解説

糖鎖の多様性と見分け方
つくって見るか,そのまま見るか

How to Analyze the Diversity of Glycans: Functional Glycotyping and Structural Glycotyping

Hiroshi Hinou

比能

北海道大学大学院先端生命科学研究院

Published: 2024-08-01

あらゆる細胞の表層は糖鎖で覆われており,他の生物や細胞はこの糖鎖の違いを見分けて連携や攻撃する相手を選択する.この糖鎖の違いはABO血液型やO157血清型に代表されるように同一種内の差別化を生み出すこともあれば,癌抗原のように常に存在するものが状況に応じて変化するものもある.このような糖鎖型(グリコタイプ)は生物学的に多様化し,経験(疫学)的に発見・利用されてきたが,糖鎖構造の違いを反映するため,化学構造でその違いを見分けることができる.ここでは糖鎖多様性とこれを化学的に読み解く技術の沿革と共に,糖鎖自動合成法と糖鎖自動分析法の開発から始まったコンセプト技術「グリコタイピング」について概説する.

Key words: 糖鎖自動合成; 糖鎖自動分析; 質量分析; マイクロアレイ; グリコタイピング

はじめに

糖は光合成と代謝の循環式(6 CO2+6 H2O+energy⇄C6H12O6 + 6 O2)において有機物(生命体)として示される生物界の基本物質である.生物の基本単位である細胞内を巨視的に眺めると,糖はエネルギーと他の生体分子の材料に変換されて消えていくだけの存在に見える(1)1) 細谷憲政:化学と生物,10,391(1972).が,細胞外に目を向けると,糖が連なった糖鎖として細胞壁,ムチン層,細胞外マトリックス等として細胞外を覆っていることが見えてくる.また,糖の代謝経路はグルコースの代謝経路を開始点として分岐し,様々な単糖残基が合成され,糖鎖として細胞外提示に向けて複雑な経路で再構築されている.さらに細かく糖鎖の合成経路に加えてその輸送経路を見てみると原核生物でも真核生物でも大きな遺伝子資源およびエネルギーコストを消費して細胞外に糖鎖の多様性を提示するための複雑なシステムを構築し,淘汰圧とせめぎあいながら共生領域を確保するための戦略物質として活用している.

糖鎖構造の共通性と多様性

糖鎖は繰り返し反応による多糖合成や,単糖ごとに異なる酵素を用いた逐次伸長経路など,状況に応じた多彩な合成戦略により生合成されている.特に真核生物では細胞内で合成された分子の細胞外提示・放出機構である小胞体やゴルジ体が糖鎖構造の形成(多様化)を担っており,糖鎖の還元末端を脂質やタンパク質と結合した複合糖質構築経路が並列・多分岐的に構築されている(図1図1■糖鎖を基準とした生体分子機能領域図).この複合糖質合成経路は開始時点では規則性を有しているが,その合成(分解)経路が化学的にも位置的にも分岐や合流を繰り返すなど,複雑化し,終点は曖昧である.具体的には,上流部となる小胞体では,一定の合成ルートが決まっており,タンパク質の品質管理など,生命維持の根幹的な機能を担っている(2)2) 蜷川 暁,加藤晃一,森 和俊:化学と生物,53,571(2015)..一方,糖鎖合成経路がゴルジ体に移行すると,糖鎖生合成経路の分岐と再合流が生じ,さらに,糖鎖上の水酸基やアミノ基への硫酸化やアセチル化などのさらなる修飾が生じ,多様性が増大する.このように形成された糖鎖構造とその配置パターンは細胞外に提示された表現型となり,分化,感染,免疫など,細胞(生物)の界面と局在の多様性を担う障壁やシグナルとして,生物社会を彩っている(3)3) B. P. Kellman & N. E. Lewis: Trends Biochem. Sci., 46, 284 (2021).

