Kagaku to Seibutsu 54(2): 85-93 (2016)
解説
アーキアにおける補酵素A(coenzyme A)の生合成機構
Mechanisms of Coenzyme A Biosynthesis in the Archaea
Published: 2016-01-20
アーキアは真核生物やバクテリアとは区別される第3のドメインを構成し,真核生物やバクテリアには見られない数多くの生命機能・生命機構を有する.本稿では全生物に共通して存在する補酵素Aに焦点を当て,アーキアにおけるその生合成経路や制御機構の興味深い特徴について,バクテリアや真核生物のものとの違いを中心に紹介する.
© 2016 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2016 公益社団法人日本農芸化学会
1977年にWoeseとFoxは16S rRNAの構造に基づいた生物の分類を進め,真核生物やバクテリアとは区別される第3の生物群の存在を提唱した(1)1) C. R. Woese & G. E. Fox: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5088 (1977)..当時の解析ではメタン生成菌のみがその構成員として認識されていたが(1)1) C. R. Woese & G. E. Fox: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5088 (1977).,その後,多数の好塩菌(2)2) L. J. Magrum, K. R. Luehrsen & C. R. Woese: J. Mol. Evol., 11, 1 (1978).や超好熱菌(3)3) C. R. Woese, J. Maniloff & L. B. Zablen: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 494 (1980).も含まれることがわかり(4, 5)4) G. E. Fox, E. Stackebrandt, R. B. Hespell, J. Gibson, J. Maniloff, T. A. Dyer, R. S. Wolfe, W. E. Balch, R. S. Tanner, L. J. Magrum et al.: Science, 209, 457 (1980).5) C. R. Woese, L. J. Magrum & G. E. Fox: J. Mol. Evol., 11, 245 (1978).,現在ではアーキアと呼ばれる(6)6) C. R. Woese, O. Kandler & M. L. Wheelis: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 4576 (1990)..いままでに分離・解析されてきたアーキアは,高塩濃度や高温などに代表される極限環境に生息するものが多く知られているが,生態学的研究からアーキアは地球上のあらゆる環境に存在し,アンモニア酸化などグローバルな物質循環に深くかかわっていることが示唆されている(7, 8)7) C. A. Francis, J. M. Beman & M. M. Kuypers: ISME J., 1, 19 (2007).8) S. Leininger, T. Urich, M. Schloter, L. Schwark, J. Qi, G. W. Nicol, J. I. Prosser, S. C. Schuster & C. Schleper: Nature, 442, 806 (2006)..アーキアを対象とした研究は,それらに対する認識の遅れやそれらの取り扱いの煩雑さから,バクテリアや真核生物と比べて大きく遅れをとっているのが現状であるが,近年ではゲノム情報の蓄積も加わり,さまざまな生命機能においてアーキアが真核生物やバクテリアとは異なる戦略をとっていることが示唆されており,注目を集めている.
われわれは超好熱性アーキアの1種であるThermococcus kodakarensis(9, 10)9) H. Atomi, T. Fukui, T. Kanai, M. Morikawa & T. Imanaka: Archaea, 1, 263 (2004).10) M. Morikawa, Y. Izawa, N. Rashid, T. Hoaki & T. Imanaka: Appl. Environ. Microbiol., 60, 4559 (1994).を対象に,主にその代謝や遺伝子発現制御に興味をもって研究を進めている.既にゲノム解析を終えており,本菌ゲノム上に2,306個のopen reading framesの存在が推定されている(11)11) T. Fukui, H. Atomi, T. Kanai, R. Matsumi, S. Fujiwara & T. Imanaka: Genome Res., 15, 352 (2005)..またわれわれは,超好熱性アーキアでは報告例が限られている遺伝子操作系の確立にも成功している(12~14)12) R. Matsumi, K. Manabe, T. Fukui, H. Atomi & T. Imanaka: J. Bacteriol., 189, 2683 (2007).14) T. Sato, T. Fukui, H. Atomi & T. Imanaka: Appl. Environ. Microbiol., 71, 3889 (2005).ことから,個々の遺伝子に対する生化学的な解析に加え,遺伝学的な解析も行えるので,in vivoにおける機能検証が可能となっている.このように,T. kodakarensisはアーキアを研究するうえで格好の研究材料であると考えられる.
本稿では,T. kodakarensisを対象としたアーキアにおける補酵素A(coenzyme A; CoA)の生合成機構に関する研究について紹介する.
