バイオサイエンススコープ

グアーガム分解物の多彩な健康効果発酵性食物繊維と筋肉・免疫・脳機能

Aya Abe

安部

太陽化学株式会社ニュートリション事業部研究開発グループ学術チーム

Published: 2022-08-01

グアーガム分解物とは

グアーガム分解物(Partially Hydrolyzed Guar Gum,以下PHGGと略す)はインド北部やパキスタンなどの乾燥地帯で生育する豆科植物のグアー豆(Cyanopsis tetragonolopus)の胚乳部分に含まれるグアーガムを加水分解して得られる水溶性食物繊維である.グアーガムは分子量が約30~50万と大きく,保水性に富み,種子の養分となるだけではなく,乾燥から種子を守るためにも寄与している.水溶液は低濃度でも粘度が高く,増粘剤,ゲル化剤,安定剤として食品や化粧品など,さまざまな分野で利用されている.一方で,高粘度であるために食物繊維として十分量を摂取することが難しい.そこで,平均分子量約2万程度まで加水分解したものがPHGGで,さまざまな食品や飲料に添加しやすく,手軽に食物繊維を補うことが可能となった.グアーガム及びPHGGはガラクトースとマンノースから成るガラクトマンナンであり,図1図1■グアー豆とガラクトマンナンの構造のようにマンノースの主鎖にガラクトースの側鎖が約2 : 1の比率で結合した構造から成る.

図1■グアー豆とガラクトマンナンの構造

ガラクトマンナンは腸内細菌による資化性が高く,ヒト糞便培養試験で,ビフィズス菌や酪酸産生菌といった有用菌を選択的に増やすこと(1)1) Y. Ohashi, K. Harada, M. Tokunaga, N. Ishihara, T. Okubo, Y. Ogasawara, L. R. Juneja & T. Fujisawa: J. Funct. Foods, 4, 398 (2012).や,他プレバイオティクス素材に比べてより多くの短鎖脂肪酸を産生すること(2, 3)2) M. Velázquez, C. Davies, R. Marett, J. L. Slavin & J. M. Feirtag: Anaerobe, 6, 87 (2000).3) A. M. Pylkas, L. R. Juneja & J. L. Slavin: J. Med. Food, 8, 113 (2005).が明らかにされている.実際にヒトにおいてビフィズス菌や酪酸産生菌といった有用菌の比率を増加させること(4~6)4) T. Okubo, N. Ishihara, H. Takahashi, T. Fujisawa, M. Kim, T. Yamamoto & T. Mitsuoka: Biosci. Biotechnol. Biochem., 58, 1364 (1994).5) Y. Ohashi, K. Sumitani, M. Tokunaga, N. Ishihara, T. Okubo & T. Fujisawa: Benef. Microbes, 6, 451 (2015).6) Z. Yasukawa, R. Inoue, M. Ozeki, T. Okubo, T. Takagi, A. Honda & Y. Naito: Nutrients, 11, 2170 (2019).や,便中の短鎖脂肪酸量を増加させること(7, 8)7) S. J. Reider, S. Moosmang, J. Tragust, L. T. Greif, S. Tragust, L. Perschy, N. Przysiecki, S. Sturm, H. Tilg et al.: Nutrients, 12, 1257 (2020).8) M. Miyoshi, H. Kadoguchi, M. Usami & Y. Hori: Kobe J. Med. Sci., 67, E112 (2021).,アンモニアやフェノール類などの糞便悪臭物質を低減すること(4)4) T. Okubo, N. Ishihara, H. Takahashi, T. Fujisawa, M. Kim, T. Yamamoto & T. Mitsuoka: Biosci. Biotechnol. Biochem., 58, 1364 (1994).が確認されている.便秘改善(9)9) M. P. Kapoor, M. Sugita, Y. Fukuzawa & T. Okubo: J. Funct. Foods, 33, 52 (2017).だけではなく,下痢改善作用(10)10) N. H. Alam, H. Ashraf, M. Kamruzzaman, T. Ahmed, S. Islam, M. K. Olesen, N. Gyr & R. Meier: J. Health Popul. Nutr., 34, 3 (2015).も報告されており,経管栄養に伴う下痢の予防や改善にも活用されている(11, 12)11) H. H. Homann, M. Kemen, C. Fuessenich, M. Senkal & V. Zumtobel: J. Parenter. Enter. Nutr., 18, 486 (1994).12) T. A. Rushdi, C. Pichard & Y. H. Khater: Clin. Nutr., 23, 1344 (2004)..また,急激な発酵が起きにくく(13)13) D. So, C. K. Yao, P. A. Gill, N. Pillai, P. R. Gibson & J. G. Muir: Br. J. Nutr., 126, 208 (2021).,膨満感や腹痛を引き起こしにくい低FODMAP食品である(14)14) J. J. Atzler, A. W. Sahin, E. Gallagher, E. Zannini & E. K. Arendt: Trends Food Sci. Technol., 112, 823 (2021).ことから,安全性も高く,医療現場や介護施設などにおいても広く活用されている.加えて,消化管ホルモンの分泌を促進する作用や(15)15) R. Shimada, M. Yoshimura, K. Murakami & K. Ebihara: Int. J. Clin. Nutr. Diet., 1, 1 (2015).,満腹感を維持して間食を抑える作用(16)16) T. P. Rao, M. Hayakawa, T. Minami, N. Ishihara, M. P. Kapoor, T. Ohkubo, L. R. Juneja & K. Wakabayashi: Br. J. Nutr., 113, 1489 (2015).,食後血糖上昇抑制作用(17, 18)17) M. Tokunaga, Z. Yasukawa, M. Ozeki & J. Saito: Japanese Pharmacol. Ther., 44, 85 (2016).18) T. Trinidad, P. Elaine, L. Anacleta, M. Aida, E. Rosario, T. Yokawa, N. Aoyama & L. R. Juneja: Int. J. Food Sci. Technol., 39, 1093 (2004).,食後中性脂肪上昇抑制作用(19)19) S. Kondo, J. Z. Xiao, N. Takahashi, K. Miyaji, K. Iwatsuki & S. Kokubo: Biosci. Biotechnol. Biochem., 68, 1135 (2004).などが確認されており,糖代謝改善作用(20)20) V. Dall’Alba, F. M. Silva, J. P. Antonio, T. Steemburgo, C. P. Royer, J. C. Almeida, J. L. Gross & M. J. Azevedo: Br. J. Nutr., 110, 1601 (2013).,脂質代謝改善作用(21)21) M. P. Kapoor, N. Ishihara & T. Okubo: J. Funct. Foods, 24, 207 (2016).など,生活習慣病に対する有効性も認められている.

