解説

乳酸菌オリゴDNAによる幹細胞の運命制御創薬シーズとしての細菌ゲノム由来DNA

Regulation of Stem Cell Fate by Oligodeoxynucleotides from Lactic Acid Bacteria: Bacterial Genome-Derived DNA as Drug Seeds

Tomohide Takaya

高谷 智英

信州大学農学部

Published: 2021-06-01

微生物ゲノム由来のオリゴDNAは,病原体関連分子として宿主細胞の自然免疫系を調節することが知られてきた.他方,一部のオリゴDNAは非免疫細胞の分化にも影響することが散発的に報告されてきたが,その生理学的意義は不明であった.筆者は最近,乳酸菌ゲノム配列に由来するオリゴDNAが,骨格筋の前駆細胞である筋芽細胞の分化を著明に亢進することを報告した.この筋形成型オリゴDNAは,加齢や疾患が誘発する筋萎縮の治療に有用な,新たな核酸医薬品のシーズとして期待される.本解説では,筋形成型オリゴDNAのの研究を例に,微生物由来オリゴDNAによる細胞の運命制御について紹介する.

Key words: オリゴDNA; 筋形成型オリゴDNA(myoDN); アプタマー; 細胞分化; ロコモティブ症候群

はじめに

宿主に感染した病原菌やウイルス,宿主と共生する腸内細菌,あるいは摂取した食物が含有する微生物などが体内で死滅し,分解されると,彼らのゲノムから数塩基から数十塩基の一本鎖オリゴ核酸が生成される.なかでも,非メチル化CpGモチーフを有するオリゴDNAは,細菌やウイルスのゲノムに遍在することから,重要な病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns; PAMPs)として免疫系細胞のToll様受容体(Toll-like receptor; TLR)9に認識される.CpGオリゴDNAを受容したTLR9は,自然免疫系を活性化し,炎症応答を誘導する.この性質を利用し,人工的に合成したCpGオリゴDNAをワクチンアジュバント(免疫賦活剤)に応用する研究も進んでいる(1)1) J. Vollmer & A. M. Krieg: Adv. Drug Deliv. Rev., 61, 195 (2009)..一方,テロメア配列(TTA GGG)をもつオリゴDNAは,TLR3, TLR7, TLR9依存的に免疫反応を抑制する.このような免疫抑制型オリゴDNAは,アレルギーや自己免疫疾患に対する治療薬の候補として期待されている(2)2) C. Sackesen, W. van de Veen, M. Akdis, O. Soyer, J. Zumkehr, B. Ruckert, B. Stanic, O. Kalayci, S. S. Alkan, I. Gursel et al.: Allergy, 68, 593 (2013).

興味深いことに,一部のオリゴDNAは非免疫細胞の分化に影響することが散発的に報告されている.たとえば,CpG-1826はTLR9依存的に破骨細胞の分化を抑制し(3)3) J. H. Chang, E. J. Chang, H. H. Kim & S. K. Kim: Biochem. Biophys. Res. Commun., 389, 28 (2009).,CpG-2006はTLR9非依存的に間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化を阻害する(4)4) N. Norgaard, T. Holien, S. Jonsson, H. Hella, T. Espevik, A. Sundan & T. Standal: J. Immunol., 185, 3131 (2010)..CpGオリゴDNA以外では,ヒトミトコンドリアゲノム由来のシトシンに富む配列MT01が,骨芽細胞の分化を促進するという研究がある(5)5) Z. Feng, Y. Shen, L. Wang, L. Cheng, J. Wang, Q. Li, W. Shi & X. Sun: Int. J. Mol. Sci., 12, 2543 (2011)..しかし,これら非免疫型オリゴDNAの直接の標的や詳細な作用機序,そして生理学的意義については不明な点が多い.オリゴDNAによって幹細胞や前駆細胞の運命を制御できれば,新たな核酸医薬シーズの提案につながると考えられるが,実現には乗り越えるべき課題が多い.そこで筆者は,新たな非免疫型オリゴDNAの同定と,その作用機序の解明,および基盤技術の確立を目標に研究を開始した.

