Kagaku to Seibutsu 54(7): 493-499 (2016)
セミナー室
ゲノム育種からエピゲノム育種へ
Published: 2016-06-20
© 2016 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2016 公益社団法人日本農芸化学会
生物を人が望むように作り替える「育種」活動は,農耕の開始以来,バイオテクノロジーの基本であり続けてきたし,進化と遺伝子に基づく現在の生命観の出発点となった.今世紀に入ってからの,ゲノム・オーミクスレベルでの生命理解の飛躍的進展を,育種にどう活かすかが,バイオテクノロジーの最重要課題の一つとなっている.とくに,ゲノム配列情報が爆発的に蓄積し,イネをはじめとする栽培植物,ウシ,カイコなどの動物で,種内の多数系列のゲノム配列が得られ,「ゲノムに基づく育種」への探索が始まっている.
このような遺伝子・ゲノムのレベルでの生命理解の,先端を走ってきたのは微生物である.全ゲノム,トランスクリプトーム,プロテオームを解読し,全遺伝子をノックアウトして,機能を網羅的に解析することが,大腸菌,酵母などでまず行われた.微生物を利用した産業では,早くからわが国が世界をリードしてきた.そこでは,個別遺伝子だけでなく全ゲノム配列に基づいた代謝経路の改変が行われている.しかし,それらから明らかになったのは,細菌でさえ生命活動の理解が不十分であることであり,それが既存知識に基づく合理的デザインによる育種の限界となっている.
一方,デザインによるアプローチに対して,「生物が実際に行っている適応進化から学ぶ」という「進化的アプローチ」も,ゲノム情報を利用して行われ始めた.昔ながらの「生物を突然変異誘発原(試薬,放射線など)で処理したのち,望む形質をもつ系統をスクリーンする」という方法では,得られる適応的な変異はごく僅かで,ほかは無関係あるいはむしろ有害な変異であることが,全ゲノム解読から明らかになった.変異原処理なしに,選択条件で数千世代にわたって培養を継続し,ゲノムを解読して,生き残りに寄与した突然変異を探るという「実験進化」アプローチ(1)1) Y. Asakura, H. Kojima & I. Kobayashi: Nucleic Acids Res., 39, 9034 (2011).は,適応進化のしくみを一つひとつ明らかにしながら,微生物育種に貢献し始めている.しかし,この方法は,原理的に見通しが立てにくく,世代時間が僅か半時間の大腸菌でも月単位の時間がかかり,非効率であることが,実用化での困難になっている.
では,どのようにすれば,ゲノム情報オーミクス情報に基づく生命理解と,それをフルに利用した育種が可能になるのだろうか? 私たちは,「DNA配列によらないで子孫細胞に遺伝する状態」である「エピジェネティックな状態」(エピゲノム)に注目する.「ゲノムのエピジェネティックな状態(エピゲノム)を作り替えることによって,複数の遺伝子の発現を足並みそろえて変化させ,選択の対象となる多様性を創り上げる」という形の進化を生物がしてきたことは,植物・微生物で想像されてきた(図1図1■適応進化の2つのモデル).本稿で述べる私たちの研究(2)2) Y. Furuta, H. Namba-Fukuyo, T. F. Shibata, T. Nishiyama, S. Shigenobu, Y. Suzuki, S. Sugano, M. Hasebe & I. Kobayashi: PLoS Genet., 10, e1004272 (2014).は,この「エピジェネティック駆動進化モデル」に,証拠を与える.この,生物が進化に使ってきたやり方をまねることで,現状の合理的方法,実験進化法を乗り越える,有効な育種技術が実現できるだろう.
ヒストン修飾,スモールRNAなど,さまざまなエピジェネティクスの仕組みの中でも,私たちが注目するのは,DNAのメチル化である.細菌のDNAメチル化系は,ほとんどが高いDNA配列特異性(4~8 bp)をもつ.たとえば,EcoRIメチル化酵素は,5′-GAA TTCを認識して,メチル基(–CH3)を転移し,5′-GAmATT C(mA=N6メチルアデニン)とする.原核生物のDNAの塩基のエピジェネティックなメチル化としては,N6メチルアデニンのほかにN4メチルシトシン,5メチルシトシンを作るメチル化がある(図2図2■エピジェネティックなDNA塩基のメチル化(15)).
