セミナー室

食品添加物による微生物の抑制細菌汚染対策編

Tsuyoshi Odawara

小田原

株式会社タイショーテクノス

Toshihide Yanagisawa

柳澤 俊英

株式会社タイショーテクノス

Published: 2023-01-01

はじめに

食品添加物は昨今ではあまり健康イメージのよくないものとしてとらえられがちだが,厚生労働省のHPでは,『食品添加物は,保存料,甘味料,着色料,香料など,食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものであり,(中略)…人の健康を損なうおそれのない場合に限って,成分の規格や,使用の基準を定めたうえで,使用を認めています.』(1)1) 厚生労働省:食品添加物 概要,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.htmlとあり,安全性が確認されているものである.しかし,保存料や日持ち効果があるものは微生物の生育抑制効果を目的とすることから人へもそういった影響があるのではと思われがちであるが,その多くの発見は自然や過去の食経験から見出されたものである.

一方,ここ数年では将来的な食糧不足が懸念され,SDGsや食品ロスへの取り組みも始まっており,食品の保存性もこれまでとは違った見方で評価される可能性もある.使用のされ方としても,より長く日持ちさせるためにチルド弁当+日持向上剤や冷凍食品を自然解凍し,そのまま喫食する食品への日持向上剤の使用など,これまでと違った使用場面が増えている.また,敬遠されがちであった保存料なども食品の味やテクスチュアへの影響が少ないことから,よりおいしい食品や本格的な味を求められるような場面においては,HACCPの普及により衛生管理が進んだことから,より低添加量での使用などの方向性も考えられる.

本稿では,微生物のなかでも多くの食品で食中毒や腐敗の原因となる細菌の生育抑制に使用される食品添加物に絞り,その由来や静菌性能と食品に使用する際の課題などを挙げて解説する.

酢酸とその塩類

酢には3~5%の酢酸が含まれており,抗菌性があることは古くから知られている.また,安全で健康的な食材というイメージもある.このような酢の抗菌効果を,コストを抑えつつ最大限利用するためには,有効成分となる酢酸もしくは,その塩類を高濃度に日持向上剤へ配合して使用することが考えられる.しかし,高濃度の酢酸を液体製剤とした場合,その強い酢酸臭により製剤自体の取り扱いが難しく,最終食品においても酢酸は独特の強い酸味を呈する.よって,酢酸をそのまま食品に加えた場合には味への影響が大きく汎用的ではない.そこで日持向上剤は酢酸ナトリウムを主成分として含有し,酸性成分によってpHをコントロールした製剤が多く流通している.

また,酢酸塩類の抗菌性には,細菌類には幅広く有効であるが,乳酸菌や真菌類のかびや酵母にやや弱いという傾向がある.酢酸の抗菌メカニズムは,非解離状態の酢酸が菌体内に取り込まれることで菌体内の水素イオン濃度が上昇し,これを排出するためにエネルギーが消費され,最終的に菌の生存を維持することができず死滅に至るということが知られている(2)2) 指原信廣:Jpn. J. Food Microbiol., 26, 81(2009).

前述の酢酸ナトリウム製剤に酸性成分が必須なのは,抗菌性を有する非解離型酢酸を,pHコントロールによって発生させるためである.したがって,より低酸性側にpHをコントロールして非解離型酢酸を多く発生させれば,抗菌能力は高まることになる.図1図1■pHによる非解醸酢酸の存在比率(%)にはpHによる,非解離型酢酸の存在比を示した.

図1■pHによる非解醸酢酸の存在比率(%)

図2図2■非解離酢酸量と日持ち日数の関係(蒸し蒲鉾)には筆者が行った酢酸ナトリウム製剤を添加した蒸し蒲鉾の日持ち試験結果を示したが,非解離型酢酸量が増加するほど蒸し蒲鉾の日持ち日数も延び,その関係性には直線性があることがわかる.

