セミナー室

炎症におけるオートファジー

矢野

Tamaki Yano

東北大学大学院薬学研究科 ◇ 〒980-8578 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6番3号

Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Tohoku University ◇ 6-3 Aramaki Aoba, Aoba-ku, Sendai-shi, Miyagi 980-8578, Japan

Published: 2015-06-20

はじめに

食作用のなかでもオートファジーは,その名のとおり“自らを分解”する機構であり,二重膜構造をもつオートファゴソームにより分解すべき基質,すなわちオルガネラや細胞質成分を取り込み,リソソームと融合することによりその内容物を分解する(1,2)1) B. Levine, N. Mizushima & H. W. Virgin: Nature, 469, 323 (2011).2) N. Mizushima, T. Yoshimori & Y. Ohsumi: Annu. Rev. Cell Dev. Biol., 27, 107 (2011)..オートファジーは酵母からヒトにまで保存され,近年では線虫やショウジョウバエといったモデル生物,さらには植物においても細胞の機能維持に必須の働きであることが示されており,その生理的意義に関する研究が盛んである.オートファジーは基底レベルで機能することによって細胞内の代謝回転を行うが,栄養飢餓により誘導され,自らの成分の再利用に働く.オートファジーに機能する因子群についての近年のめざましい解析により,オートファジーはこういった代謝における機能に加え,自然免疫応答としても重要な働きを担っていることがわかってきた(1)1) B. Levine, N. Mizushima & H. W. Virgin: Nature, 469, 323 (2011)..自然免疫はほとんどすべての多細胞生物がもっている病原体からの防御機構であり,病原体をその構成分子の構造パターン,すなわち細菌の細胞壁成分やウイルスのゲノムを認識することで自然免疫シグナル経路を活性化し,病原体に対抗する自然免疫応答を起こす(3)3) T. Yano & S. Kurata: J. Biochem., 150, 143 (2011)..オートファジーは免疫のさまざまな局面に関与していることがこれまでに見えてきているが,自然免疫応答としてのオートファジーのなかでも研究が進んでいるのは,病原体をオートファゴゾームにより直接排除するという機能である(本誌食作用と生体防御4参照).これに加え,オートファジーはさまざまな自然免疫応答の制御に関与し,その不全が自然免疫応答の破綻による疾患の原因になる.本稿では,オートファジーとその不全の,過剰な自然免疫応答としての炎症における役割について概説する.

自然免疫応答としてのオートファジーで分解される基質

オートファジーは基本的に物質を膜構造に取り込んで分解する機構であり,当初は非特異的な分解であると考えられていたが,近年では選択性に基づいてさまざまな基質がオートファゴソームに取り込まれることが明らかとなっている(4)4) N. Mizushima & M. Komatsu: Cell, 11, 728 (2011)..この選択的オートファジーは,変性タンパク質からなる凝集体や,損傷を受けたミトコンドリア,あるいは細胞内に侵入した細菌などの病原体をユビキチン化,病原体のパターン認識分子による結合,細胞内寄生細菌の起こすエンドゾーム膜の損傷を認識する分子など,選択する物質に応じた,また,病原体の変化に応じることのできるさまざまなオートファジー誘導トリガーと,ユビキチンに結合するp62/sqstm1といったアダプタータンパク質のオートファゴソーム上のAtg8(LC3)との相互作用を介して,選択的にオートファゴソーム内に取り込んでいる(図1図1■選択的オートファジーとその基質).オートファジーは非特異的な分解に加え,このような分子間の相互作用に基づいた一定の選択性をもつ場合にも機能するが,特異的な細胞内分解系であるユビキチン−プロテアソーム系と比較して大きな物質,たとえばミトコンドリアのような小器官も選択的に取り囲んで分解できることにその特徴がある.また,オートファゴソームとほかの膜オルガネラとの大きな違いは,オートファゴソームは動的な構造であり,必要な分が新たに作られてリソソームとの融合により内容物の消化とともに消滅すること,飢餓状態のように必要性が高まるとその生成効率が劇的に上昇することにある.こういった特徴は,量的な制御をすばやく行うことに好都合であり,免疫応答とその制御として機能する場合も,プロテアソーム系による分解よりもオートファジーのほうが適している状況,おそらくは量的な問題が重要である場合に機能していると思われる.しかし,オートファジーが自然免疫に機能する場合に分解されるべき基質は,前述の病原体に対するオートファジー(xenophagy),損傷ミトコンドリアに対するオートファジー(mitophagy)以外ではほとんど明らかになっていないのが現状である.

