解説

輸入食品の安全性とリスクコミュニケーションの役割
食品安全の正しい理解のために

The Safety of Imported Foods and the Role of Risk Communication: For Understanding of the Imported Foods Safety

Yoshichika Hirahara

平原 嘉親

摂南大学農学部食品栄養学科

Published: 2024-09-01

食品の供給を海外に大きく依存している日本人にとって輸入食品の安全性は重要である.輸入食品の安全性は,輸出される国における管理,輸入時の水際での管理および輸入後の国内での管理によって守られている.これら行政による安全管理のしくみや結果を理解することにより,信頼関係と安全に対する安心を得ることができる.本稿では,輸出時,輸入時および輸入後の各段階における輸入食品の安全管理体制のしくみと行政,食品事業者や消費者等との信頼関係を得るために重要となるリスクコミュニケーションの役割について述べる.

Key words: 輸入食品; 安全性; 検疫所; 食品リスク; リスクコミュニケーション

はじめに

食事は貴重な栄養源を得る生きるために不可欠な行為である.また,食事には,生活を豊かにする役割もあり,調理・加工では「口あたり」「舌ざわり」「歯ごたえ」「色添え」などが工夫され,美味しさを味わうことができる.また,食事を囲んで会話やコミュニケーションを生み出すこともできる.このように食事は,生命を維持し,豊かな生活を送るために重要な役割を果たしている(1)1)白尾美佳:“食べ物と健康—食品衛生学 第2版”,光生館,2022, p. 3..しかし,一方で,食事とともに病原微生物を摂取することにより吐き気,腹痛,痙攣や死亡など食中毒を引き起こすこともあり,楽しい食事が辛さに変わる.これら食中毒などの苦い経験から食品の保存方法や製造・加工方法が工夫され食品衛生が発展してきた.例えば,加熱調理,冷蔵・冷凍保存,燻製,塩漬け,酢漬け,発酵など,様々な食品加工や衛生管理の技術が生まれ,流通の幅も広がってきている.安心して食事を楽しむためには,食品の安全性は不可欠である.近年では,嗜好の変化や個食化が進んでおり,食品の流通も国際的になっている.特に,日本は,食料自給率がカロリーベースで4割を下回り,6割以上を輸入食品に依存している状況にあることから(図1図1■日本の総合食料自給率及び輸入食品件数・重量),我が国の食の安全を考える上において輸入食品の安全性の確保は特に重要である.

図1■日本の総合食料自給率及び輸入食品件数・重量

しかし,消費者の中には輸入食品の安全性に不安を感じている方もいるのではないだろうか.食品の安全に対する安心を得るためには,行政や専門家だけでなく食品事業者,生産者,消費者の関係者相互の情報交換による信頼の構築が大切である.本稿では,貴重な食品を無駄にすることなく,広い視野から食品の安全を理解するために日本人の食事に欠かせない輸入食品の安全性のしくみとリスクコミュニケーションの大切さについて述べる.

輸入食品の安全性

1. 輸入食品の現状

販売又は営業の目的で我が国に輸入された食品,添加物,器具・容器包装及びおもちゃ(以下「食品等」)の輸入届出件数は令和4年度では2,400,309件,輸入届出重量は31,918,658トンであった(2)2)厚生労働省:令和4年度,輸入食品監視統計,https://www.mhlw.go.jp/content/001138795.pdf.検査は届出件数の8.4%にあたる202,671件実施され,法違反は届出件数の0.03%に相当する781件であり,積み戻し,廃棄又は食用外転用等の措置がとられている(2)2)厚生労働省:令和4年度,輸入食品監視統計,https://www.mhlw.go.jp/content/001138795.pdf.これらの主な違反事例は,表1表1■主な食品衛生法違反内容(令和4年度)に示すように,農薬等の残留基準超過,添加物の使用基準違反などの食品または食品添加物の基準および規格に関するものが最も多く,続いてアフラトキシン,シアン化合物,メタノールの検出など販売等を禁止される食品及び添加物,器具又は容器包装の材質別規格等の違反であった.

