解説

未病制御におけるNrf2酸化ストレス応答機構の役割とその分子機構
未病期に活躍するストレス応答機構について考察する

Role of Nrf2-Mediated Oxidative Stress Response Pathway in the Regulation of Mibyou: Consideration of Stress Response during Mibyou

Ken Itoh

伊東

弘前大学大学院医学研究科バイオメディカルリサーチセンター分子生体防御学講座

Shuya Kasai

葛西 秋宅

弘前大学大学院医学研究科バイオメディカルリサーチセンター分子生体防御学講座

Yota Tatara

多田羅 洋太

弘前大学大学院医学研究科バイオメディカルリサーチセンター分子生体防御学講座

Published: 2024-03-01

未病という言葉は中国伝統医学に由来する言葉であり,今日では徐々に発症する変性疾患において,健康と病気の間のpre-diseaseの期間として一般的に捉えられている.未病期は代謝障害や若干の不定愁訴はあるものの,臓器障害には至っていない段階として捉えることができる.ストレス応答機構は未病段階での恒常性維持機構に重要であるが,その詳細はよく理解されていない.

Key words: Nrf2; 酸化ストレス; 未病; ストレス応答; ATF4

未病期に共通して観察される代謝障害は生体にストレス応答を惹起し,これにより恒常性が保たれる(homeostasis).Allostasisという概念はhomeostasisの一部を構成する概念で,環境や必要性に応じて変化する(例えば高血圧に身体が適応するように)適応メカニズムである(1)1) B. S. McEwen: Ann. N. Y. Acad. Sci., 840, 33 (1998)..もともとは脳による身体制御の分野で確立された概念であるが,広く生体適応応答全般にも応用してとらえることができる.ストレス応答により恒常性が回復できない場合はallostatic load(代償としての負荷)となり新しい定常状態が作られる.これは徐々に細胞死の閾値に近づいていくと思われ,未病を理解するのには重要な概念である.

生体は様々な環境ストレスに曝露されており,生体のストレス防御機構は生物の生存戦略として重要である.酸化還元反応は,エネルギー代謝や異物代謝に重要であるが,エネルギー産生の過程で電子伝達反応の副産物として生じる活性酸素は最も原始的かつ普遍的なストレスであり,多量に蓄積すると酸化ストレスを生じる.酸化ストレスは,活性酸素など酸化する側の物質とそれを消去する抗酸化酵素・物質のバランスが産生側に偏り細胞の情報伝達や生存が阻害された状態を指す.Nrf2(Nuclear factor erythroid 2-related factor 2)は化学発がんの研究から親電子性物質(electrophile)に応答して活性化し第二相解毒代謝酵素や抗酸化酵素,抗酸化物質の生合成経路の遺伝子発現を統一的に制御する因子として哺乳動物において見出された(2)2) K. Itoh, J. Mimura & M. Yamamoto: Antioxid. Redox Signal., 13, 1665 (2010)..現在では,高等動物における酸化ストレス応答のマスター因子であることが確立されており,ヒトでは種々の病態やストレスによって多様な活性制御を受けることが明らかになっている.

