解説

持続可能なバイオ産業のための酵素研究と工学の最新動向
脂質およびタンパク質修飾酵素の研究における伝統的および新しいアプローチの探求

Trends in Enzyme Research and Engineering for Sustainable Bioindustry: Exploration of Traditional and Novel Approaches for Research on Lipid- and Protein-Modifying Enzymes

Jasmina Damnjanovic

名古屋大学大学院生命農学研究科分子生物工学研究室

Published: 2025-06-01

生体内での化学反応を主に担っている酵素は,産業,医療,診断,研究,環境修復,バイオ精製など,あらゆる面で重要性を増している.このことは,現在約100億米ドルに達している世界の酵素市場の継続的な成長からも明らかである.SDGsの#2(食料の入手可能性と質),#3(ヘルスケア),#12(持続可能な生産),#13(環境問題)のもとで持続可能な社会を実現することは世界的な課題であり,生体触媒が大きなインパクトを与えることができる.しかし,自然界から得られる天然酵素を産業プロセスで使用するためには,タンパク質工学(すなわち酵素工学)によって安定性,触媒効率,基質特異性などを改善する必要がある.

Key words: 酵素; 生体触媒; 酵素開発; 酵素工学

はじめに

自然界に存在する酵素は,それぞれの生物学的環境で適切に機能するように,触媒活性,基質特異性,安定性などを進化させてきた.しかし,これらの酵素を自然界とは異なる環境や目的で効率的に利用するためには,その特性を改変する必要がある.近年のタンパク質工学の進歩により,酵素改変は主に合理的設計,指向性進化,半合理的設計の3つの戦略によって実現されている.

合理的設計は,部位特異的変異誘発によって特定のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換えることで酵素の性質を変える手法であり,構造と機能の関係に関する詳細な理解に依存している.1980年代には,ジェネンテックのチームによってT4リゾチームを対象とした合理的設計の先駆的研究が行われた.この研究では,遊離システイン(Cys)に隣接するイソロイシン(Ile)残基をCysに変異させてジスルフィド結合を形成させることで,耐熱性が向上することが実験的に証明された(1)1) L. J. Perry & R. Wetzel: Science, 226, 555 (1984).

指向性進化とは,ランダム突然変異誘発とクローン選択を繰り返すことにより,試験管内でダーウィン進化を模倣する方法である.この研究は1990年台にFrances Arnold (2018年ノーベル化学賞受賞)らにより本格的に開始され,その当時は主にerror-prone PCRやDNAシャッフリングによって変異は,コード遺伝子の全領域に導入されていた(2, 3)2) K. Chen & F. H. Arnold: Biotechnology, 9, 1073 (1991).3) W. P. C. Stemmer: Nature, 370, 389 (1994)..初期の代表的な研究例としては,有機溶媒中で行われるペプチド合成やトランスエステル化反応への利用を目的とした,サブチリシンEの有機溶媒中で安定化があげられる.ランダム変異導入とスクリーニングにより得られたサブチリシンEの3重変異体は,85%ジメチルホルムアミド中で,野生型酵素に比べて38倍の活性を示した(2)2) K. Chen & F. H. Arnold: Biotechnology, 9, 1073 (1991).

構造・機能相関の正確な知識は合理的設計の大きな制約となるのに対し,指向性進化においては,効率的なスクリーニング法を確立できなければ,合理的な時間枠内で所望の特性を持つ酵素変異体を選択することはできない.そこで合理的設計と指向性進化のそれぞれの欠点を補う,半合理的設計,すなわち酵素遺伝子の選択された特定の位置にランダムな変異を導入し,その後スクリーニングを行う戦略が次に開発された.この戦略は,合理的設計の大きなボトルネックである構造–機能相関情報に部分的に依存するだけであり,またライブラリーサイズは全配列ランダム変異法に比べて大幅に減らすことができるという利点がある.

半合理的設計を利用した代表的な取り組みとしては,Reetzグループによる反復飽和突然変異誘発法(Iterative saturation mutagenesis; ISM)を用いた酵素の耐熱性向上とエナンチオ選択性向上に関する研究が挙げられる(4)4) M. T. Reetz & J. D. Carballeira: Nat. Protoc., 2, 891 (2007)..タンパク質の結晶構造から得られるB因子の高いアミノ酸残基にISMを適用することにより,複数変異の相乗的効果によって,耐熱性が劇的に改善されたリパーゼ変異体を取得した(5)5) M. T. Reetz, J. D. Carballeira & A. Vogel: Angew. Chem. Int. Ed., 45, 7745 (2006)..また酵素活性中心近傍に組み合わせ変異を導入する(Combinatorial Active Site saturation Test; CAST)を開発し,グリシジルエーテルの加水分解速度論的分離において,25倍のエナンチオ選択性を持つヒドロラーゼ変異体の作出に成功している(6)6) M. T. Reetz, L.-W. Wang & M. Bocola: Angew. Chem. Int. Ed., 45, 1236 (2006).

