Kagaku to Seibutsu 61(7): 317-323 (2023)
解説
乳酸菌によるインフラマソーム制御を介した新しい眼の健康維持アプローチインフラマソーム活性化を阻害し網膜炎症を抑制する乳酸菌の開発
A Novel Approach to Maintain Eye Health via Inflammasome Regulation by a Specific Strain of Lactic Acid Bacteria: Development of Lactic Acid Bacteria That Inhibit Inflammasome Activation and Suppress Inflammation in the Retina
Published: 2023-07-01
ヒトは外部情報の実に80%を“目”から受容するといわれており,高齢化や生活スタイルの変化も鑑みると,Quality of life(QOL)維持のためには,生涯にわたって目の健康維持が重要である.にもかかわらず,目の中でも網膜などの体表面の奥にある組織に対しては目薬のような外側からのアプローチが難しく,実際にはほとんど直接ケア・疾病予防をする方法がない.また,近年の知見から,その他のあらゆる組織同様に目の疾患や不調にも免疫応答である“炎症”が関与していることが明らかになってきた.本稿では,目の未病・予防を目的とした,食素材である乳酸菌を用いた炎症を防ぐ新しいアイケアアプローチの発明を紹介する.
Key words: 炎症; 網膜; インフラマソーム; 乳酸菌; 抗老化
© 2023 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2023 公益社団法人日本農芸化学会
「人生100年時代」という言葉がわが国では定着したが,今日日本を含む多くの国で高齢化が顕在化している.特に,日本人の平均寿命は2022年に「男性81.47歳」,「女性87.57歳」と厚生労働省から発表されており(1)1) 厚生労働省:令和3年簡易生命表の概況,https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/index.html,2022.,世界に先駆けて超高齢化社会に入っている.すべての人が元気に活躍し続けられる社会をつくるために,これまでの疾病治療のアプローチに加えて,未病の概念に注目が集まっている.この未病分野は,発症を契機に必要となる医薬品ではなく,日常的に摂取される食品への期待が大きい分野である.加齢が進んでいくと,身体中のあらゆる組織において恒常性と再生能力が低下するが,その中でも目は加齢の影響が明確に現れる器官である.老眼に加えて,加齢黄斑変性・緑内障といった多くの眼疾患の罹患率も加齢とともに上昇が認められる(2, 3)2) R. Kawasaki, J. J. Wang, G. J. Ji, B. Taylor, T. Oizumi, M. Daimon, T. Kato, S. Kawata, T. Kayama, Y. Tano et al.: Ophthalmology, 115, 1376, 1381.e1 (2008).3) V. V. Kapetanakis, M. P. Y. Chan, P. J. Foster, D. G. Cook, C. G. Owen & A. R. Rudnicka: Br. J. Ophthalmol., 100, 86 (2016)..さらに,パソコンやスマートフォンに代表される電子機器の使用時間増加という生活スタイルの変化に伴って,目の疲れや不調を悩みとして抱える人が若年層で増加している.外部情報の80%を受容するといわれる視覚の重要性は以前より認識されていたが,このような社会の変化によって,今日一段と目の健康維持が解決すべき社会課題となっている.
近年,科学の発展に伴い,様々な疾患メカニズムの分子レベルでの解明が進むにつれ,加齢に伴う老化症状や生活習慣病などの加齢関連疾患に共通して認められる現象として炎症が注目されるようになってきた.炎症はもともと細菌やウイルスなどの外部からの病原体を排除して身体を保護する急性反応の1つと考えられてきた.このようなデンジャーシグナルに対する急性反応としての炎症は加齢とともに減少する一方で慢性的な炎症が加齢とともに増加することが明らかとなってきた.事実,高齢者では,炎症性疾患が増加し,血中炎症マーカーの増加や組織炎症も認められる(4)4) A. C. Shaw, D. R. Goldstein & R. R. Montgomery: Nat. Rev. Immunol., 13, 875 (2013)..このような年齢とともに増加する炎症を説明する概念としてinflammagingという言葉も生まれている(5)5) C. Franceschi & J. Campisi: J. Gerontol. A Biol. Sci. Med. Sci., 69(Suppl 1), S4 (2014)..
