Kagaku to Seibutsu 56(2): 82-94 (2018)
解説
P700酸化システムー光合成生物が普遍的にもつ酸化傷害回避メカニズムが明らかになった酸素との戦いで作り上げられた防御システム
P700 Oxidation System—The Universal Defense Mechanisms for Avoiding Oxidative Stress in Photosynthetic Organisms: Photosynthetic Organisms Created Defense Systems Through a Struggle Against O2
Published: 2018-01-20
太陽の光を利用することで駆動する光合成の明反応は,暗反応における二酸化炭素固定反応に必要とされる化学エネルギーの生成に必要不可欠であるが,その一方で不可避的に酸化力の高い活性酸素種の生成を引き起こす危険な反応である.光合成の明反応において活性酸素種の生成は葉緑体内部の光合成器官に酸化的に傷害を与え,光合成能力の低下,延いては,植物の生育の低下まで引き起こしてしまう.しかしながら,光合成生物において深刻な被害を及ぼす活性酸素種が,どこで・どのように生成するかは明確な答えがなかった.本稿では,近年,三宅グループが明らかとした活性酸素種生成メカニズムと光合成生物に普遍的に確認される活性酸素種生成抑制機構である”P700酸化システム”について紹介する.
© 2018 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2018 公益社団法人日本農芸化学会
地球史において,大気中の酸素(O2)濃度は過去に2回の大規模な増加が起こり,現在の20%という濃度に落ち着いている(1)1) L. R. Kump: Nature, 451, 277 (2008)..1回目,つまり嫌気的な環境であった地球にO2が蓄積し始めたのは,今から約23~25億年前であり,このO2濃度の上昇に貢献したのは,生命活動を営むにあたりエネルギー生成の過程においてO2を発生させるO2発生型の光合成生物であると考えられている(1~3)1) L. R. Kump: Nature, 451, 277 (2008).2) A. Bekker, H. D. Holland, P. L. Wang, D. Rumble III, H. J. Stein, J. L. Hannah, L. L. Coetzee & N. J. Beukes: Nature, 427, 117 (2004).3) D. E. Canfield: Annu. Rev. Earth Planet. Sci., 33, 1 (2005)..約23億年前には現在の約100分の1ほどであったO2濃度は,2回目のO2濃度上昇のイベント(約6~5億年前)を経て,今と近しい大気O2濃度に到達している(1)1) L. R. Kump: Nature, 451, 277 (2008)..この地球におけるO2濃度の上昇により,約5~4億年前に地球の上空において現在と同程度のオゾン層が形成され,宇宙から地表面に降り注ぐ紫外線量を低下させたことによって,好気的環境である地上において生命が繁栄することが可能となった(4, 5)4) M. M. Caldwell: Bioscience, 29, 520 (1979).5) C. Goldblatt, T. M. Lenton & A. J. Watson: Nature, 443, 683 (2006)..このO2発生型の光合成生物が地球にO2を供給・蓄積させた恩恵により,私たちのような好気的な代謝を営む生物が誕生し,地球地上部における生活を送っている.
一方で,O2は生命にとって恩恵を与えるだけの素晴らしいものであるだろうか? O2は,鉄が錆びていく過程からもわかるように,酸化力をもち合わせており,酸化したものを脆くしてしまう.これは何も鉄を始めとする金属に限った話ではない.私たちを含む生物の基本的な構成要素である核酸(deoxyribonucleic acid: DNA),タンパク質,脂質はすべてO2がもたらす「酸化」という脅威にさらされている(6, 7)6) T. Finkel & N. J. Holbrook: Nature, 408, 239 (2000).7) G. Vistoli, D. De Maddis, A. Cipak, N. Zarkovic, M. Carini & G. Aldini: Free Radic. Res., 47(Suppl 1), 3 (2013)..
