解説

酵母における定常期の細胞状態とその確立機構
細胞周期の新たなフロンティア

The State of Yeast Cells in Stationary Phase and the Mechanism of Its Establishment: The New Frontier of the Cell Cycle

Ayumu Yamamoto

山本

静岡大学大学院総合科学技術研究科

Published: 2024-01-01

全ての生物は栄養環境の変化や様々な刺激によって細胞分裂を停止し,代謝活性が低く様々な環境ストレスに耐性な「静止期」という状態に移行する.そして増殖に適した環境の回復や細胞刺激により,再び細胞分裂を開始する.特に単細胞生物がグルコース枯渇によって移行する静止期は,「定常期」とよばれる.近年の酵母の研究によって,定常期の細胞状態は増殖期と大きく異なり,さらに分裂酵母では細胞周期を制御するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が定常期の確立制御にも関与することがわかってきた.本稿では酵母の研究から明らかになった定常期の細胞状態とCDKによる定常期の制御について紹介する.

Key words: 定常期; 静止期; 酵母; サイクリン依存性キナーゼ; 細胞周期

はじめに

単細胞生物は環境中の栄養源が豊富にあると指数関数的に増殖するが(対数増殖期),増殖によって環境中の栄養源を消費して増殖に必要な栄養源,特にグルコースが枯渇すると,細胞分裂を停止して「定常期」という状態に移行する(図1図1■定常期と静止期).このとき代謝活性が低下して細胞は様々なストレスに耐性となり,低栄養環境で生存が可能な状態となる.そして栄養環境が再び増殖に適した状態になると増殖を再開する.定常期は「静止期」あるいは「G0期」という,全ての細胞に見られる細胞分裂が停止した状態の一つである.静止期は栄養源枯渇だけでなく様々な刺激などによっても誘導され,環境変化や刺激によって再び増殖を再開する(図1図1■定常期と静止期).様々な未分化幹細胞や皮膚線維芽細胞,リンパ球細胞,肝細胞などの分化した細胞の一部も静止期状態であることがわかっている.またガン細胞や感染菌の一部も静止期状態であることがわかっており,これら静止期細胞が様々な薬剤に耐性であることがガンや感染症の治療の妨げとなっている.そのため定常期を含む静止期を理解することは,基礎生物学的だけでなく医学的にも重要である.また,定常期細胞は分裂しない状態で生存することから,分裂しない細胞の寿命,いわゆる経時寿命の研究材料としても利用されており,その分野でも定常期の研究は重要である.

図1■定常期と静止期

細胞は分裂を停止して定常期に入る.しかし近年の酵母の研究により,定常期の細胞は細胞分裂がただ停止した状態ではなく,その状態は分裂期と大きく異なることが明らかとなってきた.また,これまでは細胞分裂の主制御因子であるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の阻害が定常期の確立に重要であると考えられてきたが,最近の我々の分裂酵母の研究により,CDK活性が定常期の細胞状態の確立,および定常期細胞の生存に必要であることが明らかとなった.本稿では近年明らかになってきた定常期の酵母の細胞状態と定常期確立におけるCDKの働き,および他の生物の静止期との共通点について紹介する.

定常期の細胞状態

定常期の酵母では転写や代謝活性が大きく低下するだけでなく,細胞内の様々な構造が大きく変化している.ここでは定常期における分裂酵母と出芽酵母の細胞内の構造的な変化について紹介する.

1. 細胞サイズの減少

定常期において分裂酵母および出芽酵母のいずれにおいても細胞は増殖期よりも小さくなる(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,細胞サイズの減少).分裂酵母の細胞は円柱の形状をしており,細胞が中央で分割されることによって増殖するが,一定の細胞長まで伸長した後に細胞分裂が起こることにより,細胞サイズは一定に保たれている(1, 2)1) S. G. Martin: Trends Cell Biol., 19, 447 (2009).2) J. J. Turner, J. C. Ewald & J. M. Skotheim: Curr. Biol., 22, R350 (2012)..この細胞分裂のタイミングの制御には,DYRK-familyキナーゼPom1によるCdr2キナーゼの制御が重要である(図3図3■分裂酵母における細胞サイズの制御機構).Cdr2はCDKを阻害するWee1キナーゼの阻害因子であり,細胞の中央に局在している.一方Pom1は,細胞の長軸に沿って細胞の端まで伸びている細胞質微小管の働きによって,細胞の両端に局在する.そして細胞の端から中央部にかけて,Pom1の濃度勾配が生み出される.細胞長が短いと細胞中央部と両端が近いため,細胞中央部のPom1濃度が高くなりCdr2が阻害される.Cdr2が阻害されるとWee1の阻害が起こらず,結果的にCDKが阻害されて細胞分裂が起こらない.一方,細胞が伸長してPom1の細胞中央部の濃度が低下すると,Cdr2が活性化してWee1が阻害され,CDKが活性化して細胞分裂が起こる.

