Kagaku to Seibutsu 61(11): 530-538 (2023)
解説
アクアポニックス~水産養殖と水耕栽培の統合による新たな食料生産システム~持続可能な食料生産への挑戦
Aquaponics—A New Food Production System by Integration of Aquaculture and Hydroponics: Challenges to Sustainable Food Production
Published: 2023-11-01
世界人口の増加とそれに伴う食料需要が増加しているなかで,土地や淡水,栄養素等の限りある資源に依存する従来型の食料生産に代わる持続可能な食料生産システムの開発・普及が求められている.水産養殖と水耕栽培の統合であるアクアポニックスは,従来型の食料生産が抱える課題を解決できる持続可能性の高い食料生産システムと考えられており,近年,急速に開発と普及が進んでいる.本稿では,アクアポニックスの概要について,筆者らの取り組みや最近の知見も交えて包括的に解説する.
Key words: アクアポニックス; 水耕栽培; 循環型養殖システム; 持続可能性; 食料生産
© 2023 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2023 公益社団法人日本農芸化学会
アクアポニックス(Aquaponics)は水産養殖(Aquaculture)と水耕栽培(Hydroponics)を同一システムで行う食料生産システムであり,魚の排泄物を栽培植物の主要な栄養素として使用することを原則としている(1)1) W. Lennard & S. Goddek: “Aquaponics Food Production Systems: Aquaponics: The Basics,” Springer Cham, 2019, p. 113..従来の水耕栽培では植物の栽培に化学肥料を必要としたが,アクアポニックスでは魚の排泄物を微生物により肥料化しているため,化学肥料に依存しない農業が可能となる.また,植物が魚の排泄物を肥料として利用することで水が浄化されるため,水を循環させることができる.したがって,従来の陸上養殖のような定期的な水の入れ替えが不要となる.アクアポニックスの起源は古く,東南アジアでは約1500年前から水田で魚と組み合わせて稲作が行われていた(2)2) T. Komives & R. Junge: Ecocycles, 1, 1 (2015)..その約500年後には,メキシコでチナンパと呼ばれる農法が普及し,植物と魚の同時生産が行われていた(2, 3)2) T. Komives & R. Junge: Ecocycles, 1, 1 (2015).3) V. T. Okomoda, S. A. Oladimeji, S. G. Solomon, S. O. Olufeagba, S. I. Ogah & M. Ikhwanuddin: Food Sci. Nutr., 11, 1157 (2022)..現在のアクアポニックスに関する研究のほとんどは1970年代初頭に始まり,ニュー・アルケミー・インスティテュートやノースカロライナ州立大学をはじめとする米国の研究機関が先駆的に研究を行い,その後数十年にわたる研究を経て,現在の近代的な食料生産システムへと発展した(3, 4)3) V. T. Okomoda, S. A. Oladimeji, S. G. Solomon, S. O. Olufeagba, S. I. Ogah & M. Ikhwanuddin: Food Sci. Nutr., 11, 1157 (2022).4) C. Somerville, M. Cohen, E. Pantanella, A. Stankus & A. Lovatelli: “FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 589,” Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2014..最も有名な例は1980年代にヴァージン諸島大学(UVI)のRakocyらが開発したアクアポニックスシステム(UVIシステム)であり(1)1) W. Lennard & S. Goddek: “Aquaponics Food Production Systems: Aquaponics: The Basics,” Springer Cham, 2019, p. 113.,商用規模のアクアポニックスシステムの成功事例の一つとして広く知られている.
アクアポニックスについて詳細を述べる前に,アクアポニックスのベースとなる養殖と水耕栽培の技術について触れておきたい.
陸上養殖は大別すると掛け流し方式と循環方式(RAS: recirculating aquaculture system)の2種類に分けられるが,掛け流し方式の場合,水の滞留時間が短く植物の栄養要求を満たすのに十分な栄養素の蓄積ができないため,アクアポニックスではRASが広く適用されている.RASは固形物除去のための物理濾過ユニット(例えばドラムフィルター)や代謝産物の無毒化・可溶化を担う生物濾過ユニット(例えばバイオフィルター)等の処理技術により高い水の再利用率を達成する屋内型の水産養殖システムであり,土地や水資源が制限された地域において有用な食料生産技術となっている.RASの発展は日本とも関係が深く,1950年代には鯉の養殖のためのバイオフィルターに関する研究が行われていた.RASにおけるバイオフィルターの主な役割は,硝化菌によるアンモニア酸化(アンモニア→亜硝酸塩→硝酸塩)や従属栄養細菌による有機排出物の可溶化である.水の再利用率が高い(通常90%以上と定義される)完全循環型養殖システムでは,バイオフィルターによる生成物をさらに処理(例えば脱窒)することで水を浄化し,養殖魚に適した水質を維持している.一方で,これら生成物を除去するのではなく,植物の肥料として活用するのがアクアポニックスの考え方である.限られた栄養資源(飼料)から2つの生産物(水産物と農作物)を得ることが可能となり,環境及び経済の両面で持続可能性の高い食料生産システムとなっている.