さらに,腸管バリア機能を賦活する作用も確認されている.腸管は常に食品成分やおびただしい数の腸内細菌にさらされているため,ムチン層やタイトジャンクション,抗菌ペプチドなどのバリア機能を有し,異物の侵入を防ぎ,腸管の恒常性を保っている.バリア機能の破綻は異物の体内への侵入を許し,全身性の慢性炎症を引き起こし,さまざまな疾患の発症や憎悪に関わることが知られている.PHGGは短鎖脂肪酸産生を促進することでタイトジャンクションタンパク質の発現を上昇させ,ムチンの分泌を促進し,消化管内のIgA分泌を促進する(22)22) T. V. Hung & T. Suzuki: J. Nutr., 148, 552 (2018)..加えて,ガラクトマンナン糖鎖の直接的な作用として,小腸上皮細胞のタイトジャンクションタンパク質の局在を変化させてバリア機能を賦活し(23)23) A. Majima, O. Handa, Y. Naito, Y. Suyama, Y. Onozawa, Y. Higashimura, K. Mizushima, M. Morita, Y. Uehara, H. Horie et al.: J. Dig. Dis., 18, 151 (2017).,上皮細胞の増殖を促進する(24)24) Y. Horii, K. Uchiyama, Y. Toyokawa, Y. Hotta, M. Tanaka, Z. Yasukawa, M. Tokunaga, T. Okubo, K. Mizushima, Y. Higashimura et al.: Food Funct., 7, 3176 (2016)..このようにPHGGは間接的に,もしくは直接,腸管バリア機能を高めるため,全身性の慢性炎症の抑制に寄与する可能性が考えられる.

以上のように,PHGGは腸内細菌叢の改善や短鎖脂肪酸産生促進,腸管バリア機能賦活作用などを介して,消化管のみならず全身の健康に寄与する可能性があり,実際に近年いくつかの新たな機能が見出されつつある.本稿ではその中で筋肉,免疫,脳への作用について紹介する.

