セミナー室

腸上皮細胞接着活性を有するセグメント細菌の生態学的性状と腸粘膜免疫の活性化腸粘膜接着細菌が腸機能を活性化する

Yoshinori Umesaki

梅﨑 良則

ヤクルト本社中央研究所

Published: 2016-12-20

はじめに

腸内フローラが健康や疾患と密接に関係していることが多くの人に理解されるようになり,本分野の研究はますます佳境に入ってきた感がある.抗生剤を多用することによって起きやすいClostridium difficile再発性腸炎などの疾患が,健常なヒトの便,すなわち腸内フローラを経口的に移植することによって劇的に改善したという報告は記憶に新しいところである.これまで腸内フローラと健康・疾患のかかわりについては病態者と健常者の腸内フローラの比較と動物モデルでの基礎研究がなされてきた.前者は嫌気培養法から分子生物学的定量法と進展著しい次世代シーケンサーによる網羅的解析手法による腸内フローラ構成の解析,後者は1940年代に開発された無菌化ネズミのノトバイオート化と病態モデル動物による腸内菌と宿主応答の解析である.いずれも高度な技術開発の恩恵を受け,腸内フローラと宿主動物,特にヒトの健康との関係が徐々に明らかになりつつある.本セミナーでは,後者の研究のなかで腸免疫システムに極めて強いインパクトをもつことが明らかになったネズミの常在性腸内細菌種,特にセグメント細菌(Segmented filamentous bacteria; SFB)について腸内フローラの構成員としての生態学的な特徴と種々の腸粘膜免疫システムへのかかわりを中心に紹介したい.

腸内フローラと宿主の相互作用研究のスタート

1. 無菌動物の開発とその後の展開

腸内フローラの働きや生体における役割を明らかにする近道は,無菌動物を作製して通常動物との比較をすることであろう.歴史的にみても,20世紀の半ばに今日実験動物として汎用されるラットとマウスの無菌動物が作出されると,動物のライフスパンを含めて個体レベルから組織レベルまで種々のレベルで両者の比較がなされた.肉眼的にも明らかに肥大化した無菌マウスの盲腸は無菌と通常ネズミの違いを示す代表的な形質である.今日,両者の免疫生理機能の違いが明確に示されている腸粘膜を構成する細胞群においても,当時から腸粘膜の細胞密度の顕著な違いが指摘されていた.そしてこれらの違いは宿主と腸内フローラとの相互作用の代表的な現象として解析がなされた.無菌動物の肥大化した盲腸の成因は,無菌動物では微生物の代謝活性が欠如しているため,消化管の浸透圧に寄与する高分子物質の分解ができず通常動物の内容物に比較して膠質浸透圧が高い状態が維持されていることが主因と考えられ,それらを担う物質の特定が試みられた(1)1) H. A. Gordon & L. Pesti: Bacteriol. Rev., 35, 390 (1971)..腸粘膜の構成因子である上皮細胞とその下層の粘膜固有層細胞においては,それぞれ分裂・移動速度のキネティックスと免疫応答が精力的に解析されてきた.近年,上皮細胞のキネティックスを調べる研究は少ないように思えるが,当時,組織学上の特徴や放射線感受性などより特定されていた幹細胞領域についても今日では幹細胞マーカーLgr5が明らかにされ,腸内フローラとの相互作用の解析が進んでいる(2)2) G. Nigro, R. Rossi, P. H. Commere, P. Jay & P. J. Sansonetti: Cell Host Microbe, 15, 792 (2014)..粘膜固有層細胞においては,免疫機能に特化したパイエル板が存在する小腸の解析が中心であったと思われる.今日ではフローサイトメトリーやイメージング技術などの進展と相まって,当時と比較してはるかに詳細な解析が可能になっている.

腸内フローラそのものの解析については,当時は光岡らの開発した腸内菌の嫌気培養法に依存しており,フローラの全体像の解析は近年の次世代シーケンサーによる16S rDNA配列を使った網羅的解析まで待つ必要があった.特にマウス,ラットの腸内フローラの大部分を占める腸内細菌群の菌種の特定は困難を極め,Clostridiaceaeに含まれるいくつかの細菌種は形態的な特徴からその動態が推定されてきた.モデル動物であるネズミを使った免疫応答や上皮細胞のキネティックス解析は小腸が中心であったが,腸内フローラの解析は大腸や糞便を対象にしたものが多く,両者を対応させるためには特定の腸内細菌種を無菌動物に定着させたノトバイオート(様)動物が有効な実験系であった.

