解説

環境調和型プロセスにより脱脂米糠から回収・精製されたアレルゲンフリータンパク質及びリン化合物の機能性食品原材料としての用途開発・市場導入に関する研究国内産水稲からのタンパク質供給による持続的な稲作の可能性

Development of New Properties and Market Introduction of Allergen-free Protein and Functional Organic Phosphorus Compound as Food Law Materials Derived from Defatted Rice Bran by Using Environmental Harmonized Process: Possibility of Sustainable Rice Cropping by the Plant Base Protein Production from Locally Produced Paddy Rice

Masanori Watanabe

渡辺 昌規

山形大学大学院農学研究科

Published: 2023-04-01

現在,世界的な人口爆発,畜肉生産による環境への負荷,食糧安全保障の観点から,自国自給可能であり,食糧と競合しない非可食部由来の植物性タンパク質,リン供給が課題となっている.特に,本国のような輸入依存度の高い国では,より深刻な状況にある.本研究では,国内自給が可能なタンパク質含有未利用バイオマスである米糠(脱脂米糠)に着目し,同バイオマスからのタンパク質・リン成分の2成分同時回収・精製を可能にする環境調和型プロセスであるIP-EWT(等電点沈殿・電解水処理)法の開発及び本法により得られた“アレルゲン・GMOフリー米糠由来タンパク質”の代替肉への適用可能性について取り組んでいる.本技術の確立・事業化により,従来の白米を生産する稲作から,白米+タンパク質+リン成分の生産を可能にする収益性の高い稲作へのパラダイムシフトと持続的農業(稲作)の振興が期待される.

Key words: 米糠タンパク質; 有機リン化合物; 脱脂米糠; アレルゲンフリー; 代替肉

はじめに

米の精米時に副生される米糠は,世界で年間約5千万t(2020年度米生産量5億万t(USDA統計報告2021年度)の10%)存在しているとされており(1)1) 農林水産省:米国務省穀物等需給報告,https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_usda/, 2022,米糠の主成分として,糖質,タンパク質,脂質,リン等のミネラル塩の他,機能性成分であるフィチン酸,イノシトールを含有していることが知られている.特に米タンパク質は,セリアック病に代表される自己免疫疾患の起因物質である小麦等に含まれるグルテンの代替タンパク質(グルテンフリー食品原材料)として,その利用用途の拡大が期待されており,その他にもサプリメント,食品添加物,化粧品素材として,年々,需要が高まっている.肥料・工業原料であるリンは,食料安全保障と密接な関わりがあるため戦略的鉱物資源として,リン資源の保護がリン産出国間において高まっており,採掘量の削減,採掘の規制による市場流通量の低下や価格高騰が危惧されている.加えて,xEV(電動車)に搭載されるリチウムイオンバッテリーの増産によるリン酸鉄リチウムの需要増もリンの国際取引価格の高騰の一因とされている(2)2) 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構:金属資源情報,https://mric.jogmec.go.jp/news_flash/20220614/168218/, 2022.国内で消費する全てのリンを海外からの輸入に依存している日本では,国内農業の保護・維持の観点から新たなリンの自給方法が模索されている.

タンパク質及びリンの市場規模は,それぞれ,300億円(乳清,大豆タンパク質として),200億円(財務省統計)と事業化対象として非常に魅力があり,事業化に耐えうる米糠由来タンパク質,リン成分の製造技術の確立により,米副産物循環利用分野にイノベーションをもたらす可能性を秘めている.本稿では,米糠(脱脂米糠)に含有するタンパク質及びリン化合物の分離・精製技術に関するこれまでの知見を紹介するとともに,その利活用について展望する.