Nrf2はグロビン遺伝子のエンハンサー配列などの転写制御領域に同定されていたシス結合配列であるNF-E2結合配列に結合する因子として発見された塩基性-ロイシンジッパー(b-Zip)構造を持つ転写因子である.Nrf2はb-Zip転写因子スーパーファミリーの中でもMaf群転写因子に属する小Maf群因子とヘテロ二量体を形成して標的配列に結合するが,現在,マウスでは6つのCNC転写因子と3つの小Maf群因子が知られている(図1A図1■CNC転写因子群とNrf2とKeap1のドメイン構造).NF-E2結合配列はhigh affinityの結合配列であるが,我々はNrf2と小Maf群因子のヘテロ二量体の結合特異性の分析から,Nrf2が親電子性物質に応答する配列として知られていた抗酸化剤応答配列(Antioxidant Response Element; ARE)に結合することを示し,さらにノックアウト(KO)マウスを作成してそれを証明した.AREによって制御される遺伝子は,i)親電子性物質を解毒する酵素(グルタチオン-S-転移酵素など),ii)抗酸化物質(グルタチオンやNADPH)の生合成経路の酵素,およびiii)抗酸化タンパク質(ペルオキシレドキシンなど)が主なものである(図2図2■Nrf2が制御する遺伝子の抗酸化的な働き).これら以外にも,抗炎症タンパク質(ヘムオキシゲーゼ-1など),タンパク質品質管理に関わる遺伝子(プロテアソームサブユニット遺伝子など),ミトコンドリア品質管理に関わる遺伝子など(PINK1やPGC1αなど)を組織・細胞特異的に制御し,細胞や個体のストレス耐性に貢献している(3)3) K. Itoh, P. Ye, T. Matsumiya, K. Tanji & T. Ozaki: J. Clin. Biochem. Nutr., 56, 91 (2015)..Nrf2の機能は当初,ブチル化ヒドロキシアニソールなどのフェノール系抗酸化剤(実はこれは生体内で親電子性物質t-BHQに代謝される)によるがんの化学予防の分野で注目されたが,その後Nrf2活性化経路が多様であることが明らかになり,さらに膨大なNrf2標的遺伝子の発見,がんにおけるNrf2生体防御系のco-option(流用)の発見などとともに膨大な研究領域に発展した.PubMedで調べるとNrf2のキーワードで年間千件以上の報告がなされるに至っている.

図1■CNC転写因子群とNrf2とKeap1のドメイン構造

A. CNC群に属する転写因子とMafファミリーに属する小Maf群因子とのヘテロ二量体は,AREに効率よく結合する.B. ニワトリNrf2(ECHと呼ばれる)とヒトNrf2の間で高度に保存された領域をNeh(Nrf2-ECH homology)領域と呼ぶ.Neh1は,塩基性-CNC特異的領域とロイシンジッパー領域よりなり,前者は特異的なDNA結合に,後者は小Maf群因子とのヘテロ二量体形成に重要である.Neh4とNeh5は転写活性化ドメインであり,転写コアクチベーターCBPと結合する.Neh2は,Nrf2活性の抑制的な制御領域であり,Keap1と結合する.Keap1はショウジョウバエのKelchタンパク質に構造上類似しており,BTBドメインとKelchドメインをそれぞれN末端とC末端側に保持している.両者のKelchドメインはアクチン細胞骨格と相互作用するが,Keap1のKelchドメインはさらにNrf2とも相互作用する.また,両者のBTBドメインは,ホモ二量体形成に寄与する.さらに,Keap1にはIVR領域が存在するが,本領域には親電子性物質との反応性の高いシステイン残基が存在し,親電子性物質に対するセンサーとして機能することが示されている.

図2■Nrf2が制御する遺伝子の抗酸化的な働き

網掛けで示した因子は,Nrf2標的遺伝子として知られている因子である.
xCT: cystine/glutamate transporter, MRP1: multidrug resistance-associated protein1, GCL: glutamate-cysteine ligase, GR: glutathione reductase, GPX: glutathione peroxidase, PRX: peroxiredoxin, SOD: superoxide dismutase, TRX: thioredoxin, TXNRD: thioredoxin reductase, HO-1: heme oxygenase-1, FTH: ferritin heavy chain, FTL: ferritin light chain, G6PD: glucose-6-phosphate dehydrogenase, NQO1: NAD(P)H quinone oxidoreductase 1

Nrf2の活性化機構

Nrf2はKeap1/Cul3およびGSK3βによるリン酸化を介したSCF(Skp1-Cullin1-F-box protein)β-TrCPを介したユビキチンリガーゼ-プロテアソーム系により分解される半減期の短い転写因子であり,その活性調節は主にタンパク質の安定化でなされる(図3図3■Nrf2の分解機構と活性化機構).Nrf2分解系を止めて活性化する種々のメカニズムについて述べる.

