Kagaku to Seibutsu 53(10): 703-708 (2015)
生物コーナー
GFPの二量体化を原因とする細胞内オルガネラの異常構造の形成とその予防策
Published: 2015-09-20
© 2015 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2015 公益社団法人日本農芸化学会
Green fluorescent protein(GFP)は238アミノ酸からなる比較的大きな蛍光タグである.そのため,目的タンパク質との融合によってそのタンパク質の機能を損なう,また本来とは異なる位置へ細胞内局在が変化する可能性があるなどの危険性が一般に認知されている.したがって,使用に際してはGFPを連結しても本来の機能が保たれていること,また抗体染色などほかの方法によって対象分子の局在を確認することでデータの保証を得ることが一般に求められる.
本稿でわれわれが紹介する例は,GFP自体の性質に由来するアーティファクトの事例であり,この検証過程を完全にクリアしたうえで直面した課題であった.結論から言えば,GFPは弱い二量体を形成する性質をもっており,膜タンパク質を標識した場合は,その力はオルガネラ同士を接着するトリガーとなりうる.本稿ではGFP二量体化によりどのような人為的構造が生じるのか,またその対策について事例に基づいて解説する.一般に使用されているGFPやその類縁体の多くは二量体化サイトを有しているため,GFP標識をされている方,これから予定されている方は是非お読みいただきたい.
まず,この現象の発見に至った経緯について紹介したい.われわれは植物の液胞膜に局在するプロトンポンプH+-pyrophosphatase(VHP1)を研究対象としており,モデル植物シロイヌナズナのVHP1タンパク質にGFPを融合して可視化させた(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014)..その際,N,C末端へのGFP融合では良好な蛍光分子を得られなかったため,VHP1の中の配列保存性の低い細胞質側ループにGFPを挿入した.VHP1構造への影響を緩和させるため,GFPのN末端に柔らかい10アミノ酸からなる配列[Gly4Ser]2をリンカーとして導入した.GFPのC末端には構造の定まらない8残基の配列があり(2)2) G. N. Phillips Jr.: Curr. Opin. Struct. Biol., 7, 821 (1997).,リンカーとして捉えることができるため手を加えていない.本稿において重要となる点は,VHP1内部に導入されたGFPは細胞質側に配向し,比較的自由に動くことができることである.
こうして作られたVHP1-GFPをgenomic promoter下でシロイヌナズナに導入した.生化学的な試験によりVHP1-GFPは活性を有していることを確認し,vhp1-1遺伝子欠損株の表現型を相補することも確認した.そしてショ糖密度勾配法により内在性のVHP1とVHP1-GFPが共局在することも確認した.この時点で蛍光融合タンパク質の品質確認としては十分なはずであった.
肝心のVHP1-GFPの蛍光像であるが,共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)により液胞膜が光ることを確認すると同時に,奇妙な球状の液胞内構造が強い蛍光を発していることを見つけた(図1A図1■2種類のバルブ構造).文献を調べると,液胞膜局在型のアクアポリンやSNAREなどのGFP・YFP融合タンパク質を用いた観察でも同一と見られる構造が複数報告されており(3~11)3) C. Saito, T. Ueda, H. Abe, Y. Wada, T. Kuroiwa, A. Hisada, M. Furuya & A. Nakano: Plant J., 29, 245 (2002).4) C. Saito, T. Uemura, C. Awai, M. Tominaga, K. Ebine, J. Ito, T. Ueda, H. Abe, M. T. Morita, M. Tasaka et al.: Plant J., 68, 64 (2011).5) T. Uemura, S. H. Yoshimura, K. Takeyasu & M. H. Sato: Genes Cells, 7, 743 (2002).6) N. M. Escobar, S. Haupt, G. Thow, P. Boevink, S. Chapman & K. Oparka: Plant Cell, 15, 1507 (2003).7) G. R. Hicks, E. Rojo, S. Hong, D. G. Carter & N. V. Raikhel: Plant Physiol., 134, 1227 (2004).8) D. Reisen, F. Marty & N. Leborgne-Castel: BMC Plant Biol., 5, 13 (2005).9) P. R. Hunter, C. P. Craddock, S. Di Benedetto, L. M. Roberts & L. Frigerio: Plant Physiol., 145, 1371 (2007).10) A. Beebo, D. Thomas, C. Der, L. Sanchez, N. Leborgne-Castel, F. Marty, B. Schoefs & K. Bouhidel: Plant Mol. Biol., 70, 193 (2009).11) S. Gattolin, M. Sorieul, P. R. Hunter, R. H. Khonsari & L. Frigerio: BMC Plant Biol., 9, 133 (2009).,バルブ構造と命名されていた.
