Kagaku to Seibutsu 61(6): 263-268 (2023)
解説
微生物酵素を用いた新規有用糖質素材の創出老化しない高分子デキストリンと配合しやすく使いやすい低分子食物繊維の開発
Creation of Novel Useful Carbohydrate Materials Using Microbial Enzymes: Development of High Molecular Weight Dextrin That Do not Retrograde and Low Molecular Weight Dietary Fibers That are Easy to Formulate and Work with
Published: 2023-06-01
我々は,独自に保有する糖質関連の微生物酵素を,澱粉に作用させることで,マルトース,トレハロースなどの低分子の糖質だけでなく,食物繊維素材であるイソマルトデキストリンなど比較的高分子の糖質についても数多く実用化してきた(1, 2).微生物酵素は,澱粉を低分子化するだけでなく,グルコース同士の結合様式を変換でき,酵素の組合せ方次第で多種多様な分子サイズと結合様式をもつ糖質に変換できる.糖質の粘度や甘味,老化耐性などの性質は分子サイズに,消化性など生体での利用はグルコース同士の結合様式に依存することが多い.本稿では,独自酵素を駆使して有用糖質を創出し,市場の課題解決に挑戦した成果について紹介する.
Key words: 微生物酵素; 低老化性デキストリン; 老化; 環状ニゲロシルニゲロース; 食物繊維
© 2023 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2023 公益社団法人日本農芸化学会
デキストリンは,粉末化基材,粘度を活かした物性のコントロールの他,エネルギー源としても広く活用されるが,食品中での老化が課題となることが多い.デキストリンの老化は,澱粉の老化と同じように分子内のアミロース構造部分の再結晶化が起こる現象で,テクスチャーの劣化,白濁や沈殿を引き起こす要因となる.市販デキストリンは大きくてもMwが1×105(デキストロース当量,DE; 2–5)であるが,分子量が大きいほど老化しやすいことが知られている.
デキストリンの1種のα-1,4グルカンは,非還元末端またはその近傍にα-1,4結合以外のグルコシル残基を導入することでグルカン同士の凝集が抑制され,老化耐性が付与されることが報告されている(3)3) W. Saburi, Y. Kamimura-Saburi, T. Iizuka, T. Yamamoto & M. Takeda: J. Appl. Glycosci., 57, 231 (2010)..そこで,我々は,市販のデキストリンよりも分子量の大きいデキストリンであってもα-1,4結合以外のグルコシル残基を導入すれば老化しにくいデキストリンの創出につながる可能性があると着想した.
我々が独自に保有する土壌分離菌Paenibacillus alginolyticus PP710が産生するα-グルコシルトランスフェラーゼはマルトースよりも重合度の高いデキストリンに作用し,主にα-1,6グルコシル転移反応を触媒し,加水分解反応は触媒しにくい性質を有する(1, 2)1) K. Tsusaki, H. Watanabe, T. Nishimoto, T. Yamamoto, M. Kubota, H. Chaen & S. Fukuda: Carbohydr. Res., 344, 2151 (2009).2) K. Tsusaki, H. Watanabe, T. Yamamoto, T. Nishimoto, H. Chaen & S. Fukuda: Biosci. Biotechnol. Biochem., 76, 721 (2012)..図1図1■老化しない高分子デキストリンの製法に示すように,本酵素をDEが1未満で重量平均分子量(Mw)が1×106のワキシーコーンスターチの部分加水分解物(WS-1000)に作用させて,WS-1000の低分子化を最小限に抑えつつ,アミロペクチンのグルコース鎖の非還元末端にα-1,6分岐を導入し,老化しない高分子デキストリン(MWS-1000)をパイロットスケールで製造することに成功した(4, 5)4) A. Yasuda, M. Miyata, O. Sano, T. Sogo, T. Kishishita, T. Yamamoto, H. Aga & K. Yamamoto: Biosci. Biotechnol. Biochem., 85, 1737 (2021).5) 岸下誠一郎,金嶋祥子,宮田 学,山本拓生,日野克彦,西本友之:WO2017/094895(2017)..
