Kagaku to Seibutsu 54(6): 387-395 (2016)
解説
グリセロホスホジエステラーゼの分子進化から生理的役割の新たな展開哺乳動物における新基質の発見
Molecular Evolution and New Insight of Glycerophosphodiesterase Family: Recent Findings on Substrates of Mammalian Glycerophosphodiesterases
Published: 2016-05-20
細菌におけるグリセロホスホジエステラーゼは,グリセロリン脂質の二つの脂肪酸が切断された水溶性代謝物であるグリセロホスホジエステルを分解することでグリセロール3-リン酸を獲得し,リンや炭素の栄養源としての利用において重要な役割を担う.一方,酵母,植物,線虫,哺乳動物においてもグリセロホスホジエステラーゼが同定されたが,哺乳動物においてはグリセロホスホジエステル以外の基質も発見され,多彩な生理的役割が明らかにされている.グリセロホスホジエステラーゼの酵素タンパク質としての分子進化上の特徴,さらに哺乳動物における生理機能の新展開について紹介する.
© 2016 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2016 公益社団法人日本農芸化学会
細菌から哺乳動物まで,すべての生物の細胞膜の主成分はグリセロリン脂質である.グリセロリン脂質の代謝は,細胞生物の成長や生存において極めて重要な生命機構であるが,その代謝機構や意義においては未解明の部分も多い.本稿において解説する一群のグリセロホスホジエステラーゼ(glycerophosphodiester phosphodiesterase: EC 3.1.4.46)は,グリセロリン脂質の2つの脂肪酸が切断された水溶性代謝物であるグリセロホスホジエステルを分解する酵素として微生物においてその機能が明らかにされ,リン源や炭素源としてリン脂質を栄養資化するために大きな役割を果たしている(図1図1■大腸菌の2つのグリセロホスホジエステル利用経路としてのGlp系とUgp系).しかしながら,本酵素ファミリーは細菌から哺乳動物までの酵素進化の中で,酵素の基質,局在から生理的意義までを大きく変化させた希有な例である(1)1) D. Corda, M. G. Mosca, N. Ohshima, L. Grauso, N. Yanaka & S. Mariggiò: FEBS J., 281, 998 (2014)..細菌のグリセロホスホジエステラーゼについては,グリセロリン脂質からのリン源,および炭素源の供給経路としての役割を担うため,ホスファチジルコリンやホスファチジルエタノールアミンなどに由来するすべてのグリセロホスホジエステルの分解が可能であり,グリセロール3-リン酸(G3P)を獲得するために理にかなっている.ところが,哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼはグリセロホスホイノシトール(GroPIns),あるいはグリセロホスホコリン(GroPCho)などに対して限定した基質特異性を有する点は細菌と大きく異にする.哺乳動物においてGroPIns,あるいはGroPChoは細胞増殖や細胞分化において極めて重要な生理活性物質であり,グリセロホスホジエステラーゼがそれぞれの基質特異性によって細胞内のGroPIns,あるいはGroPCho濃度を厳密に調節する重要な役割を担うことが示されている.さらに,細菌から哺乳動物まで推定の酵素活性領域のアミノ酸配列はよく保存されているものの,哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼの基質はグリセロホスホジエステルにとどまらず,GDE2はグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型タンパク質の切断に,GDE4,およびGDE7はリゾリン脂質からリゾホスファチジン酸の生成に関与するなど,多彩な生命現象を担う可能性が明らかにされている.
細菌で最もグリセロホスホジエステル代謝についての研究が行われているのは大腸菌(Escherichia coli)である.大腸菌はグリセロホスホジエステルを利用する2つの経路,Glp系とUgp系を有している.いずれの経路も細胞外からグリセロホスホジエステルをリンや炭素の栄養源として利用する役割を有するが,各経路においてそれぞれ異なったタンパク質群がこの機能を担っている.大腸菌のGlpオペロンには,G3Pをペリプラスムから細胞質に能動輸送するトランスポーターをコードするglpTと,グリセロホスホジエステラーゼをコードするglpQが含まれる(2)2) T. J. Larson, M. Ehrmann & W. Boos: J. Biol. Chem., 258, 5428 (1983)..GlpQはペリプラスムに局在し,GlpQによりグリセロホスホジエステルから生じたG3PはGlpTによって細胞内へと輸送されて利用される(3)3) T. J. Larson & A. T. van Loo-Bhattacharya: Arch. Biochem. Biophys., 260, 577 (1988).(図1図1■大腸菌の2つのグリセロホスホジエステル利用経路としてのGlp系とUgp系).GlpQはグリセロホスホエタノールアミン(GroPEth),GroPCho, GroPIns,グリセロホスホセリン(GroPSer),グリセロホスホグリセロール(GroPGro),カルジオリピンの脱アシル化産物であるビスグリセロホスホグリセロールを加水分解する.一方,ホスファチジルグリセロールやリゾホスファチジルグリセロールは加水分解しない(2, 3)2) T. J. Larson, M. Ehrmann & W. Boos: J. Biol. Chem., 258, 5428 (1983).3) T. J. Larson & A. T. van Loo-Bhattacharya: Arch. Biochem. Biophys., 260, 577 (1988)..GlpQの酵素活性には,特にCa2+を必要とするが,Mg2+の存在下では活性が認められない.
