Kagaku to Seibutsu 59(4): 191-196 (2021)
バイオサイエンススコープ
北海道の農業高校におけるナチュラルチーズの製造技術の標準化と地域産業との連携乳製品に関する持続的な地域に根ざした研究活動
Published: 2021-04-01
© 2021 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2021 公益社団法人日本農芸化学会
北海道の農業高校のナチュラルチーズ製造の歴史は1979年(昭和54年)の生乳の計画生産(1)1) 一般社団法人 中央酪農会議:“中央酪農会議50年の足跡”,三友社,2012, p. 4, L29–32.国策がきっかけとなり,いくつかの農業高校で研究が始まった.
研究の基盤となった農業クラブ活動(昭和23年の学制転換期に全国組織で農業高校の教育の中の指導性・社会性・科学性をはぐくむ教育プログラムの一つ)は,プロジェクト学習(現在は科目課題研究で農業以外の教科でも展開している課題解決学習法の一つで,アメリカのマサチューセッツ州の農業学校で作られた学習法)の一環として科学的な研究が進められた.
最初に研究を開始したのは,生乳の生産地の一つである東藻琴村(現大空町)の北海道東藻琴高等学校においては,ナチュラルチーズを生産し,食紅で色を付け廃棄している生乳を無駄にしないというコンセプトのもと,当時の指導教員・生徒の取り組みで開発がはじめられた.
1980年代には町村立高校の前記の東藻琴高校,あるいは士幌高校でナチュラルチーズの生産販売が行われ,農業クラブでの発表や,上記高校の食品加工指導経験教員の転勤などで,少しずつ全道の農業高校に技術が伝えられてきた.しかし,当時の農業高校は生産学科(後継者育成,作物や家畜の生産・管理),あるいは関連産業学科(関連産業従事者育成,林業や土木工学)が中心であり,食品加工はクローズアップされていなかった.
1990年代には食品加工の重要性が高まり北海道農業高校で,食品製造・食品科学の分野を学習する学科を設置,農業高校の学校農場としての機能を果たすようになってきた.
私が乳製品を学ぶきっかけとなったのは,1989年,軽種馬の産地で有名な新ひだか町(当時は静内町)北海道静内農業高等学校畜産科で高校3年間を過ごしたなかで,乳牛を中心とした畜産教育の一環として学習をしたことである.授業で食品加工品を生産・販売するような施設こそなかったが,食品加工室は存在し,そこで農業クラブの研究班活動を指導してくださった二木浩志教諭(現北海道帯広農業高等学校長,2020年夏甲子園出場とNHK連続テレビ小説「なつぞら」の主人公の出身校モデルとなった学校)より,ゴーダチーズの製造を教授していただいた.さらにその後,共通の師となる酪農学園大学教授である故安藤功一先生に師事し,ナチュラルチーズの研究に取り組むことになった.1995年にはデンマーク王国での1年間の酪農研修をし,酪農王国デンマークの先進的な酪農経営・生産理念・乳製品の生産現場を学んだ.大学に復学しチーズに関する研究を続けたが,農業高校に務めナチュラルチーズの技術の普及をし,技術者を育てたいという志しもあり北海道教員採用試験にのぞんだ.