アクアポニックスで採用されている主な水耕栽培技術は,礫耕栽培(media bed technique),薄膜型水耕(NFT: nutrient film technique),湛液型水耕(DFT: deep flow technique/DWC: deep water culture)の3種類で,それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため規模や目的に合わせて選択する必要がある.
礫耕栽培は栽培槽に不活性培地(例えば火山岩)を敷き詰めて行う栽培で,アクアポニックスにおいて最も多く採用されている(図1A図1■アクアポニックスで用いられる水耕栽培システム).培地は根を支える役割だけではなく,魚の排泄物を捉える物理フィルターとしても機能する.また,培地が微生物の基質となるため,それ自体が優れたバイオフィルターとして機能する.礫耕栽培は追加で濾過ユニットを設ける必要がなく,微生物による栄養変換効率が高いというメリットがある一方で,水の蒸発量が多い,メンテナンスが困難,魚の飼育密度が高くなると培地が詰まりやすくなるといったデメリットがある.また,培地を支えるためにはある程度頑強な設備が必要で,かつ大量の培地を揃えるにはコストがかかるため,主に小規模システムにて採用されている.
NFTは栽培パイプを使用した水耕栽培法であり,アクアポニックスでは勾配を利用し,水が養殖水槽から濾過装置を通って栽培パイプへと流れる仕組みが採用されている(図1B図1■アクアポニックスで用いられる水耕栽培システム).栽培パイプの内部には浅く水が流れており,パイプ上部の穴に植物を入れると,根がパイプの底を流れる薄い水の膜に触れることで水と養分を吸収する.必要な水の量が少なく,軽量で設計・設置の自由度が高いが,水の循環が止まると植物が全て枯れてしまう恐れがあり,停電等には弱い.また,根と水の接触面積が少ないため養分の吸収量が少なく,レタスやトマト等では他の栽培方法より収量が低下するといった課題がある.
DFTは水で満たされた栽培槽に植物を植えたパネルを浮かべて栽培する方法である(図1C図1■アクアポニックスで用いられる水耕栽培システム).これは,大規模商用アクアポニックスでは最も一般的な方法であり,UVIシステムでも採用されている.DFTは大量の水を使用するため短時間の停電には耐えられ,水質の急激な変化も起きにくく,安定した栽培ができる.しかし,植物の根が空気に触れないため,養液中の溶存酸素(DO: dissolved oxygen)を上げるための追加設備が必要となる場合がある.
アクアポニックスは魚,植物,微生物の共生システムであるため,これらのバランスが重要であり,魚と植物の両方を効率よく生産するためには適切なデザイン設計が必要となる.アクアポニックスの古典的なシステムはシングルループ(coupled system)と呼ばれるものであり,RASと水耕栽培が単一のループで結合され,水は養殖水槽から水耕栽培槽に送られ,再び養殖水槽へ戻ってくる(図2A図2■様々なアクアポニックスシステム)(7)7) H. P. Palm, U. Knaus, S. Appelbaum, S. M. Strauch & B. Kotzen: “Aquaponics Food Production Systems: Coupled Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 163..シングルループの場合,システム内で水を共有するため,魚,植物,微生物が共存可能な水質(例えばpHや水温)で管理する必要があるが,必ずしもそれぞれの生育にとって理想的な環境とはいえず,効率や生産性を低下させるボトルネックとなっている.この問題点を解決するために開発されたのがデカップルシステム(decoupled system)であり(8)8) S. Goddek, A. Joyce, S. Wuertz, O. Körner, I. Bläser, M. Reuter & K. J. Keesman: “Aquaponics Food Production Systems: Decoupled Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 201.,養殖ユニットと水耕栽培ユニットを分離することで魚と植物に最適な環境を提供するダブルループシステム(図2B図2■様々なアクアポニックスシステム)や,これをさらに改良し,養殖汚泥から高効率で栄養素を回収するシステム(例えばバイオリアクター)を追加したマルチループシステム(図2C図2■様々なアクアポニックスシステム)等が開発されている.