もう一つのグリセロホスホジエステル利用経路は5つの遺伝子を含むugpオペロンによって担われている(4)4) P. Brzoska & W. Boos: J. Bacteriol., 170, 4125 (1988)..ugpA, ugpC,およびugpEがグリセロホスホジエステルのトランスポーターをコードしており,ペリプラスムから細胞質へのグリセロホスホジエステルの能動輸送を担っている(図1図1■大腸菌の2つのグリセロホスホジエステル利用経路としてのGlp系とUgp系).ペリプラスムに存在するUgpBはグリセロホスホジエステルと結合し,トランスポーターとともにグリセロホスホジエステルの輸送に関与する(5)5) P. Brzoska, M. Rimmele, K. Brzostek & W. Boos: J. Bacteriol., 176, 15 (1994)..ugpQは27 kDaのグリセロホスホジエステラーゼタンパク質をコードしており,アミノ酸配列においてGlpQとの高い相同性があるが,GlpQとは対照的に,UgpQは細胞質に存在するタンパク質である.以前のugpオペロンの研究では単離したUgpQは酵素活性をもたず,UgpA, UgpC,およびUgpEから構成されるグリセロホスホジエステル輸送タンパク質に結合し,輸送に共役することで酵素活性を発現すると提唱されていた(4)4) P. Brzoska & W. Boos: J. Bacteriol., 170, 4125 (1988)..しかしながら,精製したUgpQはCa2+の代わりにMg2+の存在下で酵素活性を示すことが後に明らかとなった(6)6) N. Ohshima, S. Yamashita, N. Takahashi, C. Kuroishi, Y. Shiro & K. Takio: J. Bacteriol., 190, 1219 (2008)..UgpQのグリセロホスホジエステルに対する基質特異性を解析したところ,GroPEth, GroPCho, GroPIns, GroPSer,およびGroPGroに対してほぼ同等の分解活性を示した(6)6) N. Ohshima, S. Yamashita, N. Takahashi, C. Kuroishi, Y. Shiro & K. Takio: J. Bacteriol., 190, 1219 (2008)..ugpQを含むugpオペロンはリン酸飢餓状態の大腸菌で顕著に遺伝子発現が誘導されることや,ugpQの欠損によりグリセロホスホジエステルを添加したリン酸欠乏培地中で増殖ができなくなることからから(4)4) P. Brzoska & W. Boos: J. Bacteriol., 170, 4125 (1988).,UgpQの第一義的な生理機能は細胞内のグリセロホスホジエステルを分解し,リン源としての利用であると考えられており,得られたG3Pはグリセロリン脂質の生合成や解糖系など,さまざまな代謝経路に利用される(7)7) A. Forsgren, K. Riesbeck & H. Janson: Clin. Infect. Dis., 46, 726 (2008)..大腸菌のGlpQとUgpQの一次構造は顕著な相同性を示すことから,共通の祖先から進化したと考えられるが,系統樹解析の結果(図2図2■各生物種のグリセロホスホジエステラーゼ,および一次構造上類縁のファミリータンパク質の系統樹解析)から大腸菌のUgpQは真核生物やほかの細菌の細胞質型のグリセロホスホジエステラーゼ類と近縁であることがわかる.GlpQはUgpQとは異なる一群を形成し,植物のグリセロホスホジエステラーゼと近縁である.