DNAメチル化酵素は,多くの場合,それによってメチル化されていないDNAを破壊する制限酵素と組んで制限修飾系を作り(図3図3■制限修飾系の作用上),遺伝的系列の隔離をもたらす(図3図3■制限修飾系の作用下).これに対して,単独で存在するDNAメチル化酵素もある.一つのDNAメチル化系の有無は,一つの細菌ゲノムの,ときには数百数千にもなるサイトのメチル化の有無を支配する.個々のサイトでのメチル化は,近傍の遺伝子の発現に影響を及ぼす場合が知られている.「分化」と「適応」という生物進化の2つの条件を,制限修飾系は兼ね備えていることになる.
私たちは制限修飾系が,ウイルスやトランスポゾンのような「利己的な動く遺伝子単位」であることに気がつき,その解析を進めてきた(3, 4)3) I. Kobayashi: Nucleic Acids Res., 29, 3742 (2001).4) Y. Furuta & I. Kobayashi: “Bacterial Integrative Mobile Genetic Elements,” ed. by A. Roberts & P. Mullany, Landes Bioscience, pp. 85–103, 2013..
そのきっかけは,制限修飾系遺伝子によるホスト細菌攻撃である(5)5) T. Naito, K. Kusano & I. Kobayashi: Science, 267, 897 (1995)..制限修飾系遺伝子を失った細胞系列では,複製された染色体にメチル化されていない認識配列が現れる.そこを残った制限酵素分子が攻撃する.それが修復されない限り,細胞は死に至る.この過程は,「分離後細胞死」あるいは「遺伝的中毒」と呼ばれ,EcoRIなどII型と呼ばれる制限修飾系に共通に見られる.この「分離後細胞死」が,制限修飾系とそれと連鎖した遺伝単位が,ほかの遺伝因子と排他的な競争をするうえで有効であることは,数理生態モデルからも支持された(6)6) A. Mochizuki, K. Yahara, I. Kobayashi & Y. Iwasa: Genetics, 172, 1309 (2006)..
制限修飾系遺伝子がトランスポゾンと同様に,ゲノムの間を動き回る事,近隣部分にゲノム再編を引き起こすことが,ゲノム配列解析と実験とから明らかになった(4)4) Y. Furuta & I. Kobayashi: “Bacterial Integrative Mobile Genetic Elements,” ed. by A. Roberts & P. Mullany, Landes Bioscience, pp. 85–103, 2013..さらに,制限修飾系には,ウイルスのような遺伝子発現制御と相互競争が見られる(7)7) K. Ishikawa, E. Fukuda & I. Kobayashi: DNA Res., 17, 325 (2010)..
図4図4■制限修飾系の3つの型に制限修飾系の3つのタイプを示している.EcoRIのようなII型では,制限酵素(R)は,認識配列内あるいはその近くで,非メチルDNAを切断する.これとは別のタンパク質に,修飾酵素(DNAメチル化酵素,M)活性が存在する.それぞれが,標的配列を認識する.
III型の制限修飾系(図4図4■制限修飾系の3つの型下)は,標的DNAを認識するドメインを備え単独でメチル化活性をももつModタンパク質と,それに結合することによって制限活性を示すResサブユニットからなる.切断は認識配列から一定の距離のところで起きる.
I型の制限修飾系(図4図4■制限修飾系の3つの型上)は,標的DNAを認識する配列特異性サブユニット(S),メチル化する修飾サブユニット(M),切断する制限サブユニット(R)からなる.SM複合体で修飾活性,SMR複合体で制限活性を示す.その認識配列は,特異的な配列2つとそれらをつなぐ一定の長さの非特異的な配列(たとえば,NNNNNNNN=N8)からなっている(図5図5■I型制限修飾系の認識配列変換左).Sサブユニットには,2つの標的配列認識ドメインTRD1とTRD2があり,それぞれが端の特異的な配列を認識する.Sサブユニットの中央にある繰り返し配列の数によって,標的DNA配列の中央のNの数が量られる場合がある.