図3■Nrf2の分解機構と活性化機構

1. 外来性酸化ストレスに対するKeap1タンパク質修飾依存性のNrf2活性化

Keap1はNrf2の活性を抑制するNrf2のN末端のNeh2ドメインに結合する因子として酵母ツーハイブリッド法により見出された(図1B図1■CNC転写因子群とNrf2とKeap1のドメイン構造(2)2) K. Itoh, J. Mimura & M. Yamamoto: Antioxid. Redox Signal., 13, 1665 (2010)..Neh2ドメインにはKeap1に結合するための高親和性ETGEモチーフと低親和性DLGモチーフがありこの2つのモチーフがKeap1二量体に結合し,モチーフの間にある複数のリジンがユビキチン化される(図3図3■Nrf2の分解機構と活性化機構).親電子性物質はKeap1のシステインチオール基に共有結合することによりKeap1のコンフォメーション変化をおこしNrf2のユビキチン化を抑制するが,DLGモチーフとKeap1との結合が乖離してユビキチン化が起きなくなるモデルを「蝶番と閂」モデルと呼んでいる.Nrf2を活性化する親電子性物質の代表的なものを図4図4■Nrf2を活性化する親電子性物質に示す.ETGEモチーフが蝶番の役割を,DLGモチーフが閂の役割を果たす.Keap1とETGEモチーフとの結合は,親電子性物質により乖離せず,新規合成されたNrf2はKeap1による抑制を逃れて核に移行する.コハク酸のようにKeap1のリジンをセンサーとする場合もある(4)4) L. Ibrahim, C. Stanton, K. Nutsch, T. Nguyen, C. Li-Ma, Y. Ko, G. C. Lander, R. L. Wiseman & M. J. Bollong: Cell Chem. Biol., 30, 1295 (2023)..上記の場合以外にもKeap1とCul3との乖離やKeap1の分解などのようにKeap1による分解系を阻害するに至る種々の経路がNrf2を活性化することは重要である.例えばFGF18は脱ユビキチン化酵素USP16の発現を抑制し,Keap1のユビキチン化促進による分解を誘導してNrf2を活性化する(5)5) G. Tong, Y. Chen, X. Chen, J. Fan, K. Zhu, Z. Hu, S. Li, J. Zhu, J. Feng, Z. Wu et al.: Nat. Commun., 14, 6107 (2023)..また,シャペロン媒介性オートファジーはKeap1を分解してNrf2を活性化する(6)6) L. Zhu, S. He, L. Huang, D. Ren, T. Nie, K. Tao, L. Xia, F. Lu, Z. Mao & Q. Yang: Aging Cell, 21, e13616 (2022)..一方,種々のシグナルはNrf2を抑制することが知られている.例えば,過酸化水素はKeap1経路を介しNrf2タンパク質を安定化する一方で,Nrf2のタンパク質合成を抑制するために強い誘導剤にはならない.また,皮膚創傷治癒などにおいて,活性酸素は脂質過酸化を介してCavin-1を遊離し,Nrf2に結合してそのタンパク質分解を促進する(7)7) Y. Wu, Y. W. Lim, D. A. Stroud, N. Martel, T. E. Hall, H. P. Lo, C. Ferguson, M. T. Ryan, K. A. McMahon & R. G. Parton: Dev. Cell, 58, 376 (2023)..種々の病態でKeap1が増加する場合には,Nrf2経路は抑制される.