米加工副産物

精米工場において,様々な米加工品が生産され,その過程で,糠,精白かす,破砕米がそれぞれ,白米,無洗米以外の米加工副産物として産生される(図1図1■米加工プロセスと製品).米糠は,米油回収・精製工場に運ばれたのち,脱脂(搾油)され,脱脂米糠が副生される.脱脂方法には,溶媒抽出,機械圧搾の方法があり,ヘキサンを用いた溶媒抽出法が一般的に採用されている.なお,溶媒抽出法により得られた脱脂米糠の油脂含量は,ほぼゼロである(3)3) M. Watanabe, C. Yamada, I. Maeda, C. Techapun, A. Kuntiya, N. Leksawasdi, P. Seesuriyachan, T. Chaiyaso, S. Takenaka, T. Shiono et al.: Lebensm. Wiss. Technol., 99, 262 (2019)..米糠は,胚芽および軟質層構成成分(果皮,種皮,珠心,アリューロン層)を含み,タンパク質含量は,11~15(%)と白米(6~7(%))の2倍近くに及ぶ.また,無洗米製造時に副生する精白かす(polishings)のタンパク質含量値も米糠とほぼ同等であることから,米糠と同様に有効なタンパク質源として期待される(4)4) OECD: Consensus documents: work on the safety of novel foods and feeds No. 28: Rice (Oryza sativa), https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2016)38&doclanguage=en/, 2016

図1■米加工プロセスと製品

米糠タンパク質

米糠由来のタンパク質は,4種類の貯蔵タンパク質である,アルブミン,グロブリン,グルテリン,プロラミンから構成されている(4)4) OECD: Consensus documents: work on the safety of novel foods and feeds No. 28: Rice (Oryza sativa), https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2016)38&doclanguage=en/, 2016.体内で最も容易に吸収・利用されるアルブミン,硫黄分子が豊富なグロブリン,高分子量のグルテリン,プロラミンは,それぞれ水溶性,塩可溶性,アルカリ可溶性,アルコール可溶性であり,植物の子葉や胚乳にタンパク質顆粒(PBs)として存在する細胞の代謝区画から独立した貯蔵タンパク質である(4)4) OECD: Consensus documents: work on the safety of novel foods and feeds No. 28: Rice (Oryza sativa), https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2016)38&doclanguage=en/, 2016.アルブミン,グロブリン,グルテリン,プロラミンの各タンパク質は,それぞれ平均34, 16~26, 11~27, 4%の割合で存在しているが4種の構成タンパク質組成は,米穀粒由来の分離画分(籾,玄米,白米,糠,胚芽,精白かす)間で異なる.アルブミンには,血糖降下作用,抗酸化作用を有するペプチドやアレルゲン活性を示すタンパク質成分を含有しており,選択的な米由来タンパク質の回収・精製技術の確立が求められている.米糠タンパク質の栄養価は,システイン,メチオニン及びリジン含量が他の植物性タンパク質よりも高く,優れている上(4)4) OECD: Consensus documents: work on the safety of novel foods and feeds No. 28: Rice (Oryza sativa), https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2016)38&doclanguage=en/, 2016,自己免疫疾患であるセリアック病(グルテン過敏症)の原因タンパク質であるグルテンが含まれていないことから,近年,アレルゲンフリー食材として注目されている.米糠からのタンパク質抽出方法として,アルカリ抽出,超音波処理,凍結融解,高速混合,高圧処理,酵素処理,亜臨界水抽出など,様々な方法が試みられている.その中でも,コスト,収率のバランスから,アルカリ抽出法が最も広く用いられているが,収率は50%前後であり,その後の精製工程により,収率はさらに低下する傾向にある.これらを背景に,我々は,米糠から有価資源であるタンパク質・リン成分の2成分を同時に回収する技術(IP-EWT法:Iso electric precipitation and electrolyzed water treatment process)(図2図2■IP-EWT法)を開発した(5)5) M. Watanabe, I. Maeda, M. Koyama, K. Nakamura & K. Sasano: J. Biosci. Bioeng., 119, 206 (2015).

図2■IP-EWT法

本プロセスは,原料である米糠(生糠(未脱脂),脱脂米糠)を酸性条件下にて,リン成分を溶解し,リン酸イオン成分を含有する上清とタンパク質を含有する沈殿物とに固液分離する①リン成分分離工程と,前記リン酸イオンを含有する溶液を塩基性条件下にて,不溶性リン酸塩を生成させ,前記リン酸塩と上清とに分離して不溶性リン酸塩を回収する②リン回収工程.前記タンパク質を含有する沈殿物と不溶性リン酸から分離した上清とを混合し,塩基条件下にて,タンパク質を溶解し固液分離する③タンパク質分離(抽出)工程.分離した上清(タンパク質抽出液)を酸性条件下(等電点沈殿)にして不溶性となったタンパク質を回収する④タンパク質回収工程.さらに,前記の等電点と同じ電解水を用い,洗浄を実施する⑤タンパク質精製工程を有する.