眼疾患も例外ではなく,加齢黄斑変性をはじめとして多くの眼疾患において炎症が認められる.受容した光を電気信号に変換して神経伝達することが目の重要な機能の1つだが,目は代謝が活発なこともあり酸化ストレスが蓄積しやすい.加えて,目は外界と接している器官であり,過剰な光暴露等の様々な刺激が加わることで慢性的な炎症状態が継続してしまうことも眼疾患につながる一因と考えられている.中でも神経組織である網膜における炎症は直接網膜障害を引き起こすだけでなく基本的に再生されないことから,一旦網膜神経組織がダメージを受けると恒久的な視機能低下につながり得る.“慢性的”の言葉が示すように,加齢や光などの刺激や影響は一過的ではなく長く日常的に続くことが多いため,治療薬の開発だけでなく日々の食生活や運動習慣を通じた目の老化予防・視機能維持への高い関心が集まっている.しかし,食の分野での解決策としては色素の補充としてのルテイン等に留まっており,目の炎症抑制に着目した未病・予防に関する研究はこれまで未開拓であった.
今では食品素材として広く認知されている乳酸菌は,炭素源を代謝して乳酸を分泌する細菌の総称である.形態的に棒状の桿菌と球状の球菌に分けられ,グラム染色性は陽性で酸素が少ない環境で生育する通性嫌気性菌である.乳酸菌による醗酵により,酸味や様々な香気成分等が産生されることで多様な味や香りの変化が産み出されるとともに,醗酵過程で産生される乳酸によって食品のpHが酸性になることで,腐敗やその他微生物の繁殖が抑制されるため,古くからヨーグルト,漬物,キムチなどの様々な発酵食品に活用されている.このように乳酸菌は安全性・嗜好性が高い食素材として長く受け入れられているが,これらの利点に加えて,近年では乳酸菌の様々な健康機能性に関する報告が多数為されている.はじめに研究が進んだのは乳酸菌のプロバイオティクスとしての機能であるが,これは口から摂取された乳酸菌による腸内細菌叢のバランス改善を介した作用に関するものである(6)6) R. Fuller: J. Appl. Bacteriol., 66, 365 (1989)..一方,乳酸菌はTLR(Toll様受容体)リガンドであるリポテイコ酸・ペプチドグリカンやNLR(NOD様受容体)リガンドであるムラミルジペプチドなどの多様な免疫刺激物質を含んでいることがわかってきたことで,免疫を介した健康機能性に注目が集まっている.従来のプロバイオティクスの考え方のように,乳酸やその他有機酸などの乳酸菌発酵生成物が機能に重要である場合は,生菌を投与した際に効果が認められるかが重要であるが,上述のように菌体構成成分や不活化菌体そのものが免疫細胞を刺激し機能することは「ポストバイオティクス」と呼ばれている(7)7) S. Salminen, M. C. Collado, A. Endo, C. Hill, S. Lebeer, E. M. M. Quigley, M. E. Sanders, R. Shamir, J. R. Swann, H. Szajewska et al.: Nat. Rev. Gastroenterol. Hepatol., 18, 649 (2021)..このポストバイオティクスの考え方では菌体の生死を問わず死菌でも効果が期待できることからより幅広い食品への活用が可能になることが特徴的と言える.以上の背景を踏まえて,筆者らは乳酸菌を活用して,目の炎症抑制に着目した研究開発を進めてきた.