図4■Nrf2を活性化する親電子性物質

2. Keap1の酸化修飾非依存性のNrf2の活性化

Nrf2はGSK3βによりリン酸化されSCF(Skp1-Cullin1-F-box protein)β-TrCPを介した系によりプロテアソームで分解される.IGF-1などの増殖因子は,PI3K-AKT経路を介してGSK3βをリン酸化しこの分解経路を抑制する.Keap1非依存性のNrf2を活性化するシグナル(多くは酸化ストレス非依存性)としてはオートファジー因子であるp62が重要であり,Keap1のcanonical経路に対してnon-canonical経路として知られている.p62はSTGEモチーフを有しており,オートファジー誘導下でmTORC1によってこのモチーフ中のセリンがリン酸化されると,マイナス荷電の付与によりKeap1との結合が増加しKeap1とNrf2 DLGモチーフ(閂部分)の結合に競合し,Nrf2を活性化する.STGEモチーフのリン酸化は小腸上皮のTAK1を介したNrf2の基礎的発現(8)8) K. Hashimoto, A. N. Simmons, R. Kajino-Sakamoto, Y. Tsuji & J. Ninomiya-Tsuji: Antioxid. Redox Signal., 25, 953 (2016).や遅筋における運動によるNrf2の活性化(9)9) M. Yamada, M. Iwata, E. Warabi, H. Oishi, V. A. Lira & M. Okutsu: FASEB J., 33, 8022 (2019).に関与することが報告されている.さらに,p62はオートファジーを介してKeap1を分解してNrf2を活性化する(10)10) D. H. Lee, J. S. Park, Y. S. Lee, J. Han, D. K. Lee, S. W. Kwon, D. H. Han, Y. H. Lee & S. H. Bae: Autophagy, 16, 1949 (2020).

3. Nrf2の基礎レベルでの活性化

Nrf2の基礎レベル(外来性ストレスがない場合)での活性化状態は,主にmRNAの発現レベルやIGF-1などの増殖因子シグナル,血流ずり応力などによって決定される.いずれも,親電子性物質などの急性暴露による活性化ほど強い活性化には至らないが,これらの変動が生体のレドックス制御に大きな役割を果たすと考えられる.主に肝臓で産生されるIGF-1は循環血流にのり,PI3K-AKT経路を介して血管のNrf2レベルを調節する(11)11) L. C. Bailey-Downs, M. Mitschelen, D. Sosnowska, P. Toth, J. T. Pinto, P. Ballabh, M. N. Valcarcel-Ares, J. Farley, A. Koller, J. C. Henthorn et al.: J. Gerontol. A Biol. Sci. Med. Sci., 67, 313 (2012)..ヒトにおいて,Nrf2遺伝子発現を制御する機能的なSNPが知られており,マイナーアレル保持者では,動脈硬化や騒音性難聴などの種々の疾患に感受性であることが知られている(12, 1312) S. Shimizu, J. Mimura, T. Hasegawa, E. Shimizu, S. Imoto, M. Tsushima, S. Kasai, H. Yamazaki, Y. Ushida, H. Suganuma et al.: PLoS One, 15, e0236834 (2020).).また,Nrf2遺伝子発現はMEF2やNrf2自身によるpositive feedbackにより正に制御される(14)14) M. Tsushima, J. Liu, W. Hirao, H. Yamazaki, H. Tomita & K. Itoh: Arch. Pharm. Res., 43, 286 (2020).

4. 親電子性物質シグナルによるNrf2の活性制御

生体で血流ずり応力や急性炎症などに応答して生合成される親電子性のシクロペンテノン群のプロスタグランジン(15d-PGJ2など)がKeap1システインチオール基の酸化修飾によりNrf2を活性化していることを我々は以前に見出した(2)2) K. Itoh, J. Mimura & M. Yamamoto: Antioxid. Redox Signal., 13, 1665 (2010)..また,炎症の過程で産生されるニトロ化脂肪酸や8-nitro-cGMP(8-ニトロサイクリックGMP)(15)15) F. J. Schopfer & N. K. H. Khoo: Trends Endocrinol. Metab., 30, 505 (2019).,LPS刺激によりTCAサイクルの中間代謝産物より産生されるitaconateもNrf2経路を活性化する(16)16) J. Blay-Cadanet, A. Pedersen & C. K. Holm: Front. Immunol., 12, 635738 (2021).