バルブ構造は液胞内に存在する二重膜構造であり,内部も液胞である.GFPにより液胞膜の3倍以上の蛍光を示すA-bulb(A, B)は通常型のGFPを導入した株でしか見られない人為的構造である.それに対し,2倍程度の蛍光を示すN-bulb(C, D)は野生株でも見られる天然構造である.VHP1-(m)GFP株の4日齢子葉表皮細胞をCLSMで撮影し,ライン上の蛍光強度をグラフで示した.
バルブ構造とは,液胞膜に付着した状態で存在する球状の二重膜構造である.液胞膜2枚分よりも強い蛍光を有する場合があり,またGFPを付加した液胞膜タンパク質の種類によって局在するものとしないものがあったため,特定の液胞膜タンパク質が蓄積する新規膜ドメインと考えられていた.われわれのVHP1-GFP株では,単層の液胞膜と比較して3倍から5倍もの強い蛍光を有するバルブ構造が多数見られた(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014).(図1A, B図1■2種類のバルブ構造).先に結論を述べると,この「蛍光の強いバルブ構造」が本稿で問題となる人為的構造の一つであり,Artificial-bulb(A-bulb)と命名した.そしてややこしいことに蛍光が液胞膜の2倍程度しかないバルブ構造(図1C, D図1■2種類のバルブ構造)も存在し,そちらは天然構造であることが判明し,Native-bulb(N-bulb)と命名した.その理由について,これより解説する.
われわれは蛍光の強いバルブ構造(A-bulb)がVHP1-GFPの発現量の高い組織で多いことに注目した.そこでVHP1-GFP発現量の異なる複数の形質転換株の間で蛍光強度が3倍以上のバルブ構造の数を比較すると,VHP1-GFP発現量とバルブ構造の数に明確な相関が見られた.しかし,内在性のVHP1を発現しないvhp1-1遺伝子破壊株にVHP1-GFPを導入したラインでもバルブ構造が多数検出されたことから,内在性VHP1の有無はバルブ構造の数に影響しないことに気づいた.つまり,蛍光の強いバルブ構造はGFP融合タンパク質によって誘導される人為的な構造であると推測した(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014)..
加えて,小さい液胞がたくさん存在しこれから融合を行うはずの若い細胞では,液胞同士が強い蛍光をもつ接着構造により凝集したものが見られた(図2A図2■GFPによる液胞の人為的接着).タイムラプス観察により,この液胞膜の接着構造が液胞融合中に折りたたまれることで球状構造に変化したことから,この接着構造が蛍光の強いバルブ構造の前駆体であることがわかった(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014)..そのことから,隣り合う小さい液胞同士が,GFPを介して人為的に接着されていることを予想した.
非常に若い細胞では多数の小さい液胞が存在しているが,通常のGFPを導入した株では複数の液胞が互いに接着し,凝集していた(A).GFPを単量体化することでこの現象は解消された(B).写真の下に,液胞および液胞膜間の模式図を示した.サンプルはVHP1-(m)GFP,吸水5時間後の種子アリューロン層をCLSMで撮影した.
GFPが弱い二量体(解離定数Kd=0.11 mM)(12)12) D. A. Zacharias, J. D. Violin, A. C. Newton & R. Y. Tsien: Science, 296, 913 (2002).を形成することは一般的に知られており,結晶構造解析においても逆平行の二量体の構造が解かれている(13)13) F. Yang, L. G. Moss & G. N. Phillips Jr.: Nat. Biotechnol., 14, 1246 (1996)..われわれはVHP1の細胞質側にアンカーされたGFPが,向かい合う膜間で二量体を形成することで膜同士を接着するというモデルを立てた(図3図3■GFPによる人為的膜接着モデル).