2. 腸内フローラの宿主への影響を評価するマーカーの検索

前節で述べたように,無菌動物の開発に伴って腸内フローラと宿主との相互作用の研究が本格的にスタートし,現在は免疫応答のみでなく,栄養,代謝内分泌,さらに脳神経系にまでその影響が及んでいる.筆者らが腸内フローラと宿主との相互作用の研究を開始したのは約40年前にさかのぼるが,まずどのような実験系で腸内フローラの影響を評価するかについて悩んだ.当時は動物レベルの研究技術は限定されたものであったが,生化学的な解析は動物組織であっても詳細な解析が可能であったし,放射性アイソトープと組み合わせれば感度よい比較解析が可能であった.一方,今日,免疫応答解析などで汎用されるフローサイトメトリー技術は当時まだ開発途上で多くの研究施設では制約の多い技術であった.このような状況も考え合わせ,筆者らは宿主側の最前線と考えられる腸上皮細胞の微絨毛膜成分を対象として,その生化学的解析によって無菌マウスと通常マウス,実験的にはより比較しやすい無菌マウスに強制的に糞便フローラを経口的に移植し定着させた通常化マウスと比較した.また,解析対象として最初は糖質,タンパク質,脂質のいずれにも限定せずに両者の違いを最も顕著に表す生体物質を求めて,放射性アイソトープで標識したいくつかのアミノ酸や糖を無菌および通常化マウスの腹腔に投与して,腸上皮細胞膜成分への放射能の取り込みを測定した(3, 4)3) Y. Umesaki, A. Suzuki, T. Kasama, K. Tohyama, M. Mutai & T. Yamakawa: J. Biochem., 90, 1731 (1981).4) Y. Umesaki, K. Tohyama & M. Mutai: J. Biochem., 92, 373 (1982)..腸組織については多くの腸内菌が定着している大腸ではなく,当時でも上皮細胞の系譜がよくわかっていた小腸の中で相対的に腸内菌密度の高い回腸部を選択した.実験的には胃から大腸部まで解析できればベストと思われるが,現実的に少人数での微絨毛膜の解析を考えると腸の部位を特定することが賢明と思われた.小腸上皮細胞微絨毛膜の調製は短時間に処理することがよりインタクトな膜の調製を可能にし,アティファクトをできるだけ排除することにつながると思われる.結果的に両者の違いを最も顕著に表す腸上皮細胞膜成分として糖脂質成分が検出された.具体的には微絨毛膜の脂質画分において無菌マウスには存在せず,通常化マウスのみに放射性フコースで標識される成分がTLCで確認された.この物質は単離後,構造解析によりフコシルアシアロGM1(FGA1)と呼ばれるスフィンゴ糖脂質であることが判明した.

常在菌と腸粘膜応答の解析

1. 腸内細菌の定着と腸上皮細胞の生化学的形質の変化

上記のような過程を経て腸内フローラの影響を最も解析しやすいと想定される物質を手にすることができた.定量的には両者の違いを示す物質は上記のFGA1以外にも存在すると思われたが,無菌マウスではFGA1合成能が完全に欠失していることより本合成系を指標にすることはその後の本物質の合成を司る腸内菌の特定にとって早道と判断した.

FGA1の合成は,アシアロGM1(GA1)を前駆物質としたα(1→2)フコース転移酵素(FT)の産物であることが明らかになったので,FT誘導能を指標にした腸内菌探索を実施した.まず無菌マウスに当時研究所で保有していたマウス由来大腸菌株からそのほか,BacteroidesClostridium,さらにヒト由来のビフィズス菌を含めた腸内菌株を単純な組み合わせから複雑な組み合わせまで種々のノトバイオートを作製してFT誘導を調べたがいずれにも誘導能がなかった(5)5) Y. Umesaki: Bifidobact. Microflora, 8, 13 (1989)..無菌マウスの通常化実験によってFGA1合成の経時変化を調べた結果,腸内フローラ定着後,数日以内に上皮細胞のGA1がすべてFGA1に変換するほどの高いFT誘導が観察されるが,通常化後3週間もするとその1%以下に低下するようなオーバーシュート現象を示し(6)6) Y. Umesaki, T. Sakata & T. Yajima: Biochem. Biophys. Res. Commun., 105, 439 (1982).,それを考慮した誘導期間を設定した.後述するようにSFB単独定着マウスの作製によって初めてSFBがFT誘導能をもった腸内細菌であることが確認されたが,その過程で再現性は得られなかったが,当時GA1結合性を示した大腸菌(5)5) Y. Umesaki: Bifidobact. Microflora, 8, 13 (1989).の単独定着マウスの1頭で高いFT誘導を認めた.近年,fut2(FTをコードしている遺伝子であることが判明)の誘導機構がほぼ解明され(7~9)7) Y. Goto, T. Obata, J. Kunisawa, S. Sato, I. I. Ivanov, A. Lamichhane, N. Takeyama, M. Kamioka, M. Sakamoto, T. Matsuki et al.: Science, 345, 1254009 (2014).8) T. A. Pham, S. Clare, D. Goulding, J. M. Arasteh, M. D. Stares, H. P. Browne, J. A. Keane, A. J. Page, N. Kumasaka, L. Kane et al.; Sanger Mouse Genetics Project: Cell Host Microbe, 16, 504 (2014).9) J. M. Pickard, C. F. Maurice, M. A. Kinnebrew, M. C. Abt, D. Schenten, T. V. Golovkina, S. R. Bogatyrev, R. F. Ismagilov, E. G. Pamer, P. J. Turnbaugh et al.: Nature, 514, 638 (2014).,そのなかで無菌マウスへのLPSの経口投与によってもfut2が強く発現されることが報告されており(9)9) J. M. Pickard, C. F. Maurice, M. A. Kinnebrew, M. C. Abt, D. Schenten, T. V. Golovkina, S. R. Bogatyrev, R. F. Ismagilov, E. G. Pamer, P. J. Turnbaugh et al.: Nature, 514, 638 (2014).,この結果も大腸菌の血中移行がたまたまその個体に生じたのかもしれない.