図1■選択的オートファジーとその基質

さまざまな基質を選択的に取り込むために,オートファジー誘導のトリガーは多様である.しかし,最終的にはいずれの場合も一群のアダプタータンパク質を介したオートファゴソーム内に取り込まれる.

オートファジー不全による炎症性サイトカインの過剰産生

オートファジー関連因子の遺伝子改変マウスによる自然免疫における解析は,オートファジーが自然免疫の恒常性に重要で,その不全が炎症を起こすことを明らかにした.オートファジー関連因子Atg16L1は,同じくオートファジー関連因子Atg12, Atg5と複合体を形成し,Atg8が脂質化により局在する膜を認識することでオートファジーの進行に必須の因子であるが,その一塩基多型がヒトの炎症性腸疾患であるクローン病の遺伝的要因の一つであることが示されている(5)5) B. Khor, A. Gardet & R. J. Xavier: Nature, 474, 307 (2011)..Atg16L1ノックアウトマウスは生後直後に致死であるが,Atg16L1骨髄キメラマウスの解析から,Atg16L1欠損マクロファージがLPS刺激に反応して炎症性サイトカインIL-1βを過剰産生すること,キメラマウスにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)摂取による腸炎誘発を行うと血球系細胞からのIL-1β過剰産生により強い炎症が誘導され致死性が上昇することから,Atg16L1の炎症における重要性が指摘されている(6,7)6) V. Deretic, S. Master & S. Singh: Dev. Cell, 15, 641 (2008).7) T. Yano & S. Kurata: Nat. Immunol., 10, 134 (2009)..また,オートファジー関連因子Atg7欠損マクロファージにおいても同様にIL-1βの過剰産生が起きることから,Atg16L1単独ではなく,オートファジーというシステム自体の不全が炎症性サイトカイン過剰発現を起こすと考えられる.炎症性サイトカインの活性化は,尿酸結晶,シリカなどの炎症性疾患の原因因子により活性化する因子NALP3を介したcaspase-1活性化によっている.また,オートファジーはミトコンドリアの分解に重要であり,Atg16L1骨髄キメラマウスにおけるオートファジー不全は古い損傷したミトコンドリアの蓄積を起こし,その損傷ミトコンドリアから産生される活性酸素種がNALP3の活性化を起こす可能性が考えられる(8)8) R. Zhou, A. S. Yazdi, P. Menu & J. Tschopp: Nature, 469, 221 (2011)..さらに,損傷ミトコンドリアから放出されるミトコンドリアDNAによるIL-1βの過剰な活性化も提唱されている.

オートファジーによる炎症性サイトカインの分泌

上述した,オートファジー不全によって炎症性サイトカインが過剰産生されるという事実と一見相反するようであるが,オートファジーはIL-1β,IL-18などの炎症性サイトカインの分泌を促進しているという報告がある(9)9) V. Deretic, S. Jiang & N. Dupont: Trends Cell Biol., 22, 397 (2012)..通常,シグナルペプチドを有するタンパク質は小胞体,ゴルジ体を経て,輸送小胞により細胞膜まで輸送されて分泌される.しかし,IL-1βなどは非通常分泌経路(unconventional protein secretion)によって分泌されており(10)10) W. Nickel & C. Rabouille: Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 10, 148 (2009).,オートファジーがこの経路に促進的に働いていることが,培養細胞による解析で提唱されている(9)9) V. Deretic, S. Jiang & N. Dupont: Trends Cell Biol., 22, 397 (2012)..個体における炎症の制御にこの促進的な機構がどの程度寄与しているかは不明であるが,栄養飢餓など,何らかの条件下でオートファジーが誘導された場合に,こういったオートファジーによって促進される膜輸送が存在する可能性がある.