どのようなシステムを採用するにしても,最も重要な要件は養殖ユニットと水耕栽培ユニットの比率やサイズを決定することである.アクアポニックスは魚の排泄物を植物が肥料として利用するシステムであるため,植物の生産量は利用可能な養分量,即ち魚の排泄物量と密接に関係する.栽培する植物の種類によって,その植物に最適な栽植密度(1 m2あたりの植え付け株数)があり,栽培可能な植物の数を面積で表すことができる.Rakocyらは,UVIシステムをモデルに植物の栽培面積と1日あたりの給餌量を一致させる手法(FRR: feeding rate ratio)を開発し,ティラピア養殖の場合,栽培面積1 m2あたり60~100 gの給餌(FRR: 60~100 g/m2/日)が必要であることを見いだした(1)1) W. Lennard & S. Goddek: “Aquaponics Food Production Systems: Aquaponics: The Basics,” Springer Cham, 2019, p. 113..デカップルシステムの場合はさらに少ない給餌量で植物を生産することが可能で,Lennardらが開発したマルチループシステムでは,ティラピアとレタスの組み合わせにおいて,13~16 g/m2/日と大幅に低い給餌量で栽培できることを報告している(9)9) W. Lennard: “Aquaponic System Design Parameters: Fish to Plant Ratios (Feeding Rate Ratios),” Aquaponics Solutions, 2013..国連食糧農業機関(FAO)が公開している小規模アクアポニックスの技術資料(4)4) C. Somerville, M. Cohen, E. Pantanella, A. Stankus & A. Lovatelli: “FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 589,” Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2014.によると,葉物野菜(20~25株/m2)のFRRは40~50 g/m2/日,果菜類(4~8株/m2)は50~80 g/m2/日が推奨されており,これを参考にアクアポニックスのシステム要件を検討してみると,例えばレタスを25株/m2の栽植密度で1,000株栽培可能なアクアポニックスシステムを設計する場合,40 m2の栽培面積が必要となり,1日1.6~2.0 kgの飼料が必要であることが分かる.アクアポニックスでは1日あたりの魚への給餌量を魚体重の1~2%,飼育密度を10~20 kg/m3に設定する場合が多く(4)4) C. Somerville, M. Cohen, E. Pantanella, A. Stankus & A. Lovatelli: “FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 589,” Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2014.,仮に給餌量を1%,飼育密度を20 kg/m3とした場合,養殖魚の総量は160~200 kgで,養殖側の水量として8~10 m3が必要となることが推計できる.実際は植物や魚の種類,システム設計によって変わってくるため,商用目的で行う場合は専門家のアドバイスを受けることをお勧めする.
アクアポニックスではハーブ,葉菜類,果菜類,果実類といった様々な植物が栽培されている.Loveらによる商用アクアポニックスに関する最初の国際調査では,バジルが最も多く,その他にはサラダグリーン,バジル以外のハーブ,トマト,結球レタス,ケール,スイスチャード等の幅広い野菜類が栽培されている(10)10) D. C. Love, J. P. Fry, X. Li, E. S. Hill, L. Genello, K. Semmens & R. E. Thompson: Aquaculture, 435, 67 (2015)..Raulierらによる欧州の専門的なアクアポニックス機関を対象にした調査でも同様に,ハーブ類が最も多く選択されており,次いでトマト,レタス,サラダグリーン,イチゴといった植物が栽培されている(11)11) P. Raulier, F. Latrille, N. Ancion, M. Kaddouri, N. Crutzen & M. H. Jijakli: Water, 15, 1198 (2023)..これらの調査結果はその地域における市場の特性が影響しているものと思われるが,Ayipioらによる収量比較のメタ解析によると,生産性の面ではレタスが最も望ましいようである(12)12) E. Ayipio, D. E. Wells, A. McQuiling & A. E. Wilson: Sustainability, 11, 6511 (2019)..
植物によって栄養要求が異なるため,ハーブや葉菜類のような栄養要求量が低い植物と果実類のような栄養要求量が高い植物を同一システム内で栽培することは難しいが,栄養要求量が同程度の植物を選択する等の工夫により,同一施設内で複数の植物の栽培が可能である(図3図3■アクアポニックスでの同時栽培の例).
アクアポニックスでは養殖水槽と栽培水槽で水を共有するため,基本的には淡水魚が選択される.前述のLoveらの国際調査では,ティラピアが最も多く養殖されており,観賞魚,ナマズがそれに続いている(10)10) D. C. Love, J. P. Fry, X. Li, E. S. Hill, L. Genello, K. Semmens & R. E. Thompson: Aquaculture, 435, 67 (2015)..一方で,Raulierらによる調査ではマスが最も多く,次いで鯉,ティラピアとなっている(11)11) P. Raulier, F. Latrille, N. Ancion, M. Kaddouri, N. Crutzen & M. H. Jijakli: Water, 15, 1198 (2023)..両調査では魚種の選択性が大きく異なっているが,前者は米国在住の回答者が8割以上を占めているのに対し,後者は欧州を中心とした調査であり,各国の市場の特性や外来種の規制等が影響しているものと考えられる.