CoAはすべての生物が利用する重要な補酵素であり,1945年にLipmannらによって発見された(15~17)15) N. Kresge, R. D. Simoni & R. L. Hill: J. Biol. Chem., 280, e18 (2005).16) F. Lipmann: J. Biol. Chem., 160, 173 (1945).17) F. Lipmann & N. O. Kaplan: J. Biol. Chem., 162, 743 (1946)..CoAはその分子末端にチオール基を有し,これがさまざまなカルボニル化合物とチオエステル結合を形成してアシルCoAとなることで,カルボニル基の反応性を上昇させる.細胞内ではTCA回路や脂肪酸の合成・分解などさまざまな代謝反応に関与しており,特に酢酸と結合したアセチルCoAやコハク酸と結合したスクシニルCoAなどがよく知られている.
CoA分子はパントテン酸(pantothenate),ATP,そしてL-システイン(L-cysteine)に由来する基本骨格から構成されている(図1図1■補酵素A(CoA)の構造).CoAの生合成については,これまでバクテリアや真核生物で詳細に研究が進められ,アミノ酸の一種であるL-バリン(L-valine)の生合成の前駆体である2-オキソイソ吉草酸(2-oxoisovalerate)から8段階の酵素反応で合成されることが知られている(18~20)18) U. Genschel: Mol. Biol. Evol., 21, 1242 (2004).19) R. Leonardi, Y. M. Zhang, C. O. Rock & S. Jackowski: Prog. Lipid Res., 44, 125 (2005).20) C. Spry, K. Kirk & K. J. Saliba: FEMS Microbiol. Rev., 32, 56 (2008).(図2図2■バクテリアや真核生物におけるCoA生合成経路).この生合成経路では,まずケトパントイン酸ヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(ketopantoate hydroxymethyltransferase; KPHMT)が2-オキソイソ吉草酸にヒドロキシメチル基を与える.この反応では,C1ドナーとしてN5, N10-メチレンテトラヒドロ葉酸(N5, N10-methylenetetrahydrofolate)が基質に用いられると考えられている.この反応によって生成した2-オキソパントイン酸(2-oxopantoate)は,続いてケトパントイン酸レダクターゼ(ketopantoate reductase; KPR)によりNADPH依存的にパントイン酸(pantoate)に還元される.そしてパントイン酸は,パントテン酸シンセターゼ(pantothenate synthetase; PS)によるATP依存的なβ-アラニン(β-alanine)との縮合反応を経て,パントテン酸(pantothenate)が合成される.ヒトを含めた動物および一部の寄生性バクテリアなどでは,ここまでの3つの酵素が存在しない.そのためパントテン酸のde novo合成はできず,これらの生物は外来のパントテン酸を利用している.ヒトにおいてパントテン酸はビタミンB5として知られており,食物から必要量を摂取する必要があるが,通常の食生活で十分量を摂取できるため,その欠乏症はあまり知られていない(21)21) World Health Organization: In “Vitamin and mineral requirements in human nutrition (Second edition),” pp. 180–182, 2004..
酵素の表記は以下のとおりである.KPHMT: ketopantoate hydroxymethyltransferase, KPR: ketopantoate reductase, PS: pantothenate synthetase, PanK: pantothenate kinase, PPCS: phosphopantothenoylcysteine synthetase, PPCDC: phosphopantothenoylcysteine decarboxylase, PPAT: phosphopantetheine adenylyltransferase, DPCK: dephospho-CoA kinase.
以上の3ステップからなる一連の酵素反応をパントテン酸生合成経路,その後の5つの反応をCoA生合成経路と区別することもあるが,本稿ではすべての反応を総じてCoA生合成経路と呼ぶことにする.さて,合成あるいは細胞外から取り込まれたパントテン酸は,次にパントテン酸キナーゼ(pantothenate kinase; PanK)によるリン酸化を受け4′-ホスホパントテン酸(4′-phosphopantothenate)となり,続いてホスホパントテノイルシステインシンセターゼ(phosphopantothenoylcysteine synthetase; PPCS)によってシステインと縮合し,そしてホスホパントテノイルシステインデカルボキシラーゼ(phosphopantothenoylcysteine decarboxylase; PPCDC)によりシステイン由来のカルボキシ基が取り除かれ,4′-ホスホパンテテイン(4′-phosphopantetheine)となる.さらに4′-ホスホパンテテインはホスホパンテテインアデニリルトランスフェラーゼ(phosphopantetheine adenylyltransferase; PPAT)によってアデニリル基が付与されてデホスホCoA(dephospho-CoA)となり,最後にデホスホCoAキナーゼ(dephospho-CoA kinase; DPCK)によるリン酸化を受けてCoAが完成する.