小胞体–ゴルジ体を経ないオートファジーに依存した分泌は,嚢胞性線維症(cystic fibrosis)の原因因子となるCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)タンパク質の輸送にも関係する.嚢胞性線維症は消化管や気管の粘膜上皮細胞の分泌異常による消化吸収障害や気管支炎を特徴とする疾患であり,クロライドイオンチャネルであるCFTRの変異による遺伝病である.CFTR変異タンパク質はオートファジー因子beclin-1を巻き込んだ凝集体を形成し,オートファジー不全を起こすことによって炎症が生じる.また,beclin-1を発現させることにより嚢胞性線維症モデルマウスCFTRの輸送は回復し,炎症も改善される.変異をもたないCFTRは,Atg5およびAtg7,すなわちオートファジーとGolgi reassembly and stacking protein(GRASP)の双方に依存した,小胞体–ゴルジ体を経ない膜輸送により上皮細胞の頂端側に運ばれてチャネルとして機能する.したがって,オートファジーに依存した細胞膜への輸送は,炎症性サイトカインにとどまらず多岐にわたっていると考えられる.ショウジョウバエにおいても,上皮細胞においてGRASP依存的な輸送によりIntegrin α鎖が上皮細胞の基底膜側に輸送されることがわかっている.興味深いことに,このゴルジ体を経ない輸送は発生の特定の時期における上皮のリモデリングにのみ重要で,通常Integrinはα鎖とβ鎖のヘテロダイマーとしてゴルジ体を経る通常の輸送経路により細胞膜に輸送される(10)10) W. Nickel & C. Rabouille: Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 10, 148 (2009)..オートファジーに依存した輸送が通常の経路とどのように使い分けられているのか,また,オートファジーがどのようなメカニズムでこういった輸送に関与しているのかの解明が待たれる.

オートファジー不全が起こす炎症性疾患:クローン病

オートファジー不全はさまざまな炎症性疾患の原因となるが(表1表1■オートファジーの関連する疾患),なかでも最も精力的に研究が行われているのがクローン病であろう.クローン病は若年で発症し,潰瘍や繊維化を伴う肉芽腫性炎症性病変が小腸や回腸末端を好発部位として非連続的に生じる疾患である(11,12)11) T. S. Stappenbeck, J. D. Rioux, A. Mizoguchi, T. Saitoh, A. Huett, A. Darfeuille-Michaud, T. Wileman, S. Carding, S. Akira, M. Parkes et al.: Autophagy, 7, 355 (2011).12) V. M. Hubbard & K. Cadwell: Viruses, 3, 1281 (2011)..腸管以外にも皮膚病変を伴う場合もあることから,小腸に限らず上皮性組織における恒常性破綻による炎症疾患であると考えられる.クローン病の病態を起こす根本原因は不明であるが,遺伝疾患であることからゲノムワイド関連解析による関連遺伝子の解析が行われ,オートファジー関連因子であるAtg16L1,オートファジーの誘導に機能するIRGM,ULK1に変異が認められたことからオートファジーとの強い関連が指摘された(13)13) A. Gardet & R. J. Xavier: Curr. Opin. Immunol., 24, 522 (2012)..ただし,病態は遺伝的要因のみによっているのではなく,腸内細菌,喫煙,ストレスなど複数の環境要因が関与していると考えられている.

表1■オートファジーの関連する疾患
疾病名疾患部位病態関連遺伝子
上皮性疾患クローン病(Crohn’s disease)消化管炎症,潰瘍Atg16L1, IRGM, NOD2
喘息(Asthma)肺,気管呼吸困難Atg5
嚢胞性線維症(Cystic fibrosis)消化管,気管分泌異常,炎症CFTR, beclin-1
神経疾患パーキンソン病(Parkinson’s disease)中枢神経ドパミン神経細胞の変性,筋固縮,ふるえPINK1, parkin
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis; ALS)中枢神経筋萎縮,運動障害p62, optineurin
全身性疾患全身エリテマトーデス(Lupus erythematous; SLE)全身炎症Atg5
がん卵巣,乳腺腫瘍形成beculin-1
骨疾患骨パジェット病(Paget disease of bone)骨形成異常p62