日本の場合,周囲を海に囲まれているため淡水魚の需要が少なく,商用目的の場合は魚種の選択肢が限られてくる.そのような中でも高級食材「キャビア」が採れるチョウザメは,経済的価値の高さや幅広い水温で飼育が可能であること等から人気を集めており,筆者らを含め,多くの国内アクアポニックスプラントで採用されている(13)13) 平岡 潔:日本水産学会誌,88, 536 (2022)..チョウザメと組み合わせたアクアポニックスの研究報告は限られているが,筆者らのプラントでは良好な生育で,キャビアの商品化にも成功している(14)14) 日本経済新聞:新潟のプラントフォームが養殖キャビア 環境農法活用,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC216520R20C23A2000000/, 2023..野菜を栽培しながらキャビアも生産,そんな一見夢のような話が実現してしまうのもアクアポニックスの魅力の一つである.
微生物は魚の排泄物を植物の肥料へと変換する架け橋として,アクアポニックスにおいて極めて重要な役割を担っている.
魚種の多くは摂取した食物窒素の3割程度しか使用せず,残りはエラを介して,または尿や糞便として排泄される.魚は窒素のほとんどをアンモニアとして排泄しているが,水中では非イオン性のアンモニアとイオン性のアンモニウムの2つの形態で平衡状態を保ちながら存在しており,これらを合わせた全アンモニア態窒素(TAN: total ammonia nitrogen)はRASやアクアポニックスにおける重要な管理項目となっている.硝化はTANが特定の独立栄養細菌によって最初に亜硝酸塩に酸化され,次に硝酸塩へと酸化されるプロセスで,亜硝酸塩への酸化はNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属等のアンモニア酸化細菌(AOB: ammonia-oxidizing bacteria)やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属等のアンモニア酸化古細菌(AOA: ammonia-oxidizing archaea)によって行われる(15)15) N. Kasozi, B. Abraham, H. Kaiser & B. Wilhelmi: Ann. Microbiol., 71, 1 (2021)..亜硝酸塩から硝酸塩への酸化はNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属等の亜硝酸酸化細菌(NOB: nitrite-oxidizing bacteria)によって行われ,Nitrospira属のようにアンモニア態窒素から硝酸塩まで酸化可能な完全アンモニア酸化細菌も存在する(15)15) N. Kasozi, B. Abraham, H. Kaiser & B. Wilhelmi: Ann. Microbiol., 71, 1 (2021)..アンモニアと亜硝酸塩は魚にとって有毒であるため,硝化はアクアポニックスにおいて最も重要なプロセスであり,植物の栄養素である硝酸塩を供給する重要な役割も担っている.
アクアポニックスを始める際は,最初から植物と魚を導入することはせず,システム内に硝化菌を定着させる作業から始める.これをシステムサイクルといい,通常3~5週間を要する(4)4) C. Somerville, M. Cohen, E. Pantanella, A. Stankus & A. Lovatelli: “FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 589,” Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2014..システム内にアンモニア源を投入すると,5~7日程度でAOBが定着し,アンモニアが亜硝酸塩に酸化され始める.さらに5~7日が経過すると,亜硝酸塩の濃度が上昇し,NOBが定着し始める.通常,25~40日でサイクルが完了するが,水温が低い場合には2ヵ月程度かかる場合もある.初めに少量の魚を導入することでアンモニア源とすることができるが,アンモニアや亜硝酸塩により魚が死亡することもあるため,細かく砕いた魚の飼料を用いる方法が推奨されている.硝化菌は環境中に存在するため,自然とシステム内に定着するが,市販の硝化菌製剤や稼働中のアクアポニックスのバイオフィルターの一部をスターターとして使用することで,硝化菌の定着に必要な時間を大幅に短縮できる.
従属栄養細菌は炭水化物やアミノ酸,脂質等の有機物をエネルギー源として利用する微生物で,アクアポニックスではPseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属等が特定されている.従属栄養細菌はアクアポニックスのシステム内全域に定着しているが,特に,糞便等の固形排泄物が蓄積する場所に集中して定着しており,固形排泄物に含まれるリン等の微量栄養素を無機化することで,植物に可溶性微量栄養素を提供する重要な役割を果たしている(15, 16)15) N. Kasozi, B. Abraham, H. Kaiser & B. Wilhelmi: Ann. Microbiol., 71, 1 (2021).16) A. Joyce, M. Timmons, S. Goddek & T. Pentz: “Aquaponics Food Production Systems: Bacterial Relationships in Aquaponics: New Research Directions,” Springer Cham, 2019, p. 145..また,これら微生物が生物的防除としても機能する可能性が示唆されており,アクアポニックスシステムやRASより分離されたPseudomonas属が魚類病原菌や植物病原菌に対して抗菌効果を示すことが報告されている(17, 18)17) I. Sirakov, M. Lutz, A. Graber, A. Mathis, Y. Staykov, T. H. Smits & R. Junge: Water, 8, 518 (2016).18) S. Khalil, P. Panda, F. Ghadamgahi, A. Rosberg & R. R. Vetukuri: BMC Microbiol., 21, 205 (2021)..
