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腸内細菌叢に影響を与える食事因子食事は腸内細菌叢を介して宿主生理機能を変化させる

Genki Yamaguchi

山口 元輝

慶應義塾大学薬学部創薬研究センター

Yun-Gi Kim

倫基

慶應義塾大学薬学部創薬研究センター

Published: 2022-04-01

はじめに

ヒトの腸内には数百種類,100兆個ほどの細菌が生息しており(腸内細菌叢),われわれの健康維持に重要な役割を果たしていることが次第に明らかになってきた.腸内細菌叢の組成は,食事,季節,ライフスタイル,ストレス,抗生物質の使用,病気などの多くの環境因子の影響を受けている.腸内細菌叢の組成変化は,宿主の免疫・代謝・神経系などに影響を与え,その結果,健康状態や疾患病態を変動させることが示唆されている(図1図1■腸内細菌叢が影響を及ぼす疾患病態).そのため,腸内細菌叢の変動因子についての理解は,健康維持や疾患予防の上で重要である.そこで,本総説では変動因子の一つである食事因子を取り挙げ,述べていきたいと思う(図2図2■腸内細菌叢に影響を与える食事因子).

図1■腸内細菌叢が影響を及ぼす疾患病態

図2■腸内細菌叢に影響を与える食事因子

①炭水化物

宿主の酵素によって消化・吸収されにくい炭水化物で,腸内細菌によって資化される糖は腸内細菌利用糖(MACs: Microbiota-accessible carbohydrates)と呼ばれている.MACsは腸内細菌叢の組成を変化させ,短鎖脂肪酸(SCFAs: Short-chain fatty acids)などの代謝物を産生誘導することにより多様な有益作用を発揮する.たとえば,褐藻由来の食物繊維であるアルギン酸ナトリウムを高脂肪食負荷マウスに与えるとBacteroides属菌が増加し,腸内細菌を介して腸管の炎症性マクロファージの割合や,メタボリックシンドロームが抑制されることが明らかになっている(1)1) R. Ejima, M. Akiyama, H. Sato, S. Tomioka, K. Yakabe, T. Kimizuka, N. Seki, Y. Fujimura, A. Hirayama, S. Fukuda et al.: Nutrients, 13, 2812 (2021)..また,βグルカンの摂取は,マウスの高脂肪・食物繊維欠乏食誘導性の認知機能障害を抑制するが,その作用メカニズムとして,腸管バリア機能の向上,エンドトキシン血症の軽減,そして海馬におけるミクログリアの活性化・炎症サイトカインの発現抑制およびシナプスの超微細構造の改善が示されている(2)2) H. Shi, Y. Yu, D. Lin, P. Zheng, P. Zhang, M. Hu, Q. Wang, W. Pan, X. Yang, T. Hu et al.: Microbiome, 8, 143 (2020)..このβグルカンによる認知機能低下の抑制作用は,腸内細菌叢の改善,すなわち,Bacteroidetes門菌の減少,Firmicutes門菌およびProteobacteria門菌の増加を抑制することによる可能性が示唆されている.さらに,ピーナッツアレルギーのモデルマウスにおいて,高食物繊維食を摂取すると,腸内細菌叢が変化し,SCFAsである酢酸や酪酸の産生が増加する.このSCFAsが,腸管粘膜上の樹状細胞を介して,制御性T細胞の分化を促進させることで,アナフィラキシー症状を軽減させることが報告されている(3)3) J. Tan, C. McKenzie, P. J. Vuillermin, G. Goverse, C. G. Vinuesa, R. E. Mebius, L. Macia & C. R. Mackay: Cell Rep., 15, 2809 (2016)..一方で,マウスに低MACs食を摂取させると,ムチン糖鎖を分解するBacteroides thetaiotaomicronが増加する(4)4) E. D. Sonnenburg, S. A. Smits, M. Tikhonov, S. K. Higginbottom, N. S. Wingreen & J. L. Sonnenburg: Nature, 529, 212 (2016)..当該細菌は,食物中のMACsが不足すると,宿主のムチン糖鎖を利用するようになり(5)5) Q. Mu, J. Kirby, C. M. Reilly & X. M. Luo: Front. Immunol., 8, 598 (2017).,その結果,ムチン層が薄くなり,腸管バリアが脆弱化し,腸管病原細菌感染に対する感受性が高くなる.