DNA,タンパク質,脂質といった生物の構成要素は,大気中のO2がそのまま酸化をもたらすわけではなく,O2がより酸化力の高い活性酸素種(Reactive oxygen species; ROS)という形態に変化した場合に,生物は酸化の脅威にさらされる.通常,大気中に存在しているO2は三重項状態(3O2)と呼ばれる電子配置をしている(8)8) K. Asada & M. Takahashi: Photoinhibition, Elsevier, pp. 227–287, 1987..この電子配置は,通常の生体分子がもつ電子配置(一重項)とは異なるため,生体分子を酸化させてしまうことはない(8)8) K. Asada & M. Takahashi: Photoinhibition, Elsevier, pp. 227–287, 1987..しかしながら,電子配置が一重項である一重項酸素(1O2)や不対電子をもつスーパーオキサイド(O2−),ヒドロキシラジカル(HO·),不対電子はもたないが生体分子に対して酸化力を発揮する過酸化水素(H2O2)は,DNA,タンパク質,脂質を酸化させることによって,本来の構造とは異なるものに変化させてしまい,それらの細胞内での生理機能を損なわせてしまう(7~10)7) G. Vistoli, D. De Maddis, A. Cipak, N. Zarkovic, M. Carini & G. Aldini: Free Radic. Res., 47(Suppl 1), 3 (2013).8) K. Asada & M. Takahashi: Photoinhibition, Elsevier, pp. 227–287, 1987.9) K. Apel & H. Hirt: Annu. Rev. Plant Biol., 55, 373 (2004).10) R. Pamplona: Chem. Biol. Interact., 192, 14 (2011)..
この好気的環境で生活することによってさらされるROSの脅威は,自らの生命活動の源を作るためにO2を発生させるO2発生型光合成生物にも十分に当てはまる.以降の項では,最初にO2発生型光合成の概要について触れ,その後,O2発生型光合成生物において確認されているROS傷害の一例を紹介する.次いで,三宅グループが明らかとしてきた最新の知見をベースとして,始原O2発生型光合成生物であるシアノバクテリアから陸上進出を果たしたコケ,シダ,裸子,被子植物に至るまで共通して保存し続けているROS傷害回避メカニズム“P700酸化システム”を紹介したい.
シアノバクテリアや陸上植物に代表されるO2発生型光合成生物は,太陽からの光エネルギーをチラコイド膜上に存在するクロロフィル分子によって捕捉し,光合成電子伝達反応を駆動させる(図1A図1■光合成電子伝達反応とROS発生条件の概略図).チラコイド膜上において光合成電子伝達反応は光化学系II(Photosystem II; PSII)におけるH2Oの酸化によるO2発生と電子の獲得に始まる.PSIIで獲得した電子はプラストキノン,シトクロムb6f,プラストシアニン,光化学系I(Photosystem I; PSI)の順にチラコイド膜上を流れる.光化学系Iに到達した電子は可溶性の電子伝達成分であるフェレドキシンとフェレドキシンNAD(P)H酸化還元酵素に電子を渡すことで,以降の炭酸固定や窒素同化を始めとする種々の代謝反応に電子もしくは還元力(NADPH)を分配する.光合成電子伝達反応は同時にチラコイド膜内腔へのプロトン(H+)輸送と共役しており,チラコイド膜内腔に蓄積したH+はATP合成酵素を介したATP合成の駆動力として利用される.ここに示した一連の反応が地球上におけるO2の発生とCO2固定に貢献している.
