Kagaku to Seibutsu 59(8): 401-407 (2021)
解説
日用品・食品の開発につながる微生物制御の基礎研究身近な環境の微生物を探る
Basic Studies on Microbial Control Contributing to the Development of Daily Necessities and Food: Understanding Microorganisms in Our Surroundings
Published: 2021-08-01
「殺菌」,「抗菌」,「除菌」,「静菌」あるいは「防腐」等の言葉で代表されるような「微生物制御(microbial control)」を,「人や環境に危害を与える,あるいは有害現象を生み出す微生物をコントロールすること」と捉えると,日用品や食品等の製品を開発する際には,次の2つの視点から制御のための技術が求められる.一つは,i)製品の機能,価値の一部として,もう一つは,ii)製品の微生物学的安全性の確保のための技術としての視点からである.そして,適切な制御技術の開発には,対象とされる有害な現象に潜む微生物のありのままの姿を正確に理解することが重要なカギとなる.
Key words: 微生物制御; 日用品; 食品; 微生物学的安全性
© 2021 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2021 公益社団法人日本農芸化学会
望むと望まざるとにかかわらず,人は微生物と密接な関係をもって生活している.古くより発酵食品を喫食し,また,酵素,抗生物質,工業原料等の生産,環境の浄化等,微生物によるさまざまな恩恵を受けてきた.また,腸内細菌や皮膚常在菌が健康に寄与していることも広く知られている.一方,感染症の発症,口腔内疾患,食中毒,食品の腐敗,基剤の劣化,環境の汚れ,悪臭や有害物質の発生等,微生物から多様な危害を被り,健康を害したり不快な思いをしたりする場合も少なくない.そこで人はこのような微生物に対して,増殖,代謝,物質生産等を促進させたり抑制したりすることで,人に有益であるように,あるいは不利益にならないようにとコントロールしてきた.この微生物に対するコントロールを「微生物制御」と捉えると,この言葉は,広く「微生物の恩恵を受けるために有用微生物をコントロールすること」と「危害微生物を回避するためにコントロールすること」の両者を指している.一方で,狭義の解釈として,「危害微生物を回避するためにコントロールすること」を指す場合,すなわち,一般に「抗菌」,「殺菌」,「除菌」,「静菌」,「消毒」,「防腐・防黴」,「バイオフィルム除去」,「バイオフィルム分散」などと表現されるようなコントロールを指すことも多く,本稿では後者を「微生物制御」として,そのための管理手法や技術のことを「微生物制御技術」として解説する.
日用品とは,生活に身近な製品であり,生活に必要な品々である.たとえば,衣料用洗剤や仕上げ剤などのファブリックケア製品,台所用洗剤や住居用洗剤などのホームケア製品,歯磨き粉や洗口剤などのオーラルケア製品,シャンプー,リンスなどのヘアケア製品,化粧品類,洗顔料,ボディソープ,ハンドソープなどのスキンケア製品等があげられる.このような日用品や,食品を開発する際には,次の2つの視点から微生物制御技術が必要とされる.一つは,微生物制御技術が製品の機能や価値の一部として求められる場合である.たとえば,感染を防止する,悪臭や有害物質の発生を回避する,汚れの発生や基材の劣化を防止するなどのために,関与する微生物をコントロールする機能を有する商品が望まれる場合に必要となる.そしてこの機能は製品の価値の一部となる.