アクアポニックスは従来の水耕栽培と比較し,根が大きく発達する(図4図4■アクアポニックスで栽培されたレタスの根).その根には多様な微生物が定着しており,アクアポニックスで栽培されたレタスの根からはPseudomonas, Acidovorax, Sphingobium, Flavobacterium等の根圏細菌として知られる属が特定されている(19)19) Z. Schmautz, A. Graber, S. Jaenicke, A. Goesmann, R. Junge & T. H. M. Smits: Arch. Microbiol., 199, 613 (2017)..アクアポニックスにおける根圏細菌の役割については十分に解明されていないが,これら微生物の中には植物成長促進根圏微生物(PGPR: plant growth promoting rhizobacteria)として知られるものも数多く存在する.PGPRは窒素やリン,その他必須元素の植物への取り込み促進や植物ホルモンの産生によって直接的に植物の成長を促進する,あるいは生物防除作用により植物病原菌を阻害することで間接的に植物の成長を促進すると考えられている(20)20) M. Ahemad & M. Kibret: J. King Saud Univ. Sci., 26, 1 (2014)..PGPRの働きは土耕栽培で検証されたものがほとんどであるため,アクアポニックスにおけるPGPRの有効性について,現在調査を進めている.
アクアポニックスでは植物,魚,微生物の間で水が共有されるため,これらの生育に最適な水質を提供できれば,生産効率を最大化することが可能となる.しかしながら,生育に最適な水質の要件は生物で異なるため,それぞれの生物,即ち植物,魚,微生物の妥協点を探りながら水質の最適化を目指していくことになる(表1表1■魚,植物,微生物の一般的な水質許容値とアクアポニックスの水質要件).
水温 (°C) | pH | アンモニア (mg/L) | 亜硝酸塩 (mg/L) | 硝酸塩 (mg/L) | DO (mg/L) | |
---|---|---|---|---|---|---|
温水魚(ティラピア,ナマズ,鯉等) | 22–32 | 6.0–8.5 | <3 | <1 | <400 | 4–6 |
冷水魚(ニジマス,イワナ,ヤマメ等) | 10–18 | 6.0–8.5 | <1 | <0.1 | <400 | 6–8 |
水耕栽培植物 | 16–30 | 4.5–6.0 | <30 | <1 | NS | >3 |
微生物(硝化菌) | 17–34 | 6.5–8.0 | <3 | <1 | NS | 4–8 |
アクアポニックス | 18–30 | 6.0–7.2 | <1 | <1 | 20–150 | >5 |
DO: 溶存酸素,NS: 基準なし |
pHはアクアポニックスの水質要件における最大の妥協点ともいわれており,水耕栽培とRASでは求められる要件が大きく異なっている.水耕栽培では鉄等のミネラルの可溶性の観点から,通常は酸性環境(pH 4.5~6.0)に設定されるが,RASでは魚と硝化菌の要件を満たすためにpH 7.0~8.0に設定される(1)1) W. Lennard & S. Goddek: “Aquaponics Food Production Systems: Aquaponics: The Basics,” Springer Cham, 2019, p. 113..デカップルシステムにより養殖と水耕栽培で個別にpHの管理を行う場合を除き,シングルループの場合はpHの妥協点を見つける必要がある.低pHの場合,硝化菌の活性が低下するため硝化が進まず,水中のアンモニア濃度が上昇する可能性があるが,反対に,pHが高いと魚類に対するアンモニアの毒性が高まるため,理想的には中性付近で管理することが望ましい(4)4) C. Somerville, M. Cohen, E. Pantanella, A. Stankus & A. Lovatelli: “FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 589,” Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2014..
水温も重要な要件の一つである.微生物や植物は比較的温度に対する許容範囲が広いため,水温は魚種に合わせた適温±2°C以内に維持すると上手くいきやすい(1)1) W. Lennard & S. Goddek: “Aquaponics Food Production Systems: Aquaponics: The Basics,” Springer Cham, 2019, p. 113..養殖魚に最適な水温にすることで摂餌量が安定し,魚の成長が最適化されるとともに,安定した肥料産生にも繋がるため植物栽培にも好影響をもたらす.また,DOもアクアポニックスシステム内の生物にとって必要不可欠な要素であるが,ほとんどの魚が5 mg/L以上のDOを必要とするのに対し,植物と微生物はそれ以下でも生存できるため,養殖魚に適したDOに合わせることで植物と微生物の要件も満たされる(1)1) W. Lennard & S. Goddek: “Aquaponics Food Production Systems: Aquaponics: The Basics,” Springer Cham, 2019, p. 113..
