Kagaku to Seibutsu 61(10): 477-483 (2023)
解説
サポニン生合成に関わる新しい糖転移酵素ファミリーの発見セルロース合成酵素類似タンパク質に秘められた意外な機能
A Newly Discovered Class of Triterpenoid Glycosyltransferase in Plants: Unexpected Functions Hidden in Cellulose Synthase-Like Proteins
Published: 2023-10-01
トリテルペン配糖体(サポニン)は,疎水性のトリテルペノイド炭素骨格に親水性の糖鎖が結合した化合物群であり,多くの生薬の主有効成分であるほか,大豆に含まれるソヤサポニンは健康機能性や味に影響する成分として知られる.多くの研究により,サポニン生合成における糖転移反応は一般にUDP糖依存型糖転移酵素(UGT)と呼ばれる酵素ファミリーが触媒するとされてきた.一方,筆者らは,サポニン生合成において未同定だった糖転移酵素の一つが,UGTとは全く異なるセルロース合成酵素様タンパク質であることを発見した.本稿では,新規糖転移酵素発見の経緯と本酵素を用いた甘味サポニンの酵母生産の取り組みについて解説する.
Key words: 甘草; サポニン; 糖転移酵素; UGT; セルロース合成酵素
© 2023 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2023 公益社団法人日本農芸化学会
サポニンは,トリテルペンあるいはステロイド炭素骨格(サポゲニン)に親水性の糖鎖が結合した配糖体であり(図1図1■サポニンの構造),植物界に広く分布する二次代謝産物の中の一グループを構成する.以降,本稿では,筆者らが生合成研究を進めているトリテルペン配糖体をサポニンと記述する.サポニンは,多くの薬用植物の主な有効成分として知られており,漢方処方に配合される人参や柴胡,桔梗根といった生薬の主活性成分であるジンセノシドやサイコサポニン,プラチコジンなどもサポニンである.また,甘草根に含まれるグリチルリチンや羅漢果(ラカンカ)に含まれるモグロシドのように強い甘味を持つことから天然甘味料として使用されているものもある.また,ダイズ種子に含まれるDDMP(2,3-dihydro-3,5-dihydroxy-6-methyl-4H-pyran-4-one)サポニンは抗高脂血症作用や大腸がん細胞増殖抑制作用などのヒトにとって有益な生理活性を示すことが報告されている(1)1) 渡邊 昌:“大豆と日本人の健康”,幸書房,2014, p. 160..このことから,サポニンは,医薬品,化粧品や食品に含まれる機能成分としての役割を持つ.
グリチルリチンは生薬「甘草」に含まれるサポニンであり,抗炎症,肝庇護作用など多様な薬理作用を持つ他,砂糖の150倍以上の甘さを持つことから天然甘味料としても使用される(2)2) H. Hayashi & H. Sudo: Plant Biotechnol., 26, 101 (2009)..カンゾウはマメ科の多年草であり,2~3年をかけて肥大した根と地下茎を乾燥させたものが生薬の甘草である.カンゾウはもともと日本に自生する植物ではなく,南ヨーロッパから中央アジアを経て中国内モンゴルやモンゴルなど,乾燥した草原や砂質の土地に自生している.そのため,日本はカンゾウの栽培に不向きで国内消費量の全てを輸入に依存しており,その8割以上が中国産である.近年,中国における国内需要の増加,自生地の環境保全を目的とする輸出制限のためグリチルリチン含量が高い優良品の減少や価格の上昇が問題となっている.実際に,生薬として使用される中国産甘草の価格は,2010年の輸入平均単価が1 kgあたり499円であったのに対して2021年には928円と2倍近くに上昇している(3)3) 農林水産省:薬用作物(生薬)をめぐる事情,https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/yakuyou/attach/pdf/yakuyou-23.pdf, 2022..