これまで述べたように,バクテリアや真核生物において,CoAは2-オキソイソ吉草酸から8段階の酵素反応によって合成される.しかし,ここでアーキアのゲノムに注目すると,T. kodakarensisを含むほぼすべてのアーキアにはPSおよびPanKのホモログ遺伝子が存在しないことがわかった.すなわち,アーキアではパントイン酸から4′-ホスホパントテン酸を合成する機構が不明であった(18)18) U. Genschel: Mol. Biol. Evol., 21, 1242 (2004)..
われわれは,アーキアにおいて新規な構造をもったPanKが存在する可能性を考え,比較ゲノム的手法による探索を行った(22)22) Y. Yokooji, H. Tomita, H. Atomi & T. Imanaka: J. Biol. Chem., 284, 28137 (2009).(図3図3■比較ゲノム的手法によるT. kodakarensisのパントテン酸キナーゼ(pantothenate kinase)およびホスホパントテン酸シンセターゼ(phosphopantothenate synthetase)の探索).最初にT. kodakarensisがもつすべてのタンパク質のうち,その一次構造から“kinase”とアノテーションされているものを探索したところ,51個が見つかった.そのうち,まず既存のキナーゼと高い相同性を示すものを除外することにより機能が未知であるものに候補を絞ると,20個となった.さらに,PSやPanKはほぼすべてのアーキアに存在しないことから,われわれがT. kodakarensis内で探している遺伝子のホモログはアーキアに広く保存されていると考えた.そこで,アーキアに広く分布する遺伝子に限定したところ,10個にまで候補は絞られた.最後に真核生物やバクテリアには既存のPanKが存在することからわれわれが求めている遺伝子はこれらの生物には必要ないと考えた.アーキアだけに存在する遺伝子を選抜すると,最終的に4個の「推定キナーゼ遺伝子」として,TK0939, TK1473, TK2141, TK2242だけを抽出することができた.
次にこれら4個のキナーゼの機能を調べるため,それぞれの組換え型タンパク質の調製を行った.各遺伝子を大腸菌内で発現させたところ,TK1473産物とTK2242産物のみが可溶性であった.しかしながら,両タンパク質はパントテン酸およびATPと混和しても4′-ホスホパントテン酸を与えず,これらはPanK活性を示さないことがわかった.続いてTK0939とTK2141の可溶性タンパク質を得るため,これらの遺伝子をT. kodakarensisの細胞内で発現させた.本菌において恒常的に高発現されているcell-surface glycoprotein(csg)遺伝子のプロモーター配列をTK0939とTK2141の上流に配置した高発現カセットをそれぞれ作製し,これらをT. kodakarensisのゲノムに挿入した.作製された高発現株から目的のタンパク質を精製してPanK活性を検証したところ,TK2141タンパク質はPanK活性を示し,本遺伝子がT. kodakarensisにおけるPanKであることが示唆された.
しかしながら,TK2141タンパク質が示したPanKの酵素活性は非常に低いものであった.そこでわれわれは,PSとPanKが担う酵素反応に着目した.これら2つの酵素はそれぞれ縮合反応とリン酸化反応を触媒するが,これらの反応はパントイン酸分子上の異なる部位で起こる反応であった.すなわち,縮合反応とリン酸化反応はこの順番で起こる必要性はなく,その順番が逆であってもCoAの合成は可能であることに気がついた.このことを踏まえ,先にパントイン酸のリン酸化が起こる可能性を検証するため,TK2141タンパク質のパントイン酸キナーゼ(pantoate kinase)活性を調べた.その結果,TK2141タンパク質はパントイン酸に対しパントテン酸と比べてはるかに高いキナーゼ活性を示したことから,TK2141が新規な酵素パントイン酸キナーゼ(PoK)をコードすることが強く示唆された(22)22) Y. Yokooji, H. Tomita, H. Atomi & T. Imanaka: J. Biol. Chem., 284, 28137 (2009)..
以上のように,T. kodakarensisにおけるパントイン酸キナーゼが見つかったことおよびT. kodakarensisゲノム上にバクテリアや真核生物のPPCSホモログが存在することから,PoK反応の生成物である4-ホスホパントイン酸(4-phosphopantoate)とβ-アラニンの縮合反応を触媒するホスホパントテン酸シンセターゼ(phosphopantothenate synthetase; PPS)の存在が予想された.そこでTK2141と同様の分布パターンを示し,かつ機能が未同定である遺伝子を探索した.その結果,“Uncharacterized protein conserved in archaea”としてアノテーションされていたTK1686遺伝子が候補として浮かび上がった.そこで組換え型TK1686タンパク質を,大腸菌を用いて調製し,その酵素活性を調べた結果,TK1686はPS活性を示さなかった一方で,明確なPPS活性を示すことがわかった.このことから,本酵素が新規酵素PPSであることが明らかになった(22)22) Y. Yokooji, H. Tomita, H. Atomi & T. Imanaka: J. Biol. Chem., 284, 28137 (2009)..