1. Atg16L1変異

腸管上皮細胞下にはマクロファージや樹状細胞が多く存在し,自然免疫に重要な働きをしている.前述のように骨髄キメラAtg16L1ノックアウトマウスの解析により,Atg16L1欠損はマクロファージにおけるIL-1βの過剰産生を起こし,さらに個体としてDSS誘発性腸炎の炎症亢進を起こすことから,オートファジーはマクロファージからの炎症性サイトカインの産生制御に重要であることが示唆されている(6,7)6) V. Deretic, S. Master & S. Singh: Dev. Cell, 15, 641 (2008).7) T. Yano & S. Kurata: Nat. Immunol., 10, 134 (2009)..しかしながら,オートファジー不全による腸管炎症は血球系細胞におけるサイトカイン異常産生のみではないことも明らかとなっている(図2図2■クローン病におけるオートファジー不全による異常).パネート細胞は小腸上皮の陰窩(crypt)にある上皮細胞であり,ディフェンシンなどの抗菌ペプチドを分泌することで自然免疫に機能するとともに,腸管幹細胞のニッチとして機能している腸管恒常性に重要な細胞である.Atg16L1低発現マウスでは,パネート細胞の分泌顆粒に異常が生じ,さらに,腸管上皮細胞特異的Atg5およびAtg7ノックアウトマウスにおいても同様のパネート細胞の異常が観察されたこと,クローン病患者では成熟パネート細胞数が減少していることから,オートファジーはパネート細胞の機能維持に重要であると考えられる.一方で,小腸における炎症にパネート細胞が重要であることは指摘されているものの,クローン病患者ではほかの上皮組織においても炎症が観察されることから,この炎症の根本的な原因は,パネート細胞の機能にのみ依存しているわけではないと考えられる.オートファジー不全と腸管炎症にこのような明確な関連が示されているにもかかわらず,オートファジーという食作用の不全が起こす炎症に,どのような基質の分解異常が,どのような分子機構を介してかかわっているのかはいまだ全く不明であり,疾患の原因を解明するためにも,今後のさらなる検討が必要である.

図2■クローン病におけるオートファジー不全による異常

上皮細胞におけるAtg5,Atg7,Atg16L1欠損はいずれもパネート細胞(Paneth cell)の異常をもたらし,ディフェンシンなど抗菌ペプチドなどの分泌が低下することによりおそらくは腸内細菌叢の変化が生じる.一方で,マクロファージや樹状細胞は細菌やウイルスによって自然免疫経路が活性化するが,Atg16L1欠損によりインフラマソ−ム活性化を介した炎症性サイトカイン産生の異常亢進が起きる.クローン病における炎症は,これらの現象が複合的に作用して起きていると考えられるが,その根本的な原因は不明である.

2. IRGM変異

オートファジー誘導に関与する因子IRGM(Immunity-related GTPase family M)に見つかったクローン病に関与する遺伝子変異は,オートファジーの炎症への関与が複雑であることを示唆している.IRGMは結核菌に対するIFN-γ依存的オートファジー誘導による増殖抑制に機能することが示されているが,Atg16L1やAtg5のような,基底レベルでのオートファジーにも関与する因子とは異なり,そのノックアウトマウスは細菌感染に感受性ではあるものの,正常に発生する.IRGM遺伝子におけるクローン病リスク変異は,miRNAであるMIR196の結合する配列にあり,野生型のIRGM遺伝子発現はMIR196によって抑制されているが,この抑制がリスク変異遺伝子では異常となる(14)14) X.-J. Zhou & H. Zhang: Autophagy, 8, 1286 (2012)..IRGM過剰発現がクローン病の病態である腸管炎症を起こす分子機構はわかっていないが,IRGM過剰発現はxenophagyによる細菌の除去を低下させることから,オートファジーが誘導されるためにはIRGMの適正な量が必要である可能性があり,リスク変異によるIRGMの過剰産生がオートファジー誘導不全を起こしているのかもしれない.あるいは,リスク変異によってIRGMのある特定のアイソフォームが発現し,それが細胞死を誘導して,その結果,炎症が起きている可能性もある.これらの分子機構の解明もオートファジー不全と炎症の分子機構を考えるうえで重要である.