②タンパク質

タンパク質については,動物由来か植物由来かによって,腸内細菌叢に与える影響が異なることが明らかになっている(6)6) Y. Zhu, X. Lin, F. Zhao, X. Shi, H. Li, Y. Li, W. Zhu, X. Xu, C. Li & G. Zhou: Sci. Rep., 5, 15220 (2015)..ヒトにおいて,動物性タンパク質,特に赤身肉や乳製品を摂取すると,Bacteroides, Alistipes, Bilophila属菌などの胆汁耐性のある嫌気性細菌が増加する(7)7) L. A. David, C. F. Maurice, R. N. Carmody, D. B. Gootenberg, J. E. Button, B. E. Wolfe, A. V. Ling, A. S. Devlin, Y. Varma, M. A. Fischbach et al.: Nature, 505, 559 (2014)..この変化によって,腸内細菌によるトリメチルアミン(TMA)の産生を増加させ,動脈硬化を誘導するトリメチルアミンN-オキシド(TMAO)の血中での増加を引き起こす(8)8) L. Barrea, G. Annunziata, G. Muscogiuri, D. Laudisio, C. Di Somma, M. Maisto, G. C. Tenore, A. Colao & S. Savastano: Nutrition, 62, 7 (2019)..また,動物性タンパク質を大量に摂取すると,硫酸還元菌(Desulfovibrio属菌など)が食物中の無機硫黄や硫酸化アミノ酸から硫化水素(H2S)を産生する.それによって,Bifidobacterium属菌の存在量やSCFAsの産生量が減少し,炎症性腸疾患のリスクを高める可能性が示唆されている(9)9) P. Jantchou, S. Morois, F. Clavel-Chapelon, M. C. Boutron-Ruault & F. Carbonnel: Am. J. Gastroenterol., 105, 2195 (2010)..一方で,大腸を模した便培養において,エンドウ豆タンパク質などの植物性タンパク質を添加すると,Bifidobacterium属菌とLactobacillus属菌が増加し,病原性偏利共生菌(Pathobionts)として知られるBacteroides fragilisClostridium perfringensが減少することが分かっている(10)10) D. Świątecka, A. Narbad, K. P. Ridgway & H. Kostyra: Int. J. Food Microbiol., 145, 267 (2011).