通常,デキストリンは30%(w/w)水溶液の状態で冷蔵保存(4週間)すると白濁が進み老化現象が観察されるが,MWS-1000では低DEで分子量が大きいにもかかわらず老化しなかった(4~6).さらに,30%(w/w)水溶液で凍結解凍を繰り返しても老化現象は観察されず,冷蔵・冷凍時の安定性に優れた特徴を持つことがわかった(4~6)4) A. Yasuda, M. Miyata, O. Sano, T. Sogo, T. Kishishita, T. Yamamoto, H. Aga & K. Yamamoto: Biosci. Biotechnol. Biochem., 85, 1737 (2021).5) 岸下誠一郎,金嶋祥子,宮田 学,山本拓生,日野克彦,西本友之:WO2017/094895(2017).6) 安田亜希子,伊藤理恵,小川 亨,石橋真紀,西田毅弘,日野克彦,三皷仁志,阿賀 創,牛尾慎平:日本農芸化学会2020年度大会講演要旨集,p 491(2020)..図2図2■冷凍耐性はそのときの冷凍耐性の試験結果を示す.デキストリンの老化が進むと白濁することから,720 nmの吸光度と外観(写真)の変化を老化の指標とした.WS-1000は冷解凍を繰り返すたびに720 nmの吸光度が上昇し,見た目にも明らかに白濁したのに対し,MWS-1000は720 nmの吸光度も見た目も変化がなかった.MWS-1000には製造工程で生成した低分子の糖質(重合度1~25)が約3%含まれる.低分子の糖質は,澱粉やデキストリンの老化を抑制することが知られており(7, 8)7) T. Amano, S. Takada, M. Miura, K. Ishida & K. Oshima: Nippon Shokuhin Kagaku Kogaku Kaishi, 44, 93 (1997).8) X. Zhang, R. Li, H. Kang, D. Luo, J. Fan, W. Zhu, X. Liu & Q. Tong: PLoS One, e0190180 (2017).,MWS-1000が老化しない要因も低分子の糖質の存在の可能性が考えられた.そこで,WS-1000の一部をマルトースに置き換えた水溶液でも冷凍解凍を繰り返したところ,マルトースへの置換量を増やすにつれて濁度の上昇は穏やかになったが,老化を完全に抑制することはできなかった.このことから,MWS-1000の高い老化耐性は,原料澱粉のアミロペクチンのグルコース鎖の非還元末端に導入されたα-1, 6分岐が寄与すると推察された(4)4) A. Yasuda, M. Miyata, O. Sano, T. Sogo, T. Kishishita, T. Yamamoto, H. Aga & K. Yamamoto: Biosci. Biotechnol. Biochem., 85, 1737 (2021)..
基本的な物性として,MWS-1000は高分子特有の高い水和特性と粘度を示す(5, 6)5) 岸下誠一郎,金嶋祥子,宮田 学,山本拓生,日野克彦,西本友之:WO2017/094895(2017).6) 安田亜希子,伊藤理恵,小川 亨,石橋真紀,西田毅弘,日野克彦,三皷仁志,阿賀 創,牛尾慎平:日本農芸化学会2020年度大会講演要旨集,p 491(2020)..糊化した小麦澱粉の粘弾性に及ぼすMWS-1000の影響を調べたところ,MWS-1000含量が増加するにつれ線形粘弾性領域での貯蔵弾性率(G′)は低下し,損失係数(tanδ)は増加した(9)9) R. Sumida, S. Kishishita, A. Yasuda, M. Miyata, A. Mizote, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga, K. Yamamoto & K. Kawai: Biosci. Biotechnol. Biochem., 85, 1746 (2021)..この変化は,MWS-1000を添加することで糊化した小麦澱粉がより柔らかく液体的になることを意味し,市販カスタードクリームと同様の挙動を示すことがわかった.