「光」は,前述のように光合成の駆動において必要不可欠な要因であるが,この「光」こそがO2発生型光合成生物においてROSを発生させる元凶となる.光合成は上述のように光エネルギーを化学エネルギーへと変換させる光合成電子伝達反応(明反応)と,生成した化学エネルギーを消費するCO2固定を主要とする代謝反応(暗反応)の2種類の歯車によって進行する.この2つの歯車が互いにかみ合って駆動している場合には,光はCO2固定のための駆動力という恩恵を与えるが,専ら環境ストレスと呼ばれる状況下に光合成生物が追い込まれると暗反応の歯車の回転に対し,明反応の歯車はオーバードライブ状態になってしまう(11~13)11) R. Mittler: Trends Plant Sci., 11, 15 (2006).12) E. H. Murchie & K. K. Niyogi: Plant Physiol., 155, 86 (2011).13) D. M. Kramer & J. R. Evans: Plant Physiol., 155, 70 (2011).(図1B図1■光合成電子伝達反応とROS発生条件の概略図).これは種々の環境ストレスが暗反応の活性を低下させてしまうために起こる.少し詳しく述べると,たとえば,降水量不足による乾燥ストレス条件では,葉における水の損失を防ぐために気孔を閉鎖させるが,同時に葉緑体へのCO2の供給も低下させる(14)14) G. Miller, N. Suzuki, S. Ciftci-Yilmaz & R. Mittler: Plant Cell Environ., 33, 453 (2010)..また,低温環境下ではCO2固定を行うカルビンサイクルの酵素群の活性低下が起こる(15)15) N. Suzuki & R. Mittler: Physiol. Plant., 126, 45 (2006)..これらはいずれも暗反応の駆動を抑制させる要因となるので,暗反応の駆動に対して,明反応の活性が高い状態を引き起こしてしまう.明反応がオーバードライブ状態となった条件では,光の獲得によって生み出しすぎた余剰なエネルギー(電子)が光合成電子伝達鎖上に蓄積し,その消費されないエネルギーが周囲に十分に存在するO2に漏洩することによってROSが生成される(8, 16, 17, 120)8) K. Asada & M. Takahashi: Photoinhibition, Elsevier, pp. 227–287, 1987.16) K. Asada: Annu. Rev. Plant Biol., 50, 601 (1999).17) K. Asada: Plant Physiol., 141, 391 (2006).120) C. Miyake & A. Yokota: Plant Cell Physiol., 41, 335 (2000).(図1 B図1■光合成電子伝達反応とROS発生条件の概略図).
この章では,ROSが光合成生物に与える影響と,近年明らかとなってきたROS傷害のメカニズムについて解説する.光合成電子伝達反応から漏れ出したエネルギーが主にPSIからO2に渡ることによってROSの生成が起こること,また発生したROSが発生源であるPSIに酸化傷害を与えるといった報告は古くからなされてきた(18~29)18) J. Franck & C. S. French: J. Gen. Physiol., 25, 309 (1941).19) A. H. Mehler: Arch. Biochem. Biophys., 33, 65 (1951).20) K. Satoh: Plant Cell Physiol., 11, 29 (1970).21) K. Satoh: Plant Cell Physiol., 11, 187 (1970).22) K. Asada, K. Kiso & K. Yoshikawa: J. Biol. Chem., 249, 2175 (1974).23) M. A. Takahashi & K. Asada: Plant Cell Physiol., 23, 1457 (1982).24) M. Takahashi & K. Asada: Arch. Biochem. Biophys., 267, 714 (1988).25) K. Inoue, H. Sakurai & T. Hiyama: Plant Cell Physiol., 27, 961 (1986).26) I. Terashima, S. Funayama & K. Sonoike: Planta, 193, 300 (1994).27) K. Sonoike & I. Terashima: Planta, 194, 287 (1994).28) K. Sonoike, I. Terashima, M. Iwaki & S. Itoh: FEBS Lett., 362, 235 (1995).29) S. E. Tjus, B. L. Møller & H. V. Scheller: Photosynth. Res., 60, 75 (1999)..たとえば,キュウリは暗反応の活性が抑制される低温条件下において光を照射すると,O2が十分に存在する場合にはPSIの活性が大きく低下し,植物生葉において枯死が発生する事が報告されている(26~30)26) I. Terashima, S. Funayama & K. Sonoike: Planta, 193, 300 (1994).27) K. Sonoike & I. Terashima: Planta, 194, 287 (1994).28) K. Sonoike, I. Terashima, M. Iwaki & S. Itoh: FEBS Lett., 362, 235 (1995).29) S. E. Tjus, B. L. Møller & H. V. Scheller: Photosynth. Res., 60, 75 (1999).30) H. Kudoh & K. Sonoike: Planta, 215, 541 (2002)..