このように,T. kodakarensisはバクテリアや真核生物が利用するPSやPanKではなく,これまで全く知られていなかったPoKおよびPPSという2つの酵素によって4′-ホスホパントテン酸を合成することが明らかになった(図4図4■パントイン酸から4′-ホスホパントテン酸までの変換経路).さらにこれらのホモログ遺伝子はPSとPanKをもたないほぼすべてのアーキアのゲノム上にも存在することから,両酵素はT. kodakarensisのみならず,アーキア全体にわたって幅広く使われていることが示唆された.このことより,従来CoAの生合成に使われると普遍的に考えられていたパントテン酸が,ほとんどのアーキアでは使われていないことが明らかとなった.メタン生成アーキアの1種Methanospirillum hungateiにおいてもPoKとPPSの各ホモログがそれぞれPoKおよびPPS活性を示すことが報告されている(23)23) H. Katoh, H. Tamaki, Y. Tokutake, S. Hanada & S. Chohnan: J. Biosci. Bioeng., 115, 372 (2013)..一方,Thermoplasmatales目に属する一部のアーキアはPoKホモログをもたず,代わりに従来のPanKホモログを保有している.特にPicrophilus torridus由来の本タンパク質はPanK活性を示すことが報告されている(24)24) M. Takagi, H. Tamaki, Y. Miyamoto, R. Leonardi, S. Hanada, S. Jackowski & S. Chohnan: J. Bacteriol., 192, 233 (2010)..なぜThermoplasmatales目アーキアのみが異なる生合成機構を利用しているのかは不明であるが,生合成経路の進化を考えるうえで非常に興味深い.
われわれが発見したPoKは,これまで知られていなかったパントイン酸のリン酸化反応を触媒する酵素である.そのため,われわれはPoKの酵素学的解析および点変異導入による活性中心のアミノ酸残基の同定を進めた(25)25) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 194, 5434 (2012)..
組換え型PoKタンパク質を用いた速度論的解析の結果,PoKはATPに対してはMichaelis–Menten型の挙動を示した一方で,パントイン酸による基質阻害を受けることがわかった.加えて,4-ホスホパントイン酸による生成物阻害を受けることも明らかになった(26)26) T. Ishibashi, H. Tomita, Y. Yokooji, T. Morikita, B. Watanabe, J. Hiratake, A. Kishimoto, A. Kita, K. Miki, T. Imanaka et al.: Extremophiles, 16, 819 (2012)..またPoKは,ATPのみならずGTPやUTP, CTPもリン酸基供与体として利用できたことから,ヌクレオチド特異性の低いキナーゼであることを発見した.
次にさまざまなアーキアがもつPoKタンパク質の一次構造を比較し,反応性が高く,かつ広く保存されている7個のアミノ酸残基を選抜した.そしてこれらをそれぞれAla残基に置換した変異型PoKタンパク質を調製し,活性測定を行った.その結果,Ser104Ala, Glu134AlaそしてAsp143Alaの3種の変異体は全く活性を示さなかったため,これらのアミノ酸残基はPoKの触媒活性に必須であることが示唆された.一方,活性を示した4種類の変異型タンパク質に対して速度論的解析を行った結果,Ser28, His131およびThr186はパントイン酸の認識,またArg155はパントイン酸およびATPの両基質の認識にそれぞれかかわることが明らかとなった.
もう一つの新規酵素であるPPSに関しては,速度論的解析の結果,β-アラニンに対してはMichaelis–Menten型の挙動を示した一方で,4-ホスホパントイン酸およびATPによる基質阻害を受けることがわかった(26)26) T. Ishibashi, H. Tomita, Y. Yokooji, T. Morikita, B. Watanabe, J. Hiratake, A. Kishimoto, A. Kita, K. Miki, T. Imanaka et al.: Extremophiles, 16, 819 (2012)..またATP, GTP, UTPそしてCTPを用いたリン酸供与体についての検証を行ったところ,PPSはATPのみを利用することがわかった.アミノ基供与体に関しては,β-アラニンよりも炭素鎖が一つ分長いγ-アミノ酪酸(γ-aminobutyrate; GABA)や一つ分短いグリシンなどについて検証を行ったが,PPSはβ-アラニンのみを認識することが判明した.これらの結果より,PPSはATPおよびβ-アラニンに対する厳密な基質特異性を示すことが明らかとなった.