本プロセスの特長として,米糠からリンを含有するミネラル分を前処理として分離・回収することにより,タンパク質含量・収率,双方の向上が可能であり,等電点沈殿(IP: isoelectric precipitation)により回収されたタンパク質濃縮物は,等電点沈殿時と同pH値に調整された電解水(EW: electrolyzed water)により,タンパク質以外の糖類の有機質,電解質を選択的に取り除くことが可能である.本プロセスは,酵素,有機溶媒,緩衝剤,界面活性剤等の化学薬品を要しない上,リン化合物抽出後のプロセス水をタンパク質抽出時の溶媒として再利用し,水資源の節約を可能とする環境調和型プロセスでもある.

米糠(未脱脂米糠)からリン成分を分離・回収後,アルカリ抽出を経て,等電点沈殿により得られたタンパク質含有画分中のタンパク質含量を測定した結果,45~52 wt%(重量パーセント)を示し,前処理として,リン(有機・無機リン化合物)の分離・回収を行っていない場合の31~36 wt%と比べ,タンパク質含量の増大が認められた.さらに,タンパク質抽出条件の最適化に加え,タンパク質抽出後の残渣に対し,1回目の抽出時よりも,低アルカリ(低イオン強度)条件下による,2回目のタンパク質抽出を実施し,タンパク質の水和容量の増大による溶解度の向上(塩溶の促進)により,タンパク質含量,収率の双方の向上が認められ,それぞれ,65.1 wt%,56%にまで改善することが可能となった(3)3) M. Watanabe, C. Yamada, I. Maeda, C. Techapun, A. Kuntiya, N. Leksawasdi, P. Seesuriyachan, T. Chaiyaso, S. Takenaka, T. Shiono et al.: Lebensm. Wiss. Technol., 99, 262 (2019)..また,同プロセスにより,回収・精製されたタンパク質回収画分のSDS-PAGEによるタンパク質組成分析の結果(図3図3■SDS-PAGE解析(A),イムノブロットによるアレルゲンの検出(B)結果),等電点沈殿/電解水処理時のpH(pI)値を可変させることにより,回収タンパク質中のグルテリン前駆体及びグロブリン含有率をコントロールすることが可能であり,これらの結果は,タンパク質回収画分中タンパク質組成の任意制御の可能性を示唆した.

図3■SDS-PAGE解析(A),イムノブロットによるアレルゲンの検出(B)結果

レーンM, 分子量マーカー.S, 14~16 kDa米アレルゲンタンパク質.R, 米糠.HR, 脱脂米糠.pI 3.0~5.5, 任意の等電点値により回収されたタンパク質画分.

米の14~16 kDaのアレルゲンに対するモノクロナール抗体(1次抗体:25B9マウス),2次抗体(POD-linked anti mouse IgG)を用いた,イムノブロット法によるアレルゲン検出の結果(図3図3■SDS-PAGE解析(A),イムノブロットによるアレルゲンの検出(B)結果),コントロールである14~16 kDa米アレルゲン,未脱脂米糠の双方において,アレルゲンが検出されたが,脱脂米糠および,本プロセスよりpI値の異なる条件下にて,回収されたタンパク質画分(pI: 3.0~5.0)においては,アレルゲンは検出されなかった(3)3) M. Watanabe, C. Yamada, I. Maeda, C. Techapun, A. Kuntiya, N. Leksawasdi, P. Seesuriyachan, T. Chaiyaso, S. Takenaka, T. Shiono et al.: Lebensm. Wiss. Technol., 99, 262 (2019)..この結果より,脱脂米糠は,米油生産時において,原料米糠の予備加熱,有機溶媒による油脂抽出,加熱処理が工程に含まれており,これらの工程により,原料米糠中の米アレルゲンタンパク質は変性もしくは,分解されたものと推察される.併せて,米以外の食物アレルゲン(特定7品目:卵,乳,小麦,そば,落花生,甲殻類(カニ,エビ))についても同様にアレルゲンタンパク質の分析を行った結果,これらアレルゲンは未検出であった.よって,本プロセスにより回収されたタンパク質画分は米アレルゲンタンパク質を含有しないこと,アレルゲンフリー(特定原材料として)であることから,“非可食部由来アレルゲン・GMOフリータンパク質”として,安心・安全なタンパク質供給源となりうる可能性が示された.