北海道ニセコ高等学校での講師兼通年舎監を1年経験した後,教員採用試験に合格し1998年に母校である北海道静内農業高等学校に赴任した.静内農高では農業科に所属し乳製品を指導することはなかったが4年後,希望がかない北海道のチーズ製造指導のパイオニアである北海道士幌高等学校に赴任することができた.士幌高校ではすでにゴーダチーズ・カマンベールチーズの製造・販売が行われており,既存の製造工程の工程時間,pH,酸度,衛生管理等の工程改善を行い,新加工室の設立の準備をした.新加工施設の「士幌町食品加工研修センター」は高校の授業と町民等の研修を行う施設で,高校生の指導・研究の拠点として,あるいは地域住民の研修の場として現在も稼働している(図1図1■士幌高校における硬質チーズの製造授業).既存のチーズのほかに2005年の欧州のチーズ原産国による連絡会議であるコミテ・プレミエ・フロマージュin十勝の開催準備や,同連絡会議でのコンテストでのチェダーチーズ銅賞受賞(2)2) https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/report/country/japan/profile27.html,一般社団法人中央酪農会議主催の第5回All Japanナチュラルチーズコンテスト優秀賞のチェダーチーズの開発(3)3) https://www.dairy.co.jp/cheesecontes/index12.htmlと土地の理を十分に活かした,チーズ工房との交流・製品開発を行い地域産業に貢献した.2006年にはスイスのFribourgで行われた1956年より行われているInternational Centre for Agricultural Education(CIEA)セミナーに2006年の日本代表として参加した.その際にスイスの伝統的なエメンタールチーズ・グリュイエールチーズの製造現場を見学し,原産地の製造方法,基本的な熟成温度・熟成相対湿度確認ができ,両チーズの見識を深めることができた(図2図2■スイスでの研修・チーズの製造現場).
2005・2006・2007年(平成17・18・19年)文部科学省の指定事業である都市エリア産官学連携促進事業に財団法人十勝圏振興機構を中心によつ葉乳業(産),士幌町食品加工研修センター(官),北海道立十勝圏地域食品加工技術センター(官),北海道立根釧農業試験場(官)を共同研究先として,十勝エリアの機能性を重視した十勝の畜産物の高付加価値化に関する研究の一員として士幌高校(学)から参画(4)4) 財団法人 十勝圏振興機構:“文部科学省都市エリア産官学連携促進事業 十勝エリア 平成18年度共同研究成果報告書”, 2006, p. 87–99.し「小型ガスホールチーズ製造技術の適正化試験」(5)5) 葛西大介,北海道士幌高等学校,士幌町食品加工研修センター:“公益財団法人とかち財団 平成20年度試験研究成果”,小型ガスホールチーズの製造適正化試験2008.に関する研究を実施,一定の技術を習得した.その後,2008年に着任した北海道美唄高等学校・北海道美唄尚栄高等学校(2011年に総合学科に学科転換)と生産活動は続き「ガスホール生成チーズ」の製造は行うものの年に1度程度の製造にとどまった.
2008年には美唄高校,美唄尚栄高校に赴任し,士幌高校で培った製造方法を元に,実験レベル「ガスホール生成チーズ」の製造実験を行ったが,本格的な製品化は行わなかった.
2013年に現在の勤務校,北海道岩見沢農業高等学校に赴任し,乳製品の担当となりこれまでの製品の工程の標準化,特にナチュラルチーズを中心に研究を行った.