さて,1分子のCoAを合成するためには,各1分子の2-オキソイソ吉草酸,β-アラニン,システインおよび5分子のATPやNADPHなど,多大な材料やエネルギーを必要とする.そのため,どの生物においても,過剰なCoAの生合成を回避するための制御機構が備わっていると予想される.
この制御機構について,これまでバクテリアや真核生物では研究が進められてきた.なかでも大腸菌に関する研究は最も精力的に行われ,大腸菌のPanKにはCoAが結合することがわかっている(27, 28)27) W. J. Song & S. Jackowski: J. Biol. Chem., 269, 27051 (1994).28) M. Yun, C. G. Park, J. Y. Kim, C. O. Rock, S. Jackowski & H. W. Park: J. Biol. Chem., 275, 28093 (2000)..このCoA結合サイトは,PanKの基質の一つであるATPの結合サイトと重複しており,その結果PanKはCoAによる競争的なフィードバック阻害を受ける(27, 28)27) W. J. Song & S. Jackowski: J. Biol. Chem., 269, 27051 (1994).28) M. Yun, C. G. Park, J. Y. Kim, C. O. Rock, S. Jackowski & H. W. Park: J. Biol. Chem., 275, 28093 (2000)..この阻害はとても強力で,μMオーダーのCoA濃度でPanKの酵素活性はその80%以上が失われる(29, 30)29) C. O. Rock, H. W. Park & S. Jackowski: J. Bacteriol., 185, 3410 (2003).30) D. S. Vallari, S. Jackowski & C. O. Rock: J. Biol. Chem., 262, 2468 (1987)..またこのPanKに対するフィードバック阻害機構は真核生物においても報告されており,Aspergillus nidulansやマウスのPanKもCoAあるいはアセチルCoAなどによるフィードバック阻害を受ける(31~34)31) R. B. Calder, R. S. Williams, G. Ramaswamy, C. O. Rock, E. Campbell, S. E. Unkles, J. R. Kinghorn & S. Jackowski: J. Biol. Chem., 274, 2014 (1999).32) R. Leonardi, Y. M. Zhang, A. Lykidis, C. O. Rock & S. Jackowski: FEBS Lett., 581, 4639 (2007).33) C. O. Rock, M. A. Karim, Y. M. Zhang & S. Jackowski: Gene, 291, 35 (2002).34) Y. M. Zhang, C. O. Rock & S. Jackowski: J. Biol. Chem., 280, 32594 (2005)..このような阻害機構によって,バクテリアや真核生物における細胞内CoA量は厳密に調節されている.一方で,上述のとおり多くのアーキアにおけるCoA生合成はPanKに依存しない.すなわち,バクテリアや真核生物においてCoA生合成の制御に重要な役割を果たすPanKが存在せず,アーキアにおける制御機構は未解明であった(22)22) Y. Yokooji, H. Tomita, H. Atomi & T. Imanaka: J. Biol. Chem., 284, 28137 (2009)..
この点を解明するため,われわれはまずアーキア特有の酵素であるPoKやPPSがバクテリアや真核生物のPanKと同様に,CoAなどによる阻害を受ける可能性を検証することにした(22, 25, 26)22) Y. Yokooji, H. Tomita, H. Atomi & T. Imanaka: J. Biol. Chem., 284, 28137 (2009).25) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 194, 5434 (2012).26) T. Ishibashi, H. Tomita, Y. Yokooji, T. Morikita, B. Watanabe, J. Hiratake, A. Kishimoto, A. Kita, K. Miki, T. Imanaka et al.: Extremophiles, 16, 819 (2012)..具体的には,PoKおよびPPSの組換え型タンパク質を使ったin vitro活性測定系に対してCoAやアセチルCoAを添加し,それらの酵素活性の変化を調べた.しかしながら,2 mMまでCoAなどを添加しても両酵素ともにその活性値に全く変化は見られず,これらの酵素はフィードバック阻害のターゲットではないことが示唆された(25, 26)25) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 194, 5434 (2012).26) T. Ishibashi, H. Tomita, Y. Yokooji, T. Morikita, B. Watanabe, J. Hiratake, A. Kishimoto, A. Kita, K. Miki, T. Imanaka et al.: Extremophiles, 16, 819 (2012)..
PoKやPPSがCoAによる阻害を受けなかったことから,われわれは新たな可能性として,CoA生合成経路の第1および第2ステップの反応を触媒するKPHMTおよびKPRの特性について解析を進め,これらの酵素がCoAやアセチルCoAにより阻害を受けるかどうかを検証することにした(35)35) H. Tomita, T. Imanaka & H. Atomi: Mol. Microbiol., 90, 307 (2013)..なお,これまでアーキア由来のKPHMTとKPRに関する解析例は報告されていなかった.