これは上記のO2発生型光合成概要においても記述したように,チラコイド膜上に過剰に蓄積した電子がO2に渡ることで,ROSを生成させ,PSIの破壊により,光合成が停止し,植物を枯死に追いやったと考えることができる(26~30)26) I. Terashima, S. Funayama & K. Sonoike: Planta, 193, 300 (1994).27) K. Sonoike & I. Terashima: Planta, 194, 287 (1994).28) K. Sonoike, I. Terashima, M. Iwaki & S. Itoh: FEBS Lett., 362, 235 (1995).29) S. E. Tjus, B. L. Møller & H. V. Scheller: Photosynth. Res., 60, 75 (1999).30) H. Kudoh & K. Sonoike: Planta, 215, 541 (2002)..ROSに依存する形でPSIの活性低下が起こるという事実はin vitroの実験において確認されている.Sonoike(31)31) K. Sonoike: Plant Sci., 115, 157 (1996).とSonoike et al.(32)32) K. Sonoike, M. Kamo, Y. Hihara, T. Hiyama & I. Enami: Photosynth. Res., 53, 55 (1997).ではホウレンソウから単離したチラコイド膜においてはPSIIから流れてくる電子によってPSIでO2依存的な光傷害が誘導されること,HO·の発生によってPSI複合体を構成するサブユニットであるPsaBの分解が起こることが明らかとされている.ROSによって一度PSIが破壊されてしまうと,再度PSIが再構成されるまで約1週間という非常に長い時間を要する(33, 34)33) K. Sonoike: Physiol. Plant., 142, 56 (2011).34) M. Zivcak, M. Brestic, K. Kunderlikova, O. Sytar & S. I. Allakhverdiev: Photosynth. Res., 126, 449 (2015)..
上記の事実から,確かにある環境における光合成の駆動でO2がROSへと変換されることは光合成生物にとって脅威であるということが認識できる.では,この光合成生物にとって有害であるROSに対して光合成生物はどのような対策をとっているのであろうか? 陸上植物を例にとってみると,葉緑体内部には,ROSであるスーパーオキシドを消去するSuperoxide dismutase(SOD)や過酸化水素を消去するAscorbate peroxidase(APX)をはじめとする抗酸化酵素が存在している(16, 17, 35~37)16) K. Asada: Annu. Rev. Plant Biol., 50, 601 (1999).17) K. Asada: Plant Physiol., 141, 391 (2006).35) C. Miyake & K. Asada: Plant Cell Physiol., 33, 541 (1992).36) K. I. Ogawa, S. Kanematsu, K. Takabe & K. Asada: Plant Cell Physiol., 36, 565 (1995).37) C. Miyake: Plant Cell Physiol., 51, 1951 (2010)..酵素学的実験により,これらROS消去にかかわる酵素はROSに対して高い消去能力を有することから,光合成において発生するROSの消去を担っていると考えられてきた(16, 17, 35~37)16) K. Asada: Annu. Rev. Plant Biol., 50, 601 (1999).17) K. Asada: Plant Physiol., 141, 391 (2006).35) C. Miyake & K. Asada: Plant Cell Physiol., 33, 541 (1992).36) K. I. Ogawa, S. Kanematsu, K. Takabe & K. Asada: Plant Cell Physiol., 36, 565 (1995).37) C. Miyake: Plant Cell Physiol., 51, 1951 (2010)..しかしながら,これら酵素の発現抑制株および過剰発現株では野生型植物に比べてROS依存的な酸化傷害への耐性は必ずしも変化しないこともまた事実として報告されている(38, 39)38) C. Miyake, Y. Shinzaki, M. Nishioka, S. Horiguchi & K. I. Tomizawa: Plant Cell Physiol., 47, 200 (2006).39) L. Giacomelli, A. Masi, D. R. Ripoll, M. J. Lee & K. I. van Wijk: Plant Mol. Biol., 65, 627 (2007)..つまり,酵素学的知見と生理学的知見が一致しないこととなるが,一体なぜ一致しないのかに関して,明確な答えはこれまでに得られていなかった.