図2■非解離酢酸量と日持ち日数の関係(蒸し蒲鉾)

しかし,非解離型酢酸は抗菌効果を示す一方で酸味も呈することから,非解離型酢酸の増加は酸味の増加にもつながってしまう.また,前述したように多くの酢酸ナトリウム製剤はpHをコントロールするために酸性成分を配合していることから,酸性成分による酢酸とは異なる酸味も加わり,より酸味が強くなる.こういったことから,配合される酸性成分にはより酸味の感じにくい低酸味のフマル酸や溶解するとグルコン酸を発生するグルタノデルタラクトンなどが配合されているものもある.筆者はこの酸性成分による酸味の排除や抗菌の有効成分とはならない酸性成分を排除するために,酸性成分を酢酸とした粉末の製剤を開発した経緯がある.開発した製剤は,従来のものに比べると抗菌効果の増加や味への影響の低減はされたものの,酢酸ナトリウム由来の『あまからい』味と,非解離型酢酸由来の若干の酸味は元の食品の味に変化を与えてしまった.そこで,更なる検討を行った結果,味への影響で特に大きいのは酢酸ナトリウム由来の『あまからい』味であることから,食品の調味として加えられる砂糖や塩(醤油など)の添加量を減じてみると,かなりの改善がなされ,この手法は従来型の日持向上剤でも一定の効果があることが確認できた.

したがって,酢酸ナトリウム製剤の使用を食品に検討する場合,開発時の味の正確な再現を求めるのであれば,必要な抗菌性能に足る酢酸ナトリウム製剤の添加量を決定した後に添加対象となる食品の調味の再調整も必要と思われる.また,タンパク質を多く含む食品の場合,タンパク質はpHの影響により変質,不溶化,軟化するので食感への影響も考慮に入れる必要ある.

ソルビン酸とその塩類

ソルビン酸は古くから保存料として用いられ,魚肉練り製品や食肉製品,漬物など種々の食品に使用されている.自然界においてはナナカマドの未熟果汁中に含まれる(3)3) (財)日本食品化学研究振興財団ソルビン酸カルシウム指定のための検討報告書.p. 2, https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20080526te1&fileId=109.ソルビン酸塩についてはカリウム塩が多く流通しており,他にカルシウム塩も保存料として認められている.前述の酢酸塩類と同様にソルビン酸の抗菌力は非解離型のソルビン酸によるため,pH依存的であり,pHが低いほど抗菌力は強まるが,抗菌力は酢酸塩類より全般的に強く,酢酸塩類がやや弱い,かびや酵母のような真菌類への抗菌効果も優れている.例えばビール酵母として知られるSaccharomyces cerevisiaeに対する抗菌力は,pH 5.5ではソルビン酸が酢酸より5倍程度強く,低濃度で有効であった.一方,グラム陽性細菌のBacillus cereusに対する抗菌性についてはpH 5.5でややソルビン酸が強いものの,何れも低濃度で生育阻止できる(4, 5)4) 松田敏生,矢野俊博,丸山晶弘,熊谷英彦:日食工,41, 687(1994).5) 霜 三郎,福住栄一:“食品防腐剤の使い方”,信貴書院,1965, p. 123..このようなソルビン酸の作用機作はスルフヒドリル系酵素(酵素の活性発現にシステイン残基のメルカプト基が関与している酵素)の阻害によるものと言われている(6)6) J. R. Whitaker: J. Food Sci., 24, 41 (1959).

また,真菌においては酢酸より鎖長の長いプロピオン酸(より疎水性が高い)の方が抗菌力が高いといった報告(4)4) 松田敏生,矢野俊博,丸山晶弘,熊谷英彦:日食工,41, 687(1994).がある.ソルビン酸も酢酸に比べて疎水性が高いことが,強い抗菌力を示すことに関与していると考えられる.