炎症は加齢による老廃物や光などの外部からの刺激に応答して,免疫細胞や組織細胞から炎症性サイトカイン,ケモカイン,細胞外マトリクス分解酵素などが産生されることで惹起される.一方,炎症の抑制に寄与する抗炎症性サイトカインもいくつか報告されているが,その中でもインターロイキン10(IL-10)はマクロファージをはじめとする免疫細胞から産生されることが知られている.筆者らは様々な乳酸菌バンク等から収集した乳酸菌からマクロファージ活性化を指標としてLactobacillus paracasei KW3110(L. paracasei KW3110)を見出していた(8)8) D. Fujiwara, S. Inoue, H. Wakabayashi & T. Fujii: Int. Arch. Allergy Immunol., 135, 205 (2004)..このマクロファージ活性化能に着目し,マウス骨髄細胞から誘導したマクロファージを用いて,L. paracasei KW3110のIL-10産生誘導能について評価した.代表的な免疫機能性乳酸菌でヒトの健康への寄与が広く世界中で研究されているLactobacillus rhamnosus strain GG(ATCC53103)を含む対照乳酸菌株によってマクロファージを刺激した際のIL-10産生量と比較した結果,L. paracasei KW3110刺激において対照乳酸菌株刺激と比較して有意に多いIL-10産生が認められた(9)9) H. Suzuki, T. Yamazaki, K. Ohshio, M. Sugamata, M. Yoshikawa, O. Kanauchi & Y. Morita: J. Immunol., 205, 811 (2020)..一方,炎症性サイトカインの1つであるTNF-α産生量は,対照乳酸菌株と比較してL. paracasei KW3110刺激で有意に低値であった.これらの結果は,L. paracasei KW3110の高い炎症抑制能を示しており,目における炎症という新しい切り口に着目してその後の解析を行った.
乳酸菌のように食品への活用が期待される素材については,in vivoにおいて経口投与により生体内でも効果が認められるかは重要なポイントである.目の炎症の主な要因として,光による刺激と老化の影響が考えられる.そこで,筆者らはIL-10産生誘導能が高いL. paracasei KW3110死菌混餌投与により,ブルーライト光暴露および加齢における,網膜炎症に対する効果を検証した.マウスを二群に分け,L. paracasei KW3110を含む飼料あるいは含まない飼料を2週間混餌投与後,約470 nmの波長のブルーライト光を暴露した.その結果,非摂取群と比較して摂取群では網膜層の厚みの減少が有意に抑制されたとともに,網膜における炎症性サイトカイン量が摂取群では有意に低く,L. paracasei KW3110摂取により網膜での炎症が抑制されたことが示唆され(10)10) Y. Morita, Y. Miwa, K. Jounai, D. Fujiwara, T. Kurihara & O. Kanauchi: Nutrients, 10, 1991 (2018)..次に,網膜の老化に対する効果を検証するため,高齢マウス(16か月齢)を2群に分け,L. paracasei KW3110(1 mg/day/mouse)を含む飼料あるいは含まない飼料を6か月間混餌投与したのに対し,若齢の対照群として1か月齢のマウスに2か月間乳酸菌を含まない通常飼料を投与した.その結果,高齢の摂取群では高齢の非摂取群と比較して,網膜神経節細胞の加齢における脱落が少なく有意に維持されており,若齢群と比較しても同程度であった(図1図1■L. paracasei KW3110による加齢に伴う網膜神経節細胞死の抑制効果)(11)11) Y. Morita, K. Jounai, A. Sakamoto, Y. Tomita, Y. Sugihara, H. Suzuki, K. Ohshio, M. Otake, D. Fujiwara, O. Kanauchi et al.: Aging, 10, 2723 (2018)..網膜神経節細胞は光情報を受容し,概日リズムの調節に寄与していることが報告されている.実際,高齢の非摂取群では明暗周期に応じた活動リズムが乱れるのに対し,高齢の摂取群では活動リズムの乱れが抑制された(12)12) Y. Morita, K. Jounai, Y. Tomita & M. Maruyama: Exp. Gerontol., 153, 111477 (2021).ことから,網膜神経節細胞が維持されているとともに,網膜機能も維持されていることが示唆された.さらに,網膜中の免疫細胞である網膜マクロファージを解析した結果,炎症性サイトカインの発現が高齢の摂取群では高齢の非摂取群と比較して有意に低下しており,網膜における炎症が抑制されていることがわかった.続いて,L. paracasei KW3110の混餌投与により網膜における炎症が抑制されるメカニズムを解明するため,生体との最初の接点である腸管および血中サイトカイン含量を解析した.その結果,小腸粘膜固有層において,加齢で増加するIFN-γ陽性CD4陽性T細胞の割合が,摂取群では非摂取群に比べて有意に低く,若齢群と同程度であり,L. paracasei KW3110摂取によって加齢時の腸の炎症が抑制されることが示唆された.血中サイトカイン含量についても,高齢の摂取群では非摂取群と比較してインターロイキン1β(IL-1β)等の血中炎症性サイトカイン含量が低く,若齢群と同程度であったことから,小腸粘膜固有層と同様に血中の炎症状態も抑制されたと考えられる.これらの結果は,経口で生体内に取り入れられたL. paracasei KW3110によって,腸・血液の炎症抑制を介して網膜の炎症が抑制されることを示唆している.
