Kagaku to Seibutsu 54(3): 159-169 (2016)
解説
単孔類,有袋類ミルクオリゴ糖の種特異的進化と生存戦略
Species Specific Evolution of Milk Oligosaccharides in Monotremes and Marsupials: Relationship to Their Reproductive Strategy
Published: 2016-02-20
単孔類(カモノハシ,ハリモグラ)や有袋類(カンガルー,ポッサム,コアラなど)の乳では,多くの有胎盤類(ヒト,ウシなど)とは異なり,ミルクオリゴ糖の方がラクトースよりも優先的である.有胎盤類の乳仔がラクトースを主要なエネルギー源としているのに対し,単孔類や有袋類の乳仔はミルクオリゴ糖をピノサートーシスかエンドサイトーシスで小腸細胞内に取り込み,リソソーム内のグリコシダーゼの働きで単糖に分解し,エネルギー源とする.単孔類のシアル酸含有ミルクオリゴ糖に付加するN-アセチルノイラミン酸は,4位がO-アセチル化した固有の形をしているが,そのことで細菌の生産するノイラミニダーゼへの加水分解抵抗性を付与する.それには乳首がなくて皮膚の上に乳を分泌する単孔類において,乳が細菌の増殖源にならないメカニズムが潜んでいる.単孔類や有袋類の固有のミルクオリゴ糖には,それらの繁殖戦略や子育て戦略との密接なかかわりがある.
© 2016 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2016 公益社団法人日本農芸化学会
乳に含まれる糖質は専らラクトース(乳糖,Gal(β1-4)Glc)であるという先入観は,多くの哺乳動物の乳の糖質を分析した事例によって覆りつつある(1~9)1) T. Urashima, T. Saito, T. Nakamura & M. Messer: Glycoconj. J., 18, 357 (2001).9) T. Urashima, E. Taufik, K. Fukuda & S. Asakuma: Biosci. Biotechnol. Biochem., 77, 455 (2013)..確かに,牛乳の中の糖質は専らラクトースであると断言できるほど,ラクトース以外の糖質の量は少ない(9, 10)9) T. Urashima, E. Taufik, K. Fukuda & S. Asakuma: Biosci. Biotechnol. Biochem., 77, 455 (2013).10) B. Fong, K. Ma & P. McJarrow: J. Agric. Food Chem., 59, 9788 (2011)..一方で人乳を観察してみると,7%の糖質のうちの80%をラクトースが,そして残りの20%を240種類にも数えられるミルクオリゴ糖が占めている(11)11) Y. Yu, Y. Lasanajak, X. Song, L. Hu, S. Ramani, M. L. Mickum, D. J. Ashline, B. V. V. Prasad, M. K. Estes, V. N. Reinhold et al.: Mol. Cell. Proteomics, 13, 2944 (2014)..ミルクオリゴ糖の大半はラクトース骨格を還元末端側に有し,それにN-アセチルグルコサミン,ガラクトース,フコース,N-アセチルノイラミン酸などの単糖が付加した構造をしている(1~9)1) T. Urashima, T. Saito, T. Nakamura & M. Messer: Glycoconj. J., 18, 357 (2001).9) T. Urashima, E. Taufik, K. Fukuda & S. Asakuma: Biosci. Biotechnol. Biochem., 77, 455 (2013)..ヒトを含む哺乳動物の乳仔が母乳を摂取した際,母乳の中のラクトースは小腸上皮微絨毛膜に存在するラクターゼの働きによって,グルコースとガラクトースに分解される(6~8, 12)6) T. Urashima, M. Kitaoka, T. Terabayashi, K. Fukuda, M. Ohnishi & A. Kobata: “Oligosaccharides: Sources, Properties and Applications,” ed. by N. S. Gordon, Nova Science, New York, USA, 2011, pp. 1–58.8) T. Urashima, M. Messer & O. T. Oftedal: “Evolutionary Biology, Genome Evolution, Speciation, Coevolution and Origin of Life,” ed. by P. Pontarotti, Springer, Switzerland, 2014, pp. 3–33.12) O. T. Oftedal: J. Mammary Gland Biol., 7, 253 (2002)..グルコースは吸収されて循環に入り,ガラクトースは肝臓でグルコースに変換されてから循環する.つまりラクトースは多くの哺乳動物の乳仔にとっては重要な栄養源になっている.一方でミルクオリゴ糖はたとえばヒトの乳児の場合,大半は小腸で分解・吸収されないで大腸に到達し,(1)ビフィズス菌などの有用な腸内細菌の栄養源となってその増殖を促進する,(2)病原性微生物が腸管内に付着するのを防ぐなどの機能的役割を果たしている(1~9)1) T. Urashima, T. Saito, T. Nakamura & M. Messer: Glycoconj. J., 18, 357 (2001).9) T. Urashima, E. Taufik, K. Fukuda & S. Asakuma: Biosci. Biotechnol. Biochem., 77, 455 (2013)..
