解説

高度好塩性古細菌が生産するカロテノイド
その生合成経路と役割

Carotenoids Produced by Extremely Halophilic Archaea: Biosynthetic Pathways and Roles

Rie Yatsunami

八波 利恵

東京工業大学生命理工学院生命理工学系

Published: 2024-08-01

死ぬまでに行きたい絶景スポット,本稿を読んでいる読者のうち,実際に訪れたことがある方はどれぐらいいるのだろうか.かくいう筆者も,写真や映像の中で楽しむことしかできていない.このうち,ボリビアにある「ウユニ塩湖」は多くの方が一度は見聞きしたことがあるのではないだろうか.見渡す限りの広大な白銀の塩原.塩湖全体の高低差がわずか50 cm以内という「世界で最も平らな場所」であるウユニ塩湖では,降った水が外部に流れることなく大地に薄く膜を張るため,空を湖面に映し出す「天空の鏡」と呼ばれる神秘的な絶景が現れる.ここに生息する生き物はフラミンゴが有名であるが,この他,塩を好む微生物「好塩菌」も生育している.本稿では,好塩菌のうち特に筆者が研究対象とする高度好塩性古細菌について,その生育環境および生産するカロテノイドを中心に解説する.

Key words: 好塩性細菌; 高度好塩性古細菌; カロテノイド; バクテリオルベリン; カロテノイド生合成経路

高度好塩性古細菌の生育環境

微生物は,増殖に適したNaCl濃度に応じて,大きく非好塩性微生物と好塩性微生物(halophile)に分類される(表1表1■最適増殖塩(NaCl)濃度による微生物の分類(1)1) D. J. Kushner: “Microbial life in extreme environments,” Academic Press, 1978, p.317..非好塩性微生物はNaCl濃度0.2 M以下で増殖するものを指し,大腸菌や大部分の土壌微生物が含まれる.一方,0.2 M以上でよく増殖するものを好塩性微生物といい,高塩濃度を好んで生育するという点で,極限環境微生物の一種でもある.好塩性微生物は,NaCl要求性に応じてさらに細分化される.0.2~0.5 Mの条件下では低度好塩性微生物が,0.5~2.5 Mの条件下では中度好塩性微生物が,2.5~5.0 Mの条件下では高度好塩性微生物がそれぞれよく増殖するとされている.低度好塩性微生物および中度好塩性微生物が基本的に細菌に属するのに対し,高度好塩性微生物の大半は古細菌である.高度好塩性古細菌は主に,塩湖,塩田および天日塩などから分離されている.つまり冒頭で紹介したウユニ塩湖に生育する好塩菌のほとんどは,高度好塩性古細菌なのである.最も研究が進んでいる高度好塩性古細菌Halobacterium salinarum(2)2) M. T. Madigan & A. Orent: Curr. Opin. Microbiol., 2, 265 (1999).およびHaloferax volcanii(3)3) M. Torreblanca, F. Rodriguez-Valera, G. Juez, A. Ventosa, M. Kamekura & M. Kates: Syst. Appl. Microbiol., 8, 89 (1986).は,いずれもイスラエルの塩湖である死海から分離されている.なお,日本に塩湖はないが,筆者が研究対象とする高度好塩性古細菌Haloarcula japonicaは,石川県能登半島の塩田土壌より分離された(4)4) K. Horikoshi, R. Aono & S. Nakamura: Experientia, 49, 497 (1993)..その形状は,三角形平板状という特徴的な形態を有している(図1図1■高度好塩性古細菌Haloarcula japonicaの電子顕微鏡写真(5)5) Y. Nishiyama, T. Takashina, W. D. Grant & K. Horikoshi: FEMS Microbiol. Lett., 99, 43 (1992)..本稿とは少し話がずれるが,上述したHbt. salinarumは桿菌であり,Hfx. volcaniiは増殖につれて桿菌からディスク状へと形を変える多型性の菌である.さらに,四角形の形状をもつHaloquadratum walsby(6)6) D. G. Burns, P. H. Janssen, T. Itoh, M. Kamekura, Z. Li, G. Jensen, F. Rodríguez-Valera, H. Bolhuis & M. L. Dyall-Smith: Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 57, 387 (2007).も見つかっている.これらの形態維持機構にも非常に興味がもたれるところである.