図1■糖鎖を基準とした生体分子機能領域図

糖鎖の共通性と多様性を見分けるタンパク質(抗糖鎖抗体,レクチン)

糖鎖を介した外界とのコミュニケーションでは,単糖単位の変化を認識できるタンパク質との相互作用がその中核を担っている.例えば,ABO血液型はヒト内の分子分類シグナルであるとともに,ほとんどの哺乳動物で利用されている生物間共通シグナルでもある.わずか1残基の糖構造の有無や違いを獲得免疫(抗体)が外敵として識別することがこの種内多様性と種間共通性の基盤であり,医療・疫学分野の基礎的指標となっている(4)4) 井関尚栄:化学と生物,5,386(1967)..糖鎖構造の種内多様性と種間共通性,体内の局在性の違いはインフルエンザウイルスなど,様々な感染症の伝播経路となりうる(図2図2■糖鎖は種内や種間に多様性と共通性をもたらす(5)5) M. Imai, T. Watanabe, M. Hatta, S. C. Das, M. Ozawa, K. Shinya, G. Zhong, A. Hanson, H. Katsura, S. Watanabe et al.: Nature, 486, 420 (2012)..出血性大腸菌のベロ毒素やコレラ毒素など,様々な毒素も糖鎖の共通性と違いを用いてその作用相手や部位を決定している(6)6) A. L. Lewis, J. J. Kohler & M. Aebi: “Essentials of Glycobiology”, Cold Spring Harber, 2022, p. 505..このように,糖鎖の共通性と多様性は生物的淘汰圧の流れと分岐経路であり,これを読み解き,利用することは生命科学の理解と健康社会実現に向けた応用研究の基盤となりうる(7)7) R. D. Cummings: Mol. Biosyst., 5, 1087 (2009)..モノクローナル抗体作成技術の確立に伴い,糖鎖構造の違いにより変化を示す癌抗原や胎児抗原など様々な糖鎖抗原が見出され,医療や生命科学研究において有用なバイオマーカー群となった(8)8) J. S. Temme, D. L. Butler & J. C. Gildersleeve: Biochem. J., 478, 1485 (2021)..レクチンは抗体と酵素以外で糖鎖と特異的かつ可逆的に結合するタンパク質の総称である.ほとんどのレクチンは単糖から三糖程度の短い糖鎖モチーフを標的とし,その結合特性はレクチン自身や標的糖鎖構造の多価性や密度の影響(クラスター効果)を受けやすい(9)9) R. T. Lee & Y. C. Lee: Glycoconj. J., 17, 543 (2000)..レクチン機能の解明とその利用に関する研究は生物材料から一定量単離し利用可能な植物レクチン類において先行したが,免疫機能等の動物の多彩な生命現象に関与する動物レクチンの機能解明とその利用に関する研究が現在精力的に進められている(10)10) H.-J. Gabius: Biosystems, 164, 102 (2018).

図2■糖鎖は種内や種間に多様性と共通性をもたらす

標準糖鎖の利用技術

抗糖鎖抗体やレクチン類の基質特異性の解明や利用には構造の明確な標準糖鎖の利用が必須であり,その化学修飾や分析技術の向上に伴い,糖認識機能の特性解明が進んできた.例えばインフルエンザウイルスはヘマグルチニンと呼ばれるウイルスレクチンの糖鎖選択性が鳥インフルエンザやヒト間感染型インフルエンザ等の宿主選択を担っている(5)5) M. Imai, T. Watanabe, M. Hatta, S. C. Das, M. Ozawa, K. Shinya, G. Zhong, A. Hanson, H. Katsura, S. Watanabe et al.: Nature, 486, 420 (2012)..そこで,ヒト気道上部の糖鎖モデルとして6′-シアリルラクトース,水鳥腸管の糖鎖モデルとして3′-シアリルラクトースをそれぞれ半導体センサ表面に並べ,宿主の異なるインフルエンザヘマグルチニンとの相互作用を調査したところ,インフルエンザヘマグルチニンが8桁以上のタンパク質濃度差領域に渡り,この糖鎖構造の違いを厳密に識別した(11)11) S. Hideshima, H. Hinou, D. Ebihara, R. Sato, S. Kuroiwa, T. Nakanishi, S.-I. Nishimura & T. Osaka: Anal. Chem., 85, 5641 (2013)..また,同じセンサ表面に抗ヘマグルチニン抗体を固定した場合と比較して糖鎖固定センサは感度が1万倍以上高く,センサ寿命が大幅に延長した(12)12) S. Hideshima, H. Hinou, D. Ebihara, R. Sato, S. Kuroiwa, T. Nakanishi, T. Momma, S.-I. Nishimura, Y. Sakoda & T. Osaka: Sci. Rep., 9, 11616 (2019)..多数の標準糖鎖を並べたマイクロアレイによる抗糖鎖抗体やレクチン類の基質特異性の網羅的探索研究も盛んに行われている(13)13) D. F. Smith, X. Song & R. D. Cummings: Methods Enzymol., 480, 417 (2010)..例えば,鳥ンフルエンザウイルスは自然主宿主である水鳥から家禽(鶏)へと宿主が変化する際に3′-シアリルラクトサミンの6-O硫酸修飾への結合特異性の変化が重要な因子となることがマイクロアレイ研究によって示されている(14)14) Y. Kikutani, M. Okamatsu, S. Nishihara, S. Takase-Yoden, T. Hiono, R. P. Vries, R. McBride, K. Matsuno, H. Kida & Y. Sakoda: Microbiol. Immunol., 64, 304 (2020).