クマやアザラシ,ミンクなどの一部の例外を除き多くの有胎盤類(胎盤をもち,妊娠期間が長くて胎盤の中で仔を育てる哺乳類)の乳では主要な糖質はラクトースであるが,有胎盤類とは異なる固有の進化をたどった単孔類や有袋類では,乳の中のラクトースの量は少なく,ミルクオリゴ糖の方が圧倒的に多い(1~4, 7, 8)1) T. Urashima, T. Saito, T. Nakamura & M. Messer: Glycoconj. J., 18, 357 (2001).4) T. Urashima, S. Asakuma, M. Kitaoka & M. Messer: “Encyclopedia of Dairy Science, Second Edition,” ed. by J. W. Fuquay, P. F. Fox & P. L. H. McSweeney, Vol. 3, Academic Press, San Diego, USA, 2011, pp. 241–273.7) T. Urashima, K. Fukuda & M. Messer: Animal, 6, 369 (2012).8) T. Urashima, M. Messer & O. T. Oftedal: “Evolutionary Biology, Genome Evolution, Speciation, Coevolution and Origin of Life,” ed. by P. Pontarotti, Springer, Switzerland, 2014, pp. 3–33..またミルクオリゴ糖の化学構造も固有の特徴を有している(1~4, 7, 8)1) T. Urashima, T. Saito, T. Nakamura & M. Messer: Glycoconj. J., 18, 357 (2001).4) T. Urashima, S. Asakuma, M. Kitaoka & M. Messer: “Encyclopedia of Dairy Science, Second Edition,” ed. by J. W. Fuquay, P. F. Fox & P. L. H. McSweeney, Vol. 3, Academic Press, San Diego, USA, 2011, pp. 241–273.7) T. Urashima, K. Fukuda & M. Messer: Animal, 6, 369 (2012).8) T. Urashima, M. Messer & O. T. Oftedal: “Evolutionary Biology, Genome Evolution, Speciation, Coevolution and Origin of Life,” ed. by P. Pontarotti, Springer, Switzerland, 2014, pp. 3–33..それは,哺乳類の共通祖先からの乳成分の進化と種の生存戦略によって形成されたと考えられる.この解説の中では,乳の糖質の生理的意義と進化を特に単孔類と有袋類にフォーカスしながら,化学構造と絡めて考察してみたい.