一連のin vitroおよびin vivo経口摂取で想定通りに効果を発揮することが示されたため,ヒトにおける検証をおこなった(13)13) T. Yamazaki, H. Suzuki, S. Yamada, K. Ohshio, M. Sugamata, T. Yamada & Y. Morita: Int. J. Mol. Sci., 21, 5091 (2020)..目の疲れを感じている35歳以上50歳未満の健常な日本人男女88名を,L. paracasei KW3110(50 mg/day)を含有する試験食品を摂取する群とプラセボ摂取群に無作為に割り付け,8週間摂取のランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験により検証した.その結果,大脳中枢の活動水準を反映する指標であり目の疲れの評価に用いられている指標の(14)14) J. B. Lin, B. W. Gerratt, C. J. Bassi & R. S. Apte: Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 58, 442 (2017).フリッカー値が,摂取4週目,8週目においてそれぞれ0週目からの変化量が,L. paracasei KW3110摂取群ではプラセボ摂取群と比較して有意に高値を示した(図2図2■L. paracasei KW3110摂取におけるフリッカー評価).同様の効果が別のヒト試験でも確認されており(15)15) Y. Morita, K. Jounai, M. Miyake, M. Inaba & O. Kanauchi: Nutrients, 10, 1058 (2018).,L. paracasei KW3110摂取によって,目の疲れを感じている方の目の疲労感が軽減されることが示唆された.
これまで述べてきたように,L. paracasei KW3110の炎症抑制効果がin vitro, in vivoおよびヒト試験で認められたが,なぜこの乳酸菌が炎症抑制の機能を有するのかという疑問が生じてきた.in vivoにおいて,L. paracasei KW3110の経口摂取によって抑制された炎症性サイトカインの1つであるIL-1βは,炎症や老化の進行への関与が報告されているインフラマソームと呼ばれるタンパク質複合体により制御される分子である(16)16) F. Martinon, K. Burns & J. Tschopp: Mol. Cell, 10, 417 (2002).ことから,L. paracasei KW3110がインフラマソームの活性化を負に制御する可能性が考えられた.マウス骨髄細胞から誘導したマクロファージを用いてin vitroでインフラマソーム活性化への効果を評価した結果,LPS/ATP刺激によってマクロファージから産生されるIL-1βがL. paracasei KW3110刺激によって顕著に抑制された一方,対照乳酸菌株のL. rhamnosus strain GG(ATCC53103)刺激では,IL-1β産生に変化が認められなかった(図3図3■乳酸菌株添加によるインフラマソーム活性化の阻害効果)ことから,乳酸菌の中でもL. paracasei KW3110に特徴的な効果であることが示唆された.さらに,IL-10受容体中和抗体処理によって,L. paracasei KW3110によるインフラマソーム活性化の抑制効果が一部キャンセルされ,L. paracasei KW3110刺激により産生されるIL-10を介した作用機序が明らかとなった(9)9) H. Suzuki, T. Yamazaki, K. Ohshio, M. Sugamata, M. Yoshikawa, O. Kanauchi & Y. Morita: J. Immunol., 205, 811 (2020)..インフラマソームは加齢に伴う免疫老化の進行に影響するとの報告もあることから,自然加齢マウスを用いてin vivoで検証した結果,免疫老化指標のPD-1陽性CD4 T細胞の加齢による増加が,L. paracasei KW3110摂取で有意に抑制された.加えて,インフラマソーム活性化in vivoモデルを用いて検証した結果,尿酸結晶投与による急性腹膜炎モデルでは尿酸結晶で誘導される好中球の浸潤および炎症が有意に抑制され,高脂肪食誘導性肥満マウスモデルにおいても,高脂肪食によって誘導される糖代謝の異常が有意に改善された.以上の結果より,in vivoでもL. paracasei KW3110摂取によってインフラマソーム活性化に伴う炎症が抑制されることが示唆された.