また,グリセルアルデヒド-3-リン酸やメチルグリオキサールなどの解糖系の反応性代謝産物(4, 17)4) L. Ibrahim, C. Stanton, K. Nutsch, T. Nguyen, C. Li-Ma, Y. Ko, G. C. Lander, R. L. Wiseman & M. J. Bollong: Cell Chem. Biol., 30, 1295 (2023).17) M. J. Bollong, G. Lee, J. S. Coukos, H. Yun, C. Zambaldo, J. W. Chang, E. N. Chin, I. Ahmad, A. K. Chatterjee, L. L. Lairson et al.: Nature, 562, 600 (2018).,TCAサイクルの代謝中間産物であるコハク酸は高濃度で蓄積した時にNrf2を活性化する.トリプトファンの代謝産物であるキヌレニン,3-ヒドロキシキヌレニン,3-ヒドロキシアントラニル酸もNrf2を活性化することが最近報告された(18)18) A. Fiore, L. Zeitler, M. Russier, A. Gross, M. K. Hiller, J. L. Parker, L. Stier, T. Kocher, S. Newstead & P. J. Murray: Mol. Cell, 82, 920 (2022).

進化論的な考察

Nrf2が細胞防御的な転写活性因子として進化したのは基底後生動物や線虫からで,Keap1に先立って進化した(19)19) R. Gacesa, W. C. Dunlap, D. J. Barlow, R. A. Laskowski & P. F. Long: Sci. Rep., 6, 27740 (2016)..線虫における脊椎動物Nrf2ホモローグであるSKN-1はロイシンジッパーがなく哺乳動物とは分子構造がかなり異なるが,CNC領域やNeh2領域の一部が存在し,標的遺伝子も類似している.また,Maternalに発現するSKN-1は腸管の分化決定因子であることがわかっており,Nrf2の分子進化の観点からも興味深い.一方,Keap1は大気中酸素濃度の上昇とともに節足動物以降に進化した(19)19) R. Gacesa, W. C. Dunlap, D. J. Barlow, R. A. Laskowski & P. F. Long: Sci. Rep., 6, 27740 (2016)..したがって線虫にはKeap1が存在せず,主にp38 MAPキナーゼにより制御され,線虫の寿命決定に関与する(20)20) T. K. Blackwell, M. J. Steinbaugh, J. M. Hourihan, C. Y. Ewald & M. Isik: Free Radic. Biol. Med., 88(Pt B), 290 (2015)..また,魚類においてKeap1は2つに遺伝子重複したが,魚類以降においてはこのうちCul3に対する親和性が小さくNrf2分解能の弱いKeap1が残り,Cul3に対する親和性が大きくNrf2分解能の高いKeap1が失われることにより活性酸素濃度の高い陸上生活に適応したことが報告された(21)21) G. M. Castiglione, Z. Xu, L. Zhou & E. J. Duh: Nat. Commun., 11, 2476 (2020)..さらに,鳥類においてはついにKeap1は欠失しNrf2が恒常的に活性化していることが示されて,最適化された好気的代謝の獲得にNrf2の恒常的な活性化が起きたことが示された(22)22) K. Yumimoto, S. Sugiyama, S. Motomura, D. Takahashi & K. I. Nakayama: Sci. Adv., 9, eadg2379 (2023)..Keap1のNrf2活性制御における重要性はこのような進化の過程からも示されている.