表1■主な食品衛生法違反内容(令和4年度)
違反条文違反件数(延数)構成比(%)主な違反内容
6条販売等を禁止される食品及び添加物25831.3アーモンド,とうもろこし,ピスタチオナッツ,落花生等のアフラトキシンの付着,キャッサバ等からのシアン化合物の検出,ブランデーからのメタノールの検出,ナチュラルチーズからの腸管出血性大腸菌O145の検出,二枚貝からの麻痺性貝毒の検出,生食用切り身まぐろからのサルモネラ属菌等の検出,米,小麦,菜種,とうもろこし等の輸送時における事故による腐敗・変敗(異臭・カビの発生)
10条病肉等の販売等の禁止20.2衛生証明書の不添付
12条添加物等の販売等の制限415指定外添加物(TBHQ,アゾルビン,グリチルリチン酸三ナトリウム,サイクラミン酸,ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物,ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ,パテントブルーV,ペンタン,ホウ砂,ホウ酸,マグネシウムビスグリシネート(グリシン酸マグネシウム),ミリスチン酸カリウム,一酸化炭素,酸化亜鉛,硫酸アルミニウム)の使用
13条食品又は添加物の基準及び規格47657.7農産物及びその加工品の成分規格違反(農薬の残留基準超過,E.coli陽性等),畜水産物及びその加工品の成分規格違反(動物用医薬品の残留基準超過,農薬の残留基準超過等),その他加工食品の成分規格違反(大腸菌群陽性等),添加物の使用基準違反(安息香酸,ソルビン酸,ポリソルベート等),添加物の成分規格違反,安全性未審査遺伝子組換え食品の検出等
18条器具又は容器包装の基準及び規格465.6材質別規格等の違反
68条おもちゃの規格違反20.2おもちゃの規格違反
825
厚生労働省ホームページ:令和4年度輸入食品監視統計

2. 輸入食品の安全性確保体制

輸入食品の安全性は,食品衛生法に基づいて厚生労働省において毎年度策定される輸入食品監視指導計画に基づいて,図2図2■輸入食品の安全性確保に示すように,輸出する段階,輸入する段階(水際)および国内での安全対策の三段階で守られている.

図2■輸入食品の安全性確保

2.1 輸出段階での安全対策

膨大な輸入食品の安全性を守るためには,輸入時の水際のみではなく,海外から食品が輸出される段階における安全性の確保が特に大切である.輸出国での安全性確保としては,輸出国と日本との二国間における協議,輸出国の食品の生産現場での安全管理の徹底や輸出国政府による輸出食品の安全性監視体制の強化が行われている.また,輸出前の食品の検査などの安全管理が推進されており,特に生産段階での安全性確保が重要である.輸出国の生産現場の管理としては,農作物の生産農場において,基準値を超えた農薬が残留しないように農薬の使用量や使用期間などを適切に守るための指導などがある.また,過去に食品衛生法違反があり,違反の可能性が高いため輸入時の検査を強化している食品については,輸出国の政府などに対して違反の原因の究明や再発防止の対策を求めている.また,必要に応じて,日本の専門家を輸出国に派遣して輸出国での安全管理状況を確認し,政府担当者や生産者に対して日本の食品安全の規制などに関するセミナーの開催なども行っている.

2.2 水際(輸入時)の安全対策

販売,営業上使用する食品,添加物,器具又は容器包装を輸入しようとする者は,その都度,厚生労働大臣に届け出なければならないとされている(食品衛生法第27条).そのため,輸入者は食品などを輸入する際には,全国32か所の検疫所食品監視窓口に輸入の届け出をする必要がある.国の食品衛生監視員は,届け出のすべてについて食品衛生法に基づく規格基準等に適合しているか否かを審査している.食品等の輸入時の届出項目としては,輸入者の氏名,住所,食品等の品名,数量,重量,包装の種類,用途,使用されている添加物の品名,加工食品の原材料,製造又は加工方法,遺伝子組換え又は分別流通生産管理の有無,添加物製剤の成分,器具,容器包装又はおもちゃの材質,貨物の事故の有無等がある.

2.2.1 輸入時の食品衛生法に基づく審査例

食品等が届け出された際の輸入時の確認例としては,以下のようなものがある.