図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い

図3■分裂酵母における細胞サイズの制御機構

定常期の移行前には環境中のグルコース濃度が低下し,このグルコース濃度の低下によって細胞サイズの制御は変化する.環境中のグルコース濃度が低下すると,cAMP依存キナーゼ(PKA)であるPka1の細胞質濃度が増加し,微小管の伸長が妨げられる(3)3) M. Kelkar & S. G. Martin: Nat. Commun., 6, 8445 (2015)..これによって細胞両端のPom1の局在が減少し,Pom1の細胞内の濃度勾配が変化する.その結果,CDKの活性制御が変化して細胞長が短くなることが示唆されている.

一方,出芽によって増殖する出芽酵母の細胞サイズの制御は分裂酵母とは異なっている.出芽酵母では出芽によって形成された娘細胞は母細胞よりも小さく,母細胞と同等のサイズとなるまで出芽しない(4)4) L. H. Hartwell & M. W. Unger: J. Cell Biol., 75, 422 (1977)..そのため,娘細胞では母細胞に比べ,芽のない細胞状態の時間が長くなる.一方,出芽してから細胞質分裂によって娘細胞が形成されるまでの時間は,母細胞と娘細胞では差がない.出芽はS期開始とともに起こるため,S期開始までのG1期の時間が細胞の大きさの制御に重要であると考えられている(2)2) J. J. Turner, J. C. Ewald & J. M. Skotheim: Curr. Biol., 22, R350 (2012)..しかし最近の研究では,細胞の大きさの制御に最も寄与しているのは分裂期の細胞の成長であり,また栄養源の減少に伴う細胞サイズの減少にも,この細胞分裂時の細胞成長の変化の寄与が最も大きいことがわかっている(5)5) R. M. Leitao & D. R. Kellogg: J. Cell Biol., 216, 3463 (2017)..さらに大きさの制御は,リボソーム合成と関係があることも報告されている(6)6) P. Jorgensen, I. Rupeš, J. R. Sharom, L. Schneper, J. R. Broach & M. Tyers: Genes Dev., 18, 2491 (2004)..そのため定常期における細胞サイズの減少はS期の開始制御だけでは説明できないと考えられ,その詳細については今後の研究を待たねばならない.

定常期の細胞が小さくなることは,どのような利点があるのであろうか.一つの可能性として,定常期の細胞の維持にサイズが小さい方が有利であることが考えられる.分裂酵母の定常期細胞は,グルコース以外の栄養源が豊富にあると長期生存する(7)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023)..また増殖期の細胞を急激にグルコース枯渇状態にすると,細胞サイズは小さくならずに定常期に類似した状態に移行するが,このとき定常期細胞よりも早く生存率が低下する.これらの結果から,定常期においても細胞は栄養源を取り込み,それらを代謝して細胞を維持しており,そのため細胞サイズが小さい方が細胞維持に有利である可能性が考えられる.細胞サイズの減少は低栄養環境下で生存するための,細胞の重要な生存戦略の一つであるのかもしれない.

2. 細胞骨格の変化

定常期では細胞骨格も大きく変化する.増殖期の分裂酵母では染色体分配時を除き,細胞質内には細胞の長軸に沿って複数の微小管が形成され,そのうちの1つは酵母の中心体であるSpindle Pole Body(SPB)と相互作用している(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い, Q-MT形成).これら細胞質微小管は,その構成分子であるチューブリンの重合と脱重合によって伸長と短縮を繰り返す.ところが定常期では,15本以上の細胞質微小管から構成される1本の太くて短い,Quiescent cell MT bundle(Q-MT)と呼ばれる微小管の束が形成される(8)8) D. Laporte, F. Courtout, B. Pinson, J. Dompierre, B. Salin, L. Brocard & I. Sagot: J. Cell Biol., 210, 99 (2015)..Q-MTは非常に安定であり,長さの変化およびチューブリンの分子交換も起こらず,微小管脱重合剤にも耐性を示す.出芽酵母では分裂酵母と異なり,増殖期には細胞質微小管はSPBから放射状に伸長して形成されるが,定常期に入ると細胞質微小管は消失し,一端がSPBに結合したQ-MTが核内に形成される(9)9) D. Laporte, F. Courtout, B. Salin, J. Ceschin & I. Sagot: J. Cell Biol., 203, 585 (2013)..出芽酵母では微小管モーターがQ-MT形成に必要であり,微小管のマイナス端に移動する細胞質ダイニンとその活性化因子であるダイナクチン,および同じく微小管のマイナス端に移動するKar3キネシンモーターがQ-MT形成に関与する.

