書評

村田容常(編)『食品加工貯蔵学』第2版(東京化学同人,2025年)

Shigenori Kumazawa

熊澤 茂則

静岡県立大学

Published: 2026-03-01

食品加工貯蔵学は,農産物・畜産物・水産物といった一次生産物を原料とし,食品を安定的に製造・保存するための学問分野である.近年,少子高齢化や女性の社会進出など社会環境の変化により,加工食品の利用機会は大きく拡大している.また,技術革新によって,より美味しく,栄養価が高く,さらには新たな機能性を備えた食品の開発も進んでいる.現在,安全で美味しい食品の安定供給を維持する一方で,環境問題との調和や多様な食文化の尊重など,しばしば相反する要請への対応が求められている.このような背景のもと,2016年刊行の「食品加工貯蔵学」が改訂され,第2版として新たに出版された.本書は初版の基本方針を踏まえつつ,最新の知見を加えて大幅に刷新されている.

本書第2版は全17章から成り,第I部から第V部の5部構成となっている.第I部「食品の加工」では,第2章の植物性食品の加工においてプラントベースフードが新たに取り上げられている.これは,社会的背景の変化と加工技術の進展により,植物原料を用いた動物性食品代替品が多様に開発されていることを反映したものである.また,第6章の新しい加工技術では,3Dフードプリンタをはじめとする最新のフードテックの動向が紹介されており,非常に興味深い.第II部「食品の貯蔵」では,食品保存における基本的な劣化要因とその防止方法が丁寧にまとめられている.第III部「食品の加工貯蔵中における変化」では,第10章のメイラード反応に関する解説が特に充実しており,食品成分間反応の化学的側面が詳細かつ分かりやすく説明されている.丁寧な解説によってメイラード反応の重要性がよく理解できる内容となっている.第IV部「バイオテクノロジーと食品」では,現在では一般化した遺伝子組換え食品の製造方法に加え,近年注目されているゲノム編集技術による作物の開発手法が簡潔かつ明瞭に解説されている.第V部「食品の表示と規格,安全性」では,第16章において2020年から完全施行された食品表示制度や日本食品標準成分表2020年版(八訂)など,最新の制度改正が反映されている.また,第17章「食の安全」は第2版で新たに設けられた章であり,食の安全を学ぶ上で必要となる基本的な考え方が分かりやすく整理されている.

管理栄養士国家試験の出題基準は2019年に改正され,食品の加工・貯蔵に関する科学的な知識の理解も求められている.食品素材の特性に応じた加工技術,さらに食品の表示と規格に関する知識は必須である.特に食品表示制度はこの数年で大幅に変更されており,本書を通じて最新かつ正確な情報を学ぶことができる点は心強い.

以上のように,本書は管理栄養士養成課程の教科書としてはもちろん,食品関連分野の学部学生や大学院生,さらには事業者にとっても,教科書または参考書として強く推薦できる一冊である.