MWS-1000は消化酵素により消化されること,また経口投与すると血糖が上昇することが確認され,4 kcal/gであることがわかった(6)6) 安田亜希子,伊藤理恵,小川 亨,石橋真紀,西田毅弘,日野克彦,三皷仁志,阿賀 創,牛尾慎平:日本農芸化学会2020年度大会講演要旨集,p 491(2020)..
これまでに,MWS-1000を種々の食品に配合すると,tanδが上昇することが多く,「ボディ感」,「とろみ」,「ねっとり」,「もっちり」といったテクスチャーを付与できることを確認している(10)10) 安田亜希子,溝手晶子,宮田 学,吉實知代,西田毅弘,三宅正樹,山本拓生,三皷仁志:WO2018/190310(2018)..MWS-1000は高分子特有の高い水和特性と粘度に加え,安定で老化しないことを活かすことで,新しい物性や用途の食品設計に貢献できることが期待される.また,生体内でエネルギー源として利用できることから,流動食,介護食,スポーツ用途など,エネルギー供給をターゲットとした食品への配合も可能である.
我々は,環状四糖の一種,環状ニゲロシルニゲロース(CNN, cyclo-{→6)-α-D-Glcp-(1→3)-α-D-Glcp-(1→6)-α-D-Glcp-(1→3)-α-D-Glcp-(1→})がユニークな構造であり,最も分子量の小さい食物繊維のひとつであることに注目してきたが,実用化には至っていなかった(11~16)11) H. Aga, T. Nishimoto, M. Kuniyoshi, K. Maruta, H. Yamashita, T. Higashiyama, T. Nakada, M. Kubota, S. Fukuda, M. Kurimoto et al.: J. Biosci. Bioeng., 95, 215 (2003).12) T. Hashimoto, M. Kurose, K. Oku, T. Nishimoto, H. Chaen, S. Fukuda & Y. Tsujisaka: J. Appl. Glycosci., 53, 233 (2006).13) K. Hino, M. Kurose, T. Sakurai, S. Inoue, K. Oku, H. Chaen, K. Kohno & S. Fukuda: Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 2481 (2006).14) 西本友之,奥 和之,向井和久:化学と生物,44,539(2006).15) 橋本貴治,奥 和之,久保田倫夫,福田恵温,栗本雅司,辻阪好夫:応用糖質科学,49,455(2002).16) 松田亮治,田上真二,菅坂義和:広島県立総合技術研究所東部工業技術センター研究報告書,20,16(2007)..CNNの可能性に大いに期待しつつも,製品組成やコストも含めた開発コンセプトの設計に苦戦していたのである.今回は,市販されている一般的な食物繊維は分子量が大きく食品物性に大きな影響を及ぼすこと,また食品加工のプロセスにおいて粘度が高く作業性が悪いことなどの課題に着目し,分子量が小さく,水飴形態で使いやすい食物繊維素材の開発を目指した.
CNNを水飴形態で実用化するにあたっては,微生物汚染を抑える水分活性値の達成(酵母の生育限界;0.88)が必要であったが,従来の製法では目標の水分活性まで水飴濃度を高めると,粘度が高くなりすぎて使いにくいのが難点であった.図3図3■CNN水飴の製法に示すように,すでに確立された従来のCNNの製法(11)11) H. Aga, T. Nishimoto, M. Kuniyoshi, K. Maruta, H. Yamashita, T. Higashiyama, T. Nakada, M. Kubota, S. Fukuda, M. Kurimoto et al.: J. Biosci. Bioeng., 95, 215 (2003).を改良し,CNNを生成するBacillus globisporus N75由来の6-α-グルコシルトランスフェラーゼと3-α-イソマルトシルトランスフェラーゼの2つの酵素と,B. stearothermophilus TC-91由来のシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ,Pseudomonas amyloderamosa由来イソアミラーゼを組み合わせて,澱粉から工業スケールでCNN水飴を製造することに成功した(17, 18)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022).18) 安田亜希子,宮田 学,山本拓生,溝手晶子,三皷仁志:WO2021/066159(2021)..イソアミラーゼを併用することで,食物繊維含量を維持したまま分子量を低下させ,課題であった水分活性値を0.88以下に,また粘度を既存の四糖水飴と同等にまで低下させることができたのである.本水飴は,CNNを主成分とし,分岐CNNや直鎖のα-1,3あるいはα-1,6グルコシル残基からなる糖質から構成され,食物繊維が固形分当たり76%(酵素-HPLC法),Mwが807と小さく,適度な甘味(甘味度;25)を示した(17, 18)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022).18) 安田亜希子,宮田 学,山本拓生,溝手晶子,三皷仁志:WO2021/066159(2021)..