植物の生育には,空気や水から供給される炭素,水素,酸素の他に,土壌や養液から供給される多量元素(窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム,硫黄)と微量元素(鉄,銅,亜鉛,マンガン,モリブデン,ホウ素,塩素,ニッケル)が必要となる(21)21) T. Asao: “Hydroponics: A Standard Methodology for Plant Biological Researches,” IntechOpen, 2012..表2表2■水耕栽培養液とアクアポニックス養液の栄養素濃度に示すように,アクアポニックスの養液中の栄養素の濃度は,従来の水耕栽培と比較し,ほとんどの成分が低濃度となっている(21, 22)21) T. Asao: “Hydroponics: A Standard Methodology for Plant Biological Researches,” IntechOpen, 2012.22) J. E. Rakocy, R. C. Shultz, D. S. Bailey & E. S. Thoman: Acta Hortic., 648, 63 (2004)..それにもかかわらず,アクアポニックスは水耕栽培と同等以上の生産性を有することが報告されている(12, 23)12) E. Ayipio, D. E. Wells, A. McQuiling & A. E. Wilson: Sustainability, 11, 6511 (2019).23) M. Eck, O. Körner & M. H. Jijakli: “Aquaponics Food Production Systems: Nutrient Cycling in Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 231..植物の栄養ニーズを満たすことでさらなる生産性の向上が期待できるため,アクアポニックスにおける栄養循環の理解を深めることは極めて重要である.
多量元素(mg/L) | 微量元素(mg/L) | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
N | P | K | Ca | Mg | S | Fe | Cu | Zn | Mn | B | Mo | |
水耕栽培(21)21) T. Asao: “Hydroponics: A Standard Methodology for Plant Biological Researches,” IntechOpen, 2012. | 210 | 31 | 234 | 160 | 34 | 64 | 2.5 | 0.02 | 0.05 | 0.50 | 0.50 | 0.01 |
アクアポニックス(22)22) J. E. Rakocy, R. C. Shultz, D. S. Bailey & E. S. Thoman: Acta Hortic., 648, 63 (2004). | 45.1 | 8.2 | 44.9 | 11.9 | 6.5 | ND | 2.5 | 0.05 | 0.44 | 0.80 | 0.19 | 0.01 |
水耕栽培で汎用されているホーグランド溶液と商用アクアポニックス(UVIシステム)の栄養素濃度の比較.UVIシステムでは鉄不足を補うために,3週間毎にキレート鉄を添加している. N: 窒素,P: リン,K: カリウム,Ca: カルシム,Mg: マグネシウム,S: 硫黄,Fe: 鉄,Cu: 銅,Zn: 亜鉛,Mn: マンガン,B: ホウ素,Mo: モリブデン ND: データなし |
窒素は魚の飼料に由来しており,一般的な飼料には5~9%程度が含まれている.魚からTANの状態で排泄された窒素は,硝化菌によって硝酸塩まで酸化され植物に利用されるが,多くの植物はアンモニウムを直接栄養源として利用することもできる.そのため,イネ科植物等のアンモニウム利用能の高い植物をTAN除去システムの一つとしてアクアポニックスに利用する試みも報告されている(24)24) H. Effendi, Widyatmoko, B. A. Utomo & N. T. M. Pratiwi: J. King Saud Univ. Sci., 32, 207 (2020)..
リンも主に魚の飼料に由来しており,従属栄養細菌により可溶化され植物に利用されると考えられているが,詳しい動態については解明されていない(23)23) M. Eck, O. Körner & M. H. Jijakli: “Aquaponics Food Production Systems: Nutrient Cycling in Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 231..リンはオルトリン酸イオンとして植物に吸収され,リンの吸収性はpHに依存し,高pHでは不溶性のリン酸カルシウムとなり植物が利用できなくなる.そのため,リンの利用効率を高めるにはアクアポニックスのpHを5.5~7.2に維持することが推奨される(25)25) B. S. Cerozi & K. Fitzsimmons: Bioresour. Technol., 219, 778 (2016)..