現存の哺乳類はキノドン類を共通祖先として進化をとげ,祖先の原獣類よりまず約1億9000万年前に単孔類が,ついで約1億6000万年前に有袋類と有胎盤類が相互に分化したと推測されている(13, 14)13) M. Messer, A. S. Weiss, D. C. Show & M. J. Westerman: J. Mammal., 5, 95 (1998).14) Z. X. Luo, C. X. Yuan, Q. J. Meng & Q. Ji: Nature, 476, 442 (2011)..現存する単孔類はハリモグラとカモノハシの2種であり,それは卵生であって乳首をもたず,乳は乳嚢と言われる2つの皮膚領域の小孔から皮膚の上に分泌される.これは哺乳類祖先から受け継いだ特徴であろう.乳を分泌する乳腺細胞の集合体である乳腺は,アポクリン腺から進化したと予想される(12, 15)12) O. T. Oftedal: J. Mammary Gland Biol., 7, 253 (2002).15) O. T. Oftedal: “Advanced dairy chemistry,” ed. by P. H. L. McSweeney & P. F. Fox, Vol. 1A, 4th edn. Springer Science+Business Media, New York, USA, 2013, pp. 1–42..それは細胞内で合成された脂肪球が,乳腺とアポクリン腺では共通して細胞外へと分泌される際に細胞の頂上細胞膜を突き破り,細胞膜に由来する脂肪球膜に包まれるような形で分泌される(アポクリン分泌と命名される)事実に基づいている.本来水と油は交わらないものの代名詞のように言われるが,乳の中では水と油が混じり合っているのは脂肪の粒子の周りを取り囲むこのような脂肪球膜の存在のためである.乳タンパク質は乳腺細胞の中で合成される成分(カゼイン,α-ラクトアルブミン,β-ラクトグロブリンなど)と血液タンパク質に由来する成分(免疫グロブリン,血清アルブミンなど)があるが,乳腺の進化の中で一部の血液成分を乳腺細胞へと取り込む機構とともに,ほかの祖先タンパク質から乳腺特異的発現タンパク質への遺伝子の変異があったであろうと予想される.たとえばカゼインは歯のエナメル芽関連タンパク質を先祖成分とすると推定されている(16)16) K. Kawasaki, A. Lafont & L. Sire: Mol. Biol. Evol., 28, 2053 (2011)..そのような仮説は,歯のエナメルタンパク質とカゼインがどちらもカルシウムの運搬機能を担っているという事実に基づく.
泌乳期乳腺においてラクトースの合成は,ホエータンパク質の一種であるα-ラクトアルブミンとβ4-ガラクトシルトランスフェラーゼIの共同作用によって,遊離のグルコースをアクセプター,UDP-ガラクトースをドナーとして行われる.β4-ガラクトシルトランスフェラーゼIは乳腺以外の組織でも発現し,乳腺以外では複合糖質の末端のN-アセチルグルコサミンに対してガラクトースを転移し,N-アセチルラクトサミン(Gal(β1-4)GlcNAc)単位の合成を触媒している.乳腺でのα-ラクトアルブミンの働きは,β4-ガラクトシルトランスフェラーゼIの基質特異性を糖鎖末端のN-アセチルグルコサミンから遊離のグルコースに変換するmodifierである(17)17) B. Rajput, N. L. Shaper & J. H. Shaper: J. Biol. Chem., 271, 5131 (1996)..α-ラクトアルブミンは,細菌の細胞壁を破壊して殺菌作用を司る酵素リゾチームと一次構造や三次構造が類似している(18)18) H. A. McKenzie & F. H. White, Jr.: Adv. Protein Chem., 41, 174 (1991)..α-ラクトアルブミンは哺乳類の乳腺のみに発現する“新しい”タンパク質であるから,哺乳類以外に魚類や昆虫にも発現している“古い”タンパク質であるリゾチームからの遺伝子変異によって獲得されたことは疑いない.α-ラクトアルブミンの出現によって,乳腺の中でラクトース単位の合成が開始された.
一方,ミルクオリゴ糖は還元末端にラクトース単位を有しており,乳腺の中で生合成されたラクトースに対して各種の糖転移酵素が作用することで生合成される.つまりα-ラクトアルブミンの出現はミルクオリゴ糖の生合成をも開始させた.α-ラクトアルブミンの出現は,約3億1000万年前という推定もある(19)19) E. M. Prager & A. C. Wilson: J. Mol. Evol., 27, 326 (1988)..その当時哺乳類はおろか恐竜さえも出現しておらず,祖先に乳腺様の組織も存在しなかったであろう.特殊な皮膚腺から何かの成分が分泌されていたのであろうか.