本水飴の最大無作用量は,男性で0.88 g/kg体重,女性で0.89 g/kg体重と判定され,下痢を起こしにくい食物繊維素材であることが明らかになった(15)15) 橋本貴治,奥 和之,久保田倫夫,福田恵温,栗本雅司,辻阪好夫:応用糖質科学,49,455(2002)..CNNは消化吸収されず腸で発酵されず,エネルギー換算係数は0 kcal/gと算出された(19)19) A. Mizote, A. Yasuda, C. Yoshizane, Y. Ishida, S. Kakuta, S. Endo, H. Mitsuzumi & S. Ushio: Biosci. Biotechnol. Biochem., 85, 1485 (2021)..本水飴の成分は,消化酵素を作用させるとCNN(47%)とグルコース(53%)に分解された.本水飴のエネルギー換算係数はCNN以外の53%は消化吸収されることから2 kcal/gであると算出された(17)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022)..本水飴摂取時の血糖値およびインスリン濃度の上昇はグルコースよりも低かった(17)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022)..
物性面では,本水飴は既存の四糖水飴と同程度の粘度であり,作業性のよさが確認できた.さらに,一般的な高分子の食物繊維素材に比べて澱粉の糊化・老化に影響を及ぼしにくく,タンパク質の変性も促進しにくいことから,食品への配合のしやすさも期待できた(17, 18)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022).18) 安田亜希子,宮田 学,山本拓生,溝手晶子,三皷仁志:WO2021/066159(2021)..図4図4■スポンジへの配合量の検討および図5図5■食物繊維配合食品の課題解決例に示すように,実際にスポンジケーキに配合した場合も,砂糖の40%置換までは浮きや比重に影響を及ぼさず焼成できた(17)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022)..食パンや餡にも本水飴は配合しやすく,元々の食品物性にほとんど影響を及ぼさず,食物繊維を強化できることがわかった(図5図5■食物繊維配合食品の課題解決例).
CNNは,外径が重合度6のα-シクロデキストリンと同等の大きさ(13 Å)であるが,内径が小さく(約1 Å),中心部が浅いくぼみのある皿状の構造をしており,低級アルコールやスクアランなどを包接することから,呈味の改善や有効成分の保持が期待されている(14~16)14) 西本友之,奥 和之,向井和久:化学と生物,44,539(2006).15) 橋本貴治,奥 和之,久保田倫夫,福田恵温,栗本雅司,辻阪好夫:応用糖質科学,49,455(2002).16) 松田亮治,田上真二,菅坂義和:広島県立総合技術研究所東部工業技術センター研究報告書,20,16(2007)..今回開発したCNN水飴では,アルコール飲料に添加すると苦みを抑制するなど呈味を改善できることがわかってきている(20)20) 内田智子,小島悠輔:特開2022-157889..