植物は多様な構造を持つサポニンを生合成するが,それらは6つのイソプレン単位からなる炭素数30の鎖状化合物2,3-オキシドスクアレンを共通前駆体として生合成される.2,3-オキシドスクアレンはステロール類の前駆物質でもあるため,植物のみでなく動物や酵母細胞にも内在する化合物である.植物サポニンの構造多様化の第一ステップは,β-アミリン合成酵素(β-amyrin synthase, bAS)に代表されるオキシドスクアレン環化酵素(Oxidosqualene cyclases, OSCs)と呼ばれる一群の酵素による2,3-オキシドスクアレンの環化反応である.環化様式が異なるOSCが多数存在するため,天然に100以上の異なる環状トリテルペン骨格が確認されている.続いて,生成した環状骨格は多くの場合シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(CYP)による部位特異的な酸化(水酸基の導入など)を受けて多様な構造を有するトリテルペノイドサポゲニン(サポニンの非糖部分)が生成し,さらに,糖転移反応により様々な糖組成を持つ糖鎖が形成されて多様な構造を持つサポニンが生成する.
グリチルリチンの場合,多くの植物が共通して産生する最も普遍的なトリテルペン骨格の一つであるβ-アミリンの11位および30位炭素に対する酸化反応によりサポゲニンに相当するグリチルレチン酸が生成する(図2図2■グリチルリチンの生合成経路と生合成酵素).グリチルレチン酸には甘味はないものの高い抗炎症作用を持つことから医薬品やスキンケア製品などに広く使用されている.筆者らは先の研究により,β-アミリンからグリチルレチン酸への変換に必要な2種のCYP, CYP88D6(β-アミリン11位酸化酵素)とCYP72A154(11-オキソ-β-アミリン30位酸化酵素)を同定した(4, 5)4) H. Seki, K. Ohyama, S. Sawai, M. Mizutani, T. Ohnishi, H. Sudo, T. Akashi, T. Aoki, K. Saito & T. Muranaka: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105, 14204 (2008).5) H. Seki, S. Sawai, K. Ohyama, M. Mizutani, T. Ohnishi, H. Sudo, E. O. Fukushima, T. Akashi, T. Aoki, K. Saito et al.: Plant Cell, 23, 4112 (2011)..これらCYPの探索と機能解析については,2009年の本誌(Vol. 45, No. 9)(6)6) 關 光,大山 清,村中俊哉:化学と生物,47,84(2009).にて解説しているので参照されたい.
グリチルリチン生合成の最終段階は,グリチルレチン酸への糖転移反応である.サポニンの糖鎖構造は多様であり,大豆に多く含まれるDDMPサポニンの場合は,グルクロン酸(第1糖)-ガラクトース(第2糖)-ラムノース(第3糖)で構成される糖鎖を3位に持つことが多い.一方,グリチルリチンの糖鎖は二分子のグルクロン酸からなる.このことから.グリチルリチン生合成には,グリチルレチン酸にグルクロン酸を一つ転移してグリチルレチン酸3-O-モノグルクロニドを生成する酵素と,グリチルレチン酸3-O-モノグルクロニドに二つ目のグルクロン酸を転移してグリチルリチンを生成する酵素がそれぞれ存在すると推測された.
上記の推測のもと筆者らは,グリチルレチン酸をグリチルリチンに変換する糖転移酵素を探索した.糖転移酵素(GT)とは,糖供与体からその糖部分を受容体分子に転移する反応を触媒する酵素の総称であり,100以上のファミリーに分類されている.一般に,植物二次代謝産物全般の配糖化を触媒するのがUGT(UDP-sugar dependent glycosyltransferase)と呼ばれるファミリー1(GT1)に属する酵素群である.UGTにはPSPG(Plant Secondary Product Glycosyltransferases)ボックスと呼ばれる高度に保存されたアミノ酸配列領域が存在し,UDP-グルコース,UDP-ガラクトース,UDP-グルクロン酸などのUDP-糖を糖供与体として,様々な低分子有機化合物(アクセプター分子)に糖を転移する.維管束植物では,1ゲノムあたり100~300種程度のUGT遺伝子が存在しており,それぞれが,アクセプター分子,糖供与体,糖を転移する位置について異なる選択性を示すことで植物二次代謝産物の構造多様性の創出に大きな貢献をしている(7)7) 關 光,鈴木隼人:生物工学会誌,99,246(2021)..