2. 腸内細菌の定着と腸粘膜免疫学的形質の変化

腸上皮細胞のFT誘導を指標にして腸内フローラの中から腸粘膜の活性に強いインパクトを与える腸内細菌を特定することが初期段階ではできなかった.当時,FT誘導の背景として上皮細胞の活性化などの機能変化が推定されたが,器官レベル,個体レベルの生理的意義を推定することはかなり困難であった.そこで腸内菌定着に対する個体レベル,器官レベルでの生理応答をより反映した指標が望まれた.前に議論したように実験技術の進展は研究を推進させるには大きな力となるが,フローサイトメトリーによる免疫細胞の解析技術は腸組織にも取り入れられ,1980年代後半になるとそれまで不明な点が多かった腸組織,特に上皮細胞層に存在するリンパ球,すなわち腸上皮細胞間リンパ球(IELs)の特徴がわかってきた.その代表的なものは新しく発見されて話題となっていたTCRγδ型のT細胞がIELsには非常に多いということであった(10)10) A. Bandeira, T. Mota-Santos, S. Itohara, S. Degermann, C. Heusser, S. Tonegawa & A. Coutinho: J. Exp. Med., 172, 239 (1990)..そして,通常マウスと無菌マウスの比較も報告されるようになった.またIELsは腸上皮細胞と接しており,感染に対する生理応答に深く関与していることも推定された.このような背景の下に,IELsの動態,活性を指標に腸内フローラとの相互作用を評価する方向へシフトした.幸いなことに実験系として用いたBALB/c系統のマウスは無菌マウスと通常マウスの小腸IELsを比較すると,細胞数以外にTCRαβIELsとTCRγδIELsの構成比が著しく異なっていた(11)11) Y. Umesaki, H. Setoyama, S. Matsumoto & Y. Okada: Immunology, 79, 32 (1993)..そこで,TCRαβIELsの比率とその細胞傷害活性を指標として腸内細菌種を探索することを試みた.

その結果,古くから無菌マウスの肥大化した盲腸を縮小させることが知られていた糞便中のクロロフォルム耐性菌,すなわち芽胞菌画分を無菌マウスに経口投与して定着させるとTCRαβIELsの動態や細胞傷害活性を大きく変化させることが明らかとなった(12)12) Y. Okada, S. Matsumoto, A. Imaoka, H. Setoyama, H. M. Nanno, M. Kawaguchi & Y. Umesaki: Infect. Immun., 62, 5442 (1994)..しかしながら,ヒトを含めてラット由来腸内菌には本活性がないことも明らかとなった.このようなクロロフォルム耐性の芽胞形成菌の大部分はClostridiaceaeであると考えられたが,通常の嫌気培養に用いる非選択培地でコロニーを形成しうる腸内菌のなかには上記活性をもつ腸内菌が含まれていないことも示された.以上より,宿主特異性の強い難培養性の芽胞菌のなかにわれわれが求める腸内菌が存在すると推定された(図1図1■IELsを活性化する腸内細菌の性質).

図1■IELsを活性化する腸内細菌の性質

種々の性質をもつ腸内細菌群を無菌マウスに導入し,TCRαβIELsの比率(赤),その細胞傷害活性(緑),およびThy-1陽性細胞の比率(青)をIELsの活性化の指標として測定した.いずれの指標においてもマウス由来で難培養性の芽胞形成菌がマウスIELsを活性化することが示唆された.対照として無菌マウスと通常マウスの値を示した(文献12の表を改変).