(a)実験概要:マクロファージをLPS/ATP刺激し,産生されるIL-1β量を評価,(b)L. paracasei KW3110および対照乳酸菌刺激のIL-1β産生量に対する効果(各菌の添加濃度:2.5, 5.0, 10 µg/mL).
さらに,インフラマソーム活性化抑制効果に重要なIL-10の産生がL. paracasei KW3110刺激で誘導されるメカニズムを探索した結果,マクロファージにL. paracasei KW3110が貪食されることで初めてIL-10産生が誘導されることを貪食阻害実験により明らかにした.続いて,細菌表面の糖鎖構造を評価する目的でレクチンアレイを実施した結果,L. paracasei KW3110は対照株のL. rhamnosus strain GGと比較して,αマンノースを含む糖鎖を認識するレクチンへの結合性が強いことがわかった(図4図4■マクロファージによるL. paracasei KW3110の貪食およびレクチンアレイの結果).αマンノースを含む糖鎖を認識するレクチンのDectin-2を抗体およびsiRNAによってマクロファージにおいて阻害もしくはノックダウンした結果,L. paracasei KW3110刺激によるIL-10産生が抑制されたことから,細菌表面のL. paracasei KW3110に特徴的な糖鎖構造がIL-10産生を介したインフラマソーム活性化抑制のメカニズムであることが示唆され(17)17) M. Yoshikawa, S. Yamada, M. Sugamata, O. Kanauchi & Y. Morita: Sci. Rep., 11, 17737 (2021).,一連のL. paracasei KW3110による炎症抑制の作用機構が明らかとなった.
高齢化が進む今日,平均寿命の延伸に対して健康寿命が追い付いていないという課題が顕在化している.適切な食生活や運動は,加齢に伴う炎症・老化を緩和させ健康寿命の伸長に貢献できる可能性があるが,特に視機能を良好に維持することは冒頭でも述べた通りQOL維持・向上に欠かせない要素の一つである.このような社会的背景を踏まえて,本稿では,目の炎症抑制という新しい着眼点の下,炎症を抑制する乳酸菌L. paracasei KW3110の目に対する有用性をin vitro・in vivo・ヒト試験の様々な角度から検証した結果を紹介した.L. paracasei KW3110の特徴的な炎症抑制メカニズムとして見出されたインフラマソーム活性化の顕著な抑制効果は,生体への細菌投与によるインフラマソーム活性化抑制効果を示した初めての報告である.さらに,このことは目に留まらず広く様々な炎症性疾患の予防効果が期待できることを示唆しており,乳酸菌の新たな可能性を示したという点で意義があるのではないか.本事例も含めて日本の農芸化学が長年積み重ねてきた食用微生物を通じた健康機能性研究の成果が1つでも多く消費者に価値として届けられ,人生100年時代の人々の健康維持に大きく貢献することを期待したい.
Acknowledgments
本賞にご推薦いただきました九州大学大学院農学研究院中山二郎先生,ご選考いただきました諸先生方に厚く御礼申し上げます.
Reference
1) 厚生労働省:令和3年簡易生命表の概況,https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/index.html,2022.
4) A. C. Shaw, D. R. Goldstein & R. R. Montgomery: Nat. Rev. Immunol., 13, 875 (2013).
5) C. Franceschi & J. Campisi: J. Gerontol. A Biol. Sci. Med. Sci., 69(Suppl 1), S4 (2014).
6) R. Fuller: J. Appl. Bacteriol., 66, 365 (1989).
8) D. Fujiwara, S. Inoue, H. Wakabayashi & T. Fujii: Int. Arch. Allergy Immunol., 135, 205 (2004).
12) Y. Morita, K. Jounai, Y. Tomita & M. Maruyama: Exp. Gerontol., 153, 111477 (2021).
15) Y. Morita, K. Jounai, M. Miyake, M. Inaba & O. Kanauchi: Nutrients, 10, 1058 (2018).
16) F. Martinon, K. Burns & J. Tschopp: Mol. Cell, 10, 417 (2002).
17) M. Yoshikawa, S. Yamada, M. Sugamata, O. Kanauchi & Y. Morita: Sci. Rep., 11, 17737 (2021).