酵素スクリーニングを容易にし,最短時間で望まれる変異酵素を見出す可能性を高めるために,バイオインフォマティクスの利用が重要性を増しており,近年,祖先配列再構築(Ancestral Sequence Reconstruction; ASR),構造に基づくバイオインフォマティクス,機械学習などの手法が広く用いられている.ASRは,相同タンパク質の配列アラインメントに確率統計的手法と組み合わせて系統樹を構築し,祖先のタンパク質配列を予測するために使用される(7)7) J. W. Thornton: Nat. Rev. Genet., 5, 366 (2004)..ASRの最初の使用例はBennerグループによるもので,古代タンパク質を研究するために,ウシ由来の祖先リボヌクレアーゼが再構築され,特徴付けされた(8)8) J. Stackhouse, S. R. Presnell, G. M. McGeehan, K. P. Nambiar & S. A. Benner: FEBS Lett., 262, 104 (1990)..ASRを用いた酵素工学の最近の例としては,CYP116B P450モノオキシゲナーゼを用いた脂肪酸の位置選択的水酸化研究があげられる.467の異なる配列を用いてCYP116B P450の系統樹を構築し,11の祖先配列を特徴付けることにより,多様な位置特異性を持つ祖先が同定された.祖先酵素は,ω-5位(鎖の中間)を好む現存酵素とは異なり,脂肪酸のω-1位とω-2位を水酸化することが示された(9)9) B. S. Jones, C. M. Ross, G. Foley, N. Pozhydaieva, J. W. Sharratt, N. Kress, L. S. Seibt, R. E. S. Thomson, Y. Gumulya, M. A. Hayes et al.: Angew. Chem. Int. Ed., 63, e202314869 (2024).

近年,タンパク質の構造決定・解析のための実験的手法やタンパク質構造予測手法(AlphaFold, RoseTTAFoldなど)が急速に進歩し,構造ベースのバイオインフォマティクスを利用した酵素工学技術が開発されてきている.Arnoldのグループによって開発されたSCHEMAは,同じフォールドを持つが,必ずしも配列相同性が高いとは限らない酵素間で,構造を保持しながら機能的キメラ酵素を得るものである(10, 11)10) M. M. Meyer, L. Hochrein & F. H. Arnold: Protein Eng. Des. Sel., 19, 563 (2006).11) M. M. Meyer, J. J. Silberg, C. A. Voigt, J. B. Endelman, S. L. Mayo, Z.-G. Wang & F. H. Arnold: Protein Sci., 12, 1686 (2003)..この手法を用いることで,親酵素にはない性質である68~70°Cで固形セルロースを加水分解できる,耐熱性セロビオヒドロラーゼIキメラを作出した(12)12) P. Heinzelman, R. Komor, A. Kanaan, P. Romero, X. Yu, S. Mohler, C. Snow & F. H. Arnold: Protein Eng. Des. Sel., 23, 871 (2010).

機械学習を使用した例としては,Codexis社が開発したProSARと呼ばれるプラットフォームがある.このプラットフォームは,機械学習を利用して有益な点変異を同定し,この構造–機能相関データを使用して,次の進化のための変異導入ライブラリをプログラムすることを目的としていた(13)13) R. J. Fox, S. C. Davis, E. C. Mundorff, L. M. Newman, V. Gavrilovic, S. K. Ma, L. M. Chung, C. Ching, S. Tam, S. Muley et al.: Nat. Biotechnol., 25, 338 (2007)..この戦略を用いて,Codexis社のチームは,アトルバスタチンの製造に使われるシアン化プロセスの容積生産性を4,000倍向上させるハロヒドリン脱ハロゲナーゼの開発に成功した.最近,Alperのグループは,別の機械学習アプローチによって,50°Cで未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)製品を効果的に解重合し,得られたテレフタル酸ジメチルをPETリサイクル工程で再利用できるように設計された酵素,FAST-PETaseを開発した(14)14) H. Lu, D. J. Diaz, N. J. Czarnecki, C. Zhu, W. Kim, R. Shroff, D. J. Acosta, B. R. Alexander, H. O. Cole, Y. Zhang et al.: Nature, 604, 662 (2022)..ここで用いられた機械学習アプローチは,3次元の自己教師付き畳み込みニューラルネットワーク(3次元の分子構造の特徴を教師なしで学習し分子構造を把握できる,複数の神経層に基づくディープラーニングの一形態)を使用し,タンパク質構造中のアミノ酸の局所的な化学的微小環境を分析し,局所的な環境に最適化されていないアミノ酸残基が抽出した.それらのアミノ酸残基にin silicoで変異導入し,適切な置換基が特定された.得られたFAST-PETaseは5箇所の変異を含み,野生型や他のPETase変異体と比較して,活性と安定性において優れていることが証明された.Bornscheuerのグループは,嵩高い部位を持つキラルアミンを立体特異的に合成するトランスアミナーゼを開発するために,少し異なる機械学習アプローチを開発した(15)15) M. J. Menke, Y.-F. Ao & U. T. Bornscheuer: ACS Catal., 14, 6462 (2024)..この研究では,指向性進化や合理的デザイン変異導入で得られた構造–機能相関に関する情報を機械学習プロトコルに入力し,より活性で特異的な変異体を予測するために使用した.最も優れた変異体は,嵩高い基質に対する活性が最大3倍向上し,高いエナンチオ選択性(最大99%ee以上)を示した.