1900年前半に光合成生物がROSを発生することが明らかとなってから今まで,PSIにおいてROSの発生を抑制する決定的なメカニズムは明らかになっていないのが現状であった(33)33) K. Sonoike: Physiol. Plant., 142, 56 (2011)..この原因としては以下の2つが考えられる.1つはPSI光傷害を実験室において簡便に観察し,その傷害の程度を定量的に評価することが難しかったことが原因である.生葉において今まで一般的にPSI光傷害を観察しようとする場合は,暗反応が駆動しない低温条件(約4°C)下において,ROSの生成のための電子を生み出すPSIIの活性を維持しつつ,長時間弱い光を照射し続けることが必要であった(26~30)26) I. Terashima, S. Funayama & K. Sonoike: Planta, 193, 300 (1994).27) K. Sonoike & I. Terashima: Planta, 194, 287 (1994).28) K. Sonoike, I. Terashima, M. Iwaki & S. Itoh: FEBS Lett., 362, 235 (1995).29) S. E. Tjus, B. L. Møller & H. V. Scheller: Photosynth. Res., 60, 75 (1999).30) H. Kudoh & K. Sonoike: Planta, 215, 541 (2002)..PSI光傷害の誘導には,このような特殊な実験環境,特に夏作物であるキュウリに関しては低温という,本来植物が経験しない非現実的な環境が要求されることから,PSI光傷害を誘導するだけでなく,その処理の過程において細胞における種々の酵素活性および代謝反応を低下させてしまい,PSI光傷害を引き起こす要因の特定を非常に困難にしていた.したがって,ROS生成に影響を与える薬剤効果や,植物における種々のタンパク質の発現量に対するROS依存的PSI光傷害の影響など量的効果の検討を行っている論文は限られており,PSI光傷害発生の継時的変化や定量的解析に関してはほとんど行われていないのが現状であった.2つめはROSがPSIにおいて発生するという生理現象に次いで,PSIに光傷害を与えるROSが,具体的にPSIのどこで・どのように発生するかというメカニズムが曖昧であったことである.ROSの反応性の高さと半減期の短さを考慮すると,ROSは発生したその場ですぐさま周囲のコンポ—ネントと酸化的に反応することが予想される(40)40) I. M. Møller, P. E. Jensen & A. Hansson: Annu. Rev. Plant Biol., 58, 459 (2007)..つまり,発生源とROS消去因子が距離的に離れていては,効率よくROSを消去することはできない.
そのような状況のなか,三宅グループは植物生葉において常温で短時間かつ簡便にPSIをターゲットとし,ROSの生成およびROS依存的な光傷害を誘導できる分光学的手法(パルス法)を開発することに成功した(41)41) T. Sejima, D. Takagi, H. Fukayama, A. Makino & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 55, 1184 (2014)..この方法は連続的に太陽光以上のパルス光(2,000 µmol photons m−2 s−1 ~20,000 µmol photons m−2 s−1)を照射することにより,瞬時にチラコイド膜上に電子を満たし,PSIからO2への電子の流出によるROS生成を促進させる処理である(図2A図2■Sejima et al.(41)で報告したパルス法の概略).この処理の重要なポイントは,パルス光によって光合成電子伝達鎖上に電子を蓄積させるが,あまりにも短時間の光照射のため,暗反応であるCO2固定を誘導しない点である.これによって疑似的に明反応がオーバードライブ状態となった環境ストレス条件下でのROS生成およびROS傷害を再現できる(図2B, C図2■Sejima et al.(41)で報告したパルス法の概略).実際に,このパルス法をROSの生成が抑制される低O2条件下で処理を行うと,大気条件下で確認されたパルス処理の進行に伴うPSI活性の低下が,ほとんど見られなくなることを確認している(図2D図2■Sejima et al.(41)で報告したパルス法の概略).この解析では,PSI内部に存在する反応中心クロロフィル(P700)量を分光学的にリアルタイムで定量することで,ROS依存的なPSI光傷害の程度を定量的に評価できる(図2D図2■Sejima et al.(41)で報告したパルス法の概略).また,この解析では,植物生葉でPSIにROS傷害を引き起こした後に,その光合成能力を測定することが可能であり,パルス法によるPSIのROS傷害誘導は,生葉におけるCO2固定速度を低下してしまうという事実を見出した(34, 41)34) M. Zivcak, M. Brestic, K. Kunderlikova, O. Sytar & S. I. Allakhverdiev: Photosynth. Res., 126, 449 (2015).41) T. Sejima, D. Takagi, H. Fukayama, A. Makino & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 55, 1184 (2014)..この結果は,植物が光合成を行うことで糖類を蓄積させ,呼吸基質として使用することで生長するという一連の生活環においてPSI光傷害は避けなければならない事象であることを強く印象づける.
