書籍紹介

佐野輝男(著)『最小の病原―ウイロイド』(弘前大学出版会,2024年)

前多 隼人

弘前大学農学生命科学部

Published: 2025-02-01

本書は,ウイロイド研究の第一人者である著者が病原ウイロイドに関して体系的にまとめた書籍です.ウイロイドは,外殻に包まれずタンパク質情報さえ担わない400ヌクレオチドにも満たないRNA鎖で,植物の病気を引き起こす原因物質です.また,最小の複製体として,生命誕生前の原始生命の姿を留めている可能性を秘めています.著者は,この究極の分子について,その複製や病原性,宿主適応などの仕組みを詳述するとともにその起源の謎にもせまっています.国内外の840報を超える文献を引用し,用語説明も付けて書かれた本書は,植物病理学に限らず,生物学,農学,微生物学,感染症学,進化生態学に興味のある方にお勧めの1冊です.