米糠由来有機リン化合物

上記IP-EWT法において回収されたリン含有画分に対し,EDS解析による元素分析を行った結果,リン含量として15~16 wt%に達するとともに,カドミウム,鉛,ヒ素などの重金属類の検出は認められなかった(5)5) M. Watanabe, I. Maeda, M. Koyama, K. Nakamura & K. Sasano: J. Biosci. Bioeng., 119, 206 (2015)..当該リン画分中のリン含量の値は,リン鉱石(リン含量5~11 wt%)に相当し,安全性の高い,新たなリン鉱石代替物質として,今後の利活用の可能性が示された.また,同画分中に含有するリンは,その殆どが不溶性塩である有機リン化合物のフィチンであり(図4図4■フィチン酸(上),フィチン(下)),フィチン酸含量として,63~68%(w/w)と一定の値を示し,その殆どがカルシウム塩ではなく,マグネシウム・カリウム塩として含有していることがこれまでに明らかとなっている.フィチン酸は,これまでにも金属キレート剤,変色防止剤,酸味料,抗腫瘍効果が報告されており,機能性成分として,広くサプリメント原料として用いられている(4)4) OECD: Consensus documents: work on the safety of novel foods and feeds No. 28: Rice (Oryza sativa), https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2016)38&doclanguage=en/, 2016

図4■フィチン酸(上),フィチン(下)

さらに,米由来フィチン酸は,アルツハイマー型認知症発症の原因物質であるアミロイドベータ(Aβ)タンパク質の生合成に関わるβ-セクレターゼ(BACE1)を特異的に阻害することが可能であり,当該認知症の予防効果が期待されている(6)6) T. K. Abe & M. Taniguchi: FEBS Open Bio, 4, 162 (2014)..今後,新たな機能性成分としての米糠由来フィチン酸の用途開発・市場動向は注視する必要がある.土壌中には,フィチン酸(フィチン)態リンが著量蓄積していることが知られており,フィチン酸から肥料として利用可能なリン酸イオンを得るためには,土壌微生物に依存したホスファターゼ/フィターゼ等の酵素の作用が必須とされている(7)7) 渡辺昌規:農業および園芸,89, 545 (2014).,本プロセスにより回収されたリン成分は,直接,フィチン酸含有バイオマスを土壌に還元(鋤き込み)する場合と異なり,リン鉱石と同様に湿式,乾式法による別途加工が可能なため,土壌中菌叢構造に依存した時間軸に捉われることなく,土壌への効率的なリンの供給が可能となる利点を有する.

米糠由来タンパク質のレオロジー特性と代替肉

現在,世界的な人口爆発,輸入動物性タンパク質がもたらすフード・マイレージやカーボン・フットプリント,バーチャルウォーター等の環境負荷に対する危惧,健康志向によるタンパク質,代替肉需要の増大を受け,植物性タンパク質が注目されている(8)8) 竹内昌治:“代替プロテインによる食品素材開発”エヌ・ティー・エス,2021, p. 11..我々が開発した前述のIP-EWT法により得られた脱脂米糠由来タンパク質は,沈降性を有する固形物として得られていること,米糠と同等のアミノ酸組成を保持していることから(3)3) M. Watanabe, C. Yamada, I. Maeda, C. Techapun, A. Kuntiya, N. Leksawasdi, P. Seesuriyachan, T. Chaiyaso, S. Takenaka, T. Shiono et al.: Lebensm. Wiss. Technol., 99, 262 (2019).,代替肉の原料タンパク質としての適用を着想した.代替肉とは非動物由来タンパク質をタンパク質源とし,畜肉の食感や外観,味,匂いなどを模倣した,動物性タンパク質の代替製品である.植物性タンパク質に動物肉に似た食感を持たせるには,動物肉(筋肉)の構造を模倣することが重要である.肉はナノスケールからマクロスケールまでの階層構造により,異方性の繊維構造を有している.特に食感,テクスチャーは,重要な要素とされている.食品テクスチャーの力学的特性(Mechanical characteristics)は,1次,2次特性に大別されており,1次特性は,弾性(回復性),硬さ,凝集性,粘性,吸着性,2次特性は,脆さ,咀嚼性,ガム性が含まれる(9)9) S. A. Szczesniak: J. Food Sci., 28, 385 (1963)..我々は,前述のIP-EWT法により得られた脱脂米糠タンパク質の代替肉原料への適応可能性を検討すべく,動的粘弾特性解析を実施した結果,各温度条件下において,貯蔵弾性率(G1)が損失弾性率(G2)を上回り,ゲル状態を維持していることが認められた(図5図5■原料タンパク質の動的粘弾特性試験結果).また,粘弾性値より,米糠由来タンパク質画分は,大豆タンパク質に匹敵するゲル特性,弾性の双方を有していることが明らかとなった.さらに,当該タンパク質からトップダウン法(コラム参照)による代替肉の調製を実施し,大豆タンパク質から調製した代替肉と類似の弾力,硬さを有する代替肉の調製に成功した(図6図6■脱脂米糠由来タンパク質から調製された代替肉).事業化に向け,様々な要素に対する最適化,ブラッシュアップが今後の課題である.