一方,アクチン繊維も大きく変化する.分裂酵母と出芽酵母のいずれにおいても,増殖期では細胞表層に点状に局在するアクチンパッチと細胞内に繊維状に伸びたアクチン繊維が形成される(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,アクチンボディ形成).定常期に入るとこれらが消失し,細胞質にアクチンボディと呼ばれる不定形の塊が形成される(8, 10)8) D. Laporte, F. Courtout, B. Pinson, J. Dompierre, B. Salin, L. Brocard & I. Sagot: J. Cell Biol., 210, 99 (2015).10) I. Sagot, B. Pinson, B. Salin & B. Daignan-Fornier: Mol. Biol. Cell, 17, 4645 (2006)..この構造体はフィンブリン,キャッピングタンパクなどの複数のアクチン結合因子を含み,Q-MTと同じく安定であり,アクチン脱重合剤に耐性である.

現在のところ,これら定常期特異的な細胞骨格構造の機能は不明である.しかし,出芽酵母ではQ-MTやアクチンボディが形成されない変異株では,定常期において生存率が低下する(9, 10)9) D. Laporte, F. Courtout, B. Salin, J. Ceschin & I. Sagot: J. Cell Biol., 203, 585 (2013).10) I. Sagot, B. Pinson, B. Salin & B. Daignan-Fornier: Mol. Biol. Cell, 17, 4645 (2006)..そのため,これら定常期特異的な細胞骨格構造は,定常期の細胞生存に重要な役割を果たしていると考えられる.

3. ストレス顆粒およびその他の顆粒の形成

定常期では細胞質に様々な顆粒が形成される.そのうち最もよく知られるのがストレス顆粒である(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,ストレス顆粒形成).ストレス顆粒は翻訳開始阻害によって形成されることがわかっている.ポリAテールを有するmRNAを含み,さらに翻訳開始に関わる様々な因子が含まれている(11)11) J. R. Buchan & R. Parker: Mol. Cell, 36, 932 (2009)..ストレス顆粒の形成過程はまだよくわかっていないが,出芽酵母の研究からストレス顆粒の形成にはmRNAを含む別のタイプの顆粒であるProcessing body(P-body)が関与することが示唆されている(12)12) J. R. Buchan, D. Muhlrad & R. Parker: J. Cell Biol., 183, 441 (2008)..P-bodyは増殖細胞においても存在しており,mRNAとともにmRNAのキャップ構造を除去するデキャッピング酵素とmRNAの分解に関わる酵素を含み,定常期ではそのサイズが大きくなる(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い, P-Bodyの拡大).ストレス顆粒とP-bodyの構成成分は顆粒ごとにおいても若干異なっており,ストレス顆粒とP-bodyの共通の成分を含む顆粒が存在することも報告されている.またP-bodyがストレス顆粒形成に関わることがわかっている(12)12) J. R. Buchan, D. Muhlrad & R. Parker: J. Cell Biol., 183, 441 (2008)..さらに分裂酵母のストレス顆粒はP-bodyの構成成分であるデキャッピング酵素を含むことがわかっており(13)13) D. Nilsson & P. Sunnerhagen: RNA, 17, 120 (2011).,ストレス顆粒とP-bodyが類似した顆粒であるだけでなく,生物によって顆粒の種類や機能が異なっている可能性が考えられる.実際,ストレス顆粒の形成は出芽酵母ではPKAに依存しないが(14)14) K. H. Shah, B. Zhang, V. Ramachandran & P. K. Herman: Genetics, 193, 109 (2013).,分裂酵母ではPKAに依存する(13)13) D. Nilsson & P. Sunnerhagen: RNA, 17, 120 (2011)..現在のところ,ストレス顆粒はmRNAの貯蔵および安定化に関わる可能性が示唆されているが,ストレス顆粒が形成されなくてもmRNAの安定性には差がない.その役割の解明は今後の研究を待たなくてはならない.