まずT. kodakarensisにおけるKPHMTの候補遺伝子を探索するため,すでに解析が報告されている大腸菌および結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のKPHMTと相同性を示すタンパク質を探索した.その結果,TK0363がコードするタンパク質が唯一既存のKPHMTと相同性を示したため,TK0363をT. kodakarensisのKPHMT遺伝子と予想し,その解析を行った.大腸菌内で調製したTK0363の組換え型タンパク質を用い,最初にKPHMT活性の有無を調べたところ,TK0363は確かに期待どおりの酵素活性をもつことが確認された.そこでCoA存在下での酵素活性を検証したが,PoKやPPSと同様に,その活性には全く変化が見られなかった.すなわち,KPHMTも阻害のターゲットではなかった(35)35) H. Tomita, T. Imanaka & H. Atomi: Mol. Microbiol., 90, 307 (2013)..
続いてKPRについて同様の検証を進めることにした.すでに解析された大腸菌および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のKPRと相同性を示す唯一のタンパク質をコードするTK1968を見いだし,これをT. kodakarensisのKPR遺伝子と予想した.まず遺伝学的にTK1968の役割を調べるため,TK1968遺伝子を破壊した株(ΔTK1968)を作製してその増殖特性を解析した.その結果,通常の培地においてΔTK1968株は宿主株と比べて顕著な生育遅延を示したが,培地にKPR反応の生成物であるパントイン酸を添加することによって,その生育は宿主株と同程度にまで回復した.このことから,TK1968はパントイン酸およびCoAの生合成に重要であることが明らかとなった.さらに生化学的解析を進めるため,TK1968の組換え型タンパク質を,大腸菌を用いて調製した.このタンパク質を用いて解析を行ったところ,TK1968タンパク質は2-オキソパントイン酸に対する厳密な特異性を示したことから,TK1968がKPRをコードすることが生化学的にも示唆された.また,既存のKPRはすべてNADPHを補酵素として利用するが,興味深いことにTK1968はNADHに対してより高い反応性を示した.また,CoAやアセチルCoAの添加の影響を調べたところ,TK1968の酵素活性は顕著に低下することがわかり(図5図5■T. kodakarensis由来ケトパントイン酸レダクターゼ(KPR)の活性に対するCoAおよびアセチルCoAの影響),T. kodakarensisのKPRはCoAによるフィードバック阻害を受けることが明らかとなった.さらにさまざまな濃度のCoA存在下でNADHに対する速度論的解析を行った結果,CoA濃度が上昇してもVmax値は変化しなかったが,Km値は大幅に増加した.この結果より,CoAはNADHと競争的にKPRを阻害することがわかった(35)35) H. Tomita, T. Imanaka & H. Atomi: Mol. Microbiol., 90, 307 (2013)..
以上のように,T. kodakarensisにおいてはKPRに対するフィードバック阻害によってCoAの生合成を制御することが示唆された.これはバクテリアや真核生物におけるPanKを介した制御機構とは大きく異なるものであり,新たなアーキア特有の生命機構の存在が証明された(35)35) H. Tomita, T. Imanaka & H. Atomi: Mol. Microbiol., 90, 307 (2013)..
β-アラニンはCoAの分子骨格の構成成分であり,真核生物・バクテリアのPSおよびアーキアのPPSの基質の一つである.その生合成経路は,真核生物やバクテリアにおいては,アスパラギン酸-1-デカルボキシラーゼ(aspartate 1-decarboxylase; ADC)によるAspの脱炭酸(36, 37)36) J. E. Cronan Jr.: J. Bacteriol., 141, 1291 (1980).37) J. M. Williamson & G. M. Brown: J. Biol. Chem., 254, 8074 (1979).,ウラシルの分解(38)38) R. Zrenner, H. Riegler, C. R. Marquard, P. R. Lange, C. Geserick, C. E. Bartosz, C. T. Chen & R. D. Slocum: New Phytol., 183, 117 (2009).,そしてスペルミンの分解(39, 40)39) W. H. White, P. L. Gunyuzlu & J. H. Toyn: J. Biol. Chem., 276, 10794 (2001).40) W. H. White, P. L. Skatrud, Z. Xue & J. H. Toyn: Genetics, 163, 69 (2003).の計3種類が知られている.しかしながら,T. kodakarensisを含む多くのアーキアにはそれらのホモログ遺伝子は存在せず,アーキアにおける生合成機構は不明であった.