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae),特にb型莢膜株(Hib)は小児において髄膜炎や敗血症を引き起こす病原菌である.そのワクチンには,抗原としてインフルエンザ菌を不活化したうえで精製した細菌表面の莢膜が使用されるが,抗体価を上昇させるために莢膜をキャリアタンパク質と結合させている.インフルエンザ菌の細胞表面に存在するprotein Dが大腸菌GlpQのオルソログであり,ワクチン製造時に用いるキャリアタンパク質として有効であることが示された(7)7) A. Forsgren, K. Riesbeck & H. Janson: Clin. Infect. Dis., 46, 726 (2008)..一方で,protein Dはインフルエンザ菌の病原性にも関与している.protein Dは大腸菌のGlpQと同様の酵素活性を有し(8)8) R. S. Munson Jr. & K. Sasaki: J. Bacteriol., 175, 4569 (1993).,N末端残基に脂質修飾を受け,細胞表面に局在する(9)9) H. Janson, L. O. Heden & A. Forsgren: Infect. Immun., 60, 1336 (1992)..protein Dがラットの中耳炎モデルにおいて病原性に大きく関与していることや(1010) H. Janson, A. Melhus, A. Hermansson & A. Forsgren: Infect. Immun., 62, 4848 (1994).),気道へのインフルエンザ菌の感染にも関与し(11)11) H. Janson, B. Carln, A. Cervin, A. Forsgren, A. B. Magnusdottir, S. Lindberg & T. Runer: J. Infect. Dis., 180, 737 (1999).,ヒト単球への接着や内在化に重要であることが報告されている(12)12) I. L. Ahren, H. Janson, A. Forsgren & K. Riesbeck: Microb. Pathog., 31, 151 (2001)..protein Dが宿主細胞への接着や内在化に関与する分子機序は,以下のように説明されている(13, 14)13) X. Fan, H. Goldfine, E. Lysenko & J. N. Weiser: Mol. Microbiol., 41, 1029 (2001).14) L. Serino & M. Virji: Mol. Microbiol., 35, 1550 (2000)..細菌の表面で宿主のホスファチジルコリンの分解によりprotein Dによって産生されたコリンは細菌表面のリポ多糖–ホスホコリンの合成に利用され,この細胞壁の修飾により宿主細胞の特徴が模倣されることで,細菌が宿主の免疫系から逃れることが可能となる.
一方,マイコプラズマ(Mycoplasma pneumonia)のGlpQは,一次構造上では細胞質型のタンパク質であり,大腸菌UgpQのオルソログであると考えられる.M. pneumoniaeは非定型肺炎を引き起こす細菌の一種であり,宿主細胞から自身の構築分子の材料を獲得する.肺への感染時には肺胞サーファクタントのリン脂質を栄養源とする.マイコプラズマのglpQ遺伝子を欠失させた際には,細菌の増殖能の低下,HeLa細胞に対する細胞毒性の低下が引き起こされる(15)15) S. R. Schmidl, A. Otto, M. Lluch-Senar, J. Pinol, J. Busse, D. Beche & J. Stulke: PLoS Pathog., 7, e1002263 (2011)..
枯草菌(Bacillus subtilis)には,細胞質型グリセロホスホジエステラーゼであるYqiKが存在し,浸透圧調節に関与していると報告されている(16)16) K. E. Fische & E. Bremer: J. Bacteriol., 194, 5197 (2012)..YqiKはyqiHIKオペロンに存在し,大腸菌のUgpQのオルソログである.YqiKの発現は高塩濃度の環境下で誘導され,yqiHIKオペロンを欠失させると枯草菌の高塩濃度環境下での増殖が障害される(17)17) L. Steil, T. Hoffmann, I. Budde, U. Volker & E. Bremer: J. Bacteriol., 185, 6358 (2003)..放線菌(Streptmyces coelicolor)ゲノムは7種もの推定グリセロホスホジエステラーゼ遺伝子をコードしている.そのうちのGlpQ1-3は分泌型であり,UgpQ1-4は細胞質型であるが,酵素活性についての報告はない(18)18) F. Santos-Beneit, A. Rodriguez-Garcia, A. K. Apel & J. F. Martin: Microbiology, 155, 1800 (2009)..