(1)有毒,有害物質の確認

食品の原料に有毒,有害物質が含まれている場合,原則,輸入することができない.自然界には有毒,有害物質を含むものが数多く存在することから,それら原料を使用していないかチェックする必要がある.輸入食品の有毒,有害物質の確認例としては以下のものがある.

1)動物由来のもの

①フグ:日本海,渤海,黄海及び東シナ海で漁獲されたものであり,輸入できる21種類のフグ(クサフグ,コモンフグ,ヒガンフグ,ショウサイフグ,マフグ,メフグ,アカメフグ,トラフグ,カラス,シマフグ,ゴマフグ,カナフグ,シロサバフグ,クロサバフグ,ヨリトフグ,サンサイフグ,イシガキフグ,ハリセンボン,ヒトヅラハリセンボン,ネズミフグ,ハコフグ)であること,②シガテラ毒魚:輸入を認めない魚類(アカマダラハタ,アマダレドクハタ,オニカマス,バラハタ,バラフエダイ,フエドクタルミ(ヒメフエダイ),アオノメハタ,オジロバラハタ,マダラハタ,オオメカマス),③アブラソコムツ,バラムツ,④輸入を認めない巻貝:エゾバイ科巻貝(ヒメエゾボラ,エゾボラモドキなど)がある.

2)植物由来のもの(菌類を含む)

①シアン化合物含有植物(シアン含有豆類,キャッサバ,杏仁など青酸配糖体を高濃度に含有する食品で,輸入時に検査が必要),②ルーピン豆:アルカロイドを含有しているため,日本では豪州産スイートルーピン豆で,かつ,しょう油の製造原料用以外は輸入することができない,③キノコ類などがある.

(2)添加物の使用基準(指定外添加物は含まれていないか)

日本で使用できる添加物は,原則,人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定めたもの(指定添加物)に限られている.これ以外で添加物として使用できるのは,既存添加物,天然香料(バニラ香料,カニ香料など),一般飲食物添加物(イチゴジュース,寒天など)のみであり,これらのリスト(3)3)日本食品化学研究振興財団:指定添加物リスト(規則別表第1),https://www.ffcr.or.jp/webupload/cc010ca1499a11362fe7539496cf081e3f483f28に掲載されていない添加物は,使用,輸入することができない.既存添加物は,我が国において広く使用されており,長い食経験がある添加物は例外的に指定を受けることなく使用・販売等が認められており既存添加物名簿(4)4)日本食品化学研究振興財団:既存添加物名簿収載品目リスト,https://www.ffcr.or.jp/tenka/list/post-12.htmlに収載されている.

(3)食品衛生法に規定されている成分規格や製造基準の適合性

公衆衛生の見地から販売用の食品について,製造等の基準又は成分規格が定められており,この基準又は規格に合わない食品は,製造,販売,輸入等が禁止されている.食品一般の成分規格として,抗生物質等,遺伝子組換え食品,残留農薬,放射性物質の規格が設定されている.食品の製造等では,放射線照射の原則禁止,食用不適鶏卵の使用禁止,生食用魚介類の調理用水の基準,牛の危険部位の除去,牛肝臓及び豚肉の加熱条件などの基準が定められている.また,食品の保存について,食品保存用の氷雪の基準,抗生物質の使用禁止,放射線照射の禁止が定められている.これら以外に個別に食品の成分規格,製造・加工基準,保存基準が定められている.個別規格基準としては,清涼飲料水,粉末清涼飲料,氷雪,氷菓,食肉及び鯨肉(生食用食肉及び生食用冷凍鯨肉を除く),生食用食肉(牛の食肉(内臓を除く)であって,生食用として販売するものに限る.),食鳥卵,血液,血球及び血漿,食肉製品,鯨肉製品,魚肉ねり製品,いくら,すじこ及びたらこ(スケソウダラの卵巣を塩蔵したものをいう),ゆでだこ,ゆでがに,生食用鮮魚介類,生食用かき,寒天,穀類,豆類及び野菜,生あん,豆腐,即席めん類,冷凍食品,容器包装詰加圧加熱殺菌食品がある.

(4)過去に食品衛生上の問題があったものではないか

過去に輸入したことのない食品等や同じ種類の食品等で過去に法違反の事例や衛生問題が確認されている食品等については,輸入前に検疫所の輸入食品相談指導室への相談を推進している.