3. NOD2変異

クローン病患者の遺伝的背景としては,NOD2遺伝子変異も重要である.NOD2タンパク質は細菌の細胞壁成分であるペプチドグリカンの部分構造を認識し,多量体を形成することで自然免疫シグナル経路を活性化する.細胞膜上やエンドソーム上にあるToll-like receptor(TLR)とは異なり,NOD2などのNod-like receptorは細胞質に存在して機能する因子であるが,NOD1とNOD2が細胞内寄生細菌であるサルモネラ菌やリステリア菌の細胞内への侵入に際し菌周辺へのオートファゴゾーム形成に必要であること,Atg16L1と複合体を形成しうること,クローン病患者に見られる遺伝子変異をもつNOD2は菌感染に対してオートファジーを誘導しないことが示されている(3)3) T. Yano & S. Kurata: J. Biochem., 150, 143 (2011)..こうした細菌認識依存的なオートファジー誘導は初めショウジョウバエで見つかったが(15)15) H. Virgin: Nat. Immunol., 9, 827 (2008).,その後,哺乳類細胞においても上述のNOD1,NOD2依存的な誘導,さらにはTLR同様leucin-rich domainによって細菌に局在することでオートファジーを誘導するLRSAMの例が示されており(3)3) T. Yano & S. Kurata: J. Biochem., 150, 143 (2011).,宿主の自然免疫を逃れようとする細菌側の戦略に対抗した複数のオートファジー誘導トリガーの一つとして,細菌認識が重要であると考えられる.NOD2による細胞内寄生細菌に対するオートファジー誘導,クローン病病態が腸内細菌叢に依存することから,クローン病におけるNOD2変異は細胞内でのオートファジー誘導不全を介していると想像もできるが,実際にはクローン病のNOD2変異による炎症は細胞内侵入性の細菌に依存しているわけではなく,複数の要因が複雑に関連しているように思われる(16)16) D. J. Philpott, M. T. Sorbana, S. J. Robertson, K. Croitoru & S. E. Girardin: Nat. Rev. Immunol., 14, 9 (2014)..NOD2はマウス腸管上皮の陰窩やヒトパネート細胞など抗菌ペプチドの発現細胞で高発現しているが,NOD2変異マウスでは抗菌ペプチド産性に異常は認められず,腸内細菌叢にも野生型と大きな相違はない.また,パネート細胞数も同様である.Atg16L1低発現モデルマウスにおけるオートファジー不全による腸管炎症が腸内細菌やノロウイルスのような腸管感染性ウイルスに完全に依存していることを考えると,病原体依存的自然免疫シグナル活性化や腸管上皮のバリア機能におけるNOD2の多面的な機能を考える必要があるようである.

おわりに

オートファジーという食作用の炎症制御における役割は,主に炎症性疾患の研究から次々と明らかになってきた.しかしながら,ここで概説したように,炎症との因果関係は明確でありながら,その分子機構はほとんどがいまだ不明である.解析を困難にしているのは,炎症がオートファジー不全単独で起きるわけではなく,病原体の存在や細胞死に影響されて多様な現象が生じるために,根本的な原因とそれにより結果として生じる現象を明確に区別できていないことにあると思われる.したがって今後の解析には,個々の現象を単純化して解析できる系と,それらから得られる結果を生体内で再構築してできるモデル動物系が現在以上に必要になると考えられる.

オートファジー不全により起きる疾患の特徴の一つは,変性タンパク質や損傷ミトコンドリアの除去不良が原因と思われる神経変性疾患に加えて,上皮性組織における炎症疾患が見られることであろう(表1表1■オートファジーの関連する疾患).オートファジー関連因子のノックアウトマウスは致死性を示すことがほとんどであることから,それらの変異による遺伝疾患では,オートファジーが全く機能しないのではなく,低下している状態であると考えられる.上皮性の組織において病変が多く見られるということは,オートファジーが上皮細胞に共通の機構に重要であることを示唆しており,その分子機構の解明がオートファジー不全による炎症性疾患の根治療法につながることが期待される.

Reference

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