タンパク質工学と酵素工学における将来の方向性は,今年のノーベル化学賞受賞者であるワシントン大学のBakerのグループが,ディープラーニングと組み合わせたde novo酵素設計に関する研究で最もよく示している.この戦略では,適切な活性部位を持つタンパク質の足場が設計され,最適化された後,実験的テストと突然変異誘発が行われ,新しい設計の進化的改善が可能になる.この戦略により,Bakerのグループは最近,天然のルシフェラーゼに匹敵する触媒効率を持つ,13.9 kDaの新しい耐熱性ルシフェラーゼを設計した(16)16) A. H.-W. Yeh, C. Norn, Y. Kipnis, D. Tischer, S. J. Pellock, D. Evans, P. Ma, G. R. Lee, J. Z. Zhang, I. Anishchenko et al.: Nature, 614, 774 (2023).

筆者は,合理的・半合理的設計と様々なスクリーニング技術を組み合わせた酵素工学研究に取り組んできた.研究キャリアの初期には,嵩高い頭部基を持つ天然および非天然リン脂質の合成を可能にすることを目指し,従来のコロニースクリーニングと組み合わせた半合理的設計により,リン脂質合成の貴重なツールである微生物ホスホリパーゼDの耐熱性の向上と基質特異性の改変に成功した.その後,トランスグルタミナーゼの基質嗜好性を解析するため,一分子ディスプレイ技術の一つであるcDNAディスプレイと,次世代シークエンシング,バイオインフォマティクスを組み合わせたシステムを開発し,複数のヒトトランスグルタミナーゼアイソザイムに適用した.筆者は,この解析プラットフォームの威力に触発され,酵素活性を指標として変異体ライブラリーから酵素をスクリーニング・選択できる新しい一分子ディスプレイ技術の開発を進めている.本稿では,これらのプロジェクトの概要を紹介する.

ホスホリパーゼD(PLD)のタンパク質工学とその生理活性リン脂質合成への応用

生理活性リン脂質(PL)は,生体膜の機能的構成成分,シグナル伝達分子,あるいは重要な生理学的プロセスの調節因子として,多様な構造と機能を有している.これらの多くは,それぞれの細胞や組織に微量に存在するにもかかわらず,生命維持に不可欠な役割を担っており,その多くは正確な機能が未知のままである.PLに基づくサプリメントや医薬品を開発し,未知のPLがヒトの健康に及ぼす影響を調べるためには,大量のPLを入手する必要がある.しかし,複雑で非効率的な化学合成や天然源からの抽出により,入手可能な量が限られ,価格も高いことが,上記の取り組みにおける大きな障害となっている.これらの問題に対する解決策は,レシチンのような安価で入手可能な原料からの酵素合成である.

費用対効果の高い酵素的バイオコンバージョンに使用するのに適したレシチンの主な供給源は,原油の脱ガムの副産物として生産される大豆油である.トウモロコシ,綿実油,菜種油,米油,ヒマワリ油からも同じ工程でレシチンを得ることができる.卵黄とは異なり,レシチンを多く含むもう一つの原料である植物レシチンは,不飽和脂肪酸の含有量が高く,コレステロールを含まない.