われわれは,アーキアがもつグルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase; GAD)のホモログ遺伝子に着目した(41)41) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 196, 1222 (2014)..GADはバクテリアや真核生物に広く分布し,Gluの脱炭酸反応を触媒してGABAを合成する酵素としてよく知られる.しかし,アーキアにおけるGADあるいはGABAの生理的な役割は解明されていない.ただ,T. kodakarensisと近縁の超好熱性アーキアPyrococcus horikoshiiにおいて,GADホモログはin vitroでGluだけではなくAspに対しても酵素活性を示すことが報告されていた(42)42) H. W. Kim, Y. Kashima, K. Ishikawa & N. Yamano: Biosci. Biotechnol. Biochem., 73, 224 (2009).ことから,われわれはアーキアにおいてβ-アラニンはGADホモログによって合成される可能性があると考えた.
これを遺伝学的に検証するため,まずT. kodakarensisがもつGADをコードする遺伝子ホモログであるTK1814の遺伝子破壊株(ΔTK1814)を作製し,その増殖特性を調べた.その結果,ΔTK1814株は通常の培地において明確な生育を示さなかったが,培地にCoAやβ-アラニンを添加することでその生育は回復した.一方で,GAD反応の生成物であるGABAを添加した場合では生育は全く回復しなかった.この結果より,TK1814遺伝子産物はT. kodakarensisにおいてGADではなくADCとして機能し,β-アラニンおよびCoAの合成に重要であることが遺伝学的に示された.
さらに組換え型TK1814タンパク質の酵素学的解析を進めた結果,TK1814タンパク質はGluあるいはAspのどちらに対しても酵素活性を示すものの,Aspに対するkcat/Km値はGluに対する値よりもはるかに大きいことがわかった.このことから,生化学的にもTK1814産物がADCとして機能することが示唆された.
以上の結果から,アーキアにおけるβ-アラニンは,GADホモログ産物がもつADC活性によってAspから合成されることが明らかとなった(41)41) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 196, 1222 (2014)..
これまで記したように,アーキアの1種であるT. kodakarensisは,バクテリアや真核生物とは大きく異なる機構によってCoAを合成していることが明らかとなった(図6図6■2-オキソイソ吉草酸から4′-ホスホパントテン酸までの変換経路).バクテリアや真核生物はパントイン酸の4′-ホスホパントテン酸への変換においてPSとPanKを利用するが,T. kodakarensisを含む多くのアーキアはPoKとPPSというこれまで知られていなかった新規の酵素を使うことがわかった(22, 25, 26, 43)22) Y. Yokooji, H. Tomita, H. Atomi & T. Imanaka: J. Biol. Chem., 284, 28137 (2009).25) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 194, 5434 (2012).26) T. Ishibashi, H. Tomita, Y. Yokooji, T. Morikita, B. Watanabe, J. Hiratake, A. Kishimoto, A. Kita, K. Miki, T. Imanaka et al.: Extremophiles, 16, 819 (2012).43) H. Atomi, H. Tomita, T. Ishibashi, Y. Yokooji & T. Imanaka: Biochem. Soc. Trans., 41, 427 (2013)..PPS反応の基質であるβ-アラニンについては,GADがADCとして機能することでAspから合成されることが明らかとなった(41)41) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 196, 1222 (2014)..また経路の制御機構については,バクテリアや真核生物ではPanKがCoAによる強い阻害を受けることでCoA合成を厳密に調節しているのに対し,T. kodakarensisではKPRが阻害を受けることでその制御を行っていることがわかった(35)35) H. Tomita, T. Imanaka & H. Atomi: Mol. Microbiol., 90, 307 (2013)..なお,ほかのアーキアにおいても,PPCSおよびPPCDC(Methanocaldococcus jannaschii由来)(44)44) T. Kupke & W. Schwarz: J. Biol. Chem., 281, 5435 (2006).やPPAT(Pyrococcus abyssi由来)(45, 46)45) J. Armengaud, B. Fernandez, V. Chaumont, F. Rollin-Genetet, S. Finet, C. Marchetti, H. Myllykallio, C. Vidaud, J. L. Pellequer, S. Gribaldo et al.: J. Biol. Chem., 278, 31078 (2003).46) M. Nálezkova, A. de Groot, M. Graf, P. Gans & L. Blanchard: Protein Expr. Purif., 39, 296 (2005).の生化学的解析が行われ,それぞれ予想どおりの酵素活性を示すことが報告されている.これらの成果と本研究の成果から,アーキアにおけるCoA生合成機構の全容はほぼ解明された.今後の課題としては,生合成経路の最後の反応であるデホスホCoAのリン酸化を触媒する酵素の同定が残されているが,比較ゲノム的手法や生化学的な解析を通じて本酵素の同定を進める予定である.またCoA生合成の制御がアーキアとバクテリアでその作用点(アーキア:KPR,バクテリア:PanK)が異なることから,これらを組み合わせることにより,フィードバック制御のかからない生合成経路の構築も可能であると期待している.