糖鎖合成技術と糖鎖構造解析

糖鎖の命名法は糖鎖の化学的多様性およびその合成と分析の難易度を明確に示している.図3図3■命名法から見る糖鎖とペプチド鎖の多様性の比較の体系的命名法でからわかるように,糖鎖構造を正確に同定するには結合の立体化学,鏡像体,炭素数と立体化学の組み合わせを示す固有名,環構造,結合位置の情報の組み合わせをそれぞれ示す必要がある.すなわち,オリゴ糖レベルでもその配列組み合わせ数が膨大となるため,すべての可能性を網羅できる自動分析技術や自動合成技術の構築は極めて困難である(15)15) R. A. Laine: Glycobiology, 4, 759 (1994)..そのため,糖鎖合成技術と分析技術の発展,その化学的特性の理解とその正確な制御技術群の蓄積が必須であった(16, 17)16) 小川智也:化学と生物,20,789(1982).17) 木曽 真:化学と生物,51,52(2013)..2000年前後に糖鎖自動化学合成法(18, 19)18) Z. Zhang, I. R. Ollmann, X. S. Ye, R. Wischnat, T. Baasov & C. H. Wong: J. Am. Chem. Soc., 121, 734 (1999).19) O. J. Plannte, E. R. Palmacci & P. H. Seeberger: Science, 291, 1523 (2001).,糖鎖自動化学–酵素合成法(20, 21)20) S.-I. Nishimura & K. Yamada: J. Am. Chem. Soc., 119, 10555 (1997).21) T. Matsushita, I. Nagashima, M. Fumoto, T. Ohta, K. Yamada, H. Shimizu, H. Hinou, K. Naruchi, T. Ito, H. Kondo et al.: J. Am. Chem. Soc., 132, 16651 (2010).が提案されたが,いずれもその運用には高度な知識と標的に応じた入念な予備実験を要する.未知糖鎖構造の決定には,当該糖鎖の純度と量および解析時間を要するが,NMR法が最も信頼性の高い糖鎖構造決定手段である(22)22) C. Fontana & G. Widmalm: Chem. Rev., 123, 1040 (2023)..複合糖質中の微量糖鎖構造情報の取得には糖鎖の選択的標識と標準糖鎖との同一性を実証する糖鎖構造同定法が広く普及している.さらに,質量分析技術の発展に伴い,糖タンパク質丸ごとをイオン化するトップダウン型解析法や,網羅性を重視した糖鎖構造解析(グライコミクス)が利用可能となった(23)23) S.-I. Nishimura: Adv. Carbohydr. Chem. Biochem., 65, 219 (2011)..このような糖鎖構造解析法の整備に伴い,第十七改正日本薬局方では糖タンパク質製剤などに結合している糖鎖の恒常性を確認するための「糖鎖試験法」の項目が追加された(24)24) 第十七改正日本薬局方:“一般試験法糖鎖試験,および参考情報単糖分析とオリゴ糖/糖鎖プロファイル法”, https://www.pmda.go.jp/files/000163566.pdf.この改正において糖鎖の「同一性」ではなく「恒常性」という言葉が選択された理由は,糖鎖構造が糖タンパク質製剤の動態に与える影響と糖鎖不均一性を考慮した結果である.