ソルビン酸が酢酸に比べ低濃度で抗菌効果を発揮することは,前項にて述べた食感や味への影響といった面では酢酸・塩類に比べ,かなり優位である.

ソルビン酸は加熱によって揮発しやすいため,加熱工程の終わりに添加するのが望ましい.ソルビン酸の効力を高めるためには,酢酸と同様,非解離分子を増やすように最終的なpHをできるだけ低くする必要がある.ソルビン酸は溶解度が0.15%と低いため,ソルビン酸カリウムを主体に使用し,最終的なpHを味への影響を考慮しつつ調整する.実使用に際して,懸念される弊害の一つとして,蒲鉾等の水産練り製品で使用する場合に生じる坐り(すわり:加熱前すり身の塩溶性タンパクの架橋重合によるゲル化.加熱後の弾力にも大きな影響を与える)の阻害が挙げられる.蒲鉾は加熱前のすり身にソルビン酸を添加するが,この際に非解離の酸を得るためにpHを下げると,坐りの阻害を引き起こす.この対策として,ソルビン酸粒子を油脂でコートしたコートソルビン酸製剤が製品化されている.

図3■ソルビン酸の油脂コート(左が無処理,右がコートソルビン酸)

このコートソルビン酸の働きは,坐り工程においてソルビン酸がコーティングによって溶出しないため加熱前すり身の坐りに影響を与えず,その後の加熱で油脂が溶けてソルビン酸が溶出し,非解離のソルビン酸が抗菌性を発揮するというものである.酢酸も同様の坐り阻害現象を生じるが,この場合はコートフマル酸製剤が製品化されているため,酢酸ナトリウムを主体にこれを使用して,加熱後にフマル酸の溶出でpHを下げることができる.

しかしながら,ソルビン酸とその塩類は指定添加物として保存料に分類されており,使用できる食品や添加量が制限されているため注意が必要である(7)7) 食品添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第2 添加物(平成29年11月30日現在)F使用基準.p. 1050–1052. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000186616.pdf

グリシン

グリシンは自然界では甲殻類の甘味の主成分として存在している.抗菌性は大部分の好気性芽胞菌(Bacillus属)に対して食品中では2%程度で有効であり,グラム陰性菌には弱く,5%以上必要である.グリシンの作用機作は,グリシンの過剰な供給によって,ペプチドグリカン前駆体中にグリシンが取り込まれることで,本来アラニンが組み込まれるべき構造に異常が生じ生育が阻害されることによる(8)8) 小磯博昭:日本食品微生物学会雑誌,31, 70(2014)..したがって,ペプチドグリカン層の剥き出しになっているグラム陽性菌に効きやすい.またペプチドグリカン層を持たない真菌類には無効である.以上の性質から,加熱食品における耐熱性芽胞菌対策として使用されることが多い.また,実使用においては単独で使用するより,他の成分と併用されることが多く,食品への添加量は併用剤にもよるが,0.5~2%程度となる.注意すべき点として,甘みの影響や,高温加熱調理でのメイラード反応による褐変がある.以下にグリシンの実使用例を挙げる.蒲鉾においてソルビン酸カリウムと併用した場合,ソルビン酸カリウム単独使用において室温,5日後に菌汚染による外観変化が生じたのに対し,同条件でグリシンを低濃度併用した場合は7日間外観の変化は見られなかった(9)9) 永岩 修:“これからの水練り製品”,食品と科学社,1967, p. 134..続いてグリシンの耐熱性菌に対する有効性を示す例として,ゆで麺に使用した場合の試験例を紹介する.グリシン単独の実用レベルでの添加はゆで後の包装までの工程で生じた雑多な二次汚染菌を抑制できなかったが,ゆで麺を包装後蒸気殺菌したものでは,グリシン無添加と比較して,低濃度添加によっても有効に作用した(10)10) 棚田益夫,内田晴彦:日食工,21, 345(1974)..このことから,包装後の蒸気殺菌によって耐熱性芽胞のみが残存した条件においては,グリシンは有効に作用したことがわかる.