一方,企業が製品を開発,製造し,販売する際には,製品の品質を保証する責務があり,その一つに微生物学的品質の保証がある.すなわち,販売される製品はすべて微生物学的な安全性が確保されなければならない.そのための技術として微生物制御技術が必要となる.食品の製造においては,原料の管理,製造管理(環境,設備,方法等),処方設計,包装容器設計,流通等において微生物学的安全性を確保すべく対策を実施している.この対策が十分でないと,変敗,異臭,あるいはパッケージの膨張等の品質劣化を引き起こすことになる.また,日用品では長期にわたり使用する製品が多いため,原料管理,製造管理,包装容器設計等の製造時の防菌対策に加えて,使用期間中の微生物汚染対策が必要であり,多くの場合は適切な防腐処方設計によって汚染を防止する.当然のことだが,通常はどの企業も製品の微生物汚染を引き起こす「危害菌」・「汚染菌」(食品では「変敗菌」とも言う)に対して適切な対策を講じており,品質上問題のないものが流通している.しかしながら,人や環境にやさしい製品を提供すること,製品のさまざまな機能を十分発揮させること,使用時の感触や香り,見栄え,喫食時の風味(味や香り)や食感といった嗜好性を高めること等を追及すると,微生物学的安全性の確保について難易度が上がる場合も少なくない.微生物制御のための特別な工夫が必要になったり,製造時に制限が生じることで製造方法や商品設計の自由度が低くなったりすることがあり,これらを解決するための微生物制御技術が求められる場合もある.
それでは,微生物制御技術の開発に向け,その第一段階としてどのような研究が有効であろうか.答えはシンプルである.「制御する場面や対象を正確に把握すること」,「制御対象となる環境と制御すべき微生物のありのままの姿をとらえること」である.すなわち,まずは有害事象,あるいは不快な現象の認められる環境やそこに存在する微生物の生態・動態を把握すること,次に制御の対象となる微生物や微生物集合体を特定し,その特徴や生態・動態を理解すること,必要に応じて,それらに関与する他の生物も解析することである.微生物生態学的あるいは分子生物学的なアプローチによる解析で得られた知見がその後の技術開発を左右するのである.得られた知見は,有効な制御技術を開発するための大きなヒントとなるばかりではなく,開発途中の技術を適正に評価できる試験系の構築につながるからである.さらには,対象微生物が特徴的であればあるほど,そのデータ情報だけではなく,実物(関与微生物あるいは微生物集合体そのもの)を手に入れることが,詳細な解析や,実際的な評価系の構築へと研究を促進させることになる.
ここからは,日用品や食品に必要な微生物制御技術開発につながる基礎的な研究例を,筆者らの研究を中心に先述の2つの視点から紹介する.
日本では洗濯ものを室内に干して乾かす場合が多く,干している間や乾燥後の使用時に,いわゆる「生乾きのニオイ(生乾き臭)」を経験し,不快に感じる人が多い.人によってはこれを「雑巾のニオイ」,「室内干しのニオイ」,「部屋干しのニオイ」等と表現する.このような不快なニオイの発生を防止する技術が強く望まれていた.そこで,竹内ら(3)3) K. Takeuchi, Y. Hasegawa, H. Ishida & M. Kashiwagi: Flavour Fragrance J., 27, 89 (2012).により洗濯後であってもニオイ強度が高い衣類のニオイ成分が分析された.その結果,4-メチル-3-へキセン酸(4M3H)(図1図1■4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H))という微量にしか存在しないが嗅覚閾値の非常に低い物質が生乾き臭のキー成分であることが明らかとなった.4M3Hは,ヒト由来の成分であるという報告はなく,その物質の構造から発生には微生物がかかわっている可能性が非常に高いと考えられた.そこで,ニオイを有するサンプルより微生物を分離して解析を行った結果,衣類上において4M3Hの発生に大きくかかわる微生物としてMoraxella osloensis(図2図2■Moraxella osloensis KMC41(6))に分類される細菌の存在が見えてきた(4)4) H. Kubota, A. Mitani, Y. Niwano, K. Takeuchi, A. Tanaka, N. Yamaguchi, Y. Kawamura & J. Hitomi: Appl. Environ. Microbiol., 78, 3317 (2012)..