ホスホリパーゼD(PLD; EC 3.1.4.4)は,PLのホスホジエステル結合の加水分解を触媒し,ホスファチジン酸(PA)と対応するアルコールを生成する.同時に,PLDは極性頭部基と共存するアルコールの交換を触媒し,極性頭部が修飾されたPLを生成するホスファチジル基転移反応を行う(図1図1■PLD触媒反応,加水分解とホスファチジル基転移反応).ホスファチジル基転移は,多様な機能性極性基を持つポリマーの供給源として,工業的なポリマーの生産において特に注目されている.過去に我々のグループは,ホスファチジルコリン(PC)やレシチンからホスファチジルエタノールアミン(17)17) L. R. Juneja, T. Kazuoka, T. Yamane & S. Shimizu: Biochim. Biophys. Acta, 960, 334 (1988).,ホスファチジルセリン(18)18) L. R. Juneja, T. Kazuoka, N. Goto, T. Yamane & S. Shimizu: Biochim. Biophys. Acta, 1003, 277 (1989).,あるいはホスファチジルグリセロール(19)19) L. R. Juneja, N. Hibi, N. Inagaki, T. Yamane & S. Shimizu: Enzyme Microb. Technol., 9, 350 (1987).を生産する酵素プロセスの確立に使用される天然PLDを発見した.

図1■PLD触媒反応,加水分解とホスファチジル基転移反応

1. 熱安定性のためPLDのタンパク質工学

1-ホスファチジルイノシトール(1-PI)は,血中のコレステロールを減少させ,代謝症候群の症状を緩和する価値のある機能性リン脂質である.しかし,化学合成による1-PIの工業的生産は,反応性水酸基の保護と脱保護を含む多くの反応工程が必要で,高価な化学試薬を使用しなければならない.一方,天然資源からの抽出は,1-PIの天然存在量が少ないため困難であり,その結果,回収率が低くなる.そこで,筆者の博士論文の指導教員である岩崎雄吾博士は,安価なホスファチジルコリンとmyo-イノシトールから1-PIを合成できるPI-PLD酵素を進化工学的手法によって開発した(20)20) A. Masayama, T. Takahashi, K. Tsukada, S. Nishikawa, R. Takahashi, M. Adachi, K. Koga, A. Suzuki, T. Yamane, H. Nakano et al.: ChemBioChem, 9, 974 (2008)..筆者はこのPI-PLDの熱安定性を向上させるために,熱揺らぎを示すB因子の高いアミノ酸に相当する位置にランダムな変異を導入し,熱安定性を高めた複数の変異体(D40HおよびT291Y)が得られた(21)21) J. Damnjanovic, R. Takahashi, A. Suzuki, H. Nakano & Y. Iwasaki: Protein Eng. Des. Sel., 25, 415 (2012)..さらなる熱安定化を目指して,D40を含むタンパク質表面の柔軟なループの除去により,70°Cでの活性半減期を11.7倍増加させた(22)22) J. Damnjanovic, H. Nakano & Y. Iwasaki: Biotechnol. Bioeng., 111, 674 (2014)..PI合成は熱安定性PI-PLDを使用することで,高温で行うことが可能になり,PI収量は最大2倍増大した.

2. PLDの基質特異性を改変するためのPLDのタンパク質工学

イノシトールには6つのOH基があるが,天然のPIは,リン脂質部分がイノシトールの1-OH基が結合した1-PIである.しかし,変異型PI-PLDは,1-PI以外の構造異性体を合成していた.そこでPI-PLDの基質結合領域への変異導入により,1-OHに対する位置特異性の向上を試み,1-PI特異的PI-PLD(G186T, W187N, Y191Y, Y385R)を開発し,純度97%で1-PIを生産できた(23)23) J. Damnjanovic, C. Kuroiwa, H. Tanaka, K. Ishida, H. Nakano & Y. Iwasaki: Biotechnol. Bioeng., 113, 62 (2016)..興味深いことに,反応温度を下げると,異性体純度が向上した(図2図2■異なる温度で1-PI特異的PI-PLDによって合成されたPIの異性体純度(文献23より転載)).さらに,1-PI特異的PI-PLDとの反応系を最適化し,1-PIの収量を約40%にまで向上させることができた(24)24) M. Muraki, J. Damnjanovic, H. Nakano & Y. Iwasaki: J. Biosci. Bioeng., 122, 276 (2016)..1-PI特異的PI-PLDの立体構造解析により,野生型と1-PI特異的PI-PLDの間の基質結合様式と活性部位の大きさには,顕著な違いがあることとを明らかにした(25)25) A. Samantha, J. Damnjanovic, Y. Iwasaki, H. Nakano & A. Vrielink: Biochem. J., 478, 1749 (2021)..さらに,1-PI特異的PI-PLDは,結合する基質によって,触媒機構がメインルートから,異なる化学反応によって進行する代替ルートに切り替わることが示唆された.