グリセロホスホジエステラーゼに共通の立体構造上の特徴は,トリオースリン酸イソメラーゼが名前の由来であるTIMバレルフォールドを有することである(図3A図3■Thermoanaerobacter tengcongensisの細胞質型グリセロホスホジエステラーゼの立体構造A, グリセロホスホジエステラーゼファミリーに共通の特徴としてTIMバレルフォールドを有する.B, 活性中心付近の構造).好熱菌Thermotoga maritimaの細胞質型グリセロホスホジエステラーゼ(TM1621)の立体構造が最初に報告されたが,活性に必要な金属イオンの非存在下でのものであった(19)19) E. Santelli, R. Schwarzenbacher, D. McMullan, T. Biorac, L. S. Brinen, J. M. Canaves, J. Cambell, X. Dai, A. M. Deacon, M. A. Elsliger et al.: Proteins, 56, 167 (2004)..理研SPring8のタンパク3000プロジェクトでは,好熱菌Thermus thermophilusの細胞質型グリセロホスホジエステラーゼ(PDB ID; 1VD6)の基質結合部位にグリセロールが結合した構造が得られている.好熱菌Thermoanaerobacter tengcongensisの細胞質型グリセロホスホジエステラーゼの立体構造解析によると,その活性中心にはCa2+とグリセロールが結合しており,これらは基質結合や触媒機構の解明のために重要である(20)20) L. Shi, J. F. Liu, X. M. An & D. C. Liang: Proteins, 72, 280 (2008).(図3B図3■Thermoanaerobacter tengcongensisの細胞質型グリセロホスホジエステラーゼの立体構造A, グリセロホスホジエステラーゼファミリーに共通の特徴としてTIMバレルフォールドを有する.B, 活性中心付近の構造).Ca2+に結合しているのはGlu44, Asp46, Glu119であり,いずれの残基をAlaに置換しても酵素活性は失われる.Arg18とLys121は基質のリン酸基に結合し,His17とHis59による酸塩基触媒の反応機構が提唱されている.
細菌のGlpQとのアミノ酸配列の相同性から,酵母(Saccharomyces cerevisiae)のYPL110c(Gde1p)とYPL206c(Pgc1p)が単離された(21)21) E. Fisher, C. Almaguer, R. Holic, P. Griac & J. Patton-Vogt: J. Biol. Chem., 280, 36110 (2005)..Gde1pは1223アミノ酸からなる細胞質のタンパク質であり,Gde1pを欠損させた酵母ではGroPChoの細胞内での蓄積が観察され,Gde1pは酵母がGroPChoを唯一のリン源として増殖するのに必要であった(21)21) E. Fisher, C. Almaguer, R. Holic, P. Griac & J. Patton-Vogt: J. Biol. Chem., 280, 36110 (2005)..Gde1pの発現は大腸菌UgpQと同様に低リン酸濃度の培養条件で上昇することが報告されており(22)22) N. Ogawa, J. DeRisi & P. O. Brown: Mol. Biol. Cell, 11, 4309 (2000).,Gde1は多くのリン酸恒常性に関与するタンパク質に含まれるSPXドメインを有している.これらのことから,酵母のグリセロホスホジエステラーゼは大腸菌の場合と同様にグリセロホスホジエステルからリン酸を獲得するために機能していると考えられている.一方,Pgc1pはホスファチジルグリセロールをジアシルグリセロールとG3Pに分解する活性を有し,生体膜のホスファチジルグリセロール量を制御していると考えられている(23)23) M. Simockova, R. Holic, D. Tahotna, J. Patton-Vogt & P. Griac: J. Biol. Chem., 283, 17107 (2008)..
シロイヌナズナのゲノム中に13種類のグリセロホスホジエステラーゼ相同性遺伝子が単離され,タイプAとタイプBの2つのグループに分類された(24)24) Y. Cheng, W. Zhou, N. I. El sheery, C. Peters, M. Li, X. Wang & J. Huang: Plant J., 66, 781 (2011)..タイプAは一つの酵素活性ドメインを有するAtGDPD1-6であり,タイプBは2つの酵素活性ドメインをもつ“Long form”であるAtGDPDL1-7である.シロイヌナズナの精製AtGDPD1の酵素活性にはMg2+が必要であり,GroPGro, GroPCho, GroPEthに対する分解活性が報告されている(24)24) Y. Cheng, W. Zhou, N. I. El sheery, C. Peters, M. Li, X. Wang & J. Huang: Plant J., 66, 781 (2011)..一方,AtGDPDL1はグリセロホスホジエステルに対してAtGDPD1よりも極めて低い酵素活性を示すことから(25)25) S. Hayashi, T. Ishii, T. Matsunaga, R. Tominaga, T. Kuromori, T. Wada, K. Shinozaki & T. Hirayama: Plant Cell Physiol., 49, 1522 (2008).,タイプBの酵素にはグリセロホスホジエステル以外の基質が存在する可能性も示唆されている.AtGDPD1遺伝子はリンの欠乏により発現が上昇するが,葉緑体に局在するAtGDPD1を欠損させるとG3Pや無機リン酸濃度が減少し,実生の成長速度も低下する(24)24) Y. Cheng, W. Zhou, N. I. El sheery, C. Peters, M. Li, X. Wang & J. Huang: Plant J., 66, 781 (2011)..