図3■命名法から見る糖鎖とペプチド鎖の多様性の比較

図4■合成プローブを用いた細胞表面の糖鎖機能の再現と応用

図5■O157は糖鎖です

フォーカスド糖ペプチドライブラリを用いた抗糖鎖抗体の構造活性相関研究

糖タンパク質の一種であるムチンは動物細胞や組織の表面の粘膜層(ムチン層)の主役分子の一つであり,ムチン層の破綻はその生物の「恒常性」の破綻につながる(25)25) P. Paone & P. D. Cani: Gut, 69, 2232 (2020)..ムチンはセリン,トレオニン,プロリン残基に富む繰り返しペプチド配列とそのセリン,トレオニン残基への高度かつ不均一な糖鎖修飾構造を特徴とする糖タンパク質ファミリーの総称である.ムチンの糖鎖修飾パターンは疾患等の「恒常性」の破綻に応じて変化するため,様々な抗ムチン抗体が臨床診断に使用されているが,ムチンが超巨大タンパク質であるためそのエピトープ構造が曖昧なまま使用されているものが多い.Tn抗原,T抗原,シアリルT抗原と呼ばれる1~3糖構造がムチンの癌抗原形成に関与していることが経験的に知られているが(8)8) J. S. Temme, D. L. Butler & J. C. Gildersleeve: Biochem. J., 478, 1485 (2021).,糖鎖単独ではなく糖ペプチド単位で抗原となるため,そのエピトープ形成メカニズムの解明とその利用が遅れていた.そこで,我々は抗MUC1診断抗体の抗原構造を標的とし,糖鎖構造およびペプチド配列双方に多様性を有する糖ペプチドライブラリ合成技術を構築し,抗MUC1診断抗体のエピトープ構造同定を実現した(26~28)26) T. Matsushita, H. Hinou, M. Kurogochi, H. Shimizu & S.-I. Nishimura: Org. Lett., 7, 877 (2005).27) M. Fumoto, H. Hinou, T. Matsushita, M. Kurogochi, T. Ohta, T. Ito, K. Yamada, A. Takimoto, H. Kondo, T. Inazu et al.: Angew. Chem. Int. Ed., 44, 2534 (2005).28) N. Ohyabu, H. Hinou, T. Matsushita, R. Izumi, H. Shimizu, K. Kawamoto, Y. Numata, H. Togame, H. Takemoto, H. Kondo et al.: J. Am. Chem. Soc., 131, 17102 (2009)..さらに,この合成糖ペプチドライブラリを用いたマイクロアレイおよびNMR配座解析研究から抗MUC1抗体はTn抗原,T抗原,シアリルT抗原それぞれの糖鎖修飾に伴うペプチド鎖の配座変化を認識すると共に,周辺糖鎖密度もその認識能に影響を及ぼすことが系統的に実証された(28~31)28) N. Ohyabu, H. Hinou, T. Matsushita, R. Izumi, H. Shimizu, K. Kawamoto, Y. Numata, H. Togame, H. Takemoto, H. Kondo et al.: J. Am. Chem. Soc., 131, 17102 (2009).29) T. Matsushita, W. Takada, K. Igarashi, K. Naruchi, F. Garcia-Martin, M. Amano, H. Hinou & S.-I. Nishimura: Biochim. Biophys. Acta, Gen. Subj., 1840, 1105 (2014).30) S. Rangappa, S. G. Artigas, R. Miyoshi, Y. Yokoi, S. Hayakawa, F. Garcia-Martin, H. Hinou & S.-I. Nishimura: MedChemComm, 7, 1102 (2016).31) T. Matsushita, N. Ohyabu, N. Fujitani, K. Naruchi, H. Shimizu, H. Hinou & S.-I. Nishimura: Biochemistry, 52, 402 (2013)..また,合成糖ペプチド抗原とその周辺構造糖ペプチドライブラリを活用することにより,ペプチド鎖と糖構造双方を鋭敏に識別する新規抗MUC1抗体の作成・選別・機能特性の精密解析までが一貫して実施できることを実証した(32, 33)32) H. Wakui, Y. Tanaka, T. Ose, I. Matsumoto, K. Kato, Y. Min, T. Tachibana, M. Sato, K. Naruchi, F. Garcia-Martin et al.: Chem. Sci., 11, 4999 (2020).33) H. Wakui, Y. Yokoi, C. Horidome, T. Ose, M. Yao, Y. Tanaka, H. Hinou & S.-I. Nishimura: RSC Chem. Biol., 4, 564 (2023).