ロコモティブ症候群と核酸医薬

超高齢社会では,筋萎縮や骨粗鬆症などの複合的な要因による運動機能の低下,すなわちロコモティブ症候群が急増している.日本では,要支援・要介護となる理由の第一位が運動器障害であり,健康寿命を阻害する大きな要因となっている.人体最大の組織である骨格筋は,多核の巨大細胞である筋線維が多数集合した組織である.筋線維と基底膜の間には,衛星細胞(サテライト細胞)と呼ばれる体性幹細胞が存在する.筋形成や筋再生の初期過程で,休止中の衛星細胞は,筋芽細胞と呼ばれる前駆細胞に活性化する.筋芽細胞は分裂して増殖した後,収縮性の筋細胞へと分化して筋組織を構築する(6)6) N. A. Dumont, C. F. Bentzinger, M. C. Sincennes & M. A. Rudnicki: Compr. Physiol., 5, 1027 (2015)..このため,加齢や疾患による筋芽細胞の分化能の減弱は,筋萎縮の遠因の一つと考えられている.筋分化を促進する分子として,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤やトリテルペン酸が知られるが,非特異的な作用や短い半減期など,臨床応用には不利な性質が指摘される.

オリゴDNAは,安価で大量に合成可能な安定した分子である.また,ヌクレオチドの塩基,リン酸,糖の各部を化学修飾したり置換することで,ヌクレアーゼ耐性,標的結合能,体内毒性などの性質を改善することができる.オリゴDNAを含む核酸分子は,抗体医薬品に続く次世代新薬のシーズとして大きな期待が寄せられている(7)7) 井上貴雄:Drug Delivery System, 31, 10 (2016)..筋芽細胞に直接作用し,筋分化を促進するオリゴDNAを開発できれば,筋萎縮の予防・治療に効果のある核酸医薬品の開発に結び付くと考えられる.

筋形成型オリゴDNAの発見

筆者は,共同研究者である下里剛士博士(信州大学農学部)から提供されたオリゴDNAライブラリを用い,筋分化を誘導する配列をスクリーニングした.このライブラリは,乳製品にも用いられる乳酸菌Lactobacillus rhamnosus GGのゲノム配列から設計された18塩基のオリゴDNA群からなる.元々,免疫型オリゴDNAの探索を目的に設計されたライブラリであるため,CpGモチーフやテロメア配列を含むオリゴDNAが多いことが特徴である.これら乳酸菌オリゴDNAを,初代培養したマウス筋芽細胞に投与し,骨格筋の最終分化マーカーであるミオシン重鎖の発現を指標に筋分化促進活性を評価した結果,テロメア配列を有する一連のオリゴDNA群(iSN01~iSN07)が著しく筋分化を誘導すること明らかになった(図1図1■筋形成型オリゴDNAの筋分化促進作用).筋分化を促進するオリゴDNAは過去に報告がなく,筆者はこの新奇配列群を筋形成型オリゴDNA(myogenetic oligodeoxynucleotide; myoDN)と命名した(8)8) S. Shinji, K. Umezawa, Y. Nihashi, S. Nakamura, T. Shimosato & T. Takaya: Front. Cell Dev. Biol., 8, 616706 (2021)..そのメカニズムを解明すべく,同定された筋形成型オリゴDNAのうち,活性が最も高いiSN04について詳細に解析した.

図1■筋形成型オリゴDNAの筋分化促進作用

50種類の乳酸菌オリゴDNAをマウス筋芽細胞に投与し,ミオシン重鎖陽性細胞への分化を評価した.結果,テロメア反復配列(TTAGGG TGAGGG)をもつiSN01~iSN07に強い筋分化促進作用を見いだした.

オリゴ核酸の作用機序は大別して3種類ある.一つは,PAMPsとしてTLRに受容され,免疫応答シグナルを調節するもので,CpGオリゴDNAやテロメア型オリゴDNAが含まれる.iSN04はテロメア反復配列(TTA GGG TGA GGG)を有するため,その筋分化促進活性とTLRシグナルの関係性を検討した.ヒト筋芽細胞はすべてのTLR遺伝子(TLR1TLR10)を発現するが,RNAシーケンスの結果,iSN04投与によってTLRシグナル経路に含まれる遺伝子群の発現は変動しないことがわかった.また,既知のCpGオリゴDNAやテロメア型オリゴDNAは,単体では筋分化に影響せず,iSN04による筋分化促進作用も阻害しなかった.以上の結果は,iSN04の筋分化促進活性はTLR非依存的である,すなわちiSN04がPAMPsではないことを示す.