Nrf2の未病制御における役割

1. 老化制御におけるNrf2の役割

Harman博士の“ミトコンドリアフリーラジカル説”によると,ミトコンドリア電子伝達鎖由来の活性酸素は核・ミトコンドリアゲノムのDNA障害を誘起して老化を促進する(23)23) D. Harman: J. Gerontol., 11, 298 (1956)..また,紫外線や喫煙などの環境因子も同様にフリーラジカルを介してゲノム障害を引き起こす.さらに,老化に伴って生じる慢性炎症はinflammagingとも言われ,酸化ストレスを伴い老化を促進する.Nrf2は抗酸化・抗炎症経路を制御し,さらにプロテオスターシスを促進することで,老化を調節することが考えられる.老化によってNrf2経路が減弱するという複数の報告がある(24)24) G. A. Shilovsky: Biochemistry (Mosc.), 87, 70 (2022)..C57BL/6雄マウスではNrf2欠失により最大寿命が短縮する(25)25) L. C. D. Pomatto, T. Dill, B. Carboneau, S. Levan, J. Kato, E. M. Mercken, K. J. Pearson, M. Bernier & R. de Cabo: Free Radic. Biol. Med., 152, 650 (2020)..しかしながら,カロリー制限による寿命延長効果にはNrf2は必要ではない(25, 26)25) L. C. D. Pomatto, T. Dill, B. Carboneau, S. Levan, J. Kato, E. M. Mercken, K. J. Pearson, M. Bernier & R. de Cabo: Free Radic. Biol. Med., 152, 650 (2020).26) K. J. Pearson, K. N. Lewis, N. L. Price, J. W. Chang, E. Perez, M. V. Cascajo, K. L. Tamashiro, S. Poosala, A. Csiszar, Z. Ungvari et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105, 2325 (2008)..Nrf2シグナル経路の活性化はハダカデバネズミなどの長寿命のネズミにおいて見出されており,10種の齧歯類の比較では,Nrf2のARE結合活性は寿命と正に相関し,Keap1とSCFbTRCPのタンパク質量は寿命と負に相関する(27)27) K. N. Lewis, E. Wason, Y. H. Edrey, D. M. Kristan, E. Nevo & R. Buffenstein: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 112, 3722 (2015)..ヒトにおいても,早老症の1つであるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群患者では核ラミンタンパク質の変異によりNrf2が不活性化されている(28)28) N. Kubben, W. Zhang, L. Wang, T. C. Voss, J. Yang, J. Qu, G. H. Liu & T. Misteli: Cell, 165, 1361 (2016)..また,SKN-1は線虫の寿命制御に重要な因子である(29)29) C. K. Ewe, G. Alok & J. H. Rothman: Dev. Biol., 471, 34 (2021)..以上のことからNrf2は多様な動物種で最大寿命あるいは平均寿命の制御に関与しているものと考えられる.

2. Nrf2を中心にしたミトコンドリアの老化制御応答のネットワーク

Nrf2はPGC1α, Nrf-1(Nuclear respiratory factor 1)やTFAMの遺伝子発現を制御して運動による骨格筋や心臓の抗酸化作用やミトコンドリアバイオジェネシス(ミトコンドリアの生合成)を活性化する(30)30) S. Kasai, S. Shimizu, Y. Tatara, J. Mimura & K. Itoh: Biomolecules, 10, 320 (2020)..また,Nrf2は種々のメカニズムでミトコンドリアの活性調節およびミトコンドリア恒常性維持機構に関与しており,Nrf2の活性低下はミトコンドリア機能を低下させる(30)30) S. Kasai, S. Shimizu, Y. Tatara, J. Mimura & K. Itoh: Biomolecules, 10, 320 (2020)..Nrf2 KOマウスの肝臓ではSirt1とSirt3の発現低下が観察される一方で,ChIP-Seqデータベースの解析から,Nrf2はSirt3とSirt7のプロモーター配列に結合することが示唆されている(31)31) A. Kim, J. H. Koo, J. M. Lee, M. S. Joo, T. H. Kim, H. Kim, D. W. Jun & S. G. Kim: FASEB J., 36, e22170 (2022)..SIRT6は遺伝子欠失により早期老化を来たすことから注目される核内サーチュインで,Nrf2と相互作用して転写を活性化する.また,SIRT6はKeap1の遺伝子発現を抑制する(32)32) A. Kanwal, V. B. Pillai, S. Samant, M. Gupta & M. P. Gupta: FASEB J., 33, 10872 (2019)..PGC1αは骨格筋においてミトコンドリアバイオジェネシスの制御因子で,ミトコンドリアの活性と相関していることが多い.PGC1αはNrf2の上流,下流,およびコアクチベーターとしても働く(33)33) A. P. Gureev, E. A. Shaforostova & V. N. Popov: Front. Genet., 10, 435 (2019)..一方で,Nrf2が制御する抗酸化タンパク質のほとんどは細胞質に局在する(図2図2■Nrf2が制御する遺伝子の抗酸化的な働き).加齢ではミトコンドリア電子伝達系の活性が低下するが,Balsa E.らはcomplex Iの低下によりNADHの酸化が低下するとMTHFD2やALDH1L2を介したone carbon metabolismによるミトコンドリアでのNADPHの産生が低下し細胞質に酸化型グルタチオン/還元型グルタチオンの比が増加することを示した(図5図5■Nrf2を中心とした転写因子のネットワークとミトコンドリア酸化ストレス防御機構(34)34) E. Balsa, E. A. Perry, C. F. Bennett, M. Jedrychowski, S. P. Gygi, J. G. Doench & P. Puigserver: Nat. Commun., 11, 2714 (2020)..これは,IDH1とIDH2により作り出させれるミトコンドリア–細胞質間のNADPHシャトルによるものらしい.したがってcomplex Iの低下は結果的に細胞質のNADPH産生を低下させる.Nrf2はペントースリン酸回路やMalic enzymeを介したNADPH産生を制御するので,このようなミトコンドリア由来の酸化ストレスにも防御的に働く.