カリウムは植物にとって浸透圧調整(気孔の開閉)や酵素反応に係わる重要な栄養素であるが,魚の飼料には通常0.6~1.2%程度しか含まれていないため,アクアポニックスにおいて不足しやすい栄養素の一つである(26)26) L. C. Wenzel, S. M. Strauch, E. Eding, F. X. Presas-Basalo, B. Wasenitz & H. W. Palm: Fishes, 6, 11 (2021)..特にトマト等のカリウム要求性の高い植物を栽培する場合,飼料のみでは不足する可能性があるため,必要に応じて葉面散布等でカリウムを追肥することで収量を高めることができる(27)27) H. R. Roosta & M. Hamidpour: Sci. Hortic., 129, 396 (2011)..
鉄は魚の飼料に含まれるが,植物の生産を維持するには鉄レベルが低すぎるため,鉄欠乏症がしばしば発生する(23)23) M. Eck, O. Körner & M. H. Jijakli: “Aquaponics Food Production Systems: Nutrient Cycling in Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 231..通常,アクアポニックスではキレート鉄を追肥し(28)28) N. Kasozi, R. Tandlich, M. Fick, H. Kaiser & B. Wilhelmi: Aquacult. Rep., 15, 100221 (2019).,鉄キレート能を有するBacillus属やPseudomonas属等のシデロフォア産生菌が植物の鉄の吸収を助けていると考えられている(29)29) R. P. Bartelme, B. O. Oyserman, J. E. Blom, O. J. Sepulveda-Villet & R. J. Newton: Front. Microbiol., 9, 8 (2018)..
多量元素であるカルシウム,マグネシウム,硫黄は主に原水に由来しており,可溶化された状態で存在するため,植物はすぐに利用することができる(23)23) M. Eck, O. Körner & M. H. Jijakli: “Aquaponics Food Production Systems: Nutrient Cycling in Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 231..しかし,原水によってはカルシウムが不足することもあるため,不足時は炭酸カルシウム等の追肥を行う.炭酸カルシウムは卵殻や貝殻等,天然で安価なものが多く,肥料としてだけではなくpH調整にも利用される(4)4) C. Somerville, M. Cohen, E. Pantanella, A. Stankus & A. Lovatelli: “FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 589,” Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2014..
アクアポニックスは様々な利点を有しており,持続可能な開発目標(SDGs)との親和性も高い.
アクアポニックスの主な利点の一つは,栄養資源の再利用が可能になることである.魚の飼料由来の栄養資源を排出物から回収して農業生産に利用することで,リン等の枯渇資源に依存しない食料生産を可能としている(目標12:つくる責任,つかう責任).また,水も循環させて再利用するため,淡水資源の保全にも貢献している(目標6:安全な水とトイレを世界中に).これら栄養素と水の循環は,栄養塩を含む養殖・農業排水の流出を削減し,環境リスクの低減にも繋がっている(目標14:海の豊かさを守ろう,目標15:陸の豊かさも守ろう).
アクアポニックスのもう一つの利点は生産性の高さである.施設型アクアポニックスの場合,海面養殖や土耕栽培と比較して気候変動の影響が少ないため,安定した食料生産が可能となる(目標13:気候変動に具体的な対策を).魚への飼料の投入により,魚と植物を生産することが可能であり,魚と植物のそれぞれが標準的なRASや水耕栽培と同等以上の生産性を有することが実証されている(目標2:飢餓をゼロに,目標8:働きがいも経済成長も)(12, 23, 30)12) E. Ayipio, D. E. Wells, A. McQuiling & A. E. Wilson: Sustainability, 11, 6511 (2019).23) M. Eck, O. Körner & M. H. Jijakli: “Aquaponics Food Production Systems: Nutrient Cycling in Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 231.30) F. Atique, P. Lindholm-Lehto & J. Pirhonen: Water, 14, 1447 (2022)..また,アクアポニックスは良質な土地や水が得られない地域でも食料の生産と販売が可能であるため,貧困地域での食料不安を軽減し,新たな収入源となる可能性を有しており(31)31) M. F. Silva & D. V. Passel: Sustainability, 12, 3734 (2020).,FAOによるこれらの地域に対する小規模アクアポニックスの導入支援も行われている(目標1:貧困をなくそう,目標3:すべての人に健康と福祉を,目標10:人や国の不平等をなくそう,目標11:住み続けられるまちづくりを,目標17:パートナーシップで目標を達成しよう)(32)32) FAO: FOA supports “Aquaponics” production systems to save water in Jordan, https://www.fao.org/neareast/news/view/en/c/1259764/, 2020..
アクアポニックスはセンシング技術との相性が良く,多くのアクアポニックスプラントでIoT技術が採用されている(11)11) P. Raulier, F. Latrille, N. Ancion, M. Kaddouri, N. Crutzen & M. H. Jijakli: Water, 15, 1198 (2023)..IoTによる技術革新は,年齢や性別,障害の有無に関係なく,全ての人の参画を可能にする(目標5:ジェンダー平等を実現しよう,目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう).さらに,アクアポニックスプラントを活用した食育等の教育の機会の提供(目標4:質の高い教育をみんなに),地熱を活用したアクアポニックスプラントの開発(目標7:エネルギーをみんなに.そしてクリーンに)等,取り組み方次第ではSDGsの全ての目標に貢献できる可能性を有している.