セグメント細菌(SFB)による腸免疫の活性化

1. SFBの存在と生理応答への関与

前節で述べたようにマウスIELsのリクルートと細胞傷害活性獲得にはマウス由来で難培養性の芽胞形成能をもつ腸内菌が関与している可能性が強く示唆された.マウスの腸内には大腸を含めればこの条件に合致する腸内菌はClostridaceaeを筆頭に極めて多くの候補者がいると思われ,ノトバイオート化によってスクリーニングするのは現実的には困難であると思われた.しかし,われわれにとって幸運であったのは,すでにその時点までにClostridiumのカクテルを経口投与したノトバイオートマウスではFT誘導が認められないことを経験していた.そこでFT誘導も含めてIELsなど,われわれが評価に用いた腸粘膜形質はいずれも小腸の形質であったことより目的とする腸内菌のニッチを小腸であると仮定すると,その条件を満たす腸内菌種は限定された.そのなかでわれわれにとって最も魅力的であったのは,すでにSavageらによってマウス,ラットで生態学的な研究がなされ通常Segmented filamentous bacteria(SFB)と呼んでいた腸内細菌であった(13)13) C. P. Davis & D. C. Savage: Infect. Immun., 10, 948 (1974)..本菌は回腸をニッチとし上皮細胞に接着して棲息していること,またこの菌は芽胞を有した難培養性の細菌で,その定着能はマウス・ラット間でも宿主特異性があることが報告されていた.したがって先の「ラットには存在しない,もし存在しても活性を発揮できない,一方,マウス腸内には存在して活性を発揮する芽胞形成能をもった難培養性の腸内菌」というわれわれの仮定した条件をほぼ満たしていた.そこで,SFBが求める腸内菌であるかを検証するため本菌の単独定着マウスの作製を試みた.

2. SFB単独定着系の開発とその特性解析

SFBはin vitroでの培養が未達成であったので,SFB単独定着マウスを作るためには何らかの手法でSFBのみを含む試料を調製する必要があった.1990年当時,マニュプレーターやフローサイトメトリーによる単一菌の分離ということも技術的に不可能でなかったかもしれないが,無菌マウスへの経口投与後の再生効率も予想しにくい状況であったので一般的な操作ですぐに取り組める手法を模索した.幸いなことにSFBが強く接着している回腸部の上皮細胞の分離に関してはすでに経験があったことや,クロロフォルムなどの有機溶媒処理による芽胞形成菌を選別する操作法はすでに実施例があり,すぐに取り組める状況であった.そこでまず通常マウス回腸の上皮細胞をEDTA法で分離後,十分に洗浄して非接着性の菌は含まないような上皮細胞画分を調製した.顕微鏡でSFBが接着した上皮細胞を確認後,3%クロロフォルムを含む嫌気希釈培地で上皮細胞画分を処理した.その後,嫌気培養に用いる炭酸ガスをバブリングさせてクロロフォルムを揮発させた.このようにして得られた一定の長さの芽胞を含んだSFBを計算上50個程度含まれるように調製した希釈液を投与した無菌マウスで,投与後6日目の糞便にSFB様細菌のみが含まれていることを顕微鏡で観察した.糞便培養の結果,EG培地でBacillusのコロニーが検出されたが,糞便グラム重量あたりBacillusの濃度は104,SFBはスメア標本で107であった.そこでBacillus菌数を排除できるような希釈率で投与した結果,見かけ上のSFB単独定着マウスが作製できた(14)14) Y. Umesaki, Y. Okada, S. Matsumoto, A. Imaoka & H. Setoyama: Microbiol. Immunol., 39, 555 (1995)..以後,SFBのみが定着したマウスの糞便をさらに高希釈倍率から順次無菌マウスに投与して,見かけ上のSFB単独定着マウスを再調製した.微生物学的な均一性を担保するために糞便の16S rRNA遺伝子をクローニングして,約10個の遺伝子配列を決定した結果,同一の配列と判断された.最終的にSFBの腸粘膜の定着像を確認し(図2図2■SFBの上皮細胞への接着像),単独定着マウスとして以後実験に供した.

図2■SFBの上皮細胞への接着像

SFB単独定着マウス回腸上皮細胞へのSFBの接着像.(a)回腸絨毛のノマルスキー像,(b~d)パイエル板表層および周囲の絨毛の上皮細胞の走査電子顕微鏡像.(c)および(d)は(b)の強拡大(文献31の図を引用).