図2■異なる温度で1-PI特異的PI-PLDによって合成されたPIの異性体純度(文献23より転載)

また,他のPI-PLD変異体を利用して,希少生理活性リン脂質である,1-ホスファチジル-β-D-グルコース(26)26) A. Inoue, M. Adachi, J. Damnjanovic, H. Nakano & Y. Iwasaki: ChemistrySelect, 1, 4121 (2016).やホスファチジルトレオニン(27)27) J. Damnjanovic, N. Matsunaga, M. Adachi, H. Nakano & Y. Iwasaki: Eur. J. Lipid Sci. Technol., 120, 1800089 (2018).の酵素合成も成功した.

ホスファチジルトレオニン(PT)は血液凝固促進因子であり(28)28) A. A. Hajeyah, M. B. Protty, D. Paul, D. Costa, N. Omidvar, B. Morgan, Y. Iwasaki, B. McGill, P. V. Jenkins, Z. Yousef et al.: J. Lipid Res., 65, 100484 (2024).,トキソプラズマ病原体における役割が報告されている(29)29) R. G. Roberts: PLoS Biol., 13, e1002289 (2015)..PTは生物学的に活性なリン脂質で,トレオニンがリン脂質骨格に結合している.野生型PLDは,ホスファチジルコリンとトレオニンからPTを合成することは,myo-イノシトールの場合と同様に,立体障害により不可能であった.しかしながら,W187FとY385Lの変異を持つPI-PLDは,30%の収率でPTを合成することができた.興味深いことに,PI-PLDは4つのスレオニン異性体(L-Thr, D-Thr, L-allo-Thr, D-allo-Thr)のうち,D-Thr以外の3つの異性体を受け入れることができた(図3図3■4種のトレオニン立体異性体からのホスファチジルトレオニン(PtdThr)の合成.白,黒,および灰色のカラムはそれぞれホスファチジン酸(PtdOH; 副生物),PtdThr, およびホスファチジルコリン(PtdCho; 基質)を示す(文献27より転載)).ドッキングシミュレーションの結果,D-Thrは,反応性の-OH基が触媒残基の反対側を向いた非生産的な配向で結合することが明らかになった.

図3■4種のトレオニン立体異性体からのホスファチジルトレオニン(PtdThr)の合成.白,黒,および灰色のカラムはそれぞれホスファチジン酸(PtdOH; 副生物),PtdThr, およびホスファチジルコリン(PtdCho; 基質)を示す(文献27より転載)

1-ホスファチジル-β-D-グルコース(1-PGlc)は,2001年にヒト臍帯赤血球の膜から単離され,発見された(30)30) Y. Nagatsuka, T. Kasama, Y. Ohashi, J. Uzawa, Y. Ono, K. Shimizu & Y. A. Hirabayashi: FEBS Lett., 497, 141 (2001)..発見以来,1-PGlcは他の哺乳類組織,例えばヒト血液細胞やネズミの神経幹細胞の細胞膜にも見出され,細胞のアポトーシスや分化を制御していることが示唆されている(31, 32)31) J. Kaneko, M. O. Kinoshita, T. Machida, Y. Shinoda, Y. Nagatsuka & Y. Hirabayashi: J. Neurochem., 116, 840 (2011).32) K. Kina, H. Masuda, H. Nakayama, C. Iwahara, Y. Nagatsuka, Y. Hirabayashi, H. Ogawa, K. Takamori & K. Iwabuchi: Inflamm. Regen., 32, 213 (2012)..我々は,W187KおよびY191W変異を持つPI-PLDを触媒とする1-PGlcの簡単な化学酵素的合成法を確立した(26)26) A. Inoue, M. Adachi, J. Damnjanovic, H. Nakano & Y. Iwasaki: ChemistrySelect, 1, 4121 (2016)..PCとβ-D-グルコースから出発する一段階の反応で,βアノマー配置を持つ1-PGlcが得られた.いくつかの他のPGlc位置異性体(2-PGlcと6-PGlc)による生成物の汚染は,還元末端を持つPGlc異性体(1-PGlcを除くすべて)をアニリン誘導体に変換する還元的アミノ化によって解決され,次いでカラム精製が行われた.またリゾリン脂質およびsn-2に短鎖アシル基を有するリン脂質に特異的なPLD変異酵素の取得にも成功した.

W166RのPLDをPLA2とのカスケード反応に用いることで,我々はPCから環状ホスファチジン酸(cPA)を82%の収率でワンポット酵素合成することを実証した(33)33) J. Damnjanovic, H. Nakano & Y. Iwasaki: Protein Eng. Des. Sel., 32, 1 (2019)..W166RのPLDはlysoPLを好むため,PLA2反応はまずPCをlysoPCに変換し,これがPLD反応の基質となってcPAを生成した.