(左)配列認識サブユニットによる標的配列認識.ドメイン1で一方の端の配列を,ドメイン2で他方の端の配列を認識する.2つのドメインの間にある反復配列の繰り返し数によって,2つのDNA配列の間の距離(Nの数)を量る.アミノ酸配列が,ドメイン1とドメイン2の間を動くことがあり,ドメイン移動(Domain Movement; DoMo)と呼ばれる.(右)ピロリ菌株での,配列認識サブユニットと認識されるDNA配列.ドメインの一つの色は,ほとんど同じアミノ酸配列を表している.P12株とF57株を比較すると,cグループについてドメイン移動があったことがわかる.文献22) Y. Furuta, H. Namba-Fukuyo, T. F. Shibata, T. Nishiyama, S. Shigenobu, Y. Suzuki, S. Sugano, M. Hasebe & I. Kobayashi: PLoS Genet., 10, e1004272 (2014).より改変.
I型制限酵素の作用については,「SMR複合体が未メチル化サイトを認識すると,そこからDNAをたぐり寄せていき,もう一つのSMR複合体に出会うと,そこでDNAを切断する」という,奇妙なモデルが提唱されていた.私たちは,I型制限酵素がモデルDNA複製フォークを切断することを示し(8)8) K. Ishikawa, N. Handa & I. Kobayashi: Nucleic Acids Res., 37, 3531 (2009).,「SMR複合体がDNAをたぐり寄せていき,停止している複製フォークに追いつくと,そこでDNAを切断し,細胞死を引き起こす」というモデルを提唱している.
制限修飾系遺伝子の「動き」の単位は,さまざまである.プラスミドやファージのような大きな「動く遺伝子」に乗って動く場合も,制限修飾系遺伝子単位で動く場合もある.後者については,DNA型トランスポゾンそっくりで,短い標的配列繰り返しを挿入の両側に作り出すものがある(9)9) Y. Furuta, K. Abe & I. Kobayashi: Nucleic Acids Res., 38, 2428 (2010)..また,100塩基対程度の長い標的配列繰り返しを作り出しながら挿入するというユニークな挿入モードも見られる(10)10) A. Nobusato, I. Uchiyama, S. Ohashi & I. Kobayashi: Gene, 259, 99 (2000)..このような長い繰り返しに挟まれた制限修飾系遺伝子(X–RM–X)は,縦に繰り返す重複構造(X–RM–X–RM–X–RM–X–RM–X–RM–X–RM–X)を作り出すことがある(11)11) M. Sadykov, Y. Asami, H. Niki, N. Handa, M. Itaya, M. Tanokura & I. Kobayashi: Mol. Microbiol., 48, 417 (2003)..分子進化解析から,制限遺伝子と修飾遺伝子が別々になる場合も,知られている.
ところで,これまで知られている中で,最も多数の制限修飾系遺伝子をもっているのはピロリ菌という細菌である.この菌は,世界人口の半数の胃に幼年期から住み着いて,ついには胃がんなどの疾患を引き起こす.そのピロリ菌の複数のゲノム配列を比較することによって,動きの単位が標的認識ドメインである場合がわかった.
III型の制限修飾系がメチル化する配列を認識するドメイン(Target recognition domain; TRD)(図4図4■制限修飾系の3つの型下)には,さまざまなアミノ酸配列グループがあった.それらは,異なる座の遺伝子にコードされるModタンパク質の間を飛び移る(12)12) Y. Furuta & I. Kobayashi: Nucleic Acids Res., 40, 9218 (2012)..そのもとにあるのは,標的配列認識ドメインをコードする遺伝子部分の,異なる座の遺伝子への組換えである.驚いたことに,これらのドメイン配列のいくつかは,系統の垣根を超えて全細菌界に広がっていた.