筋委縮抑制作用

全身性の慢性炎症が関与する症状の1つに骨格筋の萎縮が挙げられる.骨格筋は筋タンパクの合成と分解のバランスにより維持されるが,炎症は筋タンパクの合成を抑制し,分解を促進するため,持続する全身性の炎症は筋萎縮につながる.このことから腸内細菌叢の異常や腸管バリア機能の破綻による慢性炎症はサルコペニアやフレイルに関係する可能性が考えられる.PHGGは腸管バリア機能を改善することから筋委縮に対する有効性が期待され,2つの動物モデルで検討を行った.まず,著しい骨格筋の減少を特徴とする,がん悪液質モデルマウスを用いた検討で有効性が確認された(25)25) T. Sakakida, T. Ishikawa, T. Doi, R. Morita, Y. Endo, S. Matsumura, T. Ota, J. Yoshida, Y. Hirai, K. Mizushima et al.: Cancer Sci., 113, 1789 (2022)..がん悪液質は筋肉減少,身体機能低下,食欲不振などを特徴とする複合的な代謝疾患で,患者の予後やQOLに多大な影響を与えるが,未だ有効な治療法は確立されていない.実験ではマウスをPHGG摂取群および食物繊維非摂取群に分けて飼育したのち,それぞれに,がん細胞を皮下移植したがん悪液質モデル群,生理食塩水を皮下移植したコントロール群の4群を作成し,骨格筋や腸内細菌叢,腸管バリア機能,炎症などへの作用を評価した.その結果,がんの移植により食物繊維非摂取群では顕著に体重および骨格筋が減少したのに対し,PHGG摂取群では体重や骨格筋量が維持され,筋委縮に対する有効性が認められた.また,PHGGの摂取により,骨格筋の筋萎縮関連遺伝子の発現亢進抑制,腸内有用菌の増加,糞中短鎖脂肪酸の増加,腸管粘膜バリア機能の維持,病原菌の侵入抑制,腸内細菌由来の内毒素の侵入抑制,炎症性サイトカインの上昇抑制などが観察された.以上のことから,PHGGは腸内細菌叢を改善し,短鎖脂肪酸産生を促進することで腸管粘膜バリア機能を維持し,病原菌や内毒素の侵入を阻止することで炎症を抑制し,炎症により惹起される骨格筋の筋萎縮関連遺伝子の発現を抑制し,筋肉の維持に寄与するという,一連のメカニズムが明らかになった.

さらに,糖尿病モデルマウスを用いた検討においても有効性が確認された(26)26) T. Okamura, M. Hamaguchi, J. Mori, M. Yamaguchi, K. Mizushima, A. Abe, M. Ozeki, R. Sasano, Y. Naito & M. Fukui: Nutrients, 14, 1157 (2022)..肥満や糖尿病患者では脂肪は増加する一方,骨格筋の減少が問題となるケースが多くみられるが,筋肉量の低下と肥満の両者が併存すると,サルコペニア肥満としてエネルギー代謝の低下,インスリン抵抗性の亢進,転倒・骨折のリスクの増大などを招き,重大な健康上のリスクとなる.実験では,糖尿病モデルマウスに通常食(ND群),食物繊維除去食(FFD群),5%PHGG食(PHGG群)を投与し,サルコペニア・肥満に対する作用を組織学・細胞生物学的に評価した.その結果,ND群およびFFD群ではサルコペニア肥満が観測された一方で,PHGG群では握力低下・筋肉減少の改善,内臓脂肪量の減少,耐糖能障害の改善,基礎代謝低下の改善,脂肪肝・脂質代謝改善作用が確認され,有意にサルコペニア肥満が抑制された(図2図2■PHGGの握力および骨格筋(ヒラメ筋・足底筋)への作用).また,PHGGの摂取により,便および血液中の短鎖脂肪酸の増加,筋肉中の分岐鎖アミノ酸の上昇,飽和脂肪酸の排泄の増加,骨格筋の筋萎縮関連遺伝子の発現低下および小腸の炎症関連遺伝子の発現低下,小腸粘膜固有層における炎症性の免疫細胞の減少が認められた.短鎖脂肪酸には脂質代謝や糖代謝改善作用,耐糖能改善作用があること(27)27) F. D. Vadder, P. K. Datchary, D. Goncalves, J. Vinera, C. Zitoun, A. Duchampt, F. Bäckhed & G. Mithieux: Cell, 156, 84 (2014).,分岐鎖アミノ酸には筋タンパクの分解抑制および合成促進作用があることから(28)28) Y. Kamei, Y. Hatazawa, R. Uchitomi, R. Yoshimura & S. Miura: Nutrients, 12, 261 (2020).,PHGGは短鎖脂肪酸や分岐鎖アミノ酸などを介して全身の代謝を調節し,サルコペニア肥満を抑制した可能性が考えられる.また,飽和脂肪酸の排泄促進作用も肥満抑制につながった可能性があり,小腸の炎症抑制作用が栄養素の吸収調節に関係するかも含め,今後の詳細な検討が期待される.以上のように,PHGGのサルコペニア肥満抑制作用には腸内環境改善だけではなく,分岐鎖アミノ酸増加,小腸の炎症抑制や飽和脂肪酸の排泄促進などの作用も関与する可能性が示された.