フォーカスド糖ペプチドライブラリを用いた動物レクチン相互作用の探索

動物レクチン類は様々な生命イベントに関与する糖鎖認識タンパク質であり,その相互作用に関する構造活性相関は生命科学研究の重要なシグナルとなる.種々の動物レクチン類の糖鎖に対する相互作用情報はこれまでの合成研究により蓄積された糖鎖ライブラリを搭載した糖鎖マイクロアレイにより個々のレクチンが結合する糖鎖構造パターン情報が蓄積されてきた(34)34) C. Gao, M. Wei, T. R. McKitrick, A. M. McQuillan, J. Heimburg-Molinaro & R. D. Cummings: Front Chem., 7, 883 (2019)..しかし,細胞表面の糖鎖は複合糖質として存在しており,抗糖ペプチド抗体と同様にペプチド鎖との相互作用や配座変化の影響を受ける可能性がある.そこで,我々はガレクチンと呼ばれるガラクトース認識動物レクチンファミリーとそのリガンドであることが報告されているMUC1の糖ペプチド断片ライブラリ間の相互作用を調査した.その結果,糖鎖単独ではガレクチン間の結合特性に差が見られなかった場合でも,糖鎖が結合するアミノ酸残基,ペプチド鎖上の糖鎖密度等に対しそれぞれ異なる相互作用の増減パターンを示すことが示された(35)35) G. Artigas, H. Hinou, F. Garcia-Martin, H.-J. Gabius & S.-I. Nishimura: Chem. Asian J., 12, 159 (2017)..筋ジストロフィー症の原因の一つであるO-マンノース型糖鎖不全型ジストログリカン(36)36) M. Kanagawa: Int. J. Mol. Sci., 22, 13162 (2021).の糖ペプチドライブラリとガレクチンファミリー間の相互作用パターン解析を実施したところ,ガレクチン1が糖鎖不全型糖ペプチドに特に強い相互作用を示すとともに,遊離糖鎖リガンド添加による結合阻害に対し抵抗性を示した.ジストログリカンの糖鎖形成不全に伴い細胞外マトリックス成分であるラミニンとの相互作用が失うことが筋ジストロフィー症発症の原因であり,ガレクチン1はラミニンと結合することにより細胞間に蓄積されることが知られている(37)37) J. Nio-Kobayashi & T. Itabashi: Front. Neuroanat., 15, 767330 (2021)..そこで,ガレクチン1とラミニンを予め混合し,糖鎖異常型ジストログリカンモデル糖ペプチドライブラリとの相互作用を調査したところ,ガレクチン1の存在下ではラミニンと糖鎖異常ジストログリカン糖ペプチドが結合することが示された(38)38) L. L. Villones Jr., A.-K. Ludwig, H. Kumeta, S. Kikuchi, R. Ochi, T. T. Aizawa, S.-I. Nishimura, H.-J. Gabius & H. Hinou: Sci. Rep., 12, 17800 (2022)..現在,ガレクチンやシグレック等の動物レクチン類のタンパク質–タンパク質間相互作用とレクチン活性との関係性が注目を集めており,合成プローブを用いた構造活性相関やその制御分子の開発(図4図4■合成プローブを用いた細胞表面の糖鎖機能の再現と応用)が期待されている(39)39) B. A. H. Smith & C. R. Bertozzi: Nat. Rev. Drug Discov., 20, 217 (2021).