さらに,筆者らはアルツハイマー病との関連で現在注目されている,プラズマローゲンの直接の前駆体であるプラズマニルリン脂質の,変異PLDを用いた化学酵素的合成法を開発した(34)34) Y. Iwasaki, Y. Sakurai & J. Damnjanovic: Biocatal. Agric. Biotechnol., 26, 101625 (2020)..すなわち,1-アルキル-2-アシルグリセロホスホコリン(プラスマニルコリン)を化学合成し,これを基質として我々の開発した様々なPLD変異酵素群を用いて,異なる種類の極性頭部を持つプラスマニルリン脂質を合成した.この戦略を用いて,我々は,プラスマニルコリン,プラスマニルエタノールアミン,プラスマニルセリン,プラスマニルグリセロール,プラスマニルイノシトール,プラスマニルトレオニンが合成できることを示した.

筆者らは酵素的または化学酵素的合成ルートを開発した生理活性リン脂質の概要を図4図4■変異型PLD酵素群によって合成されたリン脂質生成物の概要に示す.

図4■変異型PLD酵素群によって合成されたリン脂質生成物の概要

酵素研究・工学における細胞系と無細胞系のスクリーニングと選択法

指向性進化や半合理的デザインでは,多様性はDNAレベルで作られる.そこでは,利用可能な方法の一つによって遺伝子にランダムな突然変異が導入され,生成された変異体のプールをスクリーニングして,所望の特性を持つものを選択する.生成される多様性が大きいため(例えば,5箇所のアミノ酸残基の変異で106のライブラリーができる),スクリーニングは最も重要なステップである.

変異導入した酵素遺伝子を生きた微生物に導入し,寒天培地上にコロニーを形成させてスクリーニングを行う手法が一般的である.ライブラリのサイズは細胞の形質転換効率に依存し,時間,労力,細胞の培養,誘導,スクリーニングのためのコストがかかり,研究者チームが目的とする性質を有する変異酵素の選択を完了するには,数か月から時には数年かかることもある.さらに進化させることができる酵素は,細胞に毒性がなく,宿主内で十分に発現するものに限られるなど,スクリーニングのボトルネックになってきた.

このように生細胞を用いるin vivo法に対して,無細胞タンパク質合成系を用いて,遺伝子から直接タンパク質を合成するin vitro法は,無細胞タンパク質合成と遺伝子型と表現型を一分子レベルで結びつける様々な技術を利用することにより,in vivo法の制限を解消できる(図5図5■無細胞系および細胞系のスクリーニングと選択法の概要).遺伝子型(DNA)と表現型(タンパク質)を関連づける手法としては,遺伝子型–表現型ペアの空間的分離に基づく技術(コンパートメント化技術)と,物理的な遺伝子型–表現型の連結に基づく技術(ディスプレイ技術)に分類することができる.

図5■無細胞系および細胞系のスクリーニングと選択法の概要

筆者が所属する研究室では,SIMPLEX(SIngle-Molecule-PCR-Linked in vitro EXpression)スクリーニングシステムを開発し,コンビナトリアル変異を導入した酵素ライブラリーのDNAを,384穴プレートに,一分子/穴になるよう分散させ,その後一分子PCRによる増幅,無細胞タンパク質合成系を用いることで,タンパク質分子ライブラリーを作ることを可能にした(35)35) Y. Koga, K. Kato, H. Nakano & T. Yamane: J. Mol. Biol., 331, 585 (2003)..この先駆的なハイスループットスクリーニングシステムを用いて,活性部位の4箇所に変異を持つコンビナトリアルライブラリーから,エナンチオ選択性が反転したリパーゼ変異体を創製した.

柳川のグループ(36)36) N. Nemoto, E. Miyamoto-Sato, Y. Husimi & H. Yanagawa: FEBS Lett., 414, 405 (1997).とSzostakのグループ(37)37) R. W. Roberts & J. W. Szostak: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 12297 (1997).によって開発されたmRNAディスプレイは,チロシルtRNAのアナログであるピューロマイシンを,mRNAにリンカーを介して結合させたものを鋳型とし,無細胞タンパク合成系により翻訳させる.その結果タンパク質の終結付近で,mRNAに結合したピューロマイシンが取り込まれ,タンパク質-リンカー・mRNAの複合体が形成される.これをタンパク質側の活性(結合能など)により選択することで,目的の機能を有するタンパク質を選択できる.対象とするタンパク質に対する制約が少なく,ライブラリーサイズが膨大で(最大1014/mL程度),操作時間が短いことなどの利点がある.

mRNAディスプレイは,ペプチドや抗体断片のアフィニティーベースのスクリーニングや選択に広く応用されている(38~40).しかしながら本手法の酵素工学分野への応用は,リガーゼなどの結合形成酵素の基質特異性の解析などに限られていた(41~43)

1. 一分子ディスプレイ法を駆使したトランスグルタミナーゼの網羅的基質特異性解析

トランスグルタミナーゼ(TGs: EC 2.3.2.13)は,主にアシル供与体(ペプチジルグルタミン)とアシル受容体(リジンのアミノ基)との間のトランスアミド化を触媒し,タンパク質を架橋する酵素であり,植物,動物,微生物などの界に広く存在している.