まず,本菌選択の指標として用いたIELsの動態,活性化について調べた.期待されたとおり,IELsの動態が大きな影響を受けた.特にTCRαβIELsがSFB投与後3週目には顕著な増大を示した.ただし,通常マウス糞便の腸内フローラ全体を投与した通常化マウスと比較すると増大幅は小さかった.このことはIELsに対するSFBの影響は腸内フローラ全体の影響の一部であることを示唆している.もう一つの指標としたTCRαβIELsの細胞傷害活性(redirected cytolytic activity)はほぼ通常化マウス程度レベルの活性を示した.TCRβ鎖のレパートアを調べた限りではSFBと腸内フローラ全体の刺激の違いはあまりなかったが,CD8の分子種,すなわちαβヘテロダイマーとααのホモダイマーの比率を両者で比べると明確に異なっていた(14)14) Y. Umesaki, Y. Okada, S. Matsumoto, A. Imaoka & H. Setoyama: Microbiol. Immunol., 39, 555 (1995)..そのため,SFBは腸粘膜など末梢で抗原刺激を受けると考えられているIELsのCD8αβサブポピュレーション(15)15) H. Cheroutre, F. Lambolez & D. Mucida: Nat. Rev. Immunol., 11, 445 (2011).への影響が顕著で,胸腺から直接移動してくるCD8ααIELsにはあまり影響しないことが強く示唆された.腸粘膜免疫応答として重要なIgA分泌の促進に関しては,われわれより少し前に報告がなされたが(16)16) H. L. Klaasen, P. J. Van der Heijden, W. Stok, F. G. Poelma, J. P. Koopman, M. E. Van den Brink, M. H. Bakker, W. M. Eling & A. C. Beynen: Infect. Immun., 61, 303 (1993).,このIgA分泌増大は小腸のみでなく大腸粘膜固有層のIgA産生細胞も増加していることがわれわれの解析から明らかとなった.興味あることに腸内でのニッチを異にするClostridium 46株のカクテル投与の結果と比較すると両者の影響は明確に異なっており,小腸ではSFB,大腸ではClostridiumが通常化刺激の大きな因子となっていることが強く示唆された(17)17) Y. Umesaki, H. Setoyama, S. Matsumoto, A. Imaoka & K. Itoh: Infect. Immun., 67, 3504 (1999)..さらに上皮細胞の形質について注目してみると,既述した通常化による上皮細胞膜成分のフコシル化や機能的には未解明であるがMHCクラスII分子の発現がSFB単独定着によって確認された(図3図3■SFBの上皮細胞への接着による種々の腸粘膜免疫系に対する活性化機構の推定のルート①~③).

図3■SFBの上皮細胞への接着による種々の腸粘膜免疫系に対する活性化機構の推定

ルート①:パイエル板など,末梢で抗原刺激を受けた後,CD8(αβ)陽性T細胞のIELsとしてのリクルートを促進する.ルート②:パイエル板濾胞B細胞のプライミング,その後循環系を経て小腸や大腸粘膜固有層へのホーミング,IgA産生を促進する.ルート③: ILC3を活性化し,分泌されたIL22によって上皮細胞のFT活性を誘導する.ルート④:上皮細胞のSAA産生を亢進し,CD4陽性ナイーブT細胞を樹状細胞の存在下でTh17細胞に分化誘導する(文献31の図を一部改変).

3. SFBによるTh17細胞誘導の発見

腸粘膜は外界の病原微生物に対する生体防御の最前線であり,上皮細胞を含めて生体防御にはたらく多彩なシステムが存在している.上記のIELsもほとんどがT細胞で構成されており,胸腺で選択されたあと直接,あるいは末梢の抗原で活性化を受けたあと,上皮細胞間にリクルートする(15)15) H. Cheroutre, F. Lambolez & D. Mucida: Nat. Rev. Immunol., 11, 445 (2011)..近年さらに粘膜固有層には調節性T細胞(Treg)に分化したヘルパー型T細胞やIL-17産生を特徴とするTh17細胞が多いことが知られている.言うまでもなくこれらの細胞の動態や活性は感染症や炎症の発症や抑制に深く関係していることが知られている.

ニューヨーク大学のLittmanのグループはTh17細胞と腸内フローラの構成が関係していることをJackson社とTaconic社という別々のブリーダーで育種されたC57BL/6の同系統のマウスの粘膜固有層のTh17細胞の密度の違いより推定していた(18)18) I. I. Ivanov, L. Frutos Rde, N. Manel, K. Yoshinaga, D. B. Rifkin, R. B. Sartor, B. B. Finlay & D. R. Littman: Cell Host Microbe, 4, 337 (2008)..たとえばTh17細胞の密度が低いJackson社のマウスにTaconic社のマウスの糞便フローラを移植するとTh17細胞が誘導されることを観察していた.一方,本田ら(現 慶応大学)もT細胞の分化と腸内細菌の対応を調べていたが,腸内菌としてよく知られていたBacteroidesClostridiumにはTh17細胞の誘導能がないことより,われわれが作製したSFB単独定着マウスでテストすることになった.その結果,ほかの菌群では観察できなかったTh17誘導活性がSFBの単独定着マウスで確認された.最終的にはより確かな現象であることを確認するため,Littmanのグループと共同してSFB単独定着マウスより調製した糞便懸濁液をTh17細胞がほとんど検出されないJackson社のマウスに経口投与したところ,Taconic社のマウスからの糞便移植と同様にTh17細胞誘導を確認した(19)19) I. I. Ivanov, K. Atarashi, N. Manel, E. L. Brodie, T. Shima, U. Karaoz, D. Wei, K. C. Goldfarb, C. A. Santee, S. V. Lynch et al.: Cell, 139, 485 (2009)..このとき腸内ではSFBが増殖し接着していることを走査型電子顕微鏡とPCRで確認した.Jackson社とTaconic社の糞便のフローラ構成を16S rRNA遺伝子アレイで調べると確かにSFBに対応する配列がJackson社では見つからず,Taconic社のものからは検出できることも明らかとなった.このときの両ブリーダーの腸内フローラの違いはSFB以外にLactobacillusなどにおいても観察されている.