しらこたん白抽出物

しらこたん白抽出物は,魚類の精巣の核酸および塩基性蛋白質を酸性水溶液で分解後,中和することで製造されている(11)11) 日本食品化学研究振興財団:既存添加物名簿収載品目リスト,https://www.ffcr.or.jp/tsuuchi/upload/%e5%88%a5%e6%b7%bb%ef%bc%91.pdf.しらこたん白のアミノ酸組成のうち70%がアルギニンであるため,塩基性が強く等電点は12付近となる.分子量は3,000~10,000程度である(12)12) 大西隆志:生活衛生,36, 179(1992)..実使用に際して,熱には比較的安定だが,120°Cの加熱で活性が低下する.また,しらこたん白は,特有の苦味があるため食品への添加量は0.1%程度を目安とする.作用機作は,しらこたん白がカチオン性であり,また強力な塩基性によって,アニオン性細胞表面への結合が促進され,細胞壁に大きな損傷を与えるとことによるといわれている(13)13) N. M. D. Islam, H. Oda & T. Motohiro: Nippon Suisan Gakkaishi, 53, 297 (1987)..抗菌性の特徴として,グラム陽性菌に効果が強く,特に好気性芽胞菌に対して優れている.食品のpHは中性からアルカリ性が好ましく,前述の酢酸やソルビン酸がpHの低下で抗菌効果が高まるのに対して,しらこたん白はpHが上昇すると抗菌力が高まる性質がある.効力の阻害要因として,金属イオン,寒天のような多糖類,タンパクやペプチドがある.以下にしらこたん白の抗菌力測定結果を示す.ブレインハートインフュージョン培地を用いて,ブドウ球菌と枯草菌で効果を調べたところ,pH 8.0がpH 6.0より10倍以上強い抗菌力を示した(14)14) 松田敏生:New. Food. Ind., 33, 36(1991)..また,ニュートリエント培地を用い,寒天で培地を固化したものと寒天を使用しない液体培地とで比較した試験においては,2菌ともに液体培地での効果が100倍以上強かった(14)14) 松田敏生:New. Food. Ind., 33, 36(1991)..このようなことから,食品中でも多糖類やタンパク,pHの影響により,効力低下を生じる可能性を考慮する必要がある.最後に,しらこたん白が食品中で他の成分と相乗的な効果を示した例を挙げる.ケーシングかまぼこにおいて,しらこたん白の単独使用は弱い保存効果しか得られなかった.これに対して,グリシンを併用することによって単独の倍程度の保存可能日数を得ることが可能であった.さらに,重曹を併用することによりpHを7.1から7.9に高めた場合には単独の3倍以上の保存日数を得ることが可能であった(14)14) 松田敏生:New. Food. Ind., 33, 36(1991).