一方,乳製品部門で研究開発をする農業クラブの研究グループである,牛乳・乳製品製造専攻班は食品科学科のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の班員が含まれ,調査・探求を行うテーマの設定を行ってきた.並行してチェダーチーズの製法を応用し製品開発したオレンジ色のブルータイプチーズ,フィバスの紅碧の開発に着手(図3図3■アナトー添加ブルータイプチーズ(フィバスの紅碧)),共同研究先の酪農学園大学乳製品製造学研究室竹田保之教授のご指導をいただきながら,製造日の異なるチーズの熟成中の水分・乳脂肪・タンパク質量,青カビの平面面積率の変化に着目,見た目にも赤い大理石模様にとなるよう製品開発を行った.これらの研究は2014~2016年の3年間SSHの取り組みの中で実施した(6~11)6) 窪田明日香,渡部哲哉,高橋道春,高橋雅信,平井綱雄:“北畜会報,51, 17 (2009).7) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,荒川義人,井口 綾,岡田瑠奈,佐藤湧貴,澤田菜央,橋本すみれ,吉田野乃:“ブルータイプチーズの熟成過程における成分の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第2年次】2015,北海道岩見沢農業高等学校,p. 13–16.8) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,荒川義人,井口 綾,岡田瑠奈,佐藤湧貴,澤田菜央,橋本すみれ,吉田野乃:“アナトー入りブルータイプチーズの熟成過程における水分含量・pH・青カビの平面面積率の製造季節による変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第3年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2016, p. 55–60.9) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,荒川義人,板橋美雨,太田朱音,大西 温,郷野由佳,髙橋侑香,中村優花:“ブルータイプチーズとレット&ブルーチーズの熟成過程における熟成率と塩分含量の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第3年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2016, p. 13–18.10) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,板橋美雨,太田朱音,大西 温,郷野由佳,髙橋侑香,中村優花:“穿孔数の異なる「アナトー入りブルータイプチーズ」の熟成過程における乳脂肪分・水分含量・pH・青カビの平面面積率の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第4年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2017, p. 19–2411) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,川本あすか,菅井理央,壽﨑未由生:“穿孔数の違いによるレッド&ブルーチーズの熟成過程における水分含量・および塩分含量,熟成率の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第4年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2017, p. 26–30..
また,2014年に牛舎が建替えとなった際,乳質の変化が発生し,エメンタールタイプチーズのガスホール(チーズアイ)が生成されず,その後の製造でも同様の現象が続いた.SSH履修者の生徒においては,この現象を調査対象とし,2017年から共同研究先の酪農学園大学応用微生物学研究室山口昭弘教授のご指導をいただきながら課題解決に乗り出した.
本プロジェクトは地域の産物を活用しながら,科学的仮説の中でどのように問題を解決していくかを重視し研究を実施している.
2017年に研究を開始し,エメンタールタイプチーズの熟成管理の中で,チーズの独特な香りである酪酸臭を少なくする目的で,岩見沢市の特産物である北海道ワインの一つである空知ワインを活用し,酪酸臭を消すことができないか科学的に調査した.
一方,本校においてエメンタールタイプチーズのチーズアイの形成ができなくなったことから,先行実験を調査し,スイスのアグロスコープ研究所で,牧草などの通常牛舎内の空気中に浮遊する材料を微量に添加することによりチーズアイの形成がなされるという(12)12) D. Guggisberg, P. Schuetz, H. Winkler, R. Amrein, E. Jakob, M. Fröhlich-Wyder, S. Irmler, W. Bisig, I. Jerjen, M. Plamondon et al.: Int. Dairy J., 47, 118 (2015).記述を参考にした.
2014年の本校の新牛舎設置により牛舎内の衛生化が進み,牛舎天井から牧草を落とさなくなり,牛舎に牧草粉が浮遊しなくなったことから,先行実験で効果が高かった牧草添加に着目した.仮説は「牧草の添加量が多いほどチーズアイが安定し,形成される」とし,牧草粉末の添加量を調整してチーズを製造し,チーズアイの形成が最も良いものを調査しようと考えた.本研究ではエメンタールタイプチーズを製造するにあたり,殺菌乳にスターターとして乳酸菌,およびプロピオン酸菌を添加し常法で製造した.先行実験を参考に,牧草添加量を0.000011, 0.000023, 0.000044%に分け製造し,チーズアイの数,形態ともに0.000023%の添加量が最も適切な量と結論つけた.また,HPLCにより有機酸の測定でプロピオン酸の測定を行い,さらに定量的PCR・ARISA(核酸抽出によるDNAベースの菌叢解)によるチーズ内のプロピオン酸菌・乳酸菌の消長についても,牧草の添加量を裏付ける結果となった.ワインによるチーズ表面のウォッシュは,HPLCによる有機酸の測定により,通常の食塩水によるウォッシュよりも酪酸を抑制することができ,ワインの効果を証明することができた(13, 14)13) 渡部哲哉,山﨑昭宏,山口昭弘,近藤良介,小川恵人,佐藤礼奈,山田智子:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における有機酸濃度に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第5年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2018, p. 18–21.14) 渡部哲哉,山﨑昭宏,山口昭弘,近藤良介,小川恵人,佐藤礼奈,山田智子:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における細菌叢,形態変化および有機酸に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第5年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2018, p. 23–28..なお,この研究内容は農業クラブ全国大会鹿児島大会に北海道代表としてプロジェクト発表会に出場・発表した(図4図4■[a] HPLCを用いた熟成過程における酪酸の測定値,[b] 同乳酸の測定値,[c] 同プロピオン酸の測定値).