図5■Nrf2を中心とした転写因子のネットワークとミトコンドリア酸化ストレス防御機構

3. ATF4経路はミトコンドリア異常に対する適応応答を担う

小胞体ストレス,アミノ酸飢餓,ヘム欠乏,ウイルス感染などの種々のストレスはそれぞれPERK, GCN2, HRI, PKRによるeIF2αのリン酸化を介してATF4を翻訳レベルで活性化し一連の遺伝子応答を惹起する(35)35) K. Ameri & A. L. Harris: Int. J. Biochem. Cell Biol., 40, 14 (2008)..このようにATF4は多岐にわたるストレスにより活性化されるため,eIF2α-ATF4を介した遺伝子応答は統合的ストレス応答(Integrated Stress Response; ISR)と呼ばれる.ATF4はC/EBPγまたはC/EBPβと相互作用してアミノ酸飢餓応答配列(AARE)に結合し,主に細胞膜表面のアミノ酸トランスポーターやアミノ酸合成酵素,CHOPなどの転写因子の遺伝子発現を活性化する(35)35) K. Ameri & A. L. Harris: Int. J. Biochem. Cell Biol., 40, 14 (2008).

近年,ATF4は哺乳動物におけるミトコンドリアストレスに応答する代表的な転写因子であることが確立された(36)36) S. Kasai, H. Yamazaki, K. Tanji, M. J. Engler, T. Matsumiya & K. Itoh: J. Clin. Biochem. Nutr., 64, 1 (2019)..ミトコンドリアストレスによるATF4活性化は主にHRIあるいはGCN2を介することが報告されている.近年,呼吸鎖複合体Vの阻害がミトコンドリアプロテアーゼであるOMA1を活性化し,それによって切断されたDELE1(DELE1s)がHRIを活性化することが明らかにされた(37, 38)37) X. Guo, G. Aviles, Y. Liu, R. Tian, B. A. Unger, Y. T. Lin, A. P. Wiita, K. Xu, M. A. Correia & M. Kampmann: Nature, 579, 427 (2020).38) E. Fessler, E. M. Eckl, S. Schmitt, I. A. Mancilla, M. F. Meyer-Bender, M. Hanf, J. Philippou-Massier, S. Krebs, H. Zischka & L. T. Jae: Nature, 579, 433 (2020)..また,1-nitropyreneは精巣でミトコンドリアROSを介してリボソーム停滞を引き起こしGCN2を活性化,ステロイドホルモンの産生を抑制するという興味深い現象がある(39)39) J. Li, L. Gao, J. Chen, W. W. Zhang, X. Y. Zhang, B. Wang, C. Zhang, Y. Wang, Y. C. Huang, H. Wang et al.: Environ. Int., 167, 107393 (2022).