ε-ポリリシン

ε-ポリリシンは放線菌Streptomyces albulusの培養液から分離精製されたリシンが25~30個連なったホモポリマーである(15)15) S. Shima & H. Sakai: Agric. Biol. Chem., 45, 2503 (1981)..広いpH域で抗菌性を示し,抗菌力はグラム陽性,陰性問わず多種の細菌に対して100 ppm以下を示す.特にグラム陰性菌の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して3 ppmという低濃度で有効であることは食品添加物では特長的な効果といえる(16)16) S. Shima, H. Matsuoka, T. Iwamoto & H. Sakai: J. Antibiot., 37, 1449 (1984)..しかし,一部の酵母やかび全般に対しては,抗菌力が弱い傾向がある.食品への使用に際して,ポリリシンの耐熱性は高く,120°C,20分の加熱でも活性は低下しない.また添加量によっては苦みが生じるため,注意を要する.抗菌メカニズムについては,ポリリシンはカチオン性を示すため,しらこたん白と同様にアニオン性の菌体表面に吸着し,膜に損傷を与えることで殺菌する(8)8) 小磯博昭:日本食品微生物学会雑誌,31, 70(2014)..したがって,このカチオン性により,食品成分に吸着されて効力低下する場合があるため,食品中での効果は上述の抗菌力とは一致しないことが多い.例えば,サラダにポリリシンを添加して20°Cに保管し,サラダの分離菌を加えて保存した場合,1%添加することで,ようやく4日間菌を抑えることが可能であった(17)17) 新藤 徹,藤井正弘:月刊フードケミカル,5, 31(1990)..一方,蒲鉾での使用においては,Bacillus subtilisを汚染菌として接種した条件において,ポリリシン200 ppmとグリシンの併用は4~5日の日持効果であり,無添加と大差ないが,同添加量で炭酸ナトリウムを用いてpHを7.0から7.8に上げることによって,日持日数を9日以上に延長できた(自社データ).これは蒲鉾のようなタンパク質リッチな素材でも条件によってはポリリシンが有効に作用することを示し,しらこたん白同様にpHの上昇で効力が高まることも示唆されている.

ナイシン

乳酸菌から産生される抗菌性物質であるバクテリオシンは多数知られているが,Lactococcus lactis subsp. lactisから産生されるペプチドは比較的抗菌スペクトラムが広いことから,ナイシンとして実用化され,世界50か国以上で使用されている.日本でも2009年に保存料として新規指定された.ナイシンは構造中にデヒドロアラニン,デヒドロブチリン,ランチオニンなど特殊なアミノ酸を含み,34個のアミノ酸からなる(18)18) 厚生労働省:ナイシンの食品添加物の指定に関する添加物部会報告書(案),https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0228-8c_0001.pdfBacillus属やClostridium属のような芽胞形成菌に対して,強い生育阻止効果が得られる.乳酸菌に対しても効果は認められるが,一部の菌種には無効なものもある.その他のグラム陽性菌には菌種によってばらつきはあるものの,数ppm~500 ppmで有効性が認められる菌種が多い(19)19) 松田敏生:“食品微生物制御の化学”,幸書房,1998, p. 311..作用機作は,ナイシンが細胞壁のペプチドグリカン前駆体であるリピドIIに吸着したものが,複数結合し,筒状になって細胞膜に移行することで細孔を形成するため,細胞質の流出が生じることによるものといわれている(20)20) 益田時光,善藤威史,園元謙二:ミルクサイエンス,59, 59(2010)..そのため,外膜を脂質二重膜で覆われたグラム陰性菌には効果がない.ナイシンの食品での使用例として,液状卵での効果を示す.液状卵にナイシンを5 ppm添加し,64.4°C,2.5分間殺菌して6°Cで保存したところ,ナイシン無添加区では7日でBacillus cereus等が検出され腐敗したが,ナイシン添加区は17日間,僅かにグラム陰性菌のPseudomonas属菌が検出されたものの低い菌数レベルを維持した(21)21) J. Delves-Broughton, G. C. Williams & S. Wilkinson: Lett. Appl. Microbiol., 15, 133 (1992)..以上より,ナイシンは非常に低い濃度で加熱後の汚染対策に有効であることがわかる.しかしながら,ナイシンは指定添加物として保存料に分類されており,使用できる食品や添加量が制限されているため注意が必要である(22)22) 食品添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第2 添加物(平成29年11月30日現在)F使用基準.p. 1054. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000186616.pdf