本菌種はそれまでさまざまな環境や人から分離されたり検出されたりした報告があったが,衣類上での検出やニオイとのかかわりに関する報告はなかった.実際に,玄関,キッチン,浴室などの住環境中からも検出され,特にタオルなどの木綿の衣類ではニオイの有無にかかわらず頻度高くかつ数量多く存在していた.また,本菌種は一般的な培地で培養しても生乾き臭を発生させないが,中古タオル上で培養すると生乾き臭を発生させることも確認された.さらに洗濯環境中のいくつかの環境ストレスに対して標準試験菌株に比べて耐性が高いこと,皮脂汚れ中の成分を前駆体として4M3Hなどのニオイ成分を生成すること等がわかってきた.得られた情報は衣類の不快なニオイ制御技術開発のヒントとなり,またM. osloensis株を用いて構築された評価系は開発段階での技術の評価に有効に利用され,衣料用洗剤や仕上げ剤等の開発の一助となった.尚,M.osloensisは一般社団法人繊維評価技術協議会の抗菌性試験の「オプション菌」として採用された(5)5) 一般財団法人繊維技術評議会製品認証部: JEC301 SEKマーク繊維製品認証基準(2021年6月1日改定版),http://www.sengikyo.or.jp/sek/?eid=00004, 14 (2020)..
浴室の排水口,床,壁,容器の底等によく見られるピンク色の汚れ(図3図3■浴室のピンク汚れ(8))は,こすることで落とすことはできるものの,落としてもすぐに発生してしまうという問題があり,浴室において気になる汚れとしてカビ汚れに次いで多く挙げられていた.それまでも,このような汚れよりRhodotorula属の酵母やMethylobacterium属細菌,その他の赤色やピンク色を呈する細菌が検出された報告はあったが,実際に汚れの中でどのような微生物がどのくらいの割合を占めるかなどの実態は不明であった.そこで,さまざまな家庭の浴室からピンク汚れを採取し,詳細に解析に供した(7, 8)7) Y. Miyahara, T. Yano, J. Hanai, R. Yokohata, S. Matsuo, E. Hiratsuka, T. Okano & H. Kubota: Bacterial Adherence & Biofilm, 27, 55 (2013).8) T. Yano, H. Kubota, J. Hanai, J. Hitomi & H. Tokuda: Microbes Environ., 28, 87 (2013)..走査型電子顕微鏡(SEM)での観察,分離菌の解析,およびFluorescence in situ hybridization(FISH)による解析を行うことにより,ピンク汚れがいわゆるバイオフィルム状態であり,この中で優占している微生物種はMethylobacterium属細菌であることが明らかとなった.浴室から分離された本属細菌は浴室で優占する要因としてのさまざまな特性を有しており,その一つとしてバイオフィルム状態でなくとも洗浄剤成分に対し比較的高い耐性を有することが判明したため,本属に対して効果的に働く殺菌技術の開発を目指した.
Methylobacterium属細菌に対し短時間では殺菌効果が認められない濃度の洗浄剤成分であっても長時間接触させた場合は殺菌性が認められたことから,基剤の微生物表層への浸透促進に着目し,殺菌性の洗浄成分であるカチオン性界面活性剤と特定の溶剤の組み合わせが殺菌性を向上させること,この組み合わせは実際の浴室のピンク汚れ発生を防止できることが見いだされた(7, 9, 10)7) Y. Miyahara, T. Yano, J. Hanai, R. Yokohata, S. Matsuo, E. Hiratsuka, T. Okano & H. Kubota: Bacterial Adherence & Biofilm, 27, 55 (2013).9) T. Yano, Y. Miyahara, N. Morii, T. Okano & H. Kubota: Appl. Environ. Microbiol., 82, 402 (2016).10) 矢野剛久,宮原佳子,横畑綾治,花井淳也,松尾申遼,平塚絵美,岡野哲也,久保田浩美:環境バイオテクノロジー学会誌,14, 125 (2015)..得られた知見,評価系,基礎的な制御技術は洗浄剤等の開発に寄与した.
なお,日用品の開発につなげるべく,制御対象となる環境や制御すべき微生物を詳細に解析した基礎研究の例として,フケ症の発生や悪化のメカニズムを探るための頭皮の微生物(細菌・真菌)叢解析(11, 12)11) 眞鍋憲二:フレグランスジャーナル,46, 39 (2018).12) Z. Xu, Z. Wang, C. Yuan, X. Liu, F. Yang, T. Wang, J. Wang, K. Manabe, O. Qin, X. Wang et al.: Sci. Rep., 6, 24877 (2016). doi: 10.1038/srep24877,歯周病を防ぐことを目指した歯周状態と歯肉(縁下・縁上)プラークの細菌叢の解析(13)13) H. Fujinaka, T. Takeshita, H. Sato, T. Yamamoto, J. Nakamura, T. Hase & Y. Yamashita: Arch. Microbiol., 195, 371 (2013).,効果的な手洗いを目指した手指の各部位の皮膚性状と細菌解析(1)1) H. Kubota: Bacterial Adherence & Biofilm, 27, 11 (2013).なども挙げられる.