オリゴ核酸の機能の2つ目は,アンチセンス核酸としての作用である.このタイプの配列は,ゲノムDNA, mRNA,マイクロRNAなどと相補的に結合して,遺伝子の発現や転写,スプライシング,タンパク質への翻訳を調節する.iSN04は,ヒト,マウス,ニワトリのいずれの種においても筋分化を促進したことから,アンチセンス核酸として機能するのであれば,これらの種間の相同遺伝子座にiSN04類似配列が保存されていると考えられた.しかし,BLAST検索では各種間のゲノムに共通する配列や遺伝子座を見いだせなかった.さらに,アンチセンス核酸は熱変性による直鎖化によって活性の向上が期待されるが,筋形成型オリゴDNAの一部は熱変性によって筋分化促進作用を失った.この事実は,iSN04の活性は塩基配列ではなく立体構造に依存していることを強く示唆する.

オリゴ核酸の3つ目のタイプは,構造依存的に標的分子(主にタンパク質)と直接結合するアプタマーである.核酸医薬品としてのアプタマーは,ランダムな配列群の中から,あらかじめ設定した標的分子に結合する配列を選別・濃縮していくSELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法によって開発されることが多い.一方,自然界では,一部のmRNAがアプタマーとして低分子と結合し,リボスイッチとして働くことが知られている.iSN04の活性は立体構造依存的であったため,アプタマーとして機能しているのではないかと考えられた.

筋形成型オリゴDNAの作用機序

共同研究者の梅澤公二博士(信州大学農学部)による分子シミュレーションの結果,iSN04は平均半径約1 nmのコンパクトな球状構造を形成することがわかった(図2図2■筋形成型オリゴDNAの立体構造).特に,テロメア反復配列後半の3連グアニン塩基が互いに近接し,スタックして分子全体の構造を安定化していることが示唆された.このグアニン塩基群を一つずつ削除していくと,それに伴って筋分化促進作用が低減したことから,このグアニンスタックがiSN04の活性中心であることは明らかである.テロメア配列のようにグアニンに富む配列は,グアニンカルテット(G-quartet)と呼ばれる平面構造を形成し,さらにそれらが重合したグアニン四重鎖(G-quadruplex)という高次構造を取ることがある.ゲノム上で形成されたグアニン高次構造に転写複合体が結合することで,遺伝子の発現が制御されることも知られている(9)9) T. M. Ou, Y. J. Lu, J. H. Tan, Z. Z. Huang, K. Y. Wong & L. Q. Gu: ChemMedChem, 3, 690 (2008)..iSN04も,自身のグアニンスタックを介してタンパク質と複合体を形成し,筋分化を促進していることが推測された.

図2■筋形成型オリゴDNAの立体構造

310 Kの水分子中で熱力学的に最も安定なiSN04の構造の分子シミュレーション結果.

iSN04を固定したビーズで細胞内の可溶性タンパク質を沈降した結果,iSN04結合タンパク質としてヌクレオリンが単離された.ヌクレオリンは,RNA結合ドメインを有する多機能なリン酸化タンパク質で,核小体,核質,細胞質,細胞膜などに局在し,それぞれの場所において,転写,翻訳,細胞周期,アポトーシスなどの多様な細胞内プロセスに関与している(10)10) W. Jia, Z. Yao, J. Zhao, Q. Guan & L. Gao: Life Sci., 186, 1 (2017)..がん細胞での研究が特に進んでおり,ヌクレオリンの阻害は細胞増殖を抑制し,アポトーシスを誘導することが報告されている.一方,筋芽細胞を含む幹細胞や前駆細胞におけるヌクレオリンに関する研究はほとんどなく,細胞分化におけるヌクレオリンの役割は不明な点が多い.筆者は,ヌクレオリンがp53 mRNAの5′側非翻訳領域と結合し,p53タンパク質への翻訳を阻害するという報告に着目した(11)11) M. Takagi, M. J. Absalon, K. G. McLure & M. B. Kastan: Cell, 123, 49 (2005)..筋芽細胞においてp53は,骨格筋のマスター転写因子MyoDと協同して遺伝子発現を調節し,筋分化を誘導する.iSN04を筋芽細胞に投与すると,p53 mRNAの転写量が減少するにもかかわらず,p53のタンパク質量は増加することがわかった.また,RNAシーケンスのデータから,iSN04が実際にp53シグナル経路を活性化することも確認された.これらの結果から,iSN04はp53 mRNAと競合的にヌクレオリンと結合することで,ヌクレオリンによるp53の翻訳阻害を解除し,p53タンパク質の増加に伴う下流シグナルの活性化によって筋分化を促進することが明らかになった(図3図3■筋形成型オリゴDNAの作用機序).