③脂肪

食物性脂肪については,その量と質のいずれも腸内細菌叢の組成や宿主代謝機能に影響を与える.たとえば,マウスにおいて,飽和脂肪酸(SFA)を多く含む食事がBilophila wadsworthiaのような硫酸還元菌を増加させ,それによって産生された高濃度の硫化物が腸管ムチン層の溶解を引き起こし,実験的腸炎の病態を増悪させることが示唆されている(1111) S. Devkota, Y. Wang, M. W. Musch, V. Leone, H. Fehlner-Peach, A. Nadimpalli, D. A. Antonopoulos, B. Jabri & E. B. Chang: Nature, 487, 104 (2012).13)13) S. Devkota & E. B. Chang: Dig. Dis., 33, 351 (2015)..また,エキストラバージンオリーブオイルに含まれるオレイン酸などの一価不飽和脂肪酸(MUFA)が豊富な食事を摂ったヒトでは,Parabacteroides, Prevotella, Turicibacter属菌やEnterobacteriaceae科が増加し,Bifidobacterium属菌が減少する傾向があることが報告されている.さらに,血中にMUFAが多いヒトでは,BMI値やトリグリセリド値が高くなる傾向があるが,腸内ではBlautia属菌が多く,Tenericutes属菌が少ないことが報告されている(14)14) M. Wolters, J. Ahrens, M. Romaní-Pérez, C. Watkins, Y. Sanz, A. Benítez-Páez, C. Stanton & K. Günther: Clin. Nutr., 38, 2504 (2019)..さらに,脂肪の多い魚に特に多く含まれているω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)であるEPA(エイコサペンタエン酸)およびDHA(ドコサヘキサエン酸)のヒトへの摂取により,Bifidobacterium, Lactobacillus,酪酸産生菌であるRoseburia属菌が増加する傾向にあることが分かっている(15)15) H. Watson, S. Mitra, F. C. Croden, M. Taylor, H. M. Wood, S. L. Perry, J. A. Spencer, P. Quirke, G. J. Toogood, C. L. Lawton et al.: Gut, 67, 1974 (2018)..また,マウスにおいて,牛肉,羊肉,バター,乳製品などに含まれているω3 PUFAの1つであるトランス-10,シス-12-共役リノール酸(t10c12-CLA)を食餌で与えたところ,細菌の最上位の分類階級である門レベルではFirmicutesが減少,Bacteroidetesが増加し(16)16) T. M. Marques, R. Wall, O. O’Sullivan, G. F. Fitzgerald, F. Shanahan, E. M. Quigley, P. D. Cotter, J. F. Cryan, T. G. Dinan, R. P. Ross et al.: Br. J. Nutr., 113, 728 (2015).,種の上の分類階級である属レベルではButyrivibrio, Roseburia, Lactobacillusが増加した.このとき,糞便中で酪酸と血漿中の酢酸が有意に上昇するなど,腸内細菌叢の代謝物にも変化をもたらした.このような変化は,CLAが持つ抗動脈硬化性,抗肥満性,および抗癌性などの特性と関連していると考えられる(17)17) L. J. den Hartigh, Z. Gao, L. Goodspeed, S. Wang, A. K. Das, C. F. Burant, A. Chait & M. J. Blaser: J. Nutr., 148, 562 (2018).

④塩

高塩分食は,高血圧,腎障害,および心血管疾患の発症における主要な危険因子の一つである.マウスを用いた研究で,高塩分食がLactobacillus(1818) P. M. Miranda, G. De Palma, V. Serkis, J. Lu, M. P. Louis-Auguste, J. L. McCarville, E. F. Verdu, S. M. Collins & P. Bercik: Microbiome, 6, 57 (2018).20)20) J. Li, F. Sun, Y. Guo & H. Fan: Digestion, 99, 267 (2019).Oscillibacter(21)21) J. T. Loh, D. B. Friedman, M. B. Piazuelo, L. E. Bravo, K. T. Wilson, R. M. Peek Jr., P. Correa & T. L. Cover: Infect. Immun., 80, 3094 (2012).Pseudoflavonifractor(21)21) J. T. Loh, D. B. Friedman, M. B. Piazuelo, L. E. Bravo, K. T. Wilson, R. M. Peek Jr., P. Correa & T. L. Cover: Infect. Immun., 80, 3094 (2012).Clostridium XIVa(21)21) J. T. Loh, D. B. Friedman, M. B. Piazuelo, L. E. Bravo, K. T. Wilson, R. M. Peek Jr., P. Correa & T. L. Cover: Infect. Immun., 80, 3094 (2012).Johnsonella(20)20) J. Li, F. Sun, Y. Guo & H. Fan: Digestion, 99, 267 (2019).Rothia属菌(20)20) J. Li, F. Sun, Y. Guo & H. Fan: Digestion, 99, 267 (2019).を減少させ,Parasutterella(2121) J. T. Loh, D. B. Friedman, M. B. Piazuelo, L. E. Bravo, K. T. Wilson, R. M. Peek Jr., P. Correa & T. L. Cover: Infect. Immun., 80, 3094 (2012)., 22)22) D. Vandeputte, G. Falony, S. Vieira-Silva, J. Wang, M. Sailer, S. Theis, K. Verbeke & J. Raes: Raes Gut, 66, 1968 (2017).Erwinia,(23)23) A. Bier, T. Braun, R. Khasbab, A. Di Segn, E. Grossman & Y. Haberman: Leibowitz Nutrients, 10, 1154 (2018). Christensenellaceae,(23)23) A. Bier, T. Braun, R. Khasbab, A. Di Segn, E. Grossman & Y. Haberman: Leibowitz Nutrients, 10, 1154 (2018). Corynebacteriaceae,(23)23) A. Bier, T. Braun, R. Khasbab, A. Di Segn, E. Grossman & Y. Haberman: Leibowitz Nutrients, 10, 1154 (2018). Lachnospiraceae(19)19) N. Wilck, M. G. Matus, S. M. Kearney, S. W. Olesen, K. Forslund, H. Bartolomaeus, S. Haase, A. Mähler, A. Balogh, L. Markó et al.: Nature, 551, 585 (2017).Ruminococcus属菌(19)19) N. Wilck, M. G. Matus, S. M. Kearney, S. W. Olesen, K. Forslund, H. Bartolomaeus, S. Haase, A. Mähler, A. Balogh, L. Markó et al.: Nature, 551, 585 (2017).を増加させることが報告されている.特に,高塩分食によるLactobacillus属菌の減少は,炎症誘発性Th17細胞の増加や,自己免疫性脳脊髄炎・高血圧モデルにおける症状悪化につながることが示されている(18)18) P. M. Miranda, G. De Palma, V. Serkis, J. Lu, M. P. Louis-Auguste, J. L. McCarville, E. F. Verdu, S. M. Collins & P. Bercik: Microbiome, 6, 57 (2018)..また,Lactobacillus属菌はインドール乳酸を産生することにより,Th17細胞の分化を抑制することも明らかになっている(24)24) N. Wilck, M. G. Matus, S. M. Kearney, S. W. Olesen, K. Forslund, H. Bartolomaeus, S. Haase, A. Mähler, A. Balogh, L. Markó et al.: Nature, 551, 585 (2017).