表1■最適増殖塩(NaCl)濃度による微生物の分類
分類最適増殖NaCl濃度微生物の例
非好塩性微生物0~0.2 M大腸菌,大部分の土壌細菌
好塩性微生物
低度好塩性微生物0.2~0.5 M大部分の海洋性細菌
中度好塩性微生物0.5~2.5 M含塩試料由来の細菌
高度好塩性微生物2.5~5.2 M大半が古細菌

図1■高度好塩性古細菌Haloarcula japonicaの電子顕微鏡写真

高度好塩性古細菌が生産するカロテノイド

カロテノイド(Carotenoid)は,微生物,植物および動物に広く分布する赤,橙,黄色を呈する脂溶性の天然色素である.炭素と水素分子のみで構成されるカロテン類と分子内に水酸基やカルボニル基などの酸素を含む官能基が付いたキサントフィル類に分類される(7, 8)7) G. Britton, S. Liaanes-Jensen & H. Pfander: Carotenoids. Handbook, Birkhäuser Verlag, Basel, 2004.8) 高市真一:カロテノイド―その多様性と生理活性―,裳華房,2006..その基本骨格は,8個のイソプレン(isoprane, C5H8)単位が結合して構成された炭素数40(C40)の化合物である.一方,高度好塩性古細菌の多くは炭素数50(C50)のカロテノイドを生産することが知られている.

高度好塩性古細菌が生産するカロテノイドは,主にHbt. salinarum, Hfx. volcaniiおよびHar. japonicaなどで研究が行われてきた(9, 10)9) M. Rodrigo-Baños, I. Garbayo, C. Vílchez, M. J. Bonete & R. M. Martínez-Espinosa: Mar. Drugs, 13, 5508 (2015).10) R. Yatsunami, A. Ando, Y. Yang, S. Takaichi, M. Kohno, Y. Matsumura, H. Ikeda, T. Fukui, K. Nakasone, N. Fujita et al.: Front. Microbiol., 5, 100 (2014)..これらは,C40カロテノイドのフィトエン(Phytoene),リコペン(Lycopene)に加え,C50カロテノイドのイソペンテニルデヒドロロドピン(IDR),ビスアンヒドロバクテリオルベリン(BABR),モノアンヒドロバクテリオルベリン(MABA)およびバクテリオルベリン(BR)(図2図2■高度好塩性古細菌が生産するカロテノイド)を生産する.また,Har. japonicaにおいてBRは,全カロテノイドのうち約70%を占めることが明らかとなっており,BRがカロテノイド生合成経路の最終産物と考えられている.

図2■高度好塩性古細菌が生産するカロテノイド

カロテノイド生合成経路

細菌におけるカロテノイド生合成の初期段階はイソプレンの合成である.単位構造であるイソペンテニルピロリン酸(IPP)の生合成は,メバロン酸経路または非メバロン酸経路のどちらかをとる.高度好塩性古細菌は,非メバロン酸経路をもたず,メバロン酸経路でIPPを合成することが知られている.この合成経路の出発物質はアセチルCoAであり,細菌と同様に以下の経路を経ると考えられている.すなわち,アセチルCoAから3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA(HMG-CoA),メバロン酸を経由して,C5のIPPが合成される.合成されたIPPは,異性化酵素(Idi)により,ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)に異性化される.さらに,ゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(CrtE)により,順次IPPと縮合していくことにより,C10のゲラニルピロリン酸(GPP),C15のファルネシルピロリン酸(FPP),C20のゲラニルピロリン酸(GGPP)が合成されていく.さらに,フィトエンシンターゼ(CrtB)により,アデノシン三リン酸(ATP)を用いて2分子のGGPPが結合することで,イソプレン8分子からなる最初のC40カロテノイドである15-シスフィトエンが合成されるものと推定されている(図3図3■Har. japonicaにおけるカロテノイド生合成経路(11)11) J. Alcaino, I. Romero, M. Niklitschek, D. Sepúlveda, M. C. Rojas, M. Baeza & V. Cifuentes: PLoS One, 9, e96626 (2014).

図3■Har. japonicaにおけるカロテノイド生合成経路

点線は推定経路を,破線はマイナー経路を示す.また,Hbt. salinarumで同定されているCrtYおよびBrp, Blhにはアスタリスクをつけた.