図3■筋形成型オリゴDNAの作用機序

iSN04はヌクレオリンと結合することで,ヌクレオリンによるp53タンパク質の翻訳阻害を解除する.

筋形成型オリゴDNAの応用展開

筋芽細胞の分化を促進するiSN04は,筋萎縮の予防や治療に効果のある核酸医薬のシーズとして期待される.骨格筋の萎縮は,加齢のみならずさまざまな疾患で併発し,死亡率にかかわる危険因子として知られる.肥満と筋萎縮の合併はサルコペニア肥満といわれ,特に糖尿病患者における筋量の減少は死亡率と相関する.また,日本人の死因の1位を占めるがんでは,進行性がん患者の数十%がカヘキシー(がん悪液質)と呼ばれる脂肪・筋肉組織の消耗を呈する.筋量の低下はがんによる死亡率と相関し,カヘキシーはがん死因の約20%を占めるともいわれている.

筆者は現在,これら疾患性の筋萎縮に対するiSN04の作用についても研究を進めている.糖尿病患者の筋芽細胞は分化能の低下を呈することが複数報告されているが,iSN04はI型およびII型糖尿病患者の筋芽細胞の分化を改善することがわかってきた(投稿中).また,がん細胞培養上清への曝露は筋芽細胞の分化を悪化させることから,がん細胞の分泌物中に筋分化抑制因子が存在すると考えられている(12)12) F. Marchildon, E. Lamarche, N. Lala-Tabbert, C. St-Louis & N. Wiper-Bergeron: PLOS ONE, 10, e0145583 (2015)..iSN04は,がん細胞分泌物による筋分化の悪化を回復したことから,いまだ有効な対策がないカヘキシーに新たな治療戦略を提案できると考えている.糖尿病やがんに加え,心不全や慢性腎疾患でも骨格筋の萎縮は予後の危険因子である.今後,これらの疾患が合併する筋萎縮に対してもiSN04が効果を発揮するか,検証を進めていきたい.

また,筋形成型オリゴDNAの塩基配列も改良が進んでいる.一般的に,数十塩基程度のオリゴDNAは,配列にかかわらずエンドサイトーシスによって細胞膜を通過し,エンドソームを介して細胞質に移行する.iSN04も,投与2時間以内に細胞内に到達することを確認している.しかし,エンドソーム膜を通過するオリゴDNAは全体の一部であり,薬効の増強には分子量の低減が効果的であると考えられている.筆者は,iSN04の構造解析で明らかになった活性コアを中心に,同様の構造を形成すると推測される,より短い筋形成型オリゴDNAの設計に取り組んでいる.現在までに,18塩基のiSN04と同様の筋分化促進作用を示す,14塩基および12塩基の配列の開発に成功している.塩基配列の短縮は,合成コストの低減,吸収率の増加,および分子の安定化につながると期待される.

乳酸菌オリゴDNAの可能性

筋形成型オリゴDNAの研究から,微生物ゲノム由来のオリゴDNAが,アプタマーとして幹細胞の分化を制御し得ることが明らかになった.冒頭で紹介したように,直接の標的は不明なものの,破骨細胞や骨芽細胞の分化に影響するオリゴDNAの報告例もある(3, 4)3) J. H. Chang, E. J. Chang, H. H. Kim & S. K. Kim: Biochem. Biophys. Res. Commun., 389, 28 (2009).4) N. Norgaard, T. Holien, S. Jonsson, H. Hella, T. Espevik, A. Sundan & T. Standal: J. Immunol., 185, 3131 (2010)..筆者は最近,筋形成型オリゴDNAのスクリーニングに用いたライブラリから,骨芽細胞の分化を促進し,破骨細胞の分化を抑制する骨形成型オリゴDNA(osteogenetic oligodeoxynucleotide; osteoDN)を見いだした(特許出願中).骨組織は,骨芽細胞が分化した骨細胞による骨形成と,破骨細胞による骨吸収のバランスによって恒常性が維持される.ロコモティブ症候群の三大疾患の一つである骨粗鬆症では,骨形成と骨吸収の均衡が崩れ,骨密度や骨量が減少する.骨形成型オリゴDNAによって骨リモデリングを制御できれば,骨粗鬆症に対する治療薬の開発につながると期待される.骨形成型オリゴDNAの作用機序は研究中だが,筋形成型オリゴDNAと同様に,アプタマーとして機能していることが予測される.