2018年には酪農学園大学応用微生物学研究室岩﨑智仁教授も共同研究者に加わり,ご指導をいただきながら,仮説を「牧草添加によってチーズアイが形成される」とし,牧草添加量0.000023%で再現できるか調査した.牧草添加は乳全体に牧草粉末がいきわたるよう,凝乳酵素であるレンネット添加時に行った.また,一般的なエメンタールタイプチーズの熟成は第1次熟成で12–13°C–相対湿度90–100%,14日間で熟成し乳酸菌を活性化,乳酸を生成させ,第2次熟成である高温熟成で22–26°Cの間で21日間熟成しプロピオン酸菌の炭素源である乳酸を代謝させチーズアイを形成させる.第3次熟成はチーズの風味を作る熟成期間で12–13˚Cで145日以上熟成させる.それらの熟成期間で0・14・21・35・84日目をサンプリングした.第2次熟成の試験区の中から高温熟成の適正な日数を調査するため,22–26˚Cの再加熱のロットも準備し熟成56日目もサンプリング,HPLCによる有機酸の測定,定量的PCR・ARISAによる細菌叢のスキャンニング,細菌や牧草粉末を観察するために走査型電子顕微鏡(SEM)による形態観察を実施した.結果,再加熱熟成による高温熟成をするとチーズの熟成時に亀裂を多く生じることがわかり,その後の標準化目的の製造で第2次熟成である高温熟成の温度を22–24.5˚Cに抑えると亀裂ができづらいことがわかった.また,それらの結果は過剰に高温熟成すると菌量,高温熟成下の過剰なプロピオン酸菌量や,プロピオン酸・乳酸生成量が上昇することから適切な温度と期間熟成することが大切であることがわかった(図4図4■[a] HPLCを用いた熟成過程における酪酸の測定値,[b] 同乳酸の測定値,[c] 同プロピオン酸の測定値).一方でSEMの画像からはプロピオン酸菌や乳酸菌は発見できたが牧草粉末痕は見つけることができなかった(15, 16)15) 渡部哲哉,手塚 圭,山口昭弘,岩﨑智仁,近藤良介,大山穂華,霞 璃桜,髙杉伊吹,古川そら,松本華成:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における細菌および有機酸に関する研究”,平成30年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【経過措置1年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2019, p. 18–23.16) 渡部哲哉,手塚 圭,山口昭弘,岩﨑智仁,近藤良介,小川恵人,佐藤礼奈,山田智子:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における細菌および有機酸に関する研究”,平成30年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【経過措置1年次】, 2019, p. 25–30..