氷温下でのガラス転移温度(最大濃縮ガラス転移温度)は,氷結晶の大きさや氷結晶の成長を制御する因子であり,アイスクリームなどの口溶けや冷凍食品の保存安定性にも関係するとされている(21)21) K. Kawai & T. Hagiwara: Adv. Exp. Med. Biol., 1081, 385 (2018)..今回,CNNの最大濃縮ガラス転移温度(−18°C)は直鎖四糖よりも1~2°C高く,また,CNN水飴としてもMwが約2倍の直鎖四糖を主成分とする水飴と同等の高さがあることが新たにわかった(17, 22)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022).22) 川内優輝,安田亜希子,宮田 学,国吉三枝子,大河内 歩,佐能 吏,吉田憲史,山本拓生,阿賀 創,山本晃隆:日本農芸化学会2021年度大会講演要旨集,p.324, (2021)..常温では,食品はガラス化させることで,吸湿しにくいより安定な状態に仕上げられるため,ガラス転移温度が高い糖質は,食品をガラス化させやすくし,焼き菓子やドライフルーツなど各種乾燥品食品の吸湿防止やテクスチャーの改良に利用されている(21)21) K. Kawai & T. Hagiwara: Adv. Exp. Med. Biol., 1081, 385 (2018)..CNN水飴のガラス転移温度(104°C)は,分子量が小さいにもかかわらず,各種食物繊維素材(Mw, 1500~5000程度;ガラス転移温度,88~128°C)に比べて高いことがわかってきた(23)23) 角田省二,内田幸信,渋谷大輔,内田智子,溝手晶子,大倉隆則,橋本貴治,川島 晶,杉本真智子,安田亜希子ほか:応用糖質科学(印刷中)..
CNN水飴は,2021年6月にテトラリング®の製品名で上市するに至った.テトラリング®の特徴は(17, 18)17) A. Yasuda, A. Mizote, M. Miyata, M. Kurose, T. Ogawa, T. Sadakiyo, S. Uchida, T. Yamamoto, H. Mitsuzumi, H. Aga et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 86, 780 (2022).18) 安田亜希子,宮田 学,山本拓生,溝手晶子,三皷仁志:WO2021/066159(2021).,既存の食物繊維素材の抱える膨らまない,べたつくといった課題を解決できることである.また,用途開発を進める中で,既存の食物繊維に比べ甘味が強いことも,高甘味度甘味料を使用しなくてもよいといったメリットであることがわかってきた.現在,多くの食品メーカーにおいて評価を進めていただいており,既に採用された食品が販売されている.
今後,食品への配合評価だけでなく,腸を起点とした生理作用の評価(12, 13, 24)12) T. Hashimoto, M. Kurose, K. Oku, T. Nishimoto, H. Chaen, S. Fukuda & Y. Tsujisaka: J. Appl. Glycosci., 53, 233 (2006).13) K. Hino, M. Kurose, T. Sakurai, S. Inoue, K. Oku, H. Chaen, K. Kohno & S. Fukuda: Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 2481 (2006).24) T. Tsuruta, E. Katsumata, A. Mizote, H. J. Jian, T. A. Muhomah & N. Nishino: Biosci. Microbiota Food Health, 39, 188 (2020).などを進め,人々の健康増進への貢献を目指している.また,包接作用や高いガラス転移温度を有することは,食品の風味やテクスチャーを設計するうえで重要な要素であり,既存の水飴とは異なる新しい用途の発見も期待される.
本研究では,独自に保有する微生物酵素を駆使することで,澱粉から高分子であるにもかかわらず老化しないデキストリンや,食物繊維としては分子量が小さく食品加工しやすい環状四糖水飴を創出することができた.これらの糖質は,澱粉を低分子化しただけでは得られない性質を有しており,多様化が進む食品加工において役立つ素材になることが期待される.
Acknowledgments
本研究は,株式会社林原の研究・開発・営業に携わる多くの方々に支えていただきながらおこなわれたものです.また,国立大学法人広島大学大学院 川井清司教授,国立大学法人岡山大学大学院 鶴田剛司准教授との共同研究は素材の性質を見極めるうえで欠かせないものであります.本学会の皆様に多くのご指導ご鞭撻を賜りましたことも,本研究を進めるうえで大きな支えとなりました.心より感謝申し上げます.
Reference
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