高々50種類の乳酸菌オリゴDNAライブラリから,筋形成型オリゴDNAや骨形成型オリゴDNAが次々と見つかったのは,単なる偶然や幸運によるものであろうか.ゲノムDNAや転写されたRNAは,それら単体で機能することはない.ゲノムDNAには,転写複合体,クロマチンタンパク質,塩基の修飾酵素,さらには開裂・複製・修復・切断に関するさまざまなタンパク質が結合する.RNAのスプライシング,ポリアデニル化,輸送,そして翻訳には多彩なRNA結合タンパク質が働き,その数はヒト全遺伝子の約7.5%にも及ぶ(13)13) S. Gerstberger, M. Hafner & T. Tuschl: Nat. Rev. Genet., 15, 829 (2014)..つまり,ランダムな塩基配列と比べ,ゲノム配列は何らかのタンパク質と相互作用する可能性が格段に高く,特に核酸結合タンパク質に対するアプタマーの探索には非常に有望なソースになるといえよう.

乳酸菌をはじめとする共生細菌は,ヒトの腸管内に100~1,000兆個が生息しており,彼らの遺伝子総数は数百万個に及ぶともいわれる.また,ヒトは多種多様な動物,植物,菌類を摂食するが,食事を介して1日あたり1~2 gのヌクレオチドを摂取しているという.ヒトの体内には由来も配列も異なる膨大な核酸が存在しており,その大半はヌクレアーゼによって分解されると考えられるが,なかには,母乳を介して母体から乳児に移行するマイクロRNAといった例も報告されている(14)14) B. J. Stephen, N. Pareek, M. Saeed, M. A. Kausar, S. Rahman & M. Datta: Front. Immunol., 11, 404 (2020)..他種ゲノム由来のオリゴDNAには,いまだ機能や役割が明らかにされていない配列が,恐らくはわれわれが想像する以上に多数存在しており,本稿で紹介した筋形成型オリゴDNAは,そのほんの一例ではないかと思われる.

Acknowledgments

本解説の研究は,研究室の学生諸氏,梅澤公二博士,下里剛士博士の協力,ならびに日本農芸化学会第15回農芸化学研究企画賞の支援を得て行われました.この場をお借りして深く感謝申し上げます.

Reference

1) J. Vollmer & A. M. Krieg: Adv. Drug Deliv. Rev., 61, 195 (2009).

2) C. Sackesen, W. van de Veen, M. Akdis, O. Soyer, J. Zumkehr, B. Ruckert, B. Stanic, O. Kalayci, S. S. Alkan, I. Gursel et al.: Allergy, 68, 593 (2013).

3) J. H. Chang, E. J. Chang, H. H. Kim & S. K. Kim: Biochem. Biophys. Res. Commun., 389, 28 (2009).

4) N. Norgaard, T. Holien, S. Jonsson, H. Hella, T. Espevik, A. Sundan & T. Standal: J. Immunol., 185, 3131 (2010).

5) Z. Feng, Y. Shen, L. Wang, L. Cheng, J. Wang, Q. Li, W. Shi & X. Sun: Int. J. Mol. Sci., 12, 2543 (2011).

6) N. A. Dumont, C. F. Bentzinger, M. C. Sincennes & M. A. Rudnicki: Compr. Physiol., 5, 1027 (2015).

7) 井上貴雄:Drug Delivery System, 31, 10 (2016).

8) S. Shinji, K. Umezawa, Y. Nihashi, S. Nakamura, T. Shimosato & T. Takaya: Front. Cell Dev. Biol., 8, 616706 (2021).

9) T. M. Ou, Y. J. Lu, J. H. Tan, Z. Z. Huang, K. Y. Wong & L. Q. Gu: ChemMedChem, 3, 690 (2008).

10) W. Jia, Z. Yao, J. Zhao, Q. Guan & L. Gao: Life Sci., 186, 1 (2017).

11) M. Takagi, M. J. Absalon, K. G. McLure & M. B. Kastan: Cell, 123, 49 (2005).

12) F. Marchildon, E. Lamarche, N. Lala-Tabbert, C. St-Louis & N. Wiper-Bergeron: PLOS ONE, 10, e0145583 (2015).

13) S. Gerstberger, M. Hafner & T. Tuschl: Nat. Rev. Genet., 15, 829 (2014).

14) B. J. Stephen, N. Pareek, M. Saeed, M. A. Kausar, S. Rahman & M. Datta: Front. Immunol., 11, 404 (2020).