上記の発表にあたっては推定されるメカニズムと病態や生理への影響が要求された.メカニズムに関しては腸上皮細胞のマイクロアレイ解析の結果,SFB定着時には血清アミロイドA(SAA)のアイソマー分子のいずれもが高発現しており,in vitroでナイーブなT細胞を脾臓より調製後,抗原提示能をもつ腸粘膜由来樹状細胞(DC)と一緒にSAA分子を加えるとSAA濃度依存的にTh17細胞が誘導されることが示された(図3図3■SFBの上皮細胞への接着による種々の腸粘膜免疫系に対する活性化機構の推定のルート④).後に,抗原提示には腸粘膜のDCが必須であることがIvanovらによって(20)20) Y. Goto, C. Panea, G. Nakato, A. Cebula, C. Lee, M. G. Diez, T. M. Laufer, L. Ignatowicz & I. I. Ivanov: Immunity, 40, 594 (2014).,またTh17細胞のハイブリドーマがSFBの抗原を認識することがLittmanらによって報告された(21)21) Y. Yang, M. B. Torchinsky, M. Gobert, H. Xiong, M. Xu, J. L. Linehan, F. Alonzo, C. Ng, A. Chen, X. Lin et al.: Nature, 510, 152 (2014)..後者の解析にあたってはSFBのゲノム解析のプロセスが必要でありこれについては後述する.病態生理と本菌との関係については,Citrobacter rodentiumというネズミ由来病原菌の感染においてSFBの定着によって誘導されたTh17細胞が感染抑制に寄与していることが強く示唆された(18)18) I. I. Ivanov, L. Frutos Rde, N. Manel, K. Yoshinaga, D. B. Rifkin, R. B. Sartor, B. B. Finlay & D. R. Littman: Cell Host Microbe, 4, 337 (2008).

SFBの細菌学的・生態学的特性

1. SFBの上皮細胞への接着と宿主特異性

SFBは既述したように腸粘膜免疫の活性化を強く誘導する.そしてSFBには宿主動物に対する特異性が認められる.具体的にはラットから分離したSFB(R-SFB)はマウスから分離したSFB(M-SFB)と異なり,IELsのリクルートを亢進せず,IgA産生の増強もほとんどなく,さらにTh17細胞誘導活性も認められない(22)22) K. Atarashi, T. Tanoue, M. Ando, N. Kamada, Y. Nagano, S. Narushima, W. Suda, A. Imaoka, H. Setoyama, T. Nagamori et al.: Cell, 163, 367 (2015)..小腸上皮細胞においてはMHCクラスII分子の発現も誘導しないし,ラット糞便のクロロフォルム耐性菌の定着によって小腸上皮細胞のフコシルアシアロGM1合成が観察されない(12)12) Y. Okada, S. Matsumoto, A. Imaoka, H. Setoyama, H. M. Nanno, M. Kawaguchi & Y. Umesaki: Infect. Immun., 62, 5442 (1994).ことより,おそらくR-SFBではフコシル化も誘導しないと考えられる.一方,R-SFBを経口投与した無菌マウスの腸内でSFBの局在性を見ると,腸内での菌密度はM-SFB投与マウスとほぼ同程度の密度でコロナイズするが,回腸上皮細胞への強い接着像はM-SFBと異なりR-SFBでは認められない.なお以上の成績のうち,Th17細胞の誘導能は活性が強く発現するC57BL/6やICR系統で調査したもので,IELsのリクルートについてはBALB/c系統で調査したものである.IgA発現増強はC57BL/6,BALB/cなどマウスの系統の違いを超えて認められる.次にM-SFBとR-SFBを無菌ラットに投与して調べると,すべての形質は解析していないが,注目されるTh17細胞誘導活性やIgA産生促進活性はR-SFB投与ラットでのみ認められ,M-SFB投与ラットでは観察されない.またラット腸内でもどちらのSFBもコロナイズするが,小腸上皮細胞への典型的な接着像はR-SFBにのみ認められる.