α-ラクトアルブミンの偶然の出現によってラクトース単位の生合成は開始されるようになった.一方でスフィンゴ糖脂質の還元末端側にラクトース単位が含まれるように,ラクトース単位は細胞内ゴルジ体で各種の糖転移酵素のアクセプターになりうる.α-ラクトアルブミンの発現量が低くてラクトースの生合成速度が遅い場合は,生合成された遊離のラクトースは主に糖転移酵素のアクセプターとして利用されていたであろう.哺乳類の共通祖先で乳様の分泌物が原始的な乳腺または乳腺の先祖腺において分泌されていた段階では,その分泌物の中にラクトースは少なくてミルクオリゴ糖のほうがはるかに優先的であったと予想される(2, 7, 8)2) M. Messer & T. Urashima: Trends Glycosci. Glycotechnol., 14, 153 (2002).7) T. Urashima, K. Fukuda & M. Messer: Animal, 6, 369 (2012).8) T. Urashima, M. Messer & O. T. Oftedal: “Evolutionary Biology, Genome Evolution, Speciation, Coevolution and Origin of Life,” ed. by P. Pontarotti, Springer, Switzerland, 2014, pp. 3–33..それは卵生や乳首のない乳腺からの乳分泌など,哺乳類祖先の特徴を今日でも残している単孔類の乳において,ラクトースよりもミルクオリゴ糖のほうが圧倒的に多い事実からも推測される.今日有胎盤類の乳においては主要な糖質はラクトースであり,ラクトースは乳仔にとって重要な栄養源である.それは有胎盤類においてα-ラクトアルブミンの発現量が増加し,ラクトースの合成速度が速くなってその合成がミルクオリゴ糖生合成の律速段階ではなくなったこと,また乳仔の小腸上皮にラクターゼが出現して,ラクトースをグルコースとガラクトースに小腸細胞頂端膜(刷子縁)上で加水分解できるようになってから初めて可能になった(2, 7, 8)2) M. Messer & T. Urashima: Trends Glycosci. Glycotechnol., 14, 153 (2002).7) T. Urashima, K. Fukuda & M. Messer: Animal, 6, 369 (2012).8) T. Urashima, M. Messer & O. T. Oftedal: “Evolutionary Biology, Genome Evolution, Speciation, Coevolution and Origin of Life,” ed. by P. Pontarotti, Springer, Switzerland, 2014, pp. 3–33..では初期乳様分泌物において,優先的なミルクオリゴ糖はどのような生理機能を果たしていたのであろうか.人乳などでは構造的に分散したミルクオリゴ糖は一定の濃度で存在し,デコイレセプターとして乳仔の腸管に病原性細菌が付着するのを阻止するという観察結果が多く報告されている(4, 6, 9)4) T. Urashima, S. Asakuma, M. Kitaoka & M. Messer: “Encyclopedia of Dairy Science, Second Edition,” ed. by J. W. Fuquay, P. F. Fox & P. L. H. McSweeney, Vol. 3, Academic Press, San Diego, USA, 2011, pp. 241–273.6) T. Urashima, M. Kitaoka, T. Terabayashi, K. Fukuda, M. Ohnishi & A. Kobata: “Oligosaccharides: Sources, Properties and Applications,” ed. by N. S. Gordon, Nova Science, New York, USA, 2011, pp. 1–58.9) T. Urashima, E. Taufik, K. Fukuda & S. Asakuma: Biosci. Biotechnol. Biochem., 77, 455 (2013)..哺乳類共通祖先の原始的乳腺によって皮膚上に分泌された乳様分泌物は,皮膚の上に細菌などが増殖する栄養源とならない,病原性微生物が皮膚の上に付着するのを阻止する,皮膚の上をなめるように分泌物を摂取した仔に対して感染防御能を果たす,などの機能を有していたのではないか(2, 7, 8)2) M. Messer & T. Urashima: Trends Glycosci. Glycotechnol., 14, 153 (2002).7) T. Urashima, K. Fukuda & M. Messer: Animal, 6, 369 (2012).8) T. Urashima, M. Messer & O. T. Oftedal: “Evolutionary Biology, Genome Evolution, Speciation, Coevolution and Origin of Life,” ed. by P. Pontarotti, Springer, Switzerland, 2014, pp. 3–33..それは単孔類の乳に含まれるミルクオリゴ糖の観察に基づいて推測された.