ここまでアクアポニックスの概要について紹介してきたが,その新規性と複雑さ故に課題も多い.差し迫った課題の一つは,アクアポニックスを対象とした規制や政策がほとんど全ての国において整備されていないことである.生産者が直面する最たる例は有機認証の問題で,アクアポニックスでは有機野菜を生産できるにもかかわらず,有機認証は土耕栽培を原則としているため,現状では米国を除いて有機認証を取得することができない.また,技術的な課題も多く残っているが,それは即ち多くの研究領域が存在するということでもあり,研究者としてこれほどワクワクすることはない.現在,筆者らはチョウザメの養殖と水耕栽培を組み合わせたアクアポニックスシステムでの研究を進めており,その一つとして栽培野菜の栄養・機能性成分の評価に取り組んでいる.機能性農産物としての可能性を示唆する興味深い知見も集積しつつあり,筆者らの今後の報告に期待いただきたい.
Reference
1) W. Lennard & S. Goddek: “Aquaponics Food Production Systems: Aquaponics: The Basics,” Springer Cham, 2019, p. 113.
2) T. Komives & R. Junge: Ecocycles, 1, 1 (2015).
4) C. Somerville, M. Cohen, E. Pantanella, A. Stankus & A. Lovatelli: “FAO Fisheries and Aquaculture Technical Paper 589,” Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2014.
5) F. Murray, J. Bostock & D. Fletcher: “Review of Recirculation Aquaculture System Technologies and their Commercial Application”, Stirling Aquaculture, 2014.
6) C. Maucieri, C. Nicoletto, R. Junge, Z. Schmautz, P. Sambo & M. Borin: Ital. J. Agron., 13, 1 (2018).
7) H. P. Palm, U. Knaus, S. Appelbaum, S. M. Strauch & B. Kotzen: “Aquaponics Food Production Systems: Coupled Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 163.
8) S. Goddek, A. Joyce, S. Wuertz, O. Körner, I. Bläser, M. Reuter & K. J. Keesman: “Aquaponics Food Production Systems: Decoupled Aquaponics Systems,” Springer Cham, 2019, p. 201.
9) W. Lennard: “Aquaponic System Design Parameters: Fish to Plant Ratios (Feeding Rate Ratios),” Aquaponics Solutions, 2013.
12) E. Ayipio, D. E. Wells, A. McQuiling & A. E. Wilson: Sustainability, 11, 6511 (2019).
13) 平岡 潔:日本水産学会誌,88, 536 (2022).
14) 日本経済新聞:新潟のプラントフォームが養殖キャビア 環境農法活用,https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC216520R20C23A2000000/, 2023.
15) N. Kasozi, B. Abraham, H. Kaiser & B. Wilhelmi: Ann. Microbiol., 71, 1 (2021).
16) A. Joyce, M. Timmons, S. Goddek & T. Pentz: “Aquaponics Food Production Systems: Bacterial Relationships in Aquaponics: New Research Directions,” Springer Cham, 2019, p. 145.
18) S. Khalil, P. Panda, F. Ghadamgahi, A. Rosberg & R. R. Vetukuri: BMC Microbiol., 21, 205 (2021).
20) M. Ahemad & M. Kibret: J. King Saud Univ. Sci., 26, 1 (2014).
21) T. Asao: “Hydroponics: A Standard Methodology for Plant Biological Researches,” IntechOpen, 2012.
22) J. E. Rakocy, R. C. Shultz, D. S. Bailey & E. S. Thoman: Acta Hortic., 648, 63 (2004).
24) H. Effendi, Widyatmoko, B. A. Utomo & N. T. M. Pratiwi: J. King Saud Univ. Sci., 32, 207 (2020).
25) B. S. Cerozi & K. Fitzsimmons: Bioresour. Technol., 219, 778 (2016).
27) H. R. Roosta & M. Hamidpour: Sci. Hortic., 129, 396 (2011).
28) N. Kasozi, R. Tandlich, M. Fick, H. Kaiser & B. Wilhelmi: Aquacult. Rep., 15, 100221 (2019).
30) F. Atique, P. Lindholm-Lehto & J. Pirhonen: Water, 14, 1447 (2022).
31) M. F. Silva & D. V. Passel: Sustainability, 12, 3734 (2020).
32) FAO: FOA supports “Aquaponics” production systems to save water in Jordan, https://www.fao.org/neareast/news/view/en/c/1259764/, 2020.