GFPは通常,単量体として扱われる.しかしFRET(fluorescence resonance energy transfer)解析を行う研究者の間では特別な注意が払われている(14)14) 宮脇敦史:“細胞工学別冊蛍光イメージング革命”,秀潤社,2010, p. 52..その根拠はノーベル賞受賞者のRoger Y. Tsienのチームから2002年に報告された論文(12)12) D. A. Zacharias, J. D. Violin, A. C. Newton & R. Y. Tsien: Science, 296, 913 (2002).であり,膜上分子間でのFRETにおいて,CFPとYFPの間で起きる二量体化が擬陽性シグナルの原因になるという報告である.解決策も提示されている.すなわち,GFP二量体の結晶構造(13)13) F. Yang, L. G. Moss & G. N. Phillips Jr.: Nat. Biotechnol., 14, 1246 (1996).を参考に二量体形成を阻害するような変異,具体的には分子間の疎水性結合にかかわる206番目のAlaをLysに置換したmGFPが特に単量体化変異として優れていて,かつ蛍光特性が維持されると報告されている(12)12) D. A. Zacharias, J. D. Violin, A. C. Newton & R. Y. Tsien: Science, 296, 913 (2002)..
そこで,VHP1-GFPにA206K変異を入れたVHP1-mGFPを新たに作製したところ,その形質転換株では蛍光の強いバルブ構造や接着構造が全く見られなかった(図1C, D, 2B図1■2種類のバルブ構造図2■GFPによる液胞の人為的接着)(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014)..つまり,これらの構造はアーティファクトであり,その原因はGFPの二量体化にあることを証明できた.
バルブ構造は,2002年に報告された際,芽生えの子葉細胞の透過型電子顕微鏡(TEM)解析により野生株にも存在することが確認されている(3)3) C. Saito, T. Ueda, H. Abe, Y. Wada, T. Kuroiwa, A. Hisada, M. Furuya & A. Nakano: Plant J., 29, 245 (2002)..このことは,植物細胞にはNative型のバルブ構造(N-bulb)が存在することを示している.われわれも根端のTEM解析によりバルブ構造を野生株から検出しており,またVHP1-mGFP株のCLSM解析で蛍光の弱い(液胞膜2枚分)バルブ構造の存在を確認した(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014).(図1C, D図1■2種類のバルブ構造).蛍光強度が3倍以上のA-bulbは前述のとおりGFPの発現量に依存して増加するのに対し,VHP1-mGFPで見られた蛍光の弱いバルブ構造には,mGFP発現量の異なるライン間で発生頻度に差が見られないことから,これは野生型で見られたN-bulbと同じものであると判断している.
A-bulbの存在がいままで疑問視されてこなかった原因は,よく似たN-bulbの存在だろう.両者の形態的な違いの一つは膜間距離である.VHP1-GFP発現株のバルブ構造の膜間距離は野生株より15 nm前後狭い傾向があることをTEM解析により明らかにしており,図3図3■GFPによる人為的膜接着モデルのモデルで予想した二重膜の厚さにおおむね一致する(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014)..このことに関してはわれわれ以外からも同様の報告がある(3)3) C. Saito, T. Ueda, H. Abe, Y. Wada, T. Kuroiwa, A. Hisada, M. Furuya & A. Nakano: Plant J., 29, 245 (2002)..もう一つはいままで示したとおり蛍光強度の違い(図1図1■2種類のバルブ構造)である.A-bulbの蛍光強度が高い理由は明らかではないが,GFP二量体化によるタンパク質の蓄積あるいは蛍光特性の変化が原因であると予想している(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014)..