つい最近になって筆者らの研究により,Har. japonicaにおいてフィトエンからリコペンを経由してBRに至る生合成経路に関与するすべての遺伝子が同定され,その全貌が明らかにされた(図3図3■Har. japonicaにおけるカロテノイド生合成経路(12, 13)12) R. Yatsunami, A. Ando, N. Miyoko, Y. Yang, S. Takaichi & S. Nakamura: Microbes Environ., 39, ME24004 (2024).13) Y. Yang, R. Yatsunami, A. Ando, N. Miyoko, T. Fukui, S. Takaichi & S. Nakamura: J. Bacteriol., 197, 1614 (2015)..その生合成経路を,1. フィトエンからリコペン,2. リコペンからBRの生合成経路,にわけて解説する.

1. フィトエンからリコペンの生合成経路

フィトエンからリコペンに至る反応では,ある種の細菌のカロテノイド生合成経路においてフィトエンデサチュラーゼ(CrtI)の関与が知られている.そこでHar. japonicaゲノム上よりcrtI遺伝子ホモログの有無を調べたところ,機能が詳細に調べられているPantoea ananatis crtI遺伝子と相同性を示す2つの遺伝子ホモログ(c0507およびd1086)が見出された.そこで,これらの遺伝子の単独破壊株(Δc0507およびΔd1086)および二重破壊株(Δc0507Δd1086)を構築し,生産するカロテノイド種の解析を行った.その結果,Har. japonicaのフィトエンからリコペン至る反応においては,c0507およびd1086遺伝子にコードされる2つのcrtI遺伝子が関与することが明らかとなった.すなわち,この合成経路では,フィトエンにC0507およびD1086が共にフィトエンデサチュラーゼとして機能することで不飽和下が進行して,リコペンが合成されることがわかった.

2. リコペンからBRの生合成経路

上述したc0507遺伝子近傍のゲノム配列を詳細に解析したところ,c0507遺伝子のすぐ下流に存在するc0506およびc0505遺伝子は,それぞれリコペンエロンガーゼおよびヒドラターゼの遺伝子ホモログであることがわかった.さらに,これら3つの遺伝子は1つのmRNAとして共転写していることが明らかとなった.これより,c0507/c0506/c0505遺伝子クラスターが本菌のカロテノイドの生合成に密接に関与していると予想された.そこで,c0507/c0506/c0505遺伝子クラスターを構成するそれぞれの遺伝子の単独破壊株を構築し,それらの生産するカロテノイド種の分析を行った.その結果,C0507, C0506およびC0505はそれぞれ,3,4-デサチュラーゼ(CrtD),リコペンエロンガーゼと1,2-ヒドラタターゼの両方の活性をもつ二機能酵素LyeJ(既にHbt. sarimurumより同定されているLyeと60%程度の相同性を有することから,LyeJと命名された),およびヒドラターゼ(CruF)であることがわかった.すなわち,リコペンからBRに至る反応では,リコペンにまずLyeJが作用し,リコペンの片側末端にIPPおよび水分子が付加して,ジヒドロ(DH)-IDRが合成される.次いで,3,4-デサチュラーゼ(CrtD)によって不飽和化されることでIDRが合成される.同様の反応が反対側の末端にも生じ,DH-BABRを経由してBABRが合成される.さらに,付加したIPP部分にヒドラターゼ(CrtF)が作用して水分子が付加し,MABRが合成される.同様の反応が反対側の末端にも生じることで最終産物であるBRが合成される.なお,破壊株の詳細な解析により,DH-IDRからのマイナー経路も存在することがわかっている.この経路では,DH-IDRにLyeJが作用し,テトラヒドロ(TH)-BABRが合成されたのち,CrtDによる不飽和化が進行してBABRが合成されるといった経路である.

C0507は,前述したようにフィトエンからリコペンに至る経路ではCrtIとして機能し,リコペンからBRに至る経路では,CrtDとして機能するため,二機能酵素[CrtI/CrtD(C0507)と命名]といえる.さらにその後の解析により,フィトエンからリコペンに至る経路において,C0507と共にフィトエンの不飽和化反応を担うD1086もC0507と同様に,リコペンからBRに至る経路においてCrtDとして機能することが明らかとなり,CrtI/CrtD(D1086)と命名された.すなわち,CrtI/CrtD(C0507)とCrtI/CrtD(D1086)はBR合成においてお互いに相補しているのである.これまでに,CrtI活性とCrtD活性を有する二機能酵素CrtI/CrtDは見つかっておらず,Har. japonicaのCrtI/CrtD(C0507)およびCrtI/CrtD(D1086)が初めての例であった.