乳酸菌は,古くから発酵食品の製造に利用され,また,プロバイオティクスとしても有用な微生物であるが,一方で食品に混入し変敗を引き起こす「危害菌」として,さらには食品の危害菌の中でも制御が難しい微生物の一つとして知られている.微生物は,表面に付着したりバイオフィルムを形成したりして薬剤等が効きにくくなることが知られているため,微生物混入の防止策を講じるには,微生物が原料や環境に付着したりバイオフイィルム状態であることを想定する必要があると考えられた.そこでより制御が難しくなると予想された「乳酸菌のバイオフィルム状態」に着目してその特性を把握することを試みた.
一年を通して安定して供給される食品原料の一つであるタマネギから実際にLactobacillus属※を中心とした乳酸菌が分離され,またタマネギ上にはバイオフィルム様の菌体の付着が確認された(14)14) H. Kubota, S. Senda, N. Nomura, H. Tokuda & H. Uchiyama: J. Biosci. Bioeng., 106, 381 (2008)..一方,それまでは実験系での乳酸菌のバイオフィルム形成に関する報告は少なかったため,まずは観察手法や評価法を確立したうえで,バイオフィルム形成能を確認した.その結果,タマネギより分離された乳酸菌株,およびLactobacillus属※の標準株において,供試したすべての株がポリスチレン(親水化処理)上にバイオフィルムを形成することが判明した.最もバイオフィルム形成量が多かったLactobacillus plantarum※の標準株(図4図4■Lactobacillus plantarum shubsp. plantarum※ JCM1149(14))や分離株を用いて,食品の処方や製造環境の衛生管理に重要な制御剤である有機酸,エタノール,および次亜塩素酸ナトリウムに対する耐性を評価したところ,いずれに対してもバイオフィルム状態の菌は浮遊状態(対数増殖期および定常期)の菌と比べて高い耐性を有していた(15)15) H. Kubota, S. Senda, H. Tokuda, H. Uchiyama & N. Nomura: Food Microbiol., 26, 592 (2009)..
また,L.plantarum※の分離株では,2種類のコロニー形態,①大きさが比較的小さく粘着性の低いコロニー(compact colony)と②粘着性のあるコロニー(mucoid colony)が観察された.この形態は可逆的に相変異し,何らかの環境の変化と関連してその存在比の変化,バイオフィルムの構造の変化,ストレス耐性の変化が起こる可能性が考えられた(16)16) Y. Ehashi, I. Kawashima, N. Obana, H. Kubota, T. Kiyokawa, S. Yashiro, K. Kakihara, N. Koyama, M. Hasumi & N. Nomura : Bacterial Adherence & Biofilm, 30, 25 (2016)..
乳酸菌制御研究の分野では,バイオフィルムに関する研究は実学的研究が多く,基礎的な研究の例が圧倒的に少なかったため,得られた知見は評価試験系の構築や原料の管理,製造管理等において貴重な情報となった.
(※ Lactobacillus属は再分類され(2020年公開)(17)17) 公益財団法人腸内細菌学会/(旧)日本ビフィズス菌センター:用語集 2020年に公開されたLactobacillus属の再分類,https://bifidus-fund.jp/keyword/kw054.shtml. (2020).,たとえばLactobacillus plantarumはLactiplantibacillus plantarumとなったが,本稿では原著のままの旧分類で表記している.)
日用品は長期にわたり使用されることから,開発する際には,製造時の微生物汚染の防止に加えて,使用中に使用環境や使用する人からの微生物混入による汚染を回避する必要がある.通常は主に処方設計により適切な防腐性を確保するのであるが,特に化粧品等では,配合成分の特徴により防腐性を確保するためのさまざまな工夫が必要となる場合も多い.