図2■PHGGの握力および骨格筋(ヒラメ筋・足底筋)への作用

今後ヒトでの検証が必要となるが,未だ有効な治療法のない筋萎縮やサルコペニア肥満に対する腸内環境維持の重要性が示され,新たな予防・治療法の開発につながる可能性が期待される.

免疫調節作用

腸内環境が全身の免疫に深く関与していることは知られているが,PHGGに関しても,腸内環境の変化を介して自然免疫を賦活することで病原菌の感染を抑制することが示された(29)29) H. Tsugawa, Y. Kabe, A. Kanai, Y. Sugiura, S. Hida, T. Shun’ichiro, T. Takahashi, H. Matsui, Z. Yasukawa, H. Itou et al.: PLoS Biol., 18, e3000813 (2020)..食中毒の原因として知られるサルモネラ菌は,腸内でマクロファージ内に感染して腸管バリアを突破して血流に入り,全身性のショックなど重篤な症状を引き起こす.マウスのサルモネラ菌感染モデルにおいてPHGGの免疫賦活作用を検証したところ,PHGGの摂取によりサルモネラ感染による致死率の有意な低下が示された.また,そのメカニズムとして,PHGGの摂取により産生促進される短鎖脂肪酸によるインフラマソームの活性化が関与することが明らかになった.インフラマソームは主に免疫細胞が持つ複合体で,感染や傷害に伴う危険シグナルに応答して複合体を形成し,炎症性サイトカインの産生を亢進させ,感染細胞の細胞死を誘導する.短鎖脂肪酸がインフラマソーム複合体の形成を亢進するという新たな制御機構が明らかにされ,PHGGが短鎖脂肪酸産生を介して自然免疫系を賦活することが確認された.

また,ヒトにおいても,国内の病院よりPHGGのインフルエンザ感染抑制作用が報告されている(30)30) C. Takahashi & M. Kozawa: Clin. Nutr. ESPEN, 42, 148 (2021)..経口摂取可能な入院患者522名をPHGG摂取群(回復期リハ病棟172名,療養病棟16名)と非摂取群(回復期リハ病棟320名,療養病棟14名)に分け,インフルエンザ発症率と便性状・便pHの関係について,後ろ向き観察研究が実施された.PHGG摂取量は1日あたり5.2 gであった.その結果,非摂取群のインフルエンザ発症率は回復期リハ病棟で3.5%,療養病棟で85.7%であったのに対し,PHGG摂取群の発症率は両病棟において0%と有意に低かった.また,PHGG摂取群ではpH高値便が少なく,便性状も良好であることが認められた.以上から,PHGGは腸内環境改善および短鎖脂肪酸産生促進を介して,細菌やウイルスによる感染の予防に寄与することが期待される.

脳機能調節作用

腸内細菌叢と脳機能との密接な関わり,即ち脳腸相関も近年注目を集めているが,PHGGについても腸内環境の変化を介した脳への作用として,自閉症スペクトラム障害(ASD)改善作用が確認された(31)31) R. Inoue, Y. Sakaue, Y. Kawada, R. Tamaki, Z. Yasukawa, M. Ozeki, S. Ueba, C. Sawai, K. Nonomura, T. Tsukahara et al.: J. Clin. Biochem. Nutr., 64, 217 (2019).

