazar-Silva & F. T. Moreira: Sci. Rep., 4, 4435 (2014)..しかし,ほとんどは未解明かあるいは研究が未着手であり,この消えたプラスチックの行方は海洋プスチック汚染研究の最も重要なテーマである.私たちは,大型のプラスチックごみが破砕を繰り返し,マイクロプラスチックが生成され,そして消失に至る一連の海洋プラスチック循環の実態を解明できていない.生成や消失過程に不確定要素が多い状況であれば,海洋プラスチック汚染の将来予測には,いまだ限界があると言わざるを得ない.
わが国では年間で約900万トンのプラスチックを破棄するが,ほとんどは焼却や埋め立て,あるいは再利用を経て,適正に管理されている(18)18) プラスチック循環利用協会:2016年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況マテリアルフロー図(2017)..管理されないプラスチックごみは,現在では,ほとんどが中進国や発展途上国で発生しているのである(表1表1■マイクロプラスチックの観測浮遊密度).地球環境への負荷削減といった観点から見れば,発展途上国での廃棄プラスチックごみの低減が本質的に重要である.それでも,わが国からでさえ,年間で14万トン(900万トンの1~2%)のプラスチックが適正に処理されず,環境中に流出している(13)13) J. R. Jambeck, R. Geyer, C. Wilcox, T. R. Siegler, M. Perryman, A. Andrady, R. Narayan & K. L. Law: Science, 347, 768 (2015)..一般論として99%を100%にまで高めることはコストを考えても困難であって,私たちは,プラスチックは環境中に漏れるものといった前提に立つ必要がある.単純に人口比を掛ければ,今後に中国や東南アジアで適正な処理が進んだところで,これらの国々では年間に100万トン超の流出が残ってしまうだろう.環境中へのプラスチック漏出を避けるためには,焼却やマテリアル・リサイクルに過大な期待を寄せず,社会に出回るプラスチックの総量を縮小させるよりほかない.すなわち,プラスチックの使用削減(社会におけるプラスチック総量規制)にまで踏み込む必要があるのではないか.
ただ,プラスチックは富裕層の贅沢品ではないことに留意すべきである.プラスチックは,むしろ経済的弱者や発展途上国で使われることの多い素材なのである.先述のとおり,海洋プラスチック汚染を地球環境問題として捉えれば,先進国におけるプラスチックの削減は本質的ではなく,発展途上国における削減が重要である.しかし,発展途上国においては,プラスチックが清潔な容器や食器あるいは包装材を安価に提供し,不衛生な生活環境を改善している事実などを無視するべきではない.性急なプラスチックの削減が経済的負荷を弱者に与えないよう,あるいはプラスチックを使わないリスクを顕在化させないよう,一定の配慮が必要であろう.地球環境のためには弱者を犠牲にしてよいなど,誰も賛同するはずがない(コラム参照).社会におけるプラスチック総量規制には,発展途上国を巻き込んだ持続的なプラスチック削減への合意形成が必要である.合意形成の基盤となる情報は,プラスチック削減に伴う海洋汚染軽減への効果判定であろう.そして,このような効果判定は科学が担うべきものである.持続的なプラスチック削減のため,科学的なエビデンスに基づいた数値目標の設定が望まれる.
ただ,残念ながら科学は当該分野において未熟である.海洋に漏出したプラスチックごみが,劣化や破砕を経てマイクロプラスチックに至る発生過程の研究が,ほとんどなされていない.前節で述べたようなmissing plasticsの行方もわからない.最近になって,マイクロプラスチックを誤食した海洋生物が受けるダメージについて,実験室での研究は積み上がりつつある.しかし,それら成果はいまだ実環境へは敷衍しづらい.実験室で生物に与えるプラスチック粒の濃度やサイズが,実海域で観測されるマイクロプラスチックの状況を必ずしも反映していないからである(4)4) E. J. Carpenter & K. L. Smith Jr.: Science, 175, 1240 (1972)..実海域におけるマイクロプラスチック現存量の観測・分析も,手作業に頼る工程が多すぎて非効率的である.しかし,観測・分析技術の高度化は,いまのところ見通しが良くない.社会の広い層に受け入れられるプラスチック削減への合意形成のため,海洋プラスチック汚染に取り組む科学的基盤の強化が喫緊の課題である.
Reference
1) J. G. B. Derraik: Mar. Pollut. Bull., 44, 842 (2002).
2) A. L. Andrady: Mar. Pollut. Bull., 62, 1596 (2011).
4) E. J. Carpenter & K. L. Smith Jr.: Science, 175, 1240 (1972).
7) A. L. Lusher, V. Tirelli, I. O’Connor & R. Officer: Sci. Rep., 5, 14947 (2015).
8) A. Isobe, K. Uchiyama-Matsumoto, K. Uchida & T. Tokai: Mar. Pollut. Bull., 114, 623 (2017).
9) A. Isobe, S. Iwasaki, K. Uchida & T. Tokai: Nat. Commun., 10, 417 (2019).
10) Y. Michida et al.: Ministry of the Environment Japan, 2019.
12) A. Isobe, K. Uchida, T. Tokai & S. Iwasaki: Mar. Pollut. Bull., 101, 618 (2015).
15) D. Kaiser, N. Kowalski & J. Waniek: Environ. Res. Lett., 12, 124003 (2017).
18) プラスチック循環利用協会:2016年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況マテリアルフロー図(2017).