シロバナルーピンではタイプAに属する2つのグリセロホスホジエステラーゼが報告されており,いずれもリン酸飢餓で遺伝子発現が誘導される(26)26) L. Cheng, B. Bucciarelli, J. Liu, K. Zinn, S. Miller, J. Patton-Vogt, D. Allan, J. Shen & C. P. Vance: Plant Physiol., 156, 1131 (2011)..またグリセロホスホジエステラーゼ活性を有し,根毛の発生や密度の制御に関与している.以上の知見は,これらの植物のグリセロホスホジエステラーゼが,細菌のUgpQと同様に植物のリン酸飢餓環境への適応に関与することを示唆している.
昆虫では,イエバエ(Musca domestica)の幼虫のグリセロホスホジエステラーゼ活性が解析されている(27)27) G. R. Hildenbrandt & L. L. Bieber: J. Lipid Res., 13, 348 (1972)..NCBIにはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のグリセロホスホジエステラーゼと考えられる複数のタンパク質が登録されているが,機能解析の報告はない.
哺乳動物のグリセロホスホジエステルに対する分解活性は,ラット腎臓や脳由来の膜画分と可溶性画分において古くに見いだされている(28, 29)28) J. J. Baldwin, P. Lanes & W. E. Cornatzer: Arch. Biochem. Biophys., 133, 224 (1969).29) K. Zablocki, S. P. Miller, A. Garcia-Perez & M. B. Burg: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 7820 (1991)..特に,ホスファチジルコリンの代謝産物であるGroPChoが,尿細管での高濃度のNaClや尿素による浸透圧ストレスに対抗するための細胞内有機性浸透圧物質として重要な役割を果たすと考えられており,GroPChoに対する分解活性に興味がもたれていた.一方,ラットの各脳領域のGroPChoに対する分解活性が明らかにされ(30)30) G. R. Webster, E. A. Marples & R. H. Thompson: Biochem. J., 65, 374 (1957).,脳における分布や発生過程における解析が行われている(31)31) J. N. Kanfer & D. G. McCartney: Neurochem. Res., 13, 803 (1988)..しかし一方で,哺乳動物におけるグリセロホスホジエステラーゼ遺伝子の単離は進まず,タンパク質の一次構造は未解明のままであった.最初に単離されたGDE1は細胞内の膜輸送の研究分野において,またGDE3は骨形成関連因子の探索の過程で偶然に発見され,さらに推定の酵素活性領域のアミノ酸配列から,現在では7種類のグリセロホスホジエステラーゼ相同性遺伝子が単離されている(32)32) N. Yanaka: Biosci. Biotechnol. Biochem., 71, 1811 (2007).(図4図4■細菌,酵母,および哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼタンパク質の推定酵素活性領域のアミノ酸配列の比較).哺乳動物におけるグリセロホスホジエステラーゼは,細胞質型であるGDE5以外はタンパク質構造内に膜貫通領域を有している.さらに,グリセロホスホジエステルを基質とするGDE1, GDE2, GDE3, GDE5,さらにグリセロリゾリン脂質を基質とするGDE4, GDE7のようにグリセロホスホジエステル以外の新しい基質が見いだされており,その生物学意義は大きな展開を見せている.