Reference
1) C. R. Woese & G. E. Fox: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5088 (1977).
2) L. J. Magrum, K. R. Luehrsen & C. R. Woese: J. Mol. Evol., 11, 1 (1978).
3) C. R. Woese, J. Maniloff & L. B. Zablen: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 494 (1980).
5) C. R. Woese, L. J. Magrum & G. E. Fox: J. Mol. Evol., 11, 245 (1978).
6) C. R. Woese, O. Kandler & M. L. Wheelis: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 4576 (1990).
7) C. A. Francis, J. M. Beman & M. M. Kuypers: ISME J., 1, 19 (2007).
9) H. Atomi, T. Fukui, T. Kanai, M. Morikawa & T. Imanaka: Archaea, 1, 263 (2004).
10) M. Morikawa, Y. Izawa, N. Rashid, T. Hoaki & T. Imanaka: Appl. Environ. Microbiol., 60, 4559 (1994).
11) T. Fukui, H. Atomi, T. Kanai, R. Matsumi, S. Fujiwara & T. Imanaka: Genome Res., 15, 352 (2005).
12) R. Matsumi, K. Manabe, T. Fukui, H. Atomi & T. Imanaka: J. Bacteriol., 189, 2683 (2007).
13) T. Sato, T. Fukui, H. Atomi & T. Imanaka: J. Bacteriol., 185, 210 (2003).
14) T. Sato, T. Fukui, H. Atomi & T. Imanaka: Appl. Environ. Microbiol., 71, 3889 (2005).
15) N. Kresge, R. D. Simoni & R. L. Hill: J. Biol. Chem., 280, e18 (2005).
16) F. Lipmann: J. Biol. Chem., 160, 173 (1945).
17) F. Lipmann & N. O. Kaplan: J. Biol. Chem., 162, 743 (1946).
18) U. Genschel: Mol. Biol. Evol., 21, 1242 (2004).
19) R. Leonardi, Y. M. Zhang, C. O. Rock & S. Jackowski: Prog. Lipid Res., 44, 125 (2005).
20) C. Spry, K. Kirk & K. J. Saliba: FEMS Microbiol. Rev., 32, 56 (2008).
21) World Health Organization: In “Vitamin and mineral requirements in human nutrition (Second edition),” pp. 180–182, 2004.
22) Y. Yokooji, H. Tomita, H. Atomi & T. Imanaka: J. Biol. Chem., 284, 28137 (2009).
23) H. Katoh, H. Tamaki, Y. Tokutake, S. Hanada & S. Chohnan: J. Biosci. Bioeng., 115, 372 (2013).
25) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 194, 5434 (2012).
27) W. J. Song & S. Jackowski: J. Biol. Chem., 269, 27051 (1994).
28) M. Yun, C. G. Park, J. Y. Kim, C. O. Rock, S. Jackowski & H. W. Park: J. Biol. Chem., 275, 28093 (2000).
29) C. O. Rock, H. W. Park & S. Jackowski: J. Bacteriol., 185, 3410 (2003).
30) D. S. Vallari, S. Jackowski & C. O. Rock: J. Biol. Chem., 262, 2468 (1987).
32) R. Leonardi, Y. M. Zhang, A. Lykidis, C. O. Rock & S. Jackowski: FEBS Lett., 581, 4639 (2007).
33) C. O. Rock, M. A. Karim, Y. M. Zhang & S. Jackowski: Gene, 291, 35 (2002).
34) Y. M. Zhang, C. O. Rock & S. Jackowski: J. Biol. Chem., 280, 32594 (2005).
35) H. Tomita, T. Imanaka & H. Atomi: Mol. Microbiol., 90, 307 (2013).
36) J. E. Cronan Jr.: J. Bacteriol., 141, 1291 (1980).
37) J. M. Williamson & G. M. Brown: J. Biol. Chem., 254, 8074 (1979).
39) W. H. White, P. L. Gunyuzlu & J. H. Toyn: J. Biol. Chem., 276, 10794 (2001).
40) W. H. White, P. L. Skatrud, Z. Xue & J. H. Toyn: Genetics, 163, 69 (2003).
41) H. Tomita, Y. Yokooji, T. Ishibashi, T. Imanaka & H. Atomi: J. Bacteriol., 196, 1222 (2014).
42) H. W. Kim, Y. Kashima, K. Ishikawa & N. Yamano: Biosci. Biotechnol. Biochem., 73, 224 (2009).
44) T. Kupke & W. Schwarz: J. Biol. Chem., 281, 5435 (2006).