ATF4経路とNrf2経路の相互作用と未病における役割

Nrf2とATF4は物理的に相互作用することが知られていた.我々はNrf2とATF4の相互作用がシスチントランスポーターであるxCTやグルタチオン合成に関わる酵素,神経栄養因子(NGF)の転写を協調的に誘導することを見出した(図6A図6■Nrf2とATF4のクロストークによるストレス応答機構(40, 41)40) J. Mimura, A. Inose-Maruyama, S. Taniuchi, K. Kosaka, H. Yoshida, H. Yamazaki, S. Kasai, N. Harada, R. J. Kaufman, S. Oyadomari et al.: Int. J. Mol. Sci., 20, 1706 (2019).41) P. Ye, J. Mimura, T. Okada, H. Sato, T. Liu, A. Maruyama, C. Ohyama & K. Itoh: Mol. Cell. Biol., 34, 3421 (2014)..一方で持続的で強いATF4の活性化はCHOPの発現を介してアポトーシスを誘導するが,Nrf2はCHOPの転写制御領域へのATF4結合を阻害してCHOPの遺伝子発現を抑制する(42)42) Z. H. Zong, Z. X. Du, N. Li, C. Li, Q. Zhang, B. Q. Liu, Y. Guan & H. Q. Wang: Biochim. Biophys. Acta, 1823, 1395 (2012)..老化に伴うミトコンドリア機能異常によりATF4が活性化される際,Nrf2との相互作用によるATF4の機能修飾が老化を抑制する因子となり得る.また,未病においてATF4の活性化をストレス指標としてNrf2を活性化することでxCTやグルタチオン合成に関わる酵素の発現を増強するとともに,CHOPによる細胞死を抑制するというNrf2の健康増進効果が期待される.Nrf2はATF4により転写レベルで活性化されることは知られていたが,近年,Nrf2はATF4の下流で活性化され細胞の生存に必須であることが報告された(図6B図6■Nrf2とATF4のクロストークによるストレス応答機構(43)43) J. K. C. Kress, C. Jessen, A. Hufnagel, W. Schmitz, T. N. Xavier da Silva, A. Ferreira Dos Santos, L. Mosteo, C. R. Goding, J. P. Friedmann Angeli & S. Meierjohann: Cell Rep., 42, 112724 (2023)..これは単にNrf2がmRNAレベルで誘導されるばかりではなく,ATF4がCHAC1を介して還元型グルチタオンを分解し,細胞を酸化ストレス状態にすることにより,Nrf2がより活性化しやすくなることを示した点で興味深い.Nrf2とATF4の同時活性化は,キヌレニン経路の下流でも起こることが近年報告された(18)18) A. Fiore, L. Zeitler, M. Russier, A. Gross, M. K. Hiller, J. L. Parker, L. Stier, T. Kocher, S. Newstead & P. J. Murray: Mol. Cell, 82, 920 (2022)..また,GCN2-ATF4依存的なNrf2の活性化は肝臓マクロファージが障害赤血球を再利用する過程でも見出された(44)44) P. Toboz, M. Amiri, N. Tabatabaei, C. R. Dufour, S. H. Kim, C. Fillebeen, C. E. Ayemoba, A. Khoutorsky, M. Nairz, L. Shao et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 119, e2121251119 (2022).

図6■Nrf2とATF4のクロストークによるストレス応答機構

今後の展望

Nrf2活性化物質であるジメチルフマル酸は,再発寛解型の多発性硬化症の治療薬として現在臨床で使用されている.また,Nrf2活性化剤であるバルドキソロンメチルは糖尿病性腎臓病に対する臨床治験が進められており,Nrf2は治療標的として注目を集めている.幹細胞機能維持は臓器の機能維持に大きな役割を果たすが,Nrf2は各種幹細胞の機能維持に重要であることが報告されている.近年話題になっているフェロトーシスに対してもNrf2の活性化は防御機構を有していることが知られている(45)45) X. Song & D. Long: Front. Neurosci., 14, 267 (2020)..一方で,Nrf2の活性化物質はブロッコリースプラウト中のスルフォラファンに代表されるようにアブラナ科植物をはじめとした植物の二次代謝産物中にファイトケミカルとして豊富に存在する.超高齢社会を迎えた今日,Nrf2活性化物質を介したアンチエイジングによる疾患の予防には医学的および社会科学的に大きな意義がある.

Acknowledgments

ともに研究する弘前大学医学研究科分子生体防御学講座のメンバーに感謝する.

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