FarquharらはGαiファミリーのGTPaseの活性化を担うregulator of G-protein signaling(RGS)16の膜輸送における生理機能を解明する中で,RGS16をbaitとした酵母ツーハイブリッド法によってMembrane Interacting Protein of RGS16(その後,GDE1と命名)を単離した(33)33) B. Zheng, D. Chen & M. G. Farquhar: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 3999 (2000)..GDE1は2回膜貫通型タンパク質であり,細胞外,あるいは細胞内腔において酵素活性を発現すると考えられている.GDE1はGroPInsをG3Pとイノシトールに分解するホスホジエステラーゼ活性をもつことが明らかにされた(34)34) B. Zheng, C. P. Berrie, D. Corda & M. G. Farquhar: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100, 1745 (2003)..Mg2+の存在下で活性は上昇し,また,GroPIns以外にもGroPIns-4,5P2,およびGroPSerを基質とすることが示された.一方,GDE1欠損マウス(35)35) F. Kopp, T. Komatsu, D. K. Nomura, S. A. Trauger, J. R. Thomas, G. Siuzdak, G. M. Simon & B. F. Cravatt: Chem. Biol., 17, 831 (2010).では,GroPSerレベルの上昇が認められることから,GDE1がGroPSerの加水分解を担うことが示され,また,GDE1欠損マウスの中枢神経系においてGroPInsレベルも著しく上昇し,in vitroでの活性と同様にGroPInsはGDE1の良好な基質であることが確認された(図5図5■哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼにおいて示されている酵素基質).一方,GDE1はカンナビノイド受容体の内在性リガンドの一つである神経伝達物質anandamide(arachidonoyl ethanolamine)の生合成においても関与することがin vitroで示され,GDE1のグリセロホスホジエステルとは異なる基質として報告されていたが(36, 37)36) G. M. Simon & B. F. Cravatt: J. Biol. Chem., 283, 9341 (2008).37) G. M. Simon & B. F. Cravatt: Mol. Biosyst., 6, 1411 (2010).,GDE1欠損マウスにおいては中枢神経系における,anandamideの産生量に変化がなかったことから,GDE1は生体でのanandamideの生合成には関与しないと考えられている.
GDE2タンパク質は6回膜貫通領域を有し,細胞内小胞膜と形質膜に局在する(38)38) Y. Nogusa, Y. Fujioka, R. Komatsu, N. Kato & N. Yanaka: Gene, 337, 173 (2004)..マウス腎集合管細胞mIMCD3細胞を用いた解析によって,GDE2がGroPChoを加水分解することが明らかにされた.mIMCD3細胞においては,細胞外の高Na濃度による浸透圧ストレスがGDE2の発現量を減少させ,結果的に細胞内のGroPCho量を増加させるとした(39)39) M. Gallazzini, J. D. Ferraris & M. B. Burg: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105, 11026 (2008)..GroPChoはタンパク質などの高分子化合物の構造を安定化させ,細胞外の高Na+,あるいは高尿素に対する細胞内の浸透圧保護物質としての重要な働きをもつことから,GDE2は細胞内のGroPChoレベルの調節を通して浸透圧の適応において重要な役割を果たすと考えられている.一方,GDE2はGroPChoを加水分解とは異なる重要な生理機能も報告された.Sockanathanらは運動ニューロンの発生分化において重要であるレチノイン酸によって発現誘導する因子群を探索する中でGDE2を見いだした(40)40) M. Rao & S. Sockanathan: Science, 309, 2212 (2005)..GDE2は主に成熟した運動ニューロンには発現し,さらに,GDE2の発現抑制により分裂後期の運動ニューロン数の減少,および細胞死の増加が認められた(40)40) M. Rao & S. Sockanathan: Science, 309, 2212 (2005)..その後,Yanらによって運動ニューロンの細胞分化過程において酸化還元酵素peroxiredoxin 1がニワトリGDE2のCys25とCys576のS–S結合を阻害することで,GDE2タンパク質が活性化されることが示された(41)41) Y. Yan, P. Sabharwal, M. Rao & S. Sockanathan: Cell, 138, 1209 (2009)..運動ニューロンの発生におけるGDE2の生理機能は,腎臓における浸透圧調節とは大きく異なっており,GDE2のRECK(reversion-inducing cysteine-rich protein with Kazal motif’s)タンパク質のグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーからの切断活性に基づくと考えられている(42)42) S. Park, C. Lee, P. Sabharwal, M. Zhang, C. L. Meyers & S. Sockanathan: Science, 339, 324 (2013)..RECKはノッチリガンドであるDelta-like1のメタロプロテアーゼによるプロセシングを阻害することで,大脳皮質ニューロン前駆細胞のノッチシグナルを活性化していることから,GDE2はRECKのGPIアンカーからの切断(図5図5■哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼにおいて示されている酵素基質)によってDelta-like1を不活性化し,大脳皮質神経細胞の分化誘導を調節していると考えられている(43)43) P. Sabharwal, C. Lee, S. Park, M. Rao & S. Sockanathan: Neuron, 71, 1058 (2011)..以上のように,GDE2によるRECKのGPIアンカーからの切断は,グリセロホスホジエステル,つまりGroPChoの加水分解とは異なるホスホジエステラーゼ活性を示す点において極めて興味深い.