なお,われわれは,N-bulbをIntra Vacuolar SPherical structure(IVSP)という新規構造として命名し(1)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014).,「バルブ構造はアーティファクトである」と断ずる記述をしていたが,バルブ構造という名は先行研究者によって野生株で発見された球状構造を含んで命名されていたことから(3)3) C. Saito, T. Ueda, H. Abe, Y. Wada, T. Kuroiwa, A. Hisada, M. Furuya & A. Nakano: Plant J., 29, 245 (2002).,バルブ構造すべてをアーティファクトと呼ぶことは適切ではなく,バルブ構造という名も尊重することとし,ここに謹んで明記したい.
なぜ,いままで問題にされてこなかったのだろうか? 2003年の時点で,ERなどでGFPがオルガネラの異常構造を誘導し,それらがmGFPの導入によって解消されることが報告されていた(15,16)15) E. L. Snapp, R. S. Hegde, M. Francolini, F. Lombardo, S. Colombo, E. Pedrazzini, N. Borgese & J. Lippincott-Schwartz: J. Cell Biol., 163, 257 (2003).16) C. S. Lisenbee, S. K. Karnik & R. N. Trelease: Traffic, 4, 491 (2003)..したがって,この話題は実はあまり新規性はないはずである.しかし,10年以上経過しても二量体化サイトを有するGFPとその類縁体を使用した研究が大多数を占めるのが現状である.われわれの報告は,液胞という巨大なオルガネラがGFPを介して接着している様子が直感的にわかる画像を提示しており(図2A図2■GFPによる液胞の人為的接着),GFPによる人為的な構造の誘導という危険性を周知するために重要であると考えている.
ある意味で異様な構造を作る力がありながら,GFP利用のリスクが見過ごされてきていた理由は,二量体化に働く弱い力という認識だろう.DsRedなどサンゴ由来の蛍光タンパク質はタイトな四量体が多く,融合タンパク質が凝集しやすいために単量体化の必要が明白であり,その結果mRFP1などが作出,実用化されている(14)14) 宮脇敦史:“細胞工学別冊蛍光イメージング革命”,秀潤社,2010, p. 52..それと比較して,GFPは基本的には単量体であり,おそらく条件が複数そろったときでないとA-bulbのようなアーティファクトを作らない.
膜の人為的接着が発生する条件として,第一に十分なタンパク質量,第二に膜同士が接触するイベント,第三に融合タンパク質の立体障害の有無,を予想している.われわれのVHP1-GFPで見られるA-bulbは,ほかの論文(3~11)3) C. Saito, T. Ueda, H. Abe, Y. Wada, T. Kuroiwa, A. Hisada, M. Furuya & A. Nakano: Plant J., 29, 245 (2002).4) C. Saito, T. Uemura, C. Awai, M. Tominaga, K. Ebine, J. Ito, T. Ueda, H. Abe, M. T. Morita, M. Tasaka et al.: Plant J., 68, 64 (2011).5) T. Uemura, S. H. Yoshimura, K. Takeyasu & M. H. Sato: Genes Cells, 7, 743 (2002).6) N. M. Escobar, S. Haupt, G. Thow, P. Boevink, S. Chapman & K. Oparka: Plant Cell, 15, 1507 (2003).7) G. R. Hicks, E. Rojo, S. Hong, D. G. Carter & N. V. Raikhel: Plant Physiol., 134, 1227 (2004).8) D. Reisen, F. Marty & N. Leborgne-Castel: BMC Plant Biol., 5, 13 (2005).9) P. R. Hunter, C. P. Craddock, S. Di Benedetto, L. M. Roberts & L. Frigerio: Plant Physiol., 145, 1371 (2007).10) A. Beebo, D. Thomas, C. Der, L. Sanchez, N. Leborgne-Castel, F. Marty, B. Schoefs & K. Bouhidel: Plant Mol. Biol., 70, 193 (2009).11) S. Gattolin, M. Sorieul, P. R. Hunter, R. H. Khonsari & L. Frigerio: BMC Plant Biol., 9, 133 (2009).で報告されているバルブ構造よりも強固な印象があるが,上記の条件と照らし合わせてみると,まず,VHP1は多量に存在する液胞膜タンパク質(液胞膜タンパク質量の約10%)である(17)17) M. Maeshima: Biochim. Biophys. Acta, 1465, 37 (2000)..次に,液胞の周りには細胞骨格が存在しているが(18)18) T. Higaki, N. Kutsuna, E. Okubo, T. Sano & S. Hasezawa: Plant Cell Physiol., 47, 839 (2006).,若い細胞においては多数の小さい液胞が盛んに融合しており液胞膜間の接触は頻繁に起き,そしてVHP1はこのステージで特に発現量が高いという特徴をもつ(1,19)1) S. Segami, S. Makino, A. Miyake, M. Asaoka & M. Maeshima: Plant Cell, 26, 3416 (2014).19) Y. Nakanishi & M. Maeshima: Plant Physiol., 116, 589 (1998)..そして,VHP1-GFPは前述のとおりリンカーによりGFPはかなり自由に動けるはずであり二量体構造を形成しやすい(図3図3■GFPによる人為的膜接着モデル).つまり,VHP1-GFPは膜間でのGFP二量体を形成しやすい3条件をそろえているため,明確な変化が現れたが,これはまれなケースなのかもしれない.