図5■原料タンパク質の動的粘弾特性試験結果

A: 脱脂米糠タンパク質,B: 大豆タンパク質.G1: 貯蔵弾性率,G2: 損失弾性率.

図6■脱脂米糠由来タンパク質から調製された代替肉

今後の実用化への展望

本技術(IP-EWT法)の技術移転・事業化を検討するにあたり,米油製造時の主要副産物である脱脂米糠からの回収タンパク質の高収率化,機能性タンパク質の選択的回収を可能にする精製プロセスのさらなる高度化が必要である.また,当該技術により回収・精製されたタンパク質のアレルゲンフリー食品原材料としての適用性の評価・解析,ハラル,ビーガン,グルテンフリー,GMOフリー等の認証取得等を通じて,タンパク質を求める様々なニーズに応えていく必要があると考えている.また,米糠から搾油後に副生する脱脂米糠は,原料(米糠)に対して重量ベースで80%以上に及ぶ.現在,この著量発生する脱脂米糠は,有用な上記成分を含有しているのにも関わらず,そのほとんどが収益率の低い家畜飼料,堆肥原料として用いられている現状にある.加えて,日本国内で精米時に副生する糠(未脱脂糠)のうち,米油原料として利用されている割合は50%以下(諸説あり)とされている.昨今の米油の需要増に加え,タンパク質供給源としての利活用の促進には,さらなる米糠の集約化による回収率の向上と回収コストの削減,米糠の酸化劣化防止等による油脂の歩留まりの向上等,米糠全体の循環プロセスの再構築と関連技術の開発が必須である.

Reference

1) 農林水産省:米国務省穀物等需給報告,https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_usda/, 2022

2) 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構:金属資源情報,https://mric.jogmec.go.jp/news_flash/20220614/168218/, 2022

3) M. Watanabe, C. Yamada, I. Maeda, C. Techapun, A. Kuntiya, N. Leksawasdi, P. Seesuriyachan, T. Chaiyaso, S. Takenaka, T. Shiono et al.: Lebensm. Wiss. Technol., 99, 262 (2019).

4) OECD: Consensus documents: work on the safety of novel foods and feeds No. 28: Rice (Oryza sativa), https://www.oecd.org/officialdocuments/publicdisplaydocumentpdf/?cote=env/jm/mono(2016)38&doclanguage=en/, 2016

5) M. Watanabe, I. Maeda, M. Koyama, K. Nakamura & K. Sasano: J. Biosci. Bioeng., 119, 206 (2015).

6) T. K. Abe & M. Taniguchi: FEBS Open Bio, 4, 162 (2014).

7) 渡辺昌規:農業および園芸,89, 545 (2014).

8) 竹内昌治:“代替プロテインによる食品素材開発”エヌ・ティー・エス,2021, p. 11.

9) S. A. Szczesniak: J. Food Sci., 28, 385 (1963).

10) COP27: The SHARM EL-SHEIKH Climate Implementation Summit COP27. eg 1: Round table on “Food Security”, https://cop27.eg/#/, 2022

11) B. L. Dekkers, R. M. Boom & A. J. van der Goot: Trends Food Sci. Technol., 81, 25 (2018).

12) K. Tomi, M. Kitao, N. Konishi, H. Murakami, Y. Matsumura & T. Hayashi: Biosci. Biotechnol. Biochem., 80, 840 (2016).

13) 農林水産省:みどりの食料システム戦略中間とりまとめについて,https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000774952.pdf, 2021.