I型の制限修飾系についても,2つの標的認識ドメインの動きが発見された.それを説明する前に,実験によるメチローム測定について述べておこう.
上のゲノム比較の結果は,「これらの制限修飾系が認識配列を頻繁に取り替える」ことを示唆していた.それを検証すべき時期にタイミングよく現れたのが,第三世代のシーケンサーPac Bioマシンによる「一分子リアルタイムシーケンシング」技術である(図6図6■一分子リアルタイムシーケンシング技術によるメチローム解読).
第3世代シーケンサー(Pac Bioマシン)による(16)16) T. A. Clark, I. A. Murray, R. D. Morgan, A. O. Kislyuk, K. E. Spittle, M. Boitano, A. Fomenkov, R. J. Roberts & J. Korlach: Nucleic Acids Res., 40, e29 (2012)..文献1717) Pacific Biosciencesホームページ:http://www.pacificbiosciences.com/より改変.
この方法では,一分子のDNAポリメラーゼが個室に固定される.そこにDNAを与えると,その配列に応じて,異なる蛍光でラベルされているATG Cのうちのいずれかの先駆体が,次々とDNAに取り込まれる.それを映画に撮れば,鋳型DNAの配列がわかる.20 kb程度と,これまでの方法に比べて飛躍的に長くDNA配列を読むことができる.さらに,鋳型にメチル化などの修飾があれば(N6メチルアデニン,N4メチルシトシン),合成が遅れるので,どの塩基がメチル化されているかがわかる.
図7図7■細菌メチロームの一部に示すのは,このようにして解明されたピロリ菌5株のある遺伝子のメチル化状態である(2)2) Y. Furuta, H. Namba-Fukuyo, T. F. Shibata, T. Nishiyama, S. Shigenobu, Y. Suzuki, S. Sugano, M. Hasebe & I. Kobayashi: PLoS Genet., 10, e1004272 (2014)..株によってメチル化の程度もパターンも異なる.その生物学的意義の解明は,これからの大きな課題である.
ピロリ菌のrpoB遺伝子.ある色の棒は,あるDNA配列でのメチル化を示す.F16~F57は,ゲノム配列のよく似た日本株.文献22) Y. Furuta, H. Namba-Fukuyo, T. F. Shibata, T. Nishiyama, S. Shigenobu, Y. Suzuki, S. Sugano, M. Hasebe & I. Kobayashi: PLoS Genet., 10, e1004272 (2014).より改変.
近縁株の間でゲノム配列(遺伝子構成)とメチル化されるDNA配列モチーフを比べることによって,それらを対応づけることができた.図5図5■I型制限修飾系の認識配列変換右に,ある遺伝子座にあるI型の制限修飾系の配列特異性決定遺伝子の場合を示す.TRD1には多数のアミノ酸配列のレパートリーがあり,異なるDNA配列を認識している.これらは,相同組換えでとり変わるだろう.TRD2も同様である.TRD1とTRD2で同じ(あるいはほとんど同じ)アミノ酸配列がある場合は,それらをコードする遺伝子配列が遺伝子内(TRD1とTRD2の間)で移動したと考えられる.これは,ゲノム配列比較から予想されていた反応で,ドメイン移動(Domain Movement, DoMo)と名づけられたものである.「遺伝子内の遺伝子変換」とも呼べる,新しい組換えの仕組みである.
そのほかに,TRD1とTRD2の間の繰り返し配列の数によって,メチル化モチーフの中央部分が変わる.これらのバリエーションを考えると,この座だけで,10×10×10=103程度のメチル化パターンが可能になる.ピロリ菌ゲノムには,少なくとも20個程度のメチル化配列特異性を決める遺伝子があるので,全体として実現できるメチル化パターンの多様性は,天文学的な数字になる.
このようなメチロームの多様性は,何のためにあるのだろうか? それぞれが,ゲノムの異なるサイトのセットのメチル化によって,固有の遺伝子発現パターンを成立させ,固有の形質セットを実現することが想像される(図8図8■エピジェネティックス駆動進化モデル).