筆者らが行ったカンゾウのトランスクリプトーム解析の結果,約44,000のコンティグ配列の中から90種のUGTが見出され,そのうちの11種が,グリチルリチンを蓄積している「根」で高く発現しグリチルリチンが検出されない「葉」での発現が著しく低い,また,グリチルリチン含量が高い「高含量」カンゾウ系統での発現量が「低含量」系統よりも著しく高い,など,既知のグリチルリチン生合成酵素と類似した遺伝子発現パターンを示した.そこで,これらのUGTを候補としてリコンビナントタンパク質を用いたインビトロ酵素活性試験を行った.その結果,その中のUGT73P12がグリチルレチン酸3-O-モノグルクロニドにグルクロン酸を転移しグリチルリチンを生成することを見出した(8)8) Y. Nomura, H. Seki, T. Suzuki, K. Ohyama, M. Mizutani, T. Kaku, K. Tamura, E. Ono, M. Horikawa, H. Sudo et al.: Plant J., 99, 1127 (2019)..一方,サポゲニンであるグリチルレチン酸に対してはグルクロン酸転移活性を示さなかった.このことから,UGT73P12はグリチルリチン生合成経路の最後の1ステップ(2個目のグルクロン酸転移)を特異的に触媒する酵素であることが判明した.筆者らがこれらの実験を行っている最中の2016年6月,日本国外の研究チームが別のUGTであるGuUGAT(UGT73B27)がin vitroにおいてグリチルレチン酸からグリチルリチンへの2段階のグルクロン酸転移反応を連続的に触媒する酵素であると英科学誌(New phytologist誌)に発表した(9)9) G. Xu, W. Cai, W. Gao & C. Liu: New Phytol., 212, 123 (2016)..本酵素は上述の11種の候補に含まれていたことから,筆者らもすでに何度も酵素活性試験を行っていたが,グリチルレチン酸およびモノグルクロニドのいずれに対する糖転移活性も検出することはできなかったことからグリチルリチン生合成への関与はないものと考えている.また,筆者らは最終的に30種近いUGTの活性を調べたが,一糖目のグルクロン酸転移を担うUGTを特定することはできなかった.
上述のように,第一段階目のグルクロン酸転移を触媒するUGTを発見することはできなかった.そこで筆者らは,3種のマメ科植物(カンゾウ,ダイズ,ミヤコグサ)それぞれにおいて既知のサポニン生合成遺伝子と遺伝子発現パターンが類似する遺伝子を「UGTに限定せず」網羅的に探索した.その結果,いずれの植物種からもセルロース合成酵素類似タンパク質(Cellulose synthase-like, Csl)の中でもサブファミリーM(CslM)に属する酵素が候補として浮上した(10)10) S. Y. Chung, H. Seki, Y. Fujisawa, Y. Shimoda, S. Hiraga, Y. Nomura, K. Saito, M. Ishimoto & T. Muranaka: Nat. Commun., 11, 5664 (2020)..上述のように,UGTはGT1ファミリーに分類されるが,CslはUGTとはそのアミノ酸配列も,予測される機能も全く異なるGT2ファミリーに属する.GT2ファミリーはセルロース合成酵素群(CesA)とCslファミリーで構成される(11)11) A. Little, J. G. Schwerdt, N. J. Shirley, S. F. Khor, K. Neumann, L. A. O’Donovan, J. Lahnstein, H. M. Collins, M. Henderson, G. B. Fincher et al.: Plant Physiol., 177, 1124 (2018)..Cslファミリーはさらに複数のサブファミリーに分類され,それらの内,CslDはキシランおよびホモガラクツロナン生合成および成長点細胞におけるセルロースあるいはマンナン生合成に関わるとされているが,CslB/E/G/Mの機能は未解明である(図3図3■セルロース合成酵素群(CesA)とCsl(Cellulose synthase-like)ファミリーの分子系統樹)(12)12) G. Daras, D. Templalexis, F. Avgeri, D. Tsitsekian, K. Karamanou & S. Rigas: Molecules, 26, 4335 (2021)..