2.2.2 水際(輸入時)の検査

輸入時の審査において,違反の可能性に応じて水際での検査が行われる.水際における輸入食品の検査としてはモニタリング検査,指導検査(自主検査),検査命令,行政検査がある.モニタリング検査は,多種多様な輸入食品等の食品衛生上の状況について網羅的に監視することを目的として,国が策定した年間の計画である輸入食品監視指導計画(5)5)厚生労働省:令和5年度輸入食品監視指導計画,https://www.Mhlw.Go.jp/content/001076897.pdfに基づいて幅広い食品を対象として実施している.この検査は,違反の可能性が低い食品を対象とし,違反率が高まる場合には輸入時の検査を強化する等の対策を講じ,その費用は国が負担している.この検査では,検査結果の判明を待たずに輸入可能であるが,法違反が判明した場合は,速やかに回収等の措置が講じられる.令和5年度のモニタリング検査計画数は合計で100,000件であり,残留農薬26,440件,成分規格(大腸菌群等)14,370件,添加物12,290件,病原微生物(腸管出血性大腸菌,リステリア等)15,150件,抗菌性物質等12,090件,カビ毒(アフラトキシン等)8,080件,遺伝子組換え食品930件,放射線照射650件および検査強化品目10,000件である(5)5)厚生労働省:令和5年度輸入食品監視指導計画,https://www.Mhlw.Go.jp/content/001076897.pdf.また,輸入者の自主的な衛生管理の一環として指導検査(自主検査)がある.これは,食品中の農薬や添加物等の使用状況や過去の同じ種類の違反情報を参考として,検疫所から輸入者に対して定期的な(初回輸入時を含む)検査を指導する.この検査は,輸入者自らが検査費用を負担し,検査の結果,適法と判断されるまで輸入手続きを進めることはできない.

命令検査は,自主検査(指導検査)やモニタリング検査,国内での収去検査等において法違反の可能性が高いと見込まれる食品等について,輸入者に対し,輸入の都度,検査の実施を命じる検査である.これについても,輸入者が検査費用を負担し,検査結果判明後,適法と判断されるまで輸入は認められない.

モニタリング検査で違反が確認された場合は,モニタリング検査の頻度を上げる検査強化が行われ,法違反の可能性が高いと考えられた場合には命令検査が実施される.さらに,検査で安全性が確認できないと判断された場合には,「包括輸入禁止」として,輸入そのものの停止措置がとられることになる.検疫所では,モニタリング検査以外に,初回輸入時や,食品衛生法違反判明時,輸送途中での事故発生時等,必要に応じて行う現場検査として行政検査を行っている.

2.3 国内での対策

国内での対策では,国産品と同様に,地方公共団体が年間計画に基づいて国内の食品衛生監視員が食品等のサンプリングを行い,検査を行う等の取組みが行われている.法違反が判明した場合には,輸入者に対し,廃棄,積戻し又は食用外用途への転用等の措置が行われるとともに,違反の原因の調査,報告を求め再発防止のための指導が行われている.

2.4 総合的な安全管理の重要性

輸入食品の安全性確保には,製造者,加工者,販売者,輸入者などの事業者の安全に対する取組みが特に重要であり,輸出国では現地での生産管理や品質管理の徹底が行われている.例えば,農作物の生産現場において,農薬が適切な量を適切な期間使用されていれば基準値を超えて農作物に残留するリスクは低減される.事業者の自社内での自主管理体制として輸入食品衛生管理者を社内で置くなどの取組みも行われており,食品衛生法の理解や輸入届け出の方法や違反事例や食品輸入事業者が必要とする知識の習得などの講習会も行われている.輸入食品の安全性を守るためには,輸入時の「検査」は大切であるが,生産段階での適切な管理や製造・加工工程における品質の「管理」の徹底,並びにそれらの「教育」など,総合的な管理が重要である.