哺乳類には8種類のTG(TG1, TG2, TG3, TG4, TG5, TG6, TG7,第XIII因子)があり,血液凝固,表皮や毛包の形成,創傷治癒,アポトーシス,細胞外マトリックスの形成,細胞接着などに関与している(44)44) M. Griffin, R. Casadio & C. M. Bergamini: Biochem. J., 368, 377 (2002)..TGの機能異常は,出血,セリアック病,癌,線維症,アルツハイマー病,ハンチントン病,ラメラ魚鱗癬などの重篤な疾患を引き起こすことが知られている(45)45) L. Lorand & R. M. Graham: Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 4, 140 (2003)..ヒトのTGに関し,広範囲な研究が行われているにも関わらず,TG本来の基質やその作用部位,架橋が及ぼす生理作用などに,まだ多くの未解決の問題がある.

一方,微生物由来TG(MTG)は,食品,特に食肉製品の加工に使用されている(46)46) A. L. C. Gaspar & S. P. de Góes-Favoni: Food Chem., 171, 315 (2015).,医薬品や材料科学分野でも新しい応用が進んでいる.

TGの多数のアイソザイムの機能が異なるのは,それぞれが別の基質に作用しているからであり,その基質特異性の全貌を明らかにすることは,TG研究において非常に重要である.筆者らは,cDNAディスプレイ(mRNAディスプレイのmRNAをcDNAに逆転写したもの)に,次世代シーケンシング(NGS)とバイオインフォマティクスを組み合わせたプラットフォームを開発し,この課題に取り組んだ.Glnペプチド遺伝子のランダム化ライブラリーから出発して,mRNA/cDNA上にディスプレイされたペプチドライブラリー(ペプチド-リンカー・mRNA/cDNA複合体)を調製し,対象とするTGと第二TG基質のビオチン化一級アミンと反応させた.TGに対して反応性の高い基質になるGlnペプチドは直ぐにビオチン化されるため,ストレプトアビジン磁気ビーズを用いて,ビオチン化ペプチド-リンカー・mRNA/cDNA複合体を選択した.より厳しい条件下(短い反応時間,低い酵素濃度など)で濃縮し,得られたcDNAをNGSで解析した.膨大な配列データはランダムフォレストで統計的解析を行い,基質コンセンサス配列を含む包括的な基質プロファイルが得られた(図6図6■TG2基質プロファイルのバイオインフォマティクス解析結果(文献47より転載)).各TGに対し最も濃縮されたペプチド配列は,各コンセンサス配列にほぼ一致し,それぞれのTG,すなわちTG2(47)47) J. Damnjanovic, N. Odake, J. Fan, M. Camagna, B. Jia, T. Kojima, N. Nemoto, K. Hitomi & H. Nakano: Sci. Rep., 12, 13578 (2022).,TG1(図7図7■TG1との反応で選択されたペプチドの反応性と交差反応性(文献48より転載)(48)48) T. I. K. Munaweera, J. Damnjanovic, M. Camagna, M. Nezu, B. Jia, K. Hitomi, N. Nemoto & H. Nakano: Biosci. Biotechnol. Biochem., 88, 620 (2024).,TG3(未発表),MTG(未発表)に対して高い反応性と特異性を示した.さらに,ヒトTG2とTG1の基質プロファイルデータを,研究室で作成したPythonスクリプトを用いてヒトタンパク質配列データベース検索に適用することで,濃縮ペプチド配列と類似性の高い配列モチーフを含むタンパク質をランクづけした.ランクリストの上位には,既知のタンパク質の基質だけでなく,これまで報告のない新規候補タンパク質も多く含まれていた.これらと対応するTGとの関係は,プロテオミクスを用いて検証中である.