現存する単孔類はカモノハシとハリモグラの2種であり,ハリモグラはさらに長くちばしハリモグラと短くちばしハリモグラの2種に分類される.カモノハシ(Ornithorhynchus anatinus)はオーストラリア大陸の東側,クイーンズランド北部からタスマニアにかけての川や湖に棲息している.短くちばしハリモグラ(Tachyglossus aculeatus)はオーストラリア,ニューギニアに,長くちばしハリモグラ(Zaglossus bruijni)はニューギニアのみに棲息する(オーストラリアでは2万年前に絶滅した).前述のように単孔類の乳腺は乳首をもたず,乳は乳嚢といわれる2つの皮膚領域内の約100の散らばった孔から分泌される.
カモノハシとハリモグラミルクオリゴ糖の研究は,1973年にMesserとKerryによって開始された(20)20) M. Messer & K. Kerry: Science, 180, 201 (1973)..図1図1■ハリモグラとカモノハシの乳の糖質画分のSephadex G-15カラムによるゲルろ過プロファイルはハリモグラ(カンガルー島ならびにオーストラリア・ニューサウスウェールズ州で捕獲されたハリモグラから採乳した)とカモノハシの乳から抽出した糖質のSephadex G-15カラムによるゲルクロマトグラムである.いずれの乳でもラクトースはごく少量しか含まれず(最後に溶出した小さなピークがラクトース),ミルクオリゴ糖のほうが圧倒的に多い.ハリモグラではフコシルラクトースとシアリルラクトースが,カモノハシ乳ではジフコシルラクトースが主要な糖質であった.ハリモグラのミルクオリゴ糖は引き続いて,Messer(21)21) M. Messer: Biochem. J., 139, 415 (1974).,Kamerlingら(22)22) J. P. Kamerling, L. Dorland, H. van Halbeek, J. F. G. Vliegenthart, M. Messer & R. Schauer: Carbohydr. Res., 100, 331 (1982).,Jenkinsら(23)23) G. A. Jenkins, J. H. Bradbury, M. Messer & E. Trifonoff: Carbohydr. Res., 126, 157 (1984).によってFuc(α1-2)Gal(β1-4)Glc, Fuc(α1-2)Gal(β1-4)[Fuc(α1-3)]Glc, Neu4,5Ac2(α2-3)Gal(β1-4)Glc(4-O-アセチル-3′-シアリルラクトース)が同定された.一方,カモノハシの中性オリゴ糖は,Jenkinsら(23)23) G. A. Jenkins, J. H. Bradbury, M. Messer & E. Trifonoff: Carbohydr. Res., 126, 157 (1984).,ならびにAmanoら(24)24) J. Amano, M. Messer & A. Kobata: Glycoconj. J., 2, 121 (1985).によって図2図2■従来(文献(21~24))構造決定されていたハリモグラとカモノハシのミルクオリゴ糖のように決定された.
図1■ハリモグラとカモノハシの乳の糖質画分のSephadex G-15カラムによるゲルろ過プロファイル
各フラクションのアリコートはヘキソース,フコース,シアル酸に対して測定された.Veは溶出容量,Voはボイドボリュームを示す.図は文献(20)より引用した.
筆者は2012年9月にタスマニア島の州都ホバートの北方50 kmのフィールドにおいて,タスマニア大学のStewart Nicol博士とともにハリモグラ・タスマニア亜種の捕獲と乳試料採集を行った.泌乳中の個体はNicol博士が取り付けたGPS発信器の信号を頼りに探し,巣の地中から掘り起こして捕獲した.図3図3■2012年9月タスマニアでのハリモグラフィールド調査はGPSを頼りに泌乳個体を探しているところ,図4図4■タスマニアハリモグラから採乳しているところは捕獲した個体へのオキシトシン静脈注入後に皮膚上の乳嚢から採乳しているところである.ハリモグラは,乳首をもたない乳腺から泌乳することが理解されるであろう.この際のフィールド調査によって回収されたものも含め,乳試料は,仔の孵化後39日の初期乳,約90日の中期乳,約150日の後期乳が採集された.