リスクコミュニケーションの役割

国際的に食品の安全性は,リスク評価,リスク管理およびリスクコミュニケーションからなるリスク分析の考えに基づいて守られている.リスク評価では,食品中に含まれる農薬,添加物,カビ毒,有害微生物などの危害要因を摂取することによる健康への悪影響が起こる確率や程度を科学的に評価している.また,リスク管理では,リスク評価の結果を踏まえて,リスクを減らすために必要な食品の規格や基準を設定するなどの政策・措置を行っている.リスクコミュニケーションでは,これらリスク評価結果やリスク管理の対策がどのような過程を経て決定されて,どのように食品が安全に供給されているのかを透明性をもって伝えられており,消費者等から食品安全に関する信頼が得られることになる.このリスク分析に基づく食品の安全性確保体制は,輸入食品についても同じである.しかし,輸入食品と国産食品の安全性についての消費者のイメージをみたところ,輸入食品の安全性に問題があると考える割合は20歳代では約15%,40歳代では約23%,60歳,70歳代では約40%であり,国産食品に不安を感じる20歳代から70歳代までの約2~4%に対して大きい(6)6)三冬社:“食の安全と健康意識データ集2022”,三冬社,2022, p. 36..これは,輸入食品には国産食品とは異なる有害な物質が含まれていて,安全管理も異なるイメージによるのではないだろうか.我々は,コロナ禍の中,新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に関するエビデンスが十分に伝わっていないときに過剰に恐れた経験をした.ヒトは,正体がわからないものに対して不安になる傾向にある.輸入食品についても,日本に輸出される食品は,生産から製造・加工,流通,出荷まで工程ごとに日本の基準にあった管理をするように指導・管理されており,国産食品と同じ食品衛生法によって安全性が守られているという正体を理解できれば不安は和らぐのではないだろうか.食品のリスクや正体がわからないものを理解するためにリスクコミュニケーションが大きな役割を果たしている.輸入食品に関しても,厚生労働省では,毎年作成される輸入食品監視指導計画の内容の説明など安全性確保の取組みに関するリスクコミュニケーションや意見交換会を開催している.また,様々な地域で地方自治体や団体が主催する輸入食品の安全性に関する市民講座なども行われている.また,食品安全委員会では,食品中の農薬や添加物の健康に悪影響を及ぼさない量(ADI:一日摂取許容量)などがどのように決められているのか,そのリスク評価の過程,会議資料やリスク評価結果が公表されている.厚生労働省や消費者庁では,リスク評価の結果に基づいて,食品添加物や残留農薬の基準値をどのように設定しているのかなど施策の過程の透明化も図られている.これら公表されたリスク評価やリスク管理の結果に対しては,国民からの意見・情報(パブリックコメント)が行われており,行政と食品事業者や消費者等との双方向の情報共有が行われている.その他,農薬の安全確保は生産段階での農薬の適切な使用が最も大切であることや輸入食品の水際検査の結果が残留基準値よりかなり低いか不検出であることなど,食品の安全に関するさまざまな情報が発信されている.このように,リスクコミュニケーションでは,一般市民,行政,メディア,食品関連事業者,教育機関・医療機関等の専門家などの関係者が一方的な情報を提供するのではなく,それぞれの立場において意見・情報を双方向から交換することで理解と信頼が深まる.近年,行政と一般市民などとのパネルディスカッションも多く開催されており,双方の意見の理解,信頼関係の構築の場も増えている.リスクコミュニケーションは,食品の安全に対する信頼や安心を得るための潤滑油であり,食品の安全性を正しく理解するために重要な役割を果たしている.今後,リスクコミュニケーションの取組みが,より浸透していくことにより,輸入食品の安全性に対する理解もより深まり,安全に対する不安がさらに解消していくことを期待する.

Reference

1)白尾美佳:“食べ物と健康—食品衛生学 第2版”,光生館,2022, p. 3.

2)厚生労働省:令和4年度,輸入食品監視統計,https://www.mhlw.go.jp/content/001138795.pdf

3)日本食品化学研究振興財団:指定添加物リスト(規則別表第1),https://www.ffcr.or.jp/webupload/cc010ca1499a11362fe7539496cf081e3f483f28

4)日本食品化学研究振興財団:既存添加物名簿収載品目リスト,https://www.ffcr.or.jp/tenka/list/post-12.html

5)厚生労働省:令和5年度輸入食品監視指導計画,https://www.Mhlw.Go.jp/content/001076897.pdf

6)三冬社:“食の安全と健康意識データ集2022”,三冬社,2022, p. 36.