一方,ストレス顆粒以外にも様々な顆粒が形成されることがわかってきている.プロテアソームは増殖期において核内に主に局在してタンパク質分解に関わるが,分裂酵母および出芽酵母のいずれにおいても,このプロテアソームが定常期に入ると細胞質でProteasome Storage Granule(PSG)と呼ばれる1つあるいは2つの大きな不定形の塊を形成する(15)15) D. Laporte, B. Salin, B. Daignan-Fornier & I. Sagot: J. Cell Biol., 181, 737 (2008)..このPSGはプロテアソームのリザーバーとして働くことが提唱されている.また出芽酵母では様々な代謝やシグナル伝達に関わるリン酸化酵素が定常期において顆粒を形成し,少なくとも構成成分の異なる4種類の顆粒が存在することがわかっている(16)16) K. H. Shah, R. Nostramo, B. Zhang, S. N. Varia, B. M. Klett & P. K. Herman: Genetics, 198, 1495 (2014)..これらの顆粒の機能は不明である.

4. 細胞質の固化

増殖期の細胞では,細胞質に存在する高分子は比較的自由に拡散することが可能だが,定常期ではこの拡散が抑制される.分裂酵母および出芽酵母において細胞内顆粒の拡散を解析したところ,これらの流動性が定常期において著しく低下することが明らかとなった(17)17) M. B. Heimlicher, M. Bächler, M. Liu, C. Ibeneche-Nnewihe, E. L. Florin, A. Hoenger & D. Brunner: J. Cell Sci., 132, jcs231688 (2019)..拡散抑制は顆粒のサイズに依存しており,分裂酵母では約5 nm程度の小さい球状タンパク質の拡散運動は制限されなかった.この拡散抑制はグルコース欠乏やATPの枯渇,あるいは細胞質のpHの低下によっても起こる(17~19)17) M. B. Heimlicher, M. Bächler, M. Liu, C. Ibeneche-Nnewihe, E. L. Florin, A. Hoenger & D. Brunner: J. Cell Sci., 132, jcs231688 (2019).18) R. P. Joyner, J. H. Tang, J. Helenius, E. Dultz, C. Brune, L. J. Holt, S. Huet, D. J. Müller & K. Weis: eLife, 5, e09376 (2016).19) M. C. Munder, D. Midtvedt, T. Franzmann, E. Nüske, O. Otto, M. Herbig, E. Ulbricht, P. Müller, A. Taubenberger, S. Maharana et al.: eLife, 5, e09347 (2016)..さらにこのとき,細胞質が固化することが見出された.増殖期の酵母細胞は細胞壁を除去して細胞質膜のみを有するプロトプラストにすると,浸透圧によって球状になる.しかし定常期では,出芽酵母と分裂酵母のいずれも,プロトプラストになっても細胞は元の形状が維持され,球状にはならなかった(17~19)17) M. B. Heimlicher, M. Bächler, M. Liu, C. Ibeneche-Nnewihe, E. L. Florin, A. Hoenger & D. Brunner: J. Cell Sci., 132, jcs231688 (2019).18) R. P. Joyner, J. H. Tang, J. Helenius, E. Dultz, C. Brune, L. J. Holt, S. Huet, D. J. Müller & K. Weis: eLife, 5, e09376 (2016).19) M. C. Munder, D. Midtvedt, T. Franzmann, E. Nüske, O. Otto, M. Herbig, E. Ulbricht, P. Müller, A. Taubenberger, S. Maharana et al.: eLife, 5, e09347 (2016)..これらの結果から,定常期に入ると細胞質内の分子が相互作用して細胞形態を維持できるような網目状の構造体が形成され,この構造体によってあるサイズ以上の粒子の流動性が制限されることが示唆されている(17)17) M. B. Heimlicher, M. Bächler, M. Liu, C. Ibeneche-Nnewihe, E. L. Florin, A. Hoenger & D. Brunner: J. Cell Sci., 132, jcs231688 (2019).