質量分析技術による構造解析技術

糖鎖は化学組成(分子量)が同じだが立体化学と位置選択性に多様性を有する単糖単位群で構成されており,糖鎖の質量数から未知の糖鎖構造を予想することは困難である.しかし,生物種と複合糖質の種類を限定できれば,その生合成経路情報から生じうる糖鎖構造範囲が限定可能となる.したがって,糖タンパク質や糖脂質などから糖鎖を切り出す際に,酵素の基質特異性や結合の化学反応性を利用することにより糖鎖組成からその配列の同定や絞り込みが可能となる.このような糖鎖生合成経路の理解,標準糖鎖構築技術の発展,質量分析技術の検出感度と質量分解能,そしてソフトイオン化法と得られた分子イオン取り扱い技術の発展に支えられ,質量分析法による糖鎖構造解析技術が広く使用されるようになった(23)23) S.-I. Nishimura: Adv. Carbohydr. Chem. Biochem., 65, 219 (2011)..生体高分子のソフトイオン化法は主にエレクトロスプレーイオン化(ESI)法とマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法に大別される.ESI法は溶液検体のイオン化法であるため,各種クロマトグラフィー分離技術との組み合わせが容易である.この特性を活用し,コロナウイルス表層糖タンパク質の糖鎖修飾パターン解析(40)40) A. Shajahan, S. Archer-Hartmann, N. T. Supekar, A. S. Gleinich, C. Heiss & P. Azadi: Glycobiology, 31, 410 (2021).など,対象検体の糖タンパク質のプロテアーゼ分解物を対象とし,糖タンパク質上の糖鎖修飾パターンを網羅的に探索するグライコプロテオミクス研究も盛んに実施されるようになった.また,プロテアーゼ消化型糖ペプチド断片を予め合成することにより,抗体の細胞障害活性が高い糖鎖修飾量の絶対定量等が可能となる(41)41) K. Hammura, A. Ishikawa, H. V. Kumar, R. Miyoshi, Y. Yokoi, M. Tanaka, H. Hinou & S.-I. Nishimura: ACS Med. Chem. Lett., 9, 889 (2018)..MALDI法は測定対象分子が1価イオンとして観測されやすいという特徴を有するため,糖鎖を選択的にイオン化することができれば質量スペクトルパターンの比較により糖鎖構造パターンを比較解析することが可能となる(23)23) S.-I. Nishimura: Adv. Carbohydr. Chem. Biochem., 65, 219 (2011)..しかし,ペプチドと比較すると糖鎖のイオン化効率が低いことが知られており,効率的な糖鎖の分離およびイオン化効率を整える化学修飾法等が盛んに研究されてきた.