このような目立つ構造が生じた場合,その実験結果は意味のない結果であると判断できるが,真に恐ろしいのは,目には見えないけれど実は目的分子やオルガネラの挙動に影響があるケースであり,潜在的な実験リスクはかなり大きいかもしれない.GFPとその類縁体については,たった1残基の置換,A206Kの導入のみでこの問題を解決できる.蛍光強度などの値にはほとんど変化がなく(12)12) D. A. Zacharias, J. D. Violin, A. C. Newton & R. Y. Tsien: Science, 296, 913 (2002).,使い勝手は元のものと変わらない.今後は,すべてのコンストラクトに対して単量体化分子を使うことを強く勧めたい.植物の研究者に関しては,島根大学の中川強教授が作出したpGWB vectorシリーズ(20)20) T. Nakagawa, T. Suzuki, S. Murata, S. Nakamura, T. Hino, K. Maeo, R. Tabata, T. Kawai, K. Tanaka, Y. Niwa et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 2095 (2007).にA206K変異を導入したものをいくつか作製しており,分与することが可能である(関心のある研究者はご連絡いただきたい).
問題はオワンクラゲ以外の蛍光タンパク質である.事実,TagRFP-Vam3を導入した植物において蛍光強度の高いバルブ構造が報告されている(21)21) C. Saito, T. Uemura, C. Awai, T. Ueda, H. Abe & A. Nakano: Plant Signal. Behav., 6, 1914 (2011)..TagRFPはサンゴイソギンチャクから単離された蛍光タンパク質を改変して作出されており,元々は強い二量体・弱い四量体形成能をもっていた.複数のアミノ酸変異により単量体化されており,ゲルろ過により10 mg/mL(約0.4 mM)の濃度でも単量体のままであると報告されている(22)22) E. M. Merzlyak, J. Goedhart, D. Shcherbo, M. E. Bulina, A. S. Shcheglov, A. F. Fradkov, A. Gaintzeva, K. A. Lukyanov, S. Lukyanov, T. W. Gadella et al.: Nat. Methods, 4, 555 (2007)..ただし,その結晶構造は四量体であり(23)23) O. M. Subach, V. N. Malashkevich, W. D. Zencheck, K. S. Morozova, K. D. Piatkevich, S. C. Almo & V. V. Verkhusha: Chem. Biol., 17, 333 (2010).,高濃度では依然として多量体を形成する可能性は否めない.
つまり,単量体として出回っているものにもリスクのある分子が混じっている可能性がある.膜に固定された状態では分子配向が固定され,二量体が形成される分子面での衝突確率が上昇すること,および局所化されることによる高密度化により,可溶性の状態よりはるかに二量体を形成しやすくなると考えられる.つまり,膜の状態で評価する基準が必要である.われわれは,A-bulbが形成されるかどうか,ということを指標として評価する系を開発中である.
Reference
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