GDE3は骨芽細胞の分化過程において発現が上昇し,マウス大腿骨や頭頂骨において発現量は極めて高い(44)44) N. Yanaka, Y. Imai, E. Kawai, H. Akatsuka, K. Wakimoto, Y. Nogusa, N. Kato, H. Chiba, E. Kotani, K. Omori et al.: J. Biol. Chem., 278, 43595 (2003)..GDE3はGroPInsに特異的な分解活性を示すが,GDE1がホスホリパーゼD様に加水分解するのに対して,興味深いことにGDE3はホスホリパーゼC様の活性を示し,グリセロールとイノシトール1-リン酸へと分解する(45)45) D. Corda, T. Kudo, P. Zizza, C. Iurisci, E. Kawai, N. Kato, N. Yanaka & S. Mariggiò: J. Biol. Chem., 284, 24848 (2009).(図5図5■哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼにおいて示されている酵素基質).また,GroPIns-4P, GroPCho, GroPSerは基質とせず,酵素活性はCa2+依存性であるなど,GDE1とは性状は大きく異なる.GDE3の推定の酵素活性領域内に保存されているArg231(図4図4■細菌,酵母,および哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼタンパク質の推定酵素活性領域のアミノ酸配列の比較)の変異は,GroPIns分解活性を完全に消失させる.また,GDE3タンパクは7回膜貫通領域を有し,酵素活性領域は細胞外に面しており(44)44) N. Yanaka, Y. Imai, E. Kawai, H. Akatsuka, K. Wakimoto, Y. Nogusa, N. Kato, H. Chiba, E. Kotani, K. Omori et al.: J. Biol. Chem., 278, 43595 (2003).,事実,HEK293細胞でのGDE3の過剰発現やMC3T3-E1細胞の分化誘導において培養液中のGroPInsレベルは低下する.さらに,HEK293細胞においてGDE3は細胞周縁部や膜状仮足の伸長部に局在し,アクチン線維を消失させ,細胞の球状化を引き起こした.酵素活性を有さないGDE3変異体では形態変化は生じなかったことから,GDE3の酵素活性が重要であると考えられている.MC3T3-E1細胞においてもGDE3の発現がアクチン骨格の分解を引き起こされることから,GDE3の酵素活性依存的なアクチン骨格調節機構は極めて興味深い.GDE3を安定発現させたMC3T3-E1細胞株において,アルカリフォスファターゼやCa含量の増加などの石灰化が促進し,骨細胞分化マーカーの発現誘導が認められた(45)45) D. Corda, T. Kudo, P. Zizza, C. Iurisci, E. Kawai, N. Kato, N. Yanaka & S. Mariggiò: J. Biol. Chem., 284, 24848 (2009)..一方,GDE3安定発現は,骨芽細胞の増殖能の低下を引き起こしたが,この増殖能に与える影響はGroPInsの加水分解によって引き起こされており,以前のGroPInsが培養甲状腺細胞の増殖因子として働くとする実験結果(46)46) S. Mariggiò, J. Sebastià, B. M. Filippi, C. Iurisci, C. Volonté, S. Amadio, V. De Falco, M. Santoro & D. Corda: FASEB J., 20, 2567 (2006).と一致する.すなわち,GDE3の発現量の増加による骨芽細胞の増殖能の低下が,骨芽細胞の分化の促進に寄与したと考えられている.
GDE5は骨格筋に高発現しており,老化や脱神経によって起こる骨格筋委縮や糖尿病モデルの骨格筋においてはその発現量が低下することから,種々の骨格筋の病態との関連性が示唆されている.GDE5タンパク質は細胞質に局在しており,他哺乳動物由来GDEとは細胞内局在の面で大きく異なっている(47)47) Y. Okazaki, N. Ohshima, I. Yoshizawa, Y. Kamei, S. Mariggiò, K. Okamoto, M. Maeda, Y. Nogusa, Y. Fujioka, T. Izumi et al.: J. Biol. Chem., 285, 27652 (2010)..バキュロウイルスを利用したSF9昆虫細胞から精製したGDE5タンパク質は,GroPChoに対してMg2+依存的に分解活性を示し,GroPGro, GroPIns,およびGroPSerに対する酵素活性は小さかった(47)47) Y. Okazaki, N. Ohshima, I. Yoshizawa, Y. Kamei, S. Mariggiò, K. Okamoto, M. Maeda, Y. Nogusa, Y. Fujioka, T. Izumi et al.: J. Biol. Chem., 285, 27652 (2010)..マウス筋芽細胞株C2C12細胞の筋細胞分化において,GDE5の発現抑制はmyogeninなどの筋分化マーカーを発現上昇させ,筋管形成を劇的に誘導した.これに対して,GDE5の安定発現はC2C12細胞の筋分化を抑制した.