この細胞質の固化の分子機構はまだよくわかっていない.出芽酵母ではグルコースが欠乏すると,細胞サイズの減少と液胞の肥大化によって細胞質の体積が~30%程度まで減少する.このことから細胞質のスペースの減少によって分子密度が高くなり,これによって高分子同士の相互作用によって細胞質の固化が起こる可能性が示唆されている(18)18) R. P. Joyner, J. H. Tang, J. Helenius, E. Dultz, C. Brune, L. J. Holt, S. Huet, D. J. Müller & K. Weis: eLife, 5, e09376 (2016)..もう一つの可能性として,グルコース枯渇によって起こる細胞質のpH低下が挙げられている.細胞膜を透過可能な酸などを利用して,細胞質のpHを低下させると細胞質の固化が起こることが示された(19)19) M. C. Munder, D. Midtvedt, T. Franzmann, E. Nüske, O. Otto, M. Herbig, E. Ulbricht, P. Müller, A. Taubenberger, S. Maharana et al.: eLife, 5, e09347 (2016)..酵母内では等電点が酸性に偏っているタンパク質が多く,pHが低下するとこれらの可溶性が低下し,細胞質の固化が起こることが示唆されている.しかし,定常期細胞内のpHは6.4程度までしか低下せず,このpH付近では細胞質の固化が起こらないことから,pH低下だけでは細胞質の固化は説明できないことが示唆されている(18)18) R. P. Joyner, J. H. Tang, J. Helenius, E. Dultz, C. Brune, L. J. Holt, S. Huet, D. J. Müller & K. Weis: eLife, 5, e09376 (2016).

現在のところ細胞質の固化の生物学的意義はまだよくわかっていない.分子が会合して高分子の構造を維持する,あるいは構造体形成によって分子を狭い空間に閉じ込め,それによって様々な化学反応の阻害や促進をすることが示唆されている.少なくともpHを中性領域に保って細胞質の固化を阻害すると,生存率が早く低下することから(19)19) M. C. Munder, D. Midtvedt, T. Franzmann, E. Nüske, O. Otto, M. Herbig, E. Ulbricht, P. Müller, A. Taubenberger, S. Maharana et al.: eLife, 5, e09347 (2016).,細胞質の固化は栄養源の枯渇時の細胞の生存に必要であることが示唆されている.

5. 核サイズの減少

定常期に入ると核のサイズも著しく減少し,分裂酵母では核体積が増殖期の1/3程度まで減少する(7, 18)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023).18) R. P. Joyner, J. H. Tang, J. Helenius, E. Dultz, C. Brune, L. J. Holt, S. Huet, D. J. Müller & K. Weis: eLife, 5, e09376 (2016).図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,核サイズの減少).酵母の増殖期では核のサイズは細胞の体積と比例しており,核と細胞の体積比(N/C比率)は一定である.核サイズの制御には核輸送や脂質代謝・核膜供給の制御が関わるが,最近の研究では主に浸透圧によって制御されることが実験的に示されている(20)20) J. Lemière, P. Real-Calderon, L. J. Holt, T. G. Fai & F. Chang: eLife, 11, e76075 (2022)..細胞は大きさが変わっても,細胞質内と核内の浸透圧に影響を与える高分子の数の比が一定となるシステムを備えており,これによってN/C比率が一定となる.しかし分裂酵母の定常期ではこのN/C比率が大きく低下し,この低下はグルコース枯渇によって起こる(7)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023)..現在のところN/C比率の低下の分子機構は不明だが,細胞質~核内間の分子輸送阻害やタンパク質合成の減少による核内の分子数の減少,あるいは細胞質の固化による浸透圧の変化による可能性が考えられる.

6. 染色体の凝縮および核内配置の変化

定常期では染色体の状態も大きく変化し,分裂酵母,出芽酵母のいずれにおいても染色体が凝縮することがわかっている(7, 21)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023).21) S. G. Swygert, S. Kim, X. Wu, T. Fu, T. H. Hsieh, O. J. Rando, R. N. Eisenman, J. Shendure, J. N. McKnight & T. Tsukiyama: Mol. Cell, 73, 533 (2019)..出芽酵母では,体細胞分裂期に染色体凝縮を起こすコンデンシンや,リンカーヒストンであるヒストンH1が定常期の染色体の凝縮に関与することが見出されている(21, 22)21) S. G. Swygert, S. Kim, X. Wu, T. Fu, T. H. Hsieh, O. J. Rando, R. N. Eisenman, J. Shendure, J. N. McKnight & T. Tsukiyama: Mol. Cell, 73, 533 (2019).22) G. Schäfer, C. R. E. McEvoy & H.-G. Patterton: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105, 14838 (2008)..また染色体は核内でブラウン運動のような揺らぎ運動をするが,この揺らぎが顕著に抑制される(7, 18)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023).18) R. P. Joyner, J. H. Tang, J. Helenius, E. Dultz, C. Brune, L. J. Holt, S. Huet, D. J. Müller & K. Weis: eLife, 5, e09376 (2016)..分裂酵母ではG1期から定常期に入る出芽酵母と異なり主にG2期から定常期に入る.G2期では複製した染色体は結合しているが,その一部は一時的に分離しており,定常期に入るとこの分離が抑制されることも見出されている(7)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023).