リゾチーム

リゾチームはもともと鼻汁から発見された溶菌酵素であり,その後卵白より抽出し,結晶化されたものが流通している.その分子量は14,400であり,129個のアミノ酸から構成されている.抗菌メカニズムについては,細胞壁中のペプチドグリカン層を構成するN-アセチルグルコサミンとN-アセチルムラミン酸間のβ-1,4結合を加水分解することで溶菌することによる(23)23) 山本武彦,L・R・ジュネジャ,八田 一:化学と生物,35, 274(1997)..したがって,ペプチドグリカン層が剝き出しになったグラム陽性菌には有効だが,細胞壁が脂質二重膜に覆われたグラム陰性菌には殆ど溶菌作用を示さない.実使用に際しては,食品中のタンパクや酸性多糖類で抗菌活性が阻害される場合がある.また,耐熱性について,pH 7では100°C,10分で失活するが,pH 3では100°C,45分の加熱に耐えることから,添加対象食品の加熱とpHにも配慮が必要である.食品への応用例として,里芋の煮物での試験結果を示す.里芋の煮汁に酢酸ナトリウムとグリシンを併用添加した場合(煮汁:pH 5.4)は25°C,48時間後に104 CFU/gの菌が検出されたのに対して,同条件で40 ppmのリゾチームをさらに併用することで48時間後において菌は検出されなかった(自社データ).

おわりに

以上,食品添加物による微生物の抑制として細菌に効果の高い成分の紹介を行った.有機酸として非解離分子の抗菌性を活かす,酢酸とソルビン酸.カチオンポリマーとして抗菌性を示す,しらこたん白とポリリジンといった作用機作による系統もあり,ここから異なる作用機作を持つ成分の組み合わせが,相乗効果を生んでいく可能性を秘めていることもご理解いただけたかと思う.第4回は真菌(カビ・酵母)に効果の高い成分について解説する.

Reference

1) 厚生労働省:食品添加物 概要,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html

2) 指原信廣:Jpn. J. Food Microbiol., 26, 81(2009).

3) (財)日本食品化学研究振興財団ソルビン酸カルシウム指定のための検討報告書.p. 2, https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20080526te1&fileId=109

4) 松田敏生,矢野俊博,丸山晶弘,熊谷英彦:日食工,41, 687(1994).

5) 霜 三郎,福住栄一:“食品防腐剤の使い方”,信貴書院,1965, p. 123.

6) J. R. Whitaker: J. Food Sci., 24, 41 (1959).

7) 食品添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第2 添加物(平成29年11月30日現在)F使用基準.p. 1050–1052. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000186616.pdf

8) 小磯博昭:日本食品微生物学会雑誌,31, 70(2014).

9) 永岩 修:“これからの水練り製品”,食品と科学社,1967, p. 134.

10) 棚田益夫,内田晴彦:日食工,21, 345(1974).

11) 日本食品化学研究振興財団:既存添加物名簿収載品目リスト,https://www.ffcr.or.jp/tsuuchi/upload/%e5%88%a5%e6%b7%bb%ef%bc%91.pdf

12) 大西隆志:生活衛生,36, 179(1992).

13) N. M. D. Islam, H. Oda & T. Motohiro: Nippon Suisan Gakkaishi, 53, 297 (1987).

14) 松田敏生:New. Food. Ind., 33, 36(1991).

15) S. Shima & H. Sakai: Agric. Biol. Chem., 45, 2503 (1981).

16) S. Shima, H. Matsuoka, T. Iwamoto & H. Sakai: J. Antibiot., 37, 1449 (1984).

17) 新藤 徹,藤井正弘:月刊フードケミカル,5, 31(1990).

18) 厚生労働省:ナイシンの食品添加物の指定に関する添加物部会報告書(案),https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0228-8c_0001.pdf

19) 松田敏生:“食品微生物制御の化学”,幸書房,1998, p. 311.

20) 益田時光,善藤威史,園元謙二:ミルクサイエンス,59, 59(2010).

21) J. Delves-Broughton, G. C. Williams & S. Wilkinson: Lett. Appl. Microbiol., 15, 133 (1992).

22) 食品添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第2 添加物(平成29年11月30日現在)F使用基準.p. 1054. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000186616.pdf

23) 山本武彦,L・R・ジュネジャ,八田 一:化学と生物,35, 274(1997).