たとえば,化粧水やクリームでは機能成分として植物エキス等が配合されることがあるが,植物エキス等は種類によっては製品の防腐性を低下させる場合もある.この場合,防腐処方設計の難易度が上がり何らかの制御技術が必要になるが,植物エキス等がどのように防腐性低下をもたらすかといった詳細な機構は知られていなかった.宮原(18)18) 宮原佳子:防菌防黴,49, 107 (2021).は,マイクロデバイスとタイムラプス顕微鏡を組み合わせ,植物エキスが製品の防腐性,すなわち製品中での微生物の生死に及ぼす影響についてシングルセルレベルでの解析を試みた.防腐力の低下を招く植物エキスの混合物と防腐剤であるフェノキシエタノールを含むモデル化粧水に接種した細菌(Staphylococcus属の環境分離株)の挙動についてシングルセル解析を種々行ったところ,植物エキスにより防腐性が低下した処方では,各細胞の死滅時期が遅れるのではなく,死滅以上に細胞分裂が起こることで菌数が増加することが見えてきた.そこで,細胞分裂を阻害する静菌性物質を添加することに着目した結果,植物エキスにより防腐性が低下する化粧水処方に,静菌性物質の一つであるEthylenediaminetetraacetic acid(EDTA)を配合することでその防腐性低下が回避できることが見いだされた.処方中での微生物の挙動の詳細な把握が効果的に防腐処方設計に応用された例である.
本稿では日用品や食品等の製品開発につながる微生物制御の基礎研究の例を紹介した.制御技術開発への鍵は,「制御する場面や対象を正確に把握すること」,「制御対象となる環境と制御すべき微生物のありのままの姿をとらえること」であった.ここでは述べてこなかったが,微生物制御の基礎研究として,制御の技術そのもの,たとえば殺菌,除菌,抗菌,静菌の技術の本質的な理解も同様に重要である.すなわち,「物理化学的刺激の,あるいは物質の,微生物に対する作用機構」,「微生物の,あるいは微生物集団の,ストレスに対する応答機構」の理解も適切な技術開発へのカギとなるのである.
しかしながら,このいずれの基礎研究においても,対象となる微生物,共存する生物,そして取り巻く環境は,三次元的かつ経時的に,すなわち時空間的に変化しているため,実際には対象の一部や存在する微生物を取り出したその時点から「ありのままの姿」は変化しつつあり,すぐに「ありのままの姿」ではなくなってしまうことも多く,その解析は容易ではない.微生物の生態や生死を時空間的にとらえる基礎的研究,あるいは,微生物という小さな細胞の中で起こっている事象と,細胞集団の中の個別の細胞がそれぞれの役割を果たす微生物社会を俯瞰してとらえる基礎的研究の奥はまだまだ深い.すでに非侵襲的解析,タイムラプス解析,一細胞解析,遺伝子ネットワーク解析等のさまざまな解析技術が駆使されているものの,さらなる微生物の理解のためには解析技術のさらなる進展が欠かせない.解析科学の基礎研究が優れた解析技術を生み出し,微生物制御研究の深化につながることへの期待は膨らむ(図5図5■日用品・食品の開発につながる微生物制御の基礎研究).
企業が生活に身近な日用品や食品を開発する際には,さらに幅広い分野の基礎研究に加えて,生活者研究,処方開発研究(応用研究),容器・包装設計,生産技術開発等のさまざまな研究に携わる人々がかかわってくる.このように多くの分野の人々の手によって作り上げられる身近な製品において,微生物制御の基礎研究が,引き続きその一端を担い,最終的には社会や人々の生活を豊かで持続的なものにするための一助となることを願っている.
Reference
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3) K. Takeuchi, Y. Hasegawa, H. Ishida & M. Kashiwagi: Flavour Fragrance J., 27, 89 (2012).
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6) 高鳥浩介,久米田裕子,土戸哲明,古畑勝則:“有害微生物の制御と管理 現場対応への実践的取り組み”,株式会社テクノシステム,2016, p. 180.
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11) 眞鍋憲二:フレグランスジャーナル,46, 39 (2018).
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