上述のようにCslは,植物細胞壁を構成する多糖類の合成に関与すると考えられているが,Cslもまた「糖を転移する」酵素であることからサポゲニンに対する酵素活性を調べた.先に作出したグリチルレチン酸あるいはソヤサポゲノールBを生産するように改変した組換え酵母株に,酵母内在のUDP-グルコースをUDP-グルクロン酸に変換するUDP-グルコースデヒドロゲナーゼ(UGD)(シロイヌナズナ由来)遺伝子と共に各CslM遺伝子を導入した結果,いずれのCslもグリチルレチン酸およびソヤサポゲノールBの3位水酸基にグルクロン酸を転移して,それぞれ,グリチルレチン酸モノグルクロニドおよびソヤサポゲノールBモノグルクロニドを生成することが判明した(10)10) S. Y. Chung, H. Seki, Y. Fujisawa, Y. Shimoda, S. Hiraga, Y. Nomura, K. Saito, M. Ishimoto & T. Muranaka: Nat. Commun., 11, 5664 (2020)..また,UGD遺伝子を同時に導入しなかった場合はCslの糖転移活性は検出されないことからUDP-グルクロン酸に対して高い糖供与体選択性を示すこともわかった.さらに,決定的だったのは,本Csl遺伝子を破壊したミヤコグサがソヤサポニン生合成能を失ったことである.分子系統樹解析の結果を見ると,これらの酵素は既存のCslMファミリーメンバーの一部から進化した酵素であると推測されたため,筆者らはこれらをCSyGT(Cellulose synthase-derived glycosyltransferase)と命名した.
一般に,細胞質に局在すると考えられているUGTとは異なり,CSyGTは多くの推定膜貫通領域を有している.そこで,CSyGTの細胞内局在を調べたところ小胞体膜に局在することが判明した.小胞体膜はサポニン生合成に関わる多くの酵素,すなわちOSC, CYPおよびCYPに電子を供給するシトクロムP450還元酵素(CPR)が局在する場であることが知られている.そこで,CSyGTがこれらの酵素タンパク質と相互作用することで代謝酵素複合体(メタボロン)を形成するのではないか? と考えた.メタボロンは,ある代謝経路を構成する酵素群がタンパク質間相互作用によって集積化した複合体である.メタボロンを形成することによって生合成中間体が細胞内に拡散することなく次の酵素に直接受け渡される,すなわち「バケツリレー」方式で反応が進むことで生合成反応全体が円滑に進むと考えられている(13, 14)13) 中山 亨,兪 東燦,高橋征司:生物工学会誌,90,576(2012).14) 中山 亨,和氣駿之,高橋征司:植物の成長調節,56, 14(2021)..これまでに,青酸配糖体の一種やフラボノイドの生合成経路を構成する酵素(CYPやUGTなど)がメタボロンを形成することが報告されているが(13, 14)13) 中山 亨,兪 東燦,高橋征司:生物工学会誌,90,576(2012).14) 中山 亨,和氣駿之,高橋征司:植物の成長調節,56, 14(2021).,サポニン生合成におけるメタボロン形成は報告されていない.そこで筆者らは,CSyGTとその他のサポニン生合成酵素との間のタンパク質間相互作用の有無を調べた.その結果,OSCであるbASとCSyGTの間に直接的なタンパク質間相互作用を確認した(Chungら,未発表).一方,CSyGTとCYP間の直接的な相互作用は検出されなかったことから,全ての酵素を含むような「グリチルリチン生合成メタボロン」と呼べるような複合体の形成はないのか,あるいは,アダプターの役割を果たすような未同定のタンパク質が存在するのか? など,今後のさらなる解析が必要である.
構造が複雑なサポニンは主に植物材料から抽出され,そのためには一般に長い栽培期間を必要とする.そこで近年,微生物,とりわけ出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を宿主として有用なサポゲニンあるいはサポニンをde novo合成する研究が精力的に行われている.出芽酵母にはトリテルペノイドの共通前駆物質である2,3-オキシドスクアレンを供給するメバロン酸(MVA)経路が内在し,その生合成酵素も全て明らかにされていること,また,植物CYPのほとんどは小胞体膜に局在することから,原核生物である大腸菌ではなく小胞体を有する酵母が使用されることが多い.しかしながら,酵母でのトリテルペノイド生産は未だ実用化には至っていない.