以上の現象からM-SFBの免疫誘導メカニズムを推定すると,マウス小腸上皮細胞へのSFBの強い接着がTh17細胞やIELsの誘導,さらにIgA産生という免疫誘導に結びついていると推定される.現在,SFBの非接着性ミュータントは存在しないためこの確認実験は困難であるが,C. rodentiumなどほかの接着性病原菌の非接着性ミュータントを用いて大腸部位でTh17誘導活性と菌の接着が対応していることが確認された(22)22) K. Atarashi, T. Tanoue, M. Ando, N. Kamada, Y. Nagano, S. Narushima, W. Suda, A. Imaoka, H. Setoyama, T. Nagamori et al.: Cell, 163, 367 (2015)..上皮細胞への接着が分子レベルでどのような応答をもたらすか非常に興味がもたれるが,SFBの上皮細胞への接着によるSAAの発現をアクチンの重合阻害剤が促進したことより,現時点ではSFBの接着によってアクチンが再構成されることによりSAAの発現が促進しTh17細胞誘導に至るという仮説が浮上する.またC. rodentium毒素のG-actinの重合阻害剤もTh17細胞を誘導したことから両者には共通したメカニズムが推定される.

2. SFBの生理効果とゲノム解析

宿主動物種に依存した免疫応答を支配するSFBの分子に注目して,M-SFBとR-SFBのゲノム解析を行った(23)23) T. Prakash, K. Oshima, H. Morita, S. Fukuda, A. Imaoka, N. Kumar, V. K. Sharma, S. W. Kim, M. Takahashi, N. Saitou et al.: Cell Host Microbe, 10, 273 (2011)..われわれは本現象を支配する遺伝子を特定できなかったが,前述したようにマウス由来Th17細胞のハイブリドーマはまだアノテーションされていないM-SFBの2つの遺伝子をトランスフェクションした菌体をDC存在下で認識することがLittmanのグループから報告された(21).R-SFBゲノムにはこのM-SFBの遺伝子に相当するホモログが見いだされないことより,本遺伝子は宿主動物種に依存してTh17細胞を誘導する分子の候補と推定される.しかしTh17細胞誘導のキーとなるSAA産生を促進するSFBの上皮細胞への接着の機構に関しては現時点では不明なままである.

両SFBのゲノム解析から両者ともゲノムサイズは約1.5 Mbで塩基の一致率は86%,僅かにM-SFBのほうが大きいがそれはプロファージに相当する塩基鎖であり,R-SFBには存在していないことが判明した.さらに自然免疫系との関係で興味深い遺伝子群が両SFBに存在していたが,その一つはTLR5分子のリガンドになる鞭毛の遺伝子であった.残念ながら両SFBに対するTh17細胞応答の違いをこの遺伝子群で説明することは困難と思われるが,生理的に興味ある分子である.アドヘシンなどの細胞表層分子群がゲノム上は推定されたが,上皮細胞への接着やIELs,IgA産生細胞,およびTh17細胞など免疫活性の誘導との関係については今後に残された問題である.そのほか,エネルギー代謝,アミノ酸や核酸の生合成,芽胞形成,ビルレンスに関与する遺伝子群なども見いだされた.常在性のClostridiumとSFBは前述のように粘膜免疫系では役割分担をしていると考えられたが(17)17) Y. Umesaki, H. Setoyama, S. Matsumoto, A. Imaoka & K. Itoh: Infect. Immun., 67, 3504 (1999).,さらに今日ではその実験に使われたClostridiumカクテルはTreg誘導活性が高いことが報告され(24)24) K. Atarashi, T. Tanoue, T. Shima, A. Imaoka, T. Kuwahara, Y. Momose, G. Cheng, S. Yamasaki, T. Saito, Y. Ohba et al.: Science, 331, 337 (2011).,免疫誘導における両者の顕著な違いも明らかとなっている.

3. SFBの動物界における分布とその伝播

SFBの分布については形態的特徴から多くの報告がなされている.古くは19世紀に昆虫の腸内にSFB様細菌の存在を示唆するイラストが発表されており,現在,Snelらによって提唱されているSFBの分類学的な菌種名である“Candidatus Arthromicetaes”はこれに基づくと思われる(25)25) J. Snel, P. P. Heinen, H. J. Blok, R. J. Carman, A. J. Duncan, P. C. Allen & M. D. Collins: Int. J. Syst. Bacteriol., 45, 780 (1995)..現時点では16S rRNA配列のみでなく,マウス,ラット由来SFBの全ゲノム配列が決定されており,形態的特徴と遺伝子配列からSFBを同定することが可能と思われる.