レチナール生合成経路

Hbt. salinarumは,光駆動型プロトンポンプであるバクテリオロドプシンを有し(14)14) D. Oesterhelt & W. Stoeckenius: Nat. New Biol., 233, 149 (1971).,その発色団はレチナールである.レチナールの生合成経路はHbt. salinarumにおいて明らかとなっており,BRの前駆体であるリコペンから合成されるため,ここで紹介しておく.この経路では,まずリコペンにリコペンβ-シクラーゼ(CrtY)が作用し,リコペンのψ末端基が環化されてβ末端基となってβ-カロテンが合成される(図3図3■Har. japonicaにおけるカロテノイド生合成経路(15)15) R. F. Peck, E. A. Johnson & M. P. Krebs: J. Bacteriol., 184, 2889 (2002)..次いで,β-カロテン-15, 15′-ジオキシゲナーゼ(Brp, Blp)によって,β-カロテンが中央で開裂してレチナールが合成される(16)16) R. F. Peck, C. Echavarri-Erasun, E. A. Johnson, W. V. Ng, S. P. Kennedy, L. Hood, S. DasSarma & M. P. Krebs: J. Biol. Chem., 276, 5739 (2001)..このレチナールがアポタンパク質であるバクテリオオプシンと結合し,バクテリオロドプシンとなるのである.

高度好塩性古細菌におけるBRの役割

高度好塩性古細菌におけるBRの役割については,いくつか報告がある.1つ目は,一般的にカロテノイドが担うとされている活性酸素やラジカルの捕獲・消去作用をBRが担うというものである.すでに,BRの1,1,-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl; DPPH)ラジカル消去能は調べられており(10)10) R. Yatsunami, A. Ando, Y. Yang, S. Takaichi, M. Kohno, Y. Matsumura, H. Ikeda, T. Fukui, K. Nakasone, N. Fujita et al.: Front. Microbiol., 5, 100 (2014).,BRはβ-カロテンに比べ高い活性を有していることが明らかとなっている(図4図4■BRとβ-カロテンのDPPHラジカル消去活性).カロテノイドの抗酸化活性は,共役二重結合数が多いほど高いことが知られている(17, 18)17) M. Albrecht, S. Takaichi, S. Steiger, Z. Y. Wang & G. Sandmann: Nat. Biotechnol., 18, 843 (2000).18) B. Tian, Z. Xu, Z. Sun, J. Lin & Y. Hua: Biochim. Biophys. Acta, Gen. Subj., 1770, 902 (2007)..BRの共役二重結合数は13であり,β-カロテンの9より多い.このため,より高いラジカル消去能を示したと考えられた.このような抗酸化能は,強い紫外線が照射される塩湖等で生育する高度好塩性古細菌に生じる様々な酸化ストレス耐性に寄与していると推定されている.Hbt. salinarumを用いた研究からは,BRが紫外線,X線,ガンマ線などの照射,過酸化水素暴露によって生じる酸化的DNA損傷に対する防御を担うことが示唆されている(19, 20)19) H. R. Shahmohammadi, E. Asgarani, H. Terato, T. Saito, Y. Ohyama, K. Gekko, O. Yamamoto & H. Ide: J. Radiat. Res., 39, 251 (1998).20) M. Kottemann, A. Kish, C. Iloanusi, S. Bjork & J. DiRuggiero: Extremophiles, 9, 219 (2005).

図4■BRとβ-カロテンのDPPHラジカル消去活性

2つ目は,BRは末端に4つのヒドロキシル基をもつ極性カロテノイドであることから,細胞膜でリベットとして働くというものである(21)21) S. E. D’Souza, W. Altekar & S. F. D’Souza: Arch. Microbiol., 168, 68 (1997).Hfx. mediterraneiにおいては低塩濃度下で培養した際に,BR生産量の顕著な増加が認められており,BRがリベットとして機能し,低塩濃度下における溶菌を防いでいると考えられている.