ASDは近年増加傾向にある発達障害の1つで,他者とうまくコミュニケーションができない,興味や活動が偏るといった症状を特徴とする.食事へのこだわりの強さから極端な偏食を伴い,下痢や便秘を併発しやすく,腸内細菌叢や腸管バリア機能の異常も報告されている.PHGGは味やにおいが少なく,食感にも大きく影響しないことから,偏食のASD児でも抵抗無く摂取することができ,ASD児の腸内環境を改善することが期待された.そこで,13名の便秘症のASD児に対し,PHGGを1日あたり6 g,平均2ヶ月以上継続して摂取してもらい,排便回数,易刺激性(興奮性行動),血液中の炎症性マーカー,腸内細菌叢の前後比較を実施した.その結果,PHGGの摂取により,排便回数が有意に増加し,易刺激性サブスケールが有意に低下した(図3図3■PHGGのASD児への効果).腸内細菌叢においてはASD児で減少が確認されているBlautia属の増加を含め,9菌属の占有率が有意に変化した.さらに血液中の炎症性マーカーの低下も認められ,PHGGの摂取によりASD児の全身性の炎症が抑制されることが示された.ASD児では腸内細菌叢の異常による腸の局所的な炎症が原因となり,腸管バリア機能や血液脳関門の透過性が変化し,全身および中枢神経系に二次的な炎症が誘発される可能性が示されている(32)32) C. Davies, D. Mishra, R. S. Eshraghi, J. Mittal, R. Sinha, E. Bulut, R. Mittal & A. A. Eshraghi: Neurosci. Biobehav. Rev., 128, 549 (2021)..PHGGの摂取による興奮性行動の緩和は,腸内環境改善による全身炎症の抑制が脳にも関与する,という脳腸相関の可能性を示しており,詳しいメカニズムの解明が期待される.

図3■PHGGのASD児への効果

また,最近,中国の研究グループがPHGGの抑うつ作用を明らかにした(33)33) Y. Chen, M. Wan, Y. Zhong, T. Gao, Y. Zhang, F. Yan, D. Huang, Y. Wu & Z. Weng: Mol. Nutr. Food Res., 65, 2100146 (2021)..さまざまなストレスをランダムに与え,うつ症状を誘発したマウスに対し,予防作用を検証するためにストレス介入の前から,改善作用を検証するためにストレス介入の後に,それぞれPHGGを摂取させ,体重,うつ様行動,腸内細菌叢,糞中短鎖脂肪酸,血清,線条体,海馬中のセロトニンおよびドーパミンレベルを調べた.その結果,PHGGの摂取により,体重減少とうつ様行動が抑制され,腸内細菌叢が変化し,糞中短鎖脂肪酸が増加した.また,血清,脳の線条体および海馬のセロトニンおよびドーパミンレベルが回復した.以上のことから,PHGGは腸内細菌叢の変化を介して短鎖脂肪酸の産生を促進し,セロトニンやドーパミンの量を維持させ,うつ病を予防および改善する可能性が示唆された.

以上から,PHGGは腸内環境の変化を介して脳機能をも調節する可能性が明らかになった.今後,さらなる検証が望まれるが,PHGGが腸内環境の改善や腸内細菌叢の変化を介して全身性の炎症を抑制したり,神経伝達物資を調節したりするなどの可能性が示されたことは大変意義深い.

おわりに

PHGGは開発されてから30年以上の歴史を持ち,国内外の数多くの研究によりプレバイオティクスとしての有効性が報告されている.さらに,近年の研究により,消化管の健康だけではなく,全身にさまざまな健康効果をもたらすことが明らかにされつつある.PHGGを関与成分とした機能性表示食品も増えており,これまでに,腸内環境改善・軟便改善・便通改善・食後血糖上昇抑制の4つのヘルスクレームが受理されている(図4図4■PHGGのヘルスクレーム(機能性表示食品)).当社ではさらなるPHGGの有効性やそのメカニズムを明らかにするために,国内外の研究機関との共同研究にも取り組んでいる.これからも世界中の人の健康に貢献することを目標に,科学的エビデンスを蓄積していきたい.

図4■PHGGのヘルスクレーム(機能性表示食品)

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