筆者らは,出芽酵母に計7個の植物酵素遺伝子,すなわち,β-アミリン合成酵素,2種のCYPおよびCYPの反応に必要な電子を供給するシトクロムP450還元酵素(CPR),UGD, CSyGTおよびUGT73P12を共導入することで,酵母に内在する2,3-オキシドスクアレンからグリチルリチンを合成することに成功した.いずれの植物種由来のCSyGTを導入した場合にもグリチルリチンの生成が確認されたが,なかでも,カンゾウ由来のCSyGTを導入した場合に最も高い生成量を示した.しかしながら,その生成量は培養液1 Lあたり530 µgと微量であった(10)10) S. Y. Chung, H. Seki, Y. Fujisawa, Y. Shimoda, S. Hiraga, Y. Nomura, K. Saito, M. Ishimoto & T. Muranaka: Nat. Commun., 11, 5664 (2020)..本研究では,グリチルリチン生合成経路の構築に必要最小限の7個の遺伝子導入に留まったが,酵母を用いた植物トリテルペノイドの生産においては多くの場合,酵母内在のMVA経路を増強するために酵母のステロール合成系遺伝子群の過剰発現や導入する植物遺伝子に関してはコドンの最適化を行うことが一般的となっている(15)15) 關 光,Soo Yeon Chung, 村中俊哉:植物の生長調節,57,77(2022)..酵母によるサポニン生産の中で最も精力的に研究が行われているジンセノシド(生薬「人参」の主活性成分)の研究事例では,上記の戦略を講じることでジンセノシドRh2生産酵母のフラスコ培養で179.3 mg/Lの生産量を達成している(15)15) 關 光,Soo Yeon Chung, 村中俊哉:植物の生長調節,57,77(2022)..
本稿では,新規サポニン生合成酵素CSyGTの同定と組換え酵母を用いたグリチルリチン生産について紹介した.CSyGTの発見では,定説ではファミリー1 GTが触媒すると考えられるサポゲニンへの糖転移を細胞壁多糖の合成酵素から機能分化したと思われるCSyGTが触媒することを初めて示した.また,組換え酵母によるグリチルリチン生産については,今後の生産量向上に向けて幾つもの検討課題が存在する.前項に示した2,3-オキシドスクアレン供給経路の増強に加えて,タンパク質工学によるグリチルリチン生合成酵素の改良,生成したグリチルリチンを細胞外に排出しうる輸送タンパク質の探索などである.また,CYPやCSyGTは小胞体膜に局在する酵素であることから,小胞体形成に関わる転写因子の過剰発現による小胞体自体の物理的拡大や生合成酵素のスキャフォールディング(人工的なメタボロン形成)などの多面的なアプローチの統合が必要であろう.筆者らは現在,グリチルリチン関連物質の微生物製造の事業化を目指して国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業「微生物によるグリチルレチン酸および類縁体の生産システム実証」を住友化学(株)と共同で実施しているところである.
Reference
1) 渡邊 昌:“大豆と日本人の健康”,幸書房,2014, p. 160.
2) H. Hayashi & H. Sudo: Plant Biotechnol., 26, 101 (2009).
3) 農林水産省:薬用作物(生薬)をめぐる事情,https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/yakuyou/attach/pdf/yakuyou-23.pdf, 2022.
6) 關 光,大山 清,村中俊哉:化学と生物,47,84(2009).
7) 關 光,鈴木隼人:生物工学会誌,99,246(2021).
9) G. Xu, W. Cai, W. Gao & C. Liu: New Phytol., 212, 123 (2016).
13) 中山 亨,兪 東燦,高橋征司:生物工学会誌,90,576(2012).
14) 中山 亨,和氣駿之,高橋征司:植物の成長調節,56, 14(2021).
15) 關 光,Soo Yeon Chung, 村中俊哉:植物の生長調節,57,77(2022).
16) 加藤 厚:熱帯林業,40,72(1997).