出芽酵母では,染色体の核内配置も大きく変化する.出芽酵母の増殖期ではセントロメアはSPBの近傍に集合し(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,セントロメア・核小体の局在変化),16本の染色体の両端のテロメアはSPBから離れた位置に6~10個のクラスターを形成している(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,テロメアの局在変化).定常期に入るとセントロメアは核内に形成されたQ-MT上に,複数のクラスターを形成して局在する(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,セントロメア・核小体の局在変化)(9)9) D. Laporte, F. Courtout, B. Salin, J. Ceschin & I. Sagot: J. Cell Biol., 203, 585 (2013)..またテロメアはさらに集合し,2~3個程度のクラスターを形成して核膜近傍に局在する(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,テロメアの局在変化)(23)23) D. Laporte, F. Courtout, S. Tollis & I. Sagot: Mol. Biol. Cell, 27, 1875 (2016)..テロメアのクラスター形成はテロメアの転写抑制に関わるSir複合体,および染色体凝縮に関わるコンデンシンやリンカーヒストンに依存する.核小体の核内配置も変化し,増殖期にSPBの反対側に位置する核小体は,定常期に入るとSPBから伸長して核内を横断するQ-MTに添って局在するようになる(図2図2■酵母の増殖期と定常期の細胞状態の違い,セントロメア・核小体の局在変化)(9)9) D. Laporte, F. Courtout, B. Salin, J. Ceschin & I. Sagot: J. Cell Biol., 203, 585 (2013)..これら定常期特異的な染色体の核内配置の生物学的意義は現在のところ不明である.

分裂酵母の定常期確立におけるCDKの働き

次に分裂酵母の我々の研究から明らかになった,定常期の確立におけるCDKの働きについて紹介する.静止期では細胞周期が停止するため,CDKの活性が阻害される必要がある.そのため定常期を含む静止期におけるCDKの機能については,これまで,その阻害機構を中心に研究が進められてきた.しかし,すでに述べたように定常期の細胞状態は増殖期の細胞状態と大きく異なっており,ただ単に細胞分裂が停止した細胞ではない.さらに定常期の確立において,定常期移行前のグルコース濃度の減少によって,細胞分裂を介した細胞サイズの減少が起こる.また分裂酵母では急激なグルコース枯渇によって直ちに細胞分裂が停止した場合では,定常期と同じように核サイズの減少や染色体の凝縮などが見られるものの,定常期ほど小さくならず,また姉妹染色分体の分離抑制も見られない(7)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023)..さらに定常期の細胞に比べてより早く生存率が低下することがわかっている.これらの結果は定常期の細胞状態の確立に必要な細胞の変化は,定常期移行前の細胞分裂においてすでに始まっており,この変化が起こらないと不完全な定常期の状態になることを示唆している.

我々の解析によって,分裂酵母ではCDKが定常期の細胞状態の確立に寄与することが明らかとなった(7)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023)..Cdc2(分裂酵母のCDK)の高温感受性変異株であるcdc2-L7細胞は32°Cでは増殖可能であり,その増殖速度は野生株とあまり大きな差はない.しかしこの32°Cでは,野生株に比べて低い細胞濃度で細胞分裂を停止し,定常期に入る.そして定常期では野生株の定常期細胞に比べて細胞,核,染色体のサイズが有意に大きく,また染色体の揺らぎもより活発となる.許容温度である25°Cで培養しても,増殖期,定常期のいずれでもこのような差は見られないことから,32°CではCdc2の活性が低下し,定常期の細胞状態が変化すると考えられる.さらにこれらの違いは増殖期においてすでに見られており,このことはCdc2による定常期前の細胞分裂の制御が,定常期の細胞状態の確立に重要であることを示している.また急激なグルコース欠乏によって直ちに分裂が停止した場合にも核サイズやN/C比率の減少が見られるが,Cdc2の活性を阻害するとこれらの減少も抑制される.そのため,Cdc2は定常期前の分裂期だけでなく,少なくとも,分裂停止時の核サイズ減少の制御にも寄与すると考えられる.