2019年,この2017・2018年の研究成果から,これまで発見できていない牧草片に注目し,仮説を「チーズアイは,添加した牧草を起点に形成される,また熟成に必須であるプロピオン酸菌は組織内の牧草が存在することで増殖する」とし,牧草添加量を増加させチーズを製造し,牧草が与えるプロピオン酸菌の影響について研究を行った.乳量100 Lに対し0.01,0.0001,0.00001%の牧草粉末を添加して製造した.各熟成期間(0~84日)におけるチーズアイの形態とSEMと共焦点レーザー顕微鏡による微細構造観察を行った.有機酸とプロピオン酸菌量については,各熟成期のチーズを細断してストマッキング処理し,そのろ液を用いてそれぞれHPLCと定量的PCRにて測定した.牧草添加量の増加に伴いチーズアイの形成個数は多くなったが,そのサイズは小さくなる傾向にあった.走査型電子顕微鏡による観察により,熟成14日以降でチーズ構造中にプロピオン酸菌と思われる微生物の存在が観察された.特に牧草添加量0.01・0.0001%ではチーズアイ中に牧草片とプロピオン酸菌の存在を確認した.一方,最も牧草粉末の添加量が少なかった牧草添加量0.00001%においては,チーズ構造中にプロピオン酸菌の存在は確認できたが,牧草片を見つけることは困難であった(図5, 6図5■牧草添加0.01%のエメンタールタイプチーズ内の牧草片とプロピオン酸菌図6■牧草添加0.0001%のエメンタールタイプチーズ内の牧草片とプロピオン酸菌).先行実験同様に,有機酸は,各試験区ともに,熟成14日目で乳酸が増加した.高温熟成が終了する熟成35日目には乳酸が減少に転じてプロピオン酸が増加した.定量的PCRの結果から,すべての試験区でプロピオン酸菌は106から最終的には108 copies/gまで増殖した.これらの結果から,牧草粉末の添加はプロピオン酸菌の増殖にはあまり影響しないが,小さなチーズアイの形成を促進することが明らかとなった.牧草粉末の添加量を調節することで,チーズアイの個数とサイズをコントロールできる可能性が示唆された(17, 18)17) 渡部哲哉,鈴木龍太,山口昭弘,岩﨑智仁,近藤良介,大山穂華,霞 璃桜,髙杉伊吹,古川そら,松本華成:“エメンタールタイプ製造時の牧草添加がチーズアイ形成とプロピオン酸菌の生育に及ぼす影響”,平成30年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【経過措置2年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2020, p. 9–15.18) 渡部哲哉,大山穂華,霞 璃桜,髙杉伊吹,古川そら,松本華成,木口紗弥夏,近藤恋果:“化学と生物,58,589 (2020)..
2020年,岩見沢農業高校での2017年からのチーズアイ形成に関する研究を活かし製品名「フィバスの瞳(エメンタールタイプチーズ)」の製造を実施した(図7図7■牧草添加0.000023%によるチーズアイの形成(フィバスの瞳製品)).KONDOヴィンヤード産クヴェベリワインを活用したウォッシュを行い,熟成約190日で2020年10月17日に東京都内で行われたチーズコンテストJapan Cheese Award 2020に出品した.見事なチーズアイを形成した本製品は加熱圧搾6カ月以上の熟成の部門で銅賞に入賞した(19)19) https://www.japancheeseaward.com/.本研究の内容が「科学と技術」として結びついた瞬間を体現するに至った.
Acknowledgments
これらの研究を行うにあたり,北海道の農業高校で乳製品の開発をともにした,町立士幌高校の関係者,関係官公庁・十勝財団・よつ葉乳業(株)の皆様,十勝のチーズ工房の皆様,帯広畜産大学・北海道立根釧農業試験場の皆様,美唄高校,美唄尚栄高校の同僚・生徒,数々のアドバイス,技術支援をいただいた,酪農学園大学乳製品製造学研究室名誉教授故安藤功一氏,同教授竹田保之氏,同講師栃原孝志氏,同元技師である故長山五郎氏,山下昭芳氏,応用微生物学研究室教授山口昭弘氏,応用生化学研究室教授岩﨑智仁氏・同助教長谷川靖洋氏,同名誉教授山本克博氏,また学生時の先輩・同期・後輩,ニチラク機械(株)元顧問佐藤哲男氏,ニチラク機械(株)北海道工場元所長佐々木克史氏,KONDOヴィンヤード代表近藤良介氏のご指導とご協力に感謝いたします.
Reference
1) 一般社団法人 中央酪農会議:“中央酪農会議50年の足跡”,三友社,2012, p. 4, L29–32.