図6■TG2基質プロファイルのバイオインフォマティクス解析結果(文献47より転載)

図7■TG1との反応で選択されたペプチドの反応性と交差反応性(文献48より転載)

2. 酵素工学のための新しい一分子ディスプレイ技術の開発

前述したようにin vitroディスプレイ技術は多くの利点にもかかわらず,酵素工学における利用例は非常に限られている.バイナリーモデルライブラリーから活性型βラクタマーゼを濃縮するためにリボソームディスプレイを用いた研究(49)49) P. Amstutz, J. N. Pelletier, A. Guggisberg, L. Jermutus, S. Cesaro-Tadic, C. Zahnd & A. Plückthun: J. Am. Chem. Soc., 124, 9396 (2002).,M-MuLV逆転写酵素の耐熱性を進化させるためにリボソームディスプレイとin vitroコンパートメント化の組み合わせを用いた研究(50)50) R. Skirgaila, V. Pudzaitis, S. Paliksa, M. Vaitkevicius & A. Janulaitis: Protein Eng. Des. Sel., 26, 453 (2013).,人工RNAリガーゼの進化にmRNAディスプレイを用いた研究(51)51) B. Seelig & J. W. Szostak: Nature, 448, 828 (2007).などがあげられるくらいである.

酵素のin vitroディスプレイにおいて,一分子レベルで酵素活性を評価し選択する系を構築することが鍵となる.そこで筆者らは,酵素を提示したmRNA上に,もう一つ補助ユニットを結合させることによって,mRNAにピューロマイシンを介して結合した酵素分子が活性を持つ場合には,補助ユニットの働きで複合体(酵素-mRNA-補助ユニット)がビオチン化される系を開発し,Single Molecule Assay on Ribonucleic acid by Translated product(SMART)と名付けた(図8図8■SMART技術の概要(52)52) J. Damnjanovic & H. Nakano: 特許庁,特願2024-210782号(特許出願中)(2024).

図8■SMART技術の概要

SMARTでは,前述したASR解析やリガンド・ドッキングなどのバイオインフォマティクスを利用して,目的とする酵素の性質向上に合わせて変異導入領域を決定したのち,DNAレベルで変異を導入してDNAライブラリーを構築する.In vitro転写後,得られたmRNAライブラリーをピューロマイシンリンカーに化学結合させる.これを鋳型mRNAとしてin vitro翻訳を行うことにより,酵素分子がピューロマイシンリンカーを介して対応するmRNAに化学的に結合される.次に活性に基づく一分子選択を可能にするために,mRNAにハイブリダイズで補助ユニットを結合させる.補助ユニットには,酵素活性を有する上記複合体がビオチン化されるように,補助酵素や基質を含んでいる.基質とともに酵素活性アッセイを行うことにより,活性を有する酵素分子は,そのmRNAとともにビオチン化され,ストレプトアビジン磁気ビーズによって分離・濃縮される.各選択ラウンドからのmRNAを逆転写,NGS解析を行うことで,目的とする変異酵素配列を取得する.

これまでのところ,D-アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)とMTGを例として,活性酵素分子が濃縮されることを示した.特にDAAOについては,このSMART技術により,基質特異性の変化した変異体酵素の取得に成功している(未発表).

おわりに

酵素がますます多くの産業で化学変換のための不可欠なツールになるにつれ,高性能のテーラーメイド酵素を入手する必要性が急速に高まっている.このような需要の高まりに対応するためには,目的の酵素変異体を,短時間で効率的に得ることができる革新的な酵素開発プラットフォームが必要である.酵素の開発方法は,長く手間のかかる古典的なスクリーニング手法に加え,既存の酵素を改変・進化させるタンパク質工学,進化分子工学の手法が発展し,近年ではバイオインフォマティクスを駆使した手法が提案されてきている.しかしながら,酵素工学のスピードと質にはまだまだ改善の余地があると考えている.このような観点から,筆者は,細胞ベースの酵素工学に関連する問題を解決するため,無細胞タンパク質合成系を駆使し,トランスグルタミナーゼの基質特異性の包括的解析技術を開発し,さらに酵素活性に基づいた一分子セレクションを可能にするSMARTを開発した.本プラットフォームにde novoタンパク質設計や他の急速に進化するバイオインフォマティクスツールを組み込むこと,多様な酵素を対象とした技術に拡大することで,SMARTは迅速かつ効率的なテーラーメイド酵素を作り出すためのプラットフォームになり得ると期待している.

Acknowledgments

良い時も辛い時も,親身になって研究を支えてくれた恩師や同僚たちに,心から感謝したいと思います.名古屋大学の中野秀雄先生,岩崎雄吾先生(現中部大学),人見清隆先生,兒島孝明先生(現名城大学),加藤晃代先生,Camagna Maurizio博士,埼玉大学の根本直人先生,東京科学大学の朱博先生,西オーストラリア大学のVrielink Alice先生,Ariela Samantha博士,そして多くの指導学生の協力なくしては,このような成果は得ることはできませんでした.またジーンフロンティアの金森隆志博士には,PUREfrex試薬の提供と,試験管内翻訳に関する貴重な示唆を提供してくださったことに大変感謝しています.

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