糖鎖パターン情報解析のための迅速前処理技術

糖鎖の化学的特徴は多価水酸基と一つの還元末端である.図3図3■命名法から見る糖鎖とペプチド鎖の多様性の比較の糖鎖命名法で示したように,酵素的または化学的に切り出した遊離糖鎖1分子あたり1か所生じる還元末端が,糖鎖の選択的な捕捉や修飾の標的として利用されてきた.最も一般的に使用されている糖鎖前処理は還元的アミノ化による還元末端標識である.還元剤にシアノ水素化ホウ素ナトリウムまたは2-ピコリンボランを用いることにより,還元末端選択的にイミン形成を経た任意の標識が可能となる(42)42) L. R. Ruhaak, E. Steenvoorden, C. A. M. Koeleman, A. M. Deelder & M. Wuhrer: Proteomics, 10, 2330 (2010)..オキシムやヒドラゾン結合は可逆的に糖鎖の捕捉と解離を行うことができ,糖鎖の還元末端を標的とした糖鎖の分離や化学標識プロセスとして利用可能である.西村らはこれをGlycoblotting法(43)43) S.-I. Nishimura, K. Niikura, M. Kurogochi, T. Matsushita, M. Fumoto, H. Hinou, R. Kamitani, H. Nakagawa, K. Deguchi, N. Miura et al.: Angew. Chem. Int. Ed., 44, 91 (2005).と命名し,このGlycoblotting法による不溶性の樹脂上への糖鎖の捕捉,捕捉糖鎖の官能基修飾,還元末端のヒドラゾン–オキシム交換反応による糖鎖のリリースとラベル化反応で構成される迅速糖鎖前処理技術を開発した(44)44) H. Shimaoka, H. Kuramoto, J. Furukawa, Y. Miura, M. Kurogochi, Y. Kita, H. Hinou, Y. Shinohara & S.-I. Nishimura: Chemistry, 13, 1664 (2007)..この技術では,捕捉した糖鎖に含まれるシアル酸やウロン酸等のカルボン酸のメチルエステル化反応により糖鎖構造間のイオン化効率を均一化し,内部標準との比較によりMALDI-MSスペクトル強度を糖鎖量として捕捉糖鎖の一斉定量解析解析に成功した(45)45) Y. Miura, Y. Shinohara, J.-I. Furukawa, N. Nagahori & S.-I. Nishimura: Chemistry, 13, 4797 (2007)..本方法は新たな診断マーカーの探索(46)46) A. G. Gebrehiwot, M. D. Seifu, K. Y. Mamo, I. F. Rehan, S. Rangappa, H. Hinou, T. Kamiyama & S.-I. Nishimura: PLoS One, 13, e0209515 (2018).や,種間の糖鎖パターンの違いを活用した感染症感受性の予測などに活用されている(47)47) B. M. Montalban & H. Hinou: ACS Infect. Dis., 10, 650 (2024)..ガラクトースの3位水酸基に結合したシアル酸のカルボン酸がガラクトースの4位水酸基とラクトンを形成しやすいことを利用し,シアル酸の結合位置の違いを分子量の違いとして測定する技術が利用されている(48)48) T. Nishikaze: Proc. Jpn. Acad., Ser. B, Phys. Biol. Sci., 95, 523 (2019)..糖鎖の硫酸化やリン酸化はシアリル化と同様に糖鎖物性や抗原性等を変化させる重要指標である.しかし,グリコシド結合に影響を与えることなくリン酸や硫酸を完全に中性化修飾することは困難であり,測定対象外として扱われてきた.さらに,硫酸基とリン酸基は分子量差がわずか0.01であるため,質量分析法による両者の識別が困難であった.我々は,Glycoblotting法において捕捉した糖鎖中のカルボン酸のメチルエステル化反応において,リン酸基がモノメチルエステル化されること(49)49) T. Furukawa, H. Hinou, S. Takeda, H. Chiba, S.-I. Nishimura & S.-P. Hui: ChemBioChem, 18, 1903 (2017).に着目し,中性(化)糖鎖群と硫酸化・リン酸化糖鎖群を連続解析可能なsulphoglycomics法(50)50) B. M. Montalban & H. Hinou: Proteomics, 23, 2300012 (2023).を開発した.さらに,本技術を用いて72種の水鳥卵白中の糖鎖硫酸化およびリン酸化パターンを取得し,その水鳥種のインフルエンザ罹患率と強い相関を示す糖鎖群を抽出した(47)47) B. M. Montalban & H. Hinou: ACS Infect. Dis., 10, 650 (2024).