定常期の細胞状態は低栄養環境で細胞が生存するために必要だと考えられるが,実際,32°Cで培養したcdc2-L7変異株の生存率は,増殖期では野生株と差はないが,定常期では野生株に比べて早く生存率が低下する.また,cdc2-L7変異株を25°Cで培養し,定常期移行後に32°Cで培養しても野生株と生存率の差は見られないが,32°Cで培養して定常期移行後に25°Cで培養すると生存率が早く低下する.このことはCdc2の活性は定常期の移行前および移行時に必要であり,定常期状態が確立した後には必要でないことを示している.

さらに定常期ではCdc2の局在自体が大きく変化する.Cdc2は増殖期において核内に一様に局在しているが,定常期ではB型サイクリンであるCdc13とともに核小体の辺縁部に蓄積する(図4図4■分裂酵母の定常期におけるCdc2と核小体因子の局在変化).細胞周期を制御する核小体局在因子であるClp1フォスファターゼも,核小体の辺縁部に蓄積する.一方,核小体のRNA結合タンパク質であるGar1とGar2は核小体の中心部に蓄積し,Cdc2に囲まれるように局在する.このことは定常期では核小体はGar1とGar2が蓄積する中心領域と,Cdc2, Cdc13およびClp1が蓄積する辺縁領域の2層構造となることを示している.Cdc2の核小体蓄積にはCdc2の活性が必要であり,Cdc2活性を阻害すると,Cdc2は核小体に蓄積しない.また,不活性型のCdc2の変異体は活性を有する野生型のCdc2が存在しても,核小体に蓄積しない.これらの結果から,Cdc2の核小体蓄積はCdc2の自己リン酸化に依存する可能性が示唆されている.

図4■分裂酵母の定常期におけるCdc2と核小体因子の局在変化

現在のところ,定常期におけるCdc2の核小体蓄積の生物学的意義は不明である.Cdc2活性を阻害して核小体蓄積を妨げると,グルコース枯渇下における細胞の生存率が低下することから,グルコース欠乏下における分裂酵母の生存には必要である可能性が高い.またCdc2の核小体蓄積は,42°Cの熱処理や高濃度のマグネシウムイオン処理によっても起こる(7)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023)..高等真核生物においても転写阻害によって,CDKの一つであるCDK2がRNA結合分子や転写因子とともに核小体の辺縁部に蓄積し,nucleolar capという構造体を形成することがわかっている(24)24) Y. Shav-Tal, J. Blechman, X. Darzacq, C. Montagna, B. T. Dye, J. G. Patton, R. H. Singer & D. Zipori: Mol. Biol. Cell, 16, 2395 (2005)..これらのことから,CDKの核小体辺縁部への蓄積は,栄養源枯渇や種々の環境ストレスに対する,真核生物共通の細胞応答である可能性が考えられる.ストレス応答下ではリボソームRNAの転写は阻害されるため,Cdc2の核小体蓄積はリボソームRNAの転写抑制に関わるのかもしれない.実際,高等真核生物では,CDKは分裂期に核小体におけるリボソームRNAの転写を阻害することが報告されている(25)25) J. Heix, A. Vente, R. Voit, A. Budde, T. M. Michaelidis & I. Grummt: EMBO J., 17, 7373 (1998)..あるいは定常期やストレス応答時では細胞分裂の進行が阻害されるため,核小体蓄積によってCdc2を隔離し,細胞周期の進行阻害に寄与する可能性も考えられる.今後の研究によって,Cdc2の核小体蓄積の生物学的意義が明らかになることが期待される.