さらに,BRは上述したバクテリオロドプシンのような光駆動型プロトンポンプの安定化も担っているとも報告されている(22)22) K. Yoshimura & T. Kouyama: J. Mol. Biol., 375, 1267 (2008).Halorubrum sp. aus-2は,プロトンポンプであるアーキロドプシン-2(aR-2)を有している.aR-2の結晶構造解析の結果,BRは,3量体のaR-2のサブユニット間の隙間に結合していることが明らかとなった.これより,BRはaR-2の構造を支えていることが示唆された.以上,BRの役割は,現在わかっているだけでも多岐にわたる.BRは,高度好塩性古細菌のほとんどが生産している.一方で,バクテリオロドプシンのような光駆動型プロトンポンプに関しては,有しているものもあれば,もたないものも見つかっている.そのことを考慮すると,高度好塩性古細菌は酸化ストレスに対する防御のため,および(もしくは)自然界で突如と起こりえる塩濃度変化への適応のためにまずBR生合成経路を獲得したと考えられる.そして,後に取得した光駆動型プロトンポンプの機能をより強固にするために,すでにもち合わせていたBRを流用したように思える.

BRを合成する微生物には,高度好塩性古細菌の他に,放射線耐性細菌Rubrobacter radiotoleransや,好冷性細菌Arthrobacter agilisが報告されている.これらはいずれも高度好塩性古細菌と同様,極限環境微生物である.R. radiotoleransにおいて,BRは細胞内で非常に効果的なヒドロキシルラジカルスカベンジャーとして働き,R. radiotoleransがもつ極めて高い放射線耐性の一端を担うと考えられている(23)23) T. Saito, Y. Miyabe, H. Ide & O. Yamamoto: Radiat. Phys. Chem., 50, 267 (1997)..一方,A. agilisはBRとそのグリコシル化誘導体を合成し,それらが低温での膜流動性を改善し,細菌膜の凍結融解効果を低減する役割を担うことが明らかとなっている(24)24) A. Flegler & A. Lipski: Arch. Microbiol., 204, 70 (2022)..これより,BR(およびその誘導体)の機能は,高度好塩性古細菌を含む個々の極限環境微生物間で異なる.しかしながら,それぞれに必要な極限環境耐性を担っており,そのマルチな機能で大活躍しているのである.

おわりに

上述したように,本稿で紹介したHar. japonica(当研究室では「三角菌」と呼んでいる)は,能登半島の塩田より分離された.つまり三角菌にとって,能登半島はふるさとである.その能登半島は2024年1月に発生した地震で大きな被害を受けたが,筆者が執筆している現在,復興に向けた様々な取り組みが始まったと聞いている.能登半島の1日も早い復興を願ってやまない.

Reference

1) D. J. Kushner: “Microbial life in extreme environments,” Academic Press, 1978, p.317.

2) M. T. Madigan & A. Orent: Curr. Opin. Microbiol., 2, 265 (1999).

3) M. Torreblanca, F. Rodriguez-Valera, G. Juez, A. Ventosa, M. Kamekura & M. Kates: Syst. Appl. Microbiol., 8, 89 (1986).

4) K. Horikoshi, R. Aono & S. Nakamura: Experientia, 49, 497 (1993).

5) Y. Nishiyama, T. Takashina, W. D. Grant & K. Horikoshi: FEMS Microbiol. Lett., 99, 43 (1992).

6) D. G. Burns, P. H. Janssen, T. Itoh, M. Kamekura, Z. Li, G. Jensen, F. Rodríguez-Valera, H. Bolhuis & M. L. Dyall-Smith: Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 57, 387 (2007).

7) G. Britton, S. Liaanes-Jensen & H. Pfander: Carotenoids. Handbook, Birkhäuser Verlag, Basel, 2004.

8) 高市真一:カロテノイド―その多様性と生理活性―,裳華房,2006.

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13) Y. Yang, R. Yatsunami, A. Ando, N. Miyoko, T. Fukui, S. Takaichi & S. Nakamura: J. Bacteriol., 197, 1614 (2015).

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15) R. F. Peck, E. A. Johnson & M. P. Krebs: J. Bacteriol., 184, 2889 (2002).

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19) H. R. Shahmohammadi, E. Asgarani, H. Terato, T. Saito, Y. Ohyama, K. Gekko, O. Yamamoto & H. Ide: J. Radiat. Res., 39, 251 (1998).

20) M. Kottemann, A. Kish, C. Iloanusi, S. Bjork & J. DiRuggiero: Extremophiles, 9, 219 (2005).

21) S. E. D’Souza, W. Altekar & S. F. D’Souza: Arch. Microbiol., 168, 68 (1997).

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23) T. Saito, Y. Miyabe, H. Ide & O. Yamamoto: Radiat. Phys. Chem., 50, 267 (1997).

24) A. Flegler & A. Lipski: Arch. Microbiol., 204, 70 (2022).