⑤食品添加物

乳化剤や人工甘味料などの食品添加物は,腸内細菌の代謝経路を変化させ,これらの変化が宿主の代謝機能にも影響を与えることが分かっている.食品添加物の一つに,清涼飲料水,キャンディーやガムなどの菓子に含まれる人工甘味料がある.その一つであるサッカリンを投与した被験者の一部で,耐糖能が悪化した.この被験者の便を分析したところ,Bacteroides属菌が増加し,Clostridiales目菌が減少していた.この腸内細菌叢の変化によって,エネルギー吸収の増加につながる便中のSCFAsである酢酸やプロピオン酸の増加が起こり,さらにグリカン分解経路にかかわる腸内細菌遺伝子が増加していた(25)25) J. Suez, T. Korem, D. Zeevi, G. Zilberman-Schapira, C. A. Thaiss, O. Maza, D. Israeli, N. Zmora, S. Gilad, A. Weinberger et al.: Nature, 514, 181 (2014)..また,アスパルテームを飲用したラットにおいて,空腹時血糖値の上昇やインスリン抵抗性の増大にともない,Enterobacteriaceae科菌やClostridium leptumが増加していたことから,これらの腸内細菌が耐糖能異常に何らかの影響を与えている可能性がある(26)26) M. S. Palmnäs, T. E. Cowan, M. R. Bomhof, J. Su, R. A. Reimer, H. J. Vogel, D. S. Hittel & J. Shearer: PLoS One, 9, e109841 (2014)..一方,ソルビトールやマンニトールなどの糖アルコールによって誘発されるマウスの軟便や下痢をEscherichia coliが抑制することも明らかになっている(27)27) K. Hattori, M. Akiyama, N. Seki, K. Yakabe, K. Hase & Y. G. Kim: Nutrients, 13, 2029 (2021).

アイスクリームやチョコレートなどの乳化剤として知られるカルボキシメチルセルロース(CMC)とポリソルベート80(P80)をマウスに摂取させると,腸内細菌叢の多様性が低下し,Bacteroides属菌が減少し,Proteobacteria門菌,腸管ムチン分解性のAkkermansia muciniphilaおよびRuminococcus gnavusが増加する.これらの腸内細菌叢の構成異常(dysbiosis)により,大腸炎やメタボリックシンドロームが悪化する(28)28) B. Chassaing, O. Koren, J. K. Goodrich, A. C. Poole, S. Srinivasan, R. E. Ley & A. T. Gewirtz: Nature, 519, 92 (2015).