2) https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/report/country/japan/profile27.html
3) https://www.dairy.co.jp/cheesecontes/index12.html
4) 財団法人 十勝圏振興機構:“文部科学省都市エリア産官学連携促進事業 十勝エリア 平成18年度共同研究成果報告書”, 2006, p. 87–99.
5) 葛西大介,北海道士幌高等学校,士幌町食品加工研修センター:“公益財団法人とかち財団 平成20年度試験研究成果”,小型ガスホールチーズの製造適正化試験2008.
6) 窪田明日香,渡部哲哉,高橋道春,高橋雅信,平井綱雄:“北畜会報,51, 17 (2009).
7) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,荒川義人,井口 綾,岡田瑠奈,佐藤湧貴,澤田菜央,橋本すみれ,吉田野乃:“ブルータイプチーズの熟成過程における成分の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第2年次】2015,北海道岩見沢農業高等学校,p. 13–16.
8) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,荒川義人,井口 綾,岡田瑠奈,佐藤湧貴,澤田菜央,橋本すみれ,吉田野乃:“アナトー入りブルータイプチーズの熟成過程における水分含量・pH・青カビの平面面積率の製造季節による変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第3年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2016, p. 55–60.
9) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,荒川義人,板橋美雨,太田朱音,大西 温,郷野由佳,髙橋侑香,中村優花:“ブルータイプチーズとレット&ブルーチーズの熟成過程における熟成率と塩分含量の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第3年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2016, p. 13–18.
10) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,板橋美雨,太田朱音,大西 温,郷野由佳,髙橋侑香,中村優花:“穿孔数の異なる「アナトー入りブルータイプチーズ」の熟成過程における乳脂肪分・水分含量・pH・青カビの平面面積率の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第4年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2017, p. 19–24
11) 渡部哲哉,山﨑昭宏,竹田保之,川本あすか,菅井理央,壽﨑未由生:“穿孔数の違いによるレッド&ブルーチーズの熟成過程における水分含量・および塩分含量,熟成率の変化に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第4年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2017, p. 26–30.
13) 渡部哲哉,山﨑昭宏,山口昭弘,近藤良介,小川恵人,佐藤礼奈,山田智子:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における有機酸濃度に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第5年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2018, p. 18–21.
14) 渡部哲哉,山﨑昭宏,山口昭弘,近藤良介,小川恵人,佐藤礼奈,山田智子:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における細菌叢,形態変化および有機酸に関する研究”,平成25年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【第5年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2018, p. 23–28.
15) 渡部哲哉,手塚 圭,山口昭弘,岩﨑智仁,近藤良介,大山穂華,霞 璃桜,髙杉伊吹,古川そら,松本華成:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における細菌および有機酸に関する研究”,平成30年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【経過措置1年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2019, p. 18–23.
16) 渡部哲哉,手塚 圭,山口昭弘,岩﨑智仁,近藤良介,小川恵人,佐藤礼奈,山田智子:“牧草添加によるエメンタールタイプチーズのチーズアイ形成における細菌および有機酸に関する研究”,平成30年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【経過措置1年次】, 2019, p. 25–30.
17) 渡部哲哉,鈴木龍太,山口昭弘,岩﨑智仁,近藤良介,大山穂華,霞 璃桜,髙杉伊吹,古川そら,松本華成:“エメンタールタイプ製造時の牧草添加がチーズアイ形成とプロピオン酸菌の生育に及ぼす影響”,平成30年度指定スーパーサイエンスハイスクール研究収録【経過措置2年次】,北海道岩見沢農業高等学校,2020, p. 9–15.
18) 渡部哲哉,大山穂華,霞 璃桜,髙杉伊吹,古川そら,松本華成,木口紗弥夏,近藤恋果:“化学と生物,58,589 (2020).
19) https://www.japancheeseaward.com/