一方,予期せぬことに,酵素活性のないGDE5のC末欠失変異体(GDE5⊿C471)も,野生型のGDE5と同様に筋細胞分化を抑制し,GDE5⊿C471を骨格筋で過剰発現させたマウスでは,II型筋線維遺伝子の発現減少に伴って筋管の小型化を示した(47)47) Y. Okazaki, N. Ohshima, I. Yoshizawa, Y. Kamei, S. Mariggiò, K. Okamoto, M. Maeda, Y. Nogusa, Y. Fujioka, T. Izumi et al.: J. Biol. Chem., 285, 27652 (2010)..GDE5⊿C471の発現はheat shock proteinレベルの増加など,ストレス反応を誘導することも示されており,ストレス誘導が筋細胞分化能の低下を招いたと考えられる.一方,GDE5遺伝子はヒト脳においても高発現しており,ヒト染色体DNAの一塩基多型解析によってGDE5遺伝子の変異と視覚野表面積との関連性が示唆されており(48)48) T. E. Bakken, J. C. Roddey, S. Djurovic, N. Akshoomoff, D. G. Amaral, C. S. Bloss, B. J. Casey, L. Chang, T. M. Ernst, J. R. Gruen et al.: Alzheimer’s disease neuroimaging initiative; pediatric imaging, neurocognition, and genetics study. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 109, 3985 (2012).,GroPChoからのコリン生成経路が脳機能において果たす生理的意義はさらに展開するものと考えられる.
GDE4タンパク質は2回膜貫通領域を有し,主に核周縁部の膜に局在する.一方,最近単離されたマウスGDE7はアミノ酸配列においてマウスGDE4と53.4%の相同性を有し,ともに2回膜貫通領域を有する点や細胞内局在において極めて類似した性質を有する.一方,GDE4とGDE7は,GroPInsやGroPChoなど,これまで想定されていたグリセロホスホジエステルに対する分解活性を示さなかった.ところが,興味深いことに,リゾホスファチジルコリンなどのリゾリン脂質に対するリゾホスホリパーゼD活性を有し,G-タンパク質共役型受容体のリガンドであり,がん細胞の増殖や遊走などの生理活性を有するリゾフォスファチジン酸(LPA)の産生に関わることが示された(49)49) N. Ohshima, T. Kudo, Y. Yamashita, S. Mariggiò, M. Araki, A. Honda, T. Nagano, C. Isaji, N. Kato, D. Corda et al.: J. Biol. Chem., 290, 4260 (2015).(図5図5■哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼにおいて示されている酵素基質).リゾホスファチジルコリンに対するリゾホスホリパーゼD活性はオートタキシンと呼ばれる血清型酵素において報告されており,オートタキシン阻害によるがん治療法が模索されている.GDE4とGDE7は細胞内型の新規LPA産生酵素であると考えられるが,さらに,バキュロウイルスを利用したSF9昆虫細胞から精製したGDE4,およびGDE7タンパク質は,アルキル型リゾリン脂質であるリゾPAF(1-O-alkyl-sn-glycero-3-phosphocholine)も良好な基質とし,アルキル型LPAを産生することも明らかになった(49)49) N. Ohshima, T. Kudo, Y. Yamashita, S. Mariggiò, M. Araki, A. Honda, T. Nagano, C. Isaji, N. Kato, D. Corda et al.: J. Biol. Chem., 290, 4260 (2015)..以上の結果から,GDE4,およびGDE7はLPAやアルキル型LPAを介したさまざまな細胞機能に対して重要な役割を担う可能性が示され,がん細胞の増殖や遊走などへの生理的関与を検証することで創薬における応用が期待される.
細菌のグリセロホスホジエステラーゼは,グリセロホスホジエステルをリン源や炭素源などとして利用するために機能しており,ある種の細菌の病原性への機能的関与も示されている.また酵母や植物においても,細胞内のリン酸が枯渇した際にグリセロホスホジエステルをリン源として利用するために機能していると考えられている.一方,哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼファミリーの役割が精力的に解析された結果,グリセロホスホジエステルを選択的に加水分解することが示されてきたが,現在では,新たな酵素基質が次々と見いだされている(図5図5■哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼにおいて示されている酵素基質).以上のように,哺乳動物のグリセロホスホジエステラーゼの酵素活性のみならず,生理的,あるいは病態的機能解析を進めることで,リン脂質生化学の基礎分野のみならず,創薬などの応用研究においてさらなる貢献が期待される.
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