哺乳動物においてはマウス,ラット以外にヒト,カニクイザル,ブタ,イヌ,ネコ,ウマ,ウシなどにおいては光学顕微鏡と走査電子顕微鏡での報告(26)26) H. L. Klaasen, J. P. Koopman, M. E. Van den Brink, M. H. Bakker, F. G. Poelma & A. C. Beynen: Lab. Anim., 27, 141 (1993).がありその存在の可能性は高いが,ヒトを含め走査顕微鏡での観察が不十分な動物種も多く,今後その確認が必要と思われる.またマウス,ラットでは全ゲノム配列が決定され,16S rRNA遺伝子配列は多くの脊椎動物種で報告されている.昆虫に関しては形態的な特徴が類似したものが存在することは確かと思われるが,ネズミなど哺乳類で見つかっているものとは違いLacnospiraceaeの仲間であるとの報告がなされている(27)27) C. L. Thompson, R. Vier, A. Mikaelyan, T. Wienemann & A. Brune: Environ. Microbiol., 14, 1454 (2012)..細胞内共生で著名なMargiusらのグループは昆虫の仲間からSFB様菌を分離し,培養が可能なBacillus cereusであったと報告したが(28)28) L. Margulis, J. Z. Jorgensen, S. Dolan, R. Kolchinsky, F. A. Rainey & S. C. Lo: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95, 1236 (1998).,昆虫腸内でのSFB様菌については慎重な検討が必要と思われる.哺乳動物のなかでも特にヒトでの分布については関心が高く,これまでその存在を示唆するいくつかの報告がある.形態的には光学顕微鏡レベルの観察が多いことや16S rRNA遺伝子配列やゲノムレベルの解析が不十分で今後のさらなる検討が必要と思われる.存在すればヒトにおいて健康や病態との関連性に関する研究の進展が待たれる.

本菌の伝播に関しては研究がまだ十分なされていない.ネズミの腸内にも離乳前にはほとんどSFBは観察されず,離乳期になって菌数の著しい増加が見られること(29)29) J. Snel, C. C. Hermsen, H. J. Smits, N. A. Bos, W. M. Eling, J. J. Cebra & P. J. Heidt: Can. J. Microbiol., 44, 1177 (1998).,また無菌マウスにSFBを含む腸内菌を定着させた場合,レシーピエントが離乳期以後のマウスでなければ宿主応答(フコシル化)が観察されないことより(30)30) Y. Umesaki, T. Sakata & T. Yajima: Biochem. Biophys. Res. Commun., 105, 439 (1982).,環境中に存在するSFBの芽胞が食事などによって消化管に入り,腸内での増殖条件が整う離乳期になって芽胞から発芽し,コロナイズするのではないかと想像される.

おわりに:SFBの実験動物への応用

研究のスタートから一定の結論を得るまでに長い年月を要したが(31)31) Y. Umesaki: Proc. Jpn. Acad., Ser. B, Phys. Biol. Sci., 90, 313 (2014).,現時点で振り返れば別の研究手法を採用すればより短時間で明快な結果が得られたかもしれない.しかし,これも研究を展開していくうえでの問題点としてここでは時系列に従いそのまま記載した.近年の腸内フローラ研究の加速度的な広がりは一般の方を含めて健康や疾患との関連性の解明への大きな期待が背景としてあると思われる.筆者自身もここに記載した常在菌SFBについてマウスで得られた成果がより広く使われ,腸内フローラと宿主動物の相互反応のメカニズムの理解が進むことを切に期待している.ここでは記載しなかったが昨年SFBのin vitro培養に成功したとの報告がなされ(32)32) P. Schnupf, V. Gaboriau-Routhiau, M. Gros, R. Friedman, M. Moya-Nilges, G. Nigro, N. Cerf-Bensussan & P. J. Sansonetti: Nature, 520, 99 (2015).,疾患モデルへの応用についてはすでに腸炎モデル(33, 34)33) R. Stepankova, F. Powrie, O. Kofronova, H. Kozakova, T. Hudcovic, T. Hrncir, H. Uhlig, S. Read, Z. Rehakova, O. Benada et al.: Inflamm. Bowel Dis., 13, 1202 (2007).34) H. Setoyama, A. Imaoka, H. Ishikawa & Y. Umesaki: Microbes Infect., 5, 115 (2003).にとどまらず自己免疫疾患モデル(35, 36)35) H. J. Wu, I. I. Ivanov, J. Darce, K. Hattori, T. Shima, Y. Umesaki, D. R. Littman, C. Benoist & D. Mathis: Immunity, 32, 815 (2010).36) Y. K. Lee, J. S. Menezes, Y. Umesaki & S. K. Mazmanian: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 108 (Suppl. 1), 4615 (2011).でSFBは有効に利用されている.さらにヒト化動物モデル作製においても有効な利用法があると考えられる(37)37) A. Imaoka, H. Setoyama, A. Takagi, S. Matsumoto & Y. Umesaki: J. Appl. Microbiol., 96, 656 (2004)..一方ヒトにおけるSFBあるいはSFB様菌の存在についてはまだ不確定であり,近い将来明らかになることを期待している.テクノロジーの飛躍的な発展もあって腸内フローラはその複雑な構成の意味合いが理解され始めているように感じているが,同時に種々の生理応答でキーとなるそれぞれの腸内菌種に関する個別的な理解も必要であろう.

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