実際I型の制限修飾系の特異性決定遺伝子の一つをノックアウトして,トランスクリプトーム解析をすると,一塊の遺伝子の発現が上がっていた.そこには,その制限修飾系の認識するメチル化モチーフが3つあり,最も上流のものは,長いパリンドロームの中に埋め込まれていた.このパリンドロームに対称的なタンパク質などが結合することに,メチル化が影響し,この遺伝子塊の発現を変えることが,示唆された(図9図9■I型制限修飾系の配列特異性遺伝子によって発現が影響される遺伝子塊).
A. ノックアウトによって,4つの遺伝子の発現が上昇する.それらには,赤い棒で示すメチル化サイトがある.B. 最も上流のメチル化サイトは,長いパリンドローム配列に埋め込まれた形になっている.文献22) Y. Furuta, H. Namba-Fukuyo, T. F. Shibata, T. Nishiyama, S. Shigenobu, Y. Suzuki, S. Sugano, M. Hasebe & I. Kobayashi: PLoS Genet., 10, e1004272 (2014).より改変.
メチル化酵素の遺伝子内に単純反復配列(CCC CCCのような)があると,それの伸び縮みによって,フレームシフトが起こり,遺伝子が壊れる.それによって,一群の遺伝子の発現が影響される場合が知られており,相変異(phase variation)と呼ばれている.単純反復配列の伸び縮みが,遺伝子の上流の非翻訳領域にあって,遺伝子発現がON/OFFされる場合も,同じことになる.
制限修飾系は自分自身の発現を制御するさまざまな仕組みを備えている(13)13) I. Mruk & I. Kobayashi: Nucleic Acids Res., 42, 70 (2014)..ある場合にはメチル化酵素のN端が転写因子として働き,別の場合には,独立の転写制御因子が制限修飾遺伝子に連鎖する.また,アンチセンスRNAによる制御も知られている(14)14) I. Mruk, Y. Liu, L. Ge & I. Kobayashi: Nucleic Acids Res., 39, 5622 (2011)..
以上の結果は,「さまざまなきっかけによって,メチロームがさまざまに変貌し,それにともなって遺伝子発現パターンと形質が変貌する.それらが進化の素単位となる」という遺伝と進化の考え方を支持する(図8図8■エピジェネティックス駆動進化モデル).この複雑なネットワーク,形質との関係,メチロームの変換を引き起こすしくみについて,現在研究が進められている.これらの解析は,一塩基分解能のメチローム解読と結びついているので,エピジェネティックスのさまざまな研究のなかでも,明快な結果を産み出す可能性がある.
以上の研究成果は,「ゲノムではなくエピゲノムを標的とした育種」への道を開く.具体的には,DNAメチル化酵素のDNA配列特異性をさまざまな方法で変えることによって,遺伝子発現パターンと形質パターンを変え,得られる多様なエピゲノムに選択をかけるという方法である.そのような「エピゲノム育種」技術が実現すれば,微生物発酵産業で有用物質の生産に貢献し,藍藻あるいは光合成細菌による光合成,希少資源の獲得,環境のバイオレメディエーションなど,さまざまな目的での細菌の育種に活用されるだろう.その技術は,現在の最先端の育種法である「ゲノム改変による合理的デザイン」と「多数世代の選択培養による実験進化」による育種を,置き換えあるいは相補することになるであろう.たとえば,これまで手の付けようがなかった複雑な代謝ネットワークに依存する物質,全く合成経路のわからない物質の生産にも,利用できる可能性がある.物質生産だけでなく,複数のストレスへの耐性など,複数の形質を同時に複合的に向上させる必要があるという場面でも,力を発揮することだろう.「エピゲノム育種」の成立は,微生物だけでなく植物・動物での育種の根本の考え方をも変革すると予想される.
Reference
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17) Pacific Biosciencesホームページ:http://www.pacificbiosciences.com/