MALDIマトリックス選択による糖タンパク質糖鎖の直接解析技術

では糖鎖はペプチド等から綺麗に分離しないと質量分析できないのであろうか? そもそもタンパク質から糖鎖を切り出さないと糖鎖パターンを測定できないのであろうか? MALDI法は検体と混合するマトリックス分子の選択により,測定対象分子種のイオン化効率が大きく変動する.極性の高い2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)というマトリックスはペプチド,糖鎖,複合糖質を問わず幅広い分子種と質量範囲で良好なイオン化効率を示すため,糖鎖のMALDI-MSではDHBが第一選択肢として広く使用されている.しかし,DHBと混合した糖タンパク質に強レーザー照射条件下で断片化しながらMALDI-MS解析すると,ペプチド断片情報のみが計測される(51)51) D. Suckau & A. Resemann: Anal. Chem., 75, 5817 (2003)..我々はDHBにアニリンやベンジルヒドロキシルアミンなど共役酸のpKaが4~5程度の芳香族塩基を添加し,さらに微量のアルカリ金属塩を添加することにより糖鎖に対し高いイオン化効率と選択性が実現できることを見出した(52)52) H. Hinou: Int. J. Mass Spectrom., 443, 109 (2019)..このマトリックスと混合した糖タンパク質に強いレーザーを照射したところ,糖タンパク質上の糖鎖が選択的に開裂すると共にイオン化され,糖タンパク質上の糖鎖パターンを直接解析できることを見出した(53)53) S. Urakami & H. Hinou: Anal. Sens., 2, e20210004 (2022)..DHBに添加するアニリン誘導体として1,5-ジアミノナフタレン(DAN)を少量使用すると,レーザー照射に伴う糖鎖の切断と選択的イオン化の効率が向上し,一切の前処理なしで卵白中の糖タンパク質の糖鎖パターン計測が可能となった(54)54) S. Urakami & H. Hinou: ACS Omega, 7, 39280 (2022)..マトリックス開発の歴史を紐解くと,1991年に3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸(AHB)が世界初の糖鎖のイオン化に適したMALDI用マトリックスとして報告された(55)55) K. K. Mock, M. Davey & J. S. Cottrell: Biochem. Biophys. Res. Commun., 177, 644 (1991).が,糖鎖のイオン化効率がより高いDHBにより淘汰されていた.我々はAHBに微量のアルカリ金属塩を添加すると,一切前処理なしで糖タンパク質上のムチン型糖鎖を直接MALDI-MS分析できることを見出した(56)56) S. Urakami & H. Hinou: Int. J. Mol. Sci., 24, 16836 (2023)..特に,AHBの糖鎖に対する高いイオン化選択性という利点と,低いイオン化効率という欠点は強レーザー照射下におけるノイズ低減と狭いピーク幅をもたらし,分子量の小さいムチン型糖鎖の存在を前処理なしでMALDI-MS検出できる,という新たな利点をもたらした.

微生物O抗原糖鎖パターンの迅速直接解析

MALDI-MSによる微生物同定技術はその低コスト,簡便さ,迅速性,および1コロニー未満から同定可能な感度を有するため,平成30年の診療報酬改定により微生物同定検査項目として質量分析装置加算が新設されるなど,臨床現場に加え産業界でも広く使用されるようになった(57)57) K.-S. Jang & Y. H. Kim: J. Microbiol., 56, 209 (2018)..この手法では微生物種内で類似性が保たれるリボソームタンパク質パターンが計測対象となっている.一方,微生物の抗原性やバイオフィルム等の物性を特徴づける細胞外多糖類のMALDI-MSによる迅速分析技術は未だ実用化されていない.我々は先述の糖鎖選択的イオン化を実現するマトリックスを使用することにより,大腸菌O157等のO抗原糖鎖構造(図5図5■O157は糖鎖です)を遠心分離と分注操作のみで1コロニーから1時間以内で同定できる技術を開発した(58)58) S. Urakami & H. Hinou: Sci. Rep., 14, 12719 (2024)..この同定技術は従来のリボソームタンパク質を対象とした種同定との並列実施による「大腸菌」+「O157」のノンプローブ迅速判定が可能である.さらに,O抗原糖鎖繰り返し構造の直接同定技術であるため,大腸菌O1株間およびO6株間に存在する糖鎖亜型判別や,コロニー内コンタミネーションパターンを含めたO抗原同定が可能である.すなわち,本技術では抗原検査やPCR法のような間接診断技術では判定不可能な「新型」糖鎖抗原を直接発見することが可能である.この微生物表層糖鎖の迅速・高感度測定技術はMALDI-MSによる感染症診断や疫学調査,産生糖鎖の産業利用等の精度向上と利用加速に貢献することが期待される.

糖鎖の多様性は生物学的な淘汰圧への抵抗と共生戦略の結果生じたものであり,生物多様性形成現場そのものである.この生物多様性の最前線の見分け方とその結果生じる生物学的イベントは,糖鎖抗原やレクチン利用に始まり,DDSやエクソソーム等の次世代医療,健康産業への利用,防疫と安全保障への活用など,多様性に満ちた応用研究が世界中で精力的にすすめられている.糖鎖の多様性と様々な切り口によるその見分け方が生命科学を彩り,健康的かつ持続的な社会形成の一助となることを期待している.

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