⑥微量栄養素(ビタミン・ミネラル)

ビタミンやミネラルなどの微量栄養素も腸内細菌叢の組成に影響を与える.クローン病患者にビタミンD3を投与すると,Alistipes属菌やParabacteroides属菌が増加するが,この腸内細菌叢の変化が,ビタミンD3の抗炎症効果に寄与している可能性が示されている(29)29) H. Schäffler, D. P. Herlemann, P. Klinitzke, P. Berlin, B. Kreikemeyer, R. Jaster & G. Lamprecht: J. Dig. Dis., 19, 225 (2018)..また,ヒトにおいて,カシスに含まれる抗酸化作用を持つカロテノイドであるルテインが,Bifidobacterium属菌とLactobacillus属菌を増加させ,Bacteroides属菌やClostridium属菌を減少させることが知られている.さらに,この腸内細菌叢の変化が,ジエチルスチルボエストール(DES),ベンゾ[a]ピレン,N-ヒドロキシフルオレニルアセタミドなどの発がん物質の活性化に重要な役割を果たすβ-グルクロニダーゼ活性を低下させ,その結果,結腸癌リスクを低下させると考えられている(30)30) A. L. Molan, Z. Liu & G. Plimmer: Phytother. Res., 28, 416 (2014)..一方,マウスにおいて,亜鉛を過剰に摂取すると,抗生物質起因性大腸炎の原因菌として知られるClostridioides difficileの毒素活性が高まり,病態が悪化することが報告されている(31)31) J. P. Zackular, J. L. Moore, A. T. Jordan, L. J. Juttukonda, M. J. Noto, M. R. Nicholson, J. D. Crews, M. W. Semler, Y. Zhang, L. B. Ware et al.: Nat. Med., 22, 1330 (2016).

⑦ポリフェノール

果物,野菜,茶,藻類,穀類などの食品や,コーヒー,紅茶,ココア,ワインなどの飲料には,多様なポリフェノールが含まれている.これらのポリフェノールが,有益な腸内細菌を増加させ,疾患予防に関与している可能性を示唆する報告が数多くなされている.たとえば,ラットの実験で,タマネギ(特に外皮に多い)やリンゴに多く含まれるケルセチンを投与すると,食事誘発性肥満に関連するErysipelotrichaceae科菌,Bacillus属菌やEubacterium cylindroidesの割合が低下する(32)32) U. Etxeberria, N. Arias, N. Boqué, M. T. Macarulla, M. P. Portillo, J. A. Martínez & F. I. Milagro: J. Nutr. Biochem., 26, 651 (2016)..また,老齢ラットに,ビルベリー由来のアントシアニンを摂取させたところ,Lactobacillus, Bacteroides, Allobaculum属菌が増加し,Verrucomicrobia門菌,Euryarchaeota門菌が減少した.この腸内細菌叢の変化によって,SCFAsの産生が増加し,加齢に伴う腸管透過性の亢進を抑制することが分かっている(33)33) J. Li, T. Wu, N. Li, X. Wang, G. Chen & X. Lyu: Food Funct., 10, 333 (2019).

おわりに

以上の食事因子は,腸内細菌叢および宿主の生理機能を変化させ,その結果,健康状態や疾患病態に影響を与える可能性がある.こういった変動因子による腸内細菌叢の変化を予測することができれば,健康維持や疾患予防に応用が可能である.しかし,変動因子による腸内細菌叢の変化の程度や質は個人によって大きく異なる.そのため,腸内細菌叢の組成に応じた層別化が今後必要であると考えている.加えて,各腸内細菌が宿主生理機能に与える影響についてしっかりと理解することも重要である.将来,個人の健康状態や病態に応じて,腸内細菌の組成をコントロールできるようになることを期待している.

Reference

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