酵母の定常期とその他の生物の静止期との類似性

酵母の定常期の細胞状態が増殖期の状態と大きく異なっていることを紹介したが,これらの細胞状態と類似した変化は他の生物の静止期においても報告されている.動物細胞の幹細胞は静止期状態であると考えられているが,一般的に定常期の細胞と同じように細胞と核のサイズは小さく,染色体は凝縮している(26)26) C. T. J. van Velthoven & T. A. Rando: Cell Stem Cell, 24, 213 (2019)..特に静止期の免疫T細胞では,出芽酵母と同じくコンデンシンの働きによって染色体が凝縮している(27)27) J. S. Rawlings, M. Gatzka, P. G. Thomas & J. N. Ihle: EMBO J., 30, 263 (2011)..また哺乳類細胞においても,栄養源枯渇によってストレス顆粒が形成されることもわかっている(28)28) L. C. Reineke, S. A. Cheema, J. Dubrulle & J. R. Neilson: J. Cell Sci., 131, jcs220224 (2018)..また細菌では炭素源が枯渇すると,酵母と同様に細胞質が固化することがわかっている(29)29) B. R. Parry, I. V. Surovtsev, M. T. Cabeen, C. S. O’Hern, E. R. Dufresne & C. Jacobs-Wagner: Cell, 156, 183 (2014)..これらの結果は,酵母の定常期で見られた変化が静止期細胞に共通した変化であることを示唆している.

一方,静止期確立におけるCDKの働きについては,分裂酵母以外では報告はない.定常期におけるCDKの核小体蓄積も他の生物では観察されておらず,出芽酵母ではCDKであるCdc28の局在が定常期において変化するが,核小体には蓄積せず,他の様々なキナーゼとともにP-bodyやストレス顆粒に蓄積する(16)16) K. H. Shah, R. Nostramo, B. Zhang, S. N. Varia, B. M. Klett & P. K. Herman: Genetics, 198, 1495 (2014)..静止期確立におけるCDKの能動的な働きについて報告はないものの,酵母と同様に哺乳類細胞においても,細胞サイズの制御が細胞周期の進行と密接に関わることがわかっている(30)30) S. Liu, M. B. Ginzberg, N. Patel, M. Hild, B. Leung, Z. Li, Y. C. Chen, N. Chang, Y. Wang, C. Tan et al.: eLife, 7, e26947 (2018)..また,哺乳類細胞では静止期に入る前の細胞分裂において,CDK活性が低下しており(31)31) S. L. Spencer, S. D. Cappell, F.-C. Tsai, K. W. Overton, C. L. Wang & T. Meyer: Cell, 155, 369 (2013).,静止期確立のプログラムが静止期に入る前の細胞分裂においてすでに始まっていると考えられる.これらのことから,他の生物においてもCDKが静止期確立に能動的に寄与する可能性は高いと考えられる.

おわりに

ここで紹介してきたように静止期の細胞は増殖期の細胞と大きく異なっており,この他にも紙面の都合上紹介できなかったが,ミトコンドリアの形状,ヒストンの修飾,遺伝子発現パターンなど,増殖期と異なる点は枚挙にいとまがない.また静止期の細胞は,増殖に適した環境状態が回復する,あるいは特定の刺激を受けると,容易に増殖期の細胞状態に戻り細胞分裂を再開する.その意味では,静止期を含むサイクルは通常の細胞周期から分岐した,もう一つの異なる「細胞周期」と言っても過言ではない.しかしながら,静止期の細胞は増殖期の細胞に比べ,未解明な点が多い.特に静止期の細胞はどのような状態にあるのか,その状態はどのように確立されるのか,さらにどのように増殖を再開するのか,そしてCDKがこれらの制御にどのように関与するのか,といった点はまだまだ詳細は不明であり,今後取り組むべき研究課題である.また,本稿ではあまり触れなかったが,栄養応答の主制御因子であるTORキナーゼや栄養・ストレス応答に関わるMAPキナーゼやPKAなどの様々な因子による制御機構も完全には明らかとなっていない.

今後,この細胞周期の新たなフロンティアと言える静止期の研究がさらに進み,これまでに類のない生命現象や分子機構がみつかる可能性がある.また,経時寿命の研究材料として用いられる定常期細胞を理解することは,寿命の理解にも大きく寄与するであろう.実際,これまでの経時寿命研究は栄養環境が考慮されていなかったが,我々の研究から,定常期の細胞も栄養源を代謝して生存しており,栄養環境がその生存に大きく寄与することが明らかとなっている(7)7) M. Hiraoka, Y. Kiyota, S. Kawai, Y. Notsu, K. Yamada, K. Kurashima, J. W. Chang, S. Shimazaki & A. Yamamoto: J. Cell Sci., 136, jcs260727 (2023)..これらの新たな知見は,今後の寿命制御機構の理解に大きな影響を与えると考えられる.静止期の理解がさらに進むことが望まれるとともに,酵母の定常期の研究がその理解に大きく寄与することが期待される.

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