Aはパルス法に用いるパルス光の写真を掲載した.Sejima et al.(41)41) T. Sejima, D. Takagi, H. Fukayama, A. Makino & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 55, 1184 (2014).では光強度20,000 µmol photons m−2 s−1,照射時間300 msのパルス光を10秒間隔でヒマワリ生葉に照射した.BはAで示したパルス光照射を葉に適用するときのイメージ図を示す.Cにはパルス法を適用した場合に,葉緑体チラコイド膜上で引き起こされる過剰還元状態とPSIにおけるROS生成の概略図を示す.Dには大気酸素条件下と低酸素条件でのパルス法適用時の生葉におけるPSI活性の時間変化を示す.パルス法では,その処理中にどのようにしてPSI活性が変化するかをリアルタイムでモニターすることが可能である.Dに示すようにROSの生成が起こる大気条件下ではパルス法処理時間の経過に伴ってPSI活性が低下するが,ROSの生成が抑制される低酸素条件下においてはPSI活性がほとんど変化しないことを確認している(Sejima et al.(41)41) T. Sejima, D. Takagi, H. Fukayama, A. Makino & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 55, 1184 (2014).の結果を一部改編して掲載).
この簡便なPSI光傷害解析方法を皮切りにして,三宅グループはホウレンソウから単離した葉緑体を用いることでPSIにおけるROS傷害発生メカニズムの解明に取り組んだ.その結果,PSI光傷害を引き起こすROSの生成場所はPSIの膜内部の部位であるということを見いだした(42)42) D. Takagi, S. Takumi, M. Hashiguchi, T. Sejima & C. Miyake: Plant Physiol., 171, 1626 (2016).(図3図3■Takagi et al.(42)で提唱したPSI光傷害を与えるROS発生スキーム).筆者らは,葉緑体における従来ROS傷害の緩和に貢献すると考えられてきたCuZn-SOD, APXの活性がPSI光傷害に与える影響を明らかとするために単離葉緑体を含む溶液中にCuZn-SODおよびAPXの阻害剤であるシアン化カリウムを添加してパルス法を単離葉緑体に適応した.その結果,シアン化カリウムの有無ではROS依存的なPSIの光傷害の程度に違いが生じないことを明らかとした.この結果は植物におけるAPXやSOD活性の改変が,環境ストレス耐性の付与をもたらさないことをよく説明する(38, 39)38) C. Miyake, Y. Shinzaki, M. Nishioka, S. Horiguchi & K. I. Tomizawa: Plant Cell Physiol., 47, 200 (2006).39) L. Giacomelli, A. Masi, D. R. Ripoll, M. J. Lee & K. I. van Wijk: Plant Mol. Biol., 65, 627 (2007)..この結果から筆者らは,(i)「PSIにおけるROSの生成とROS依存的光傷害はSOD, APXの関与できないチラコイド膜内部で完結し,膜外部(葉緑体ストロマ領域)で生成するROSはPSI光傷害の主要因にならないこと」,(ii)「PSI光傷害を引き起こすROSの分子種はO2−やH2O2以外であること」,という2つの新規の仮説を設定した.前述の仮説(i)を検証するために,SODやAPXが存在する葉緑体ストロマ領域で,光依存的にROS生成を促進させる阻害剤(パラコート)を添加した条件で単離葉緑体にパルス法を適用すると,ROS依存的なPSI光傷害はほとんど確認されないことが明らかとなった.後述の仮説(ii)を検証するために1O2の消去剤であるα-トコフェロール類縁体を単離葉緑体に添加し,パルス法を適用させたところPSI光傷害が緩和されることを見いだした.これらの事実をもとにして,筆者らは以下のようなROS発生とROS傷害のスキームを考えている.PSI内部には反応中心クロロフィルであるP700クロロフィルが存在しておりP700クロロフィルは光エネルギーを獲得することによって励起状態(*P700)へと変換される.励起された*P700クロロフィルは下流の電子伝達成分(クロロフィルA0[A0A, A0B]→フィロキノン[A1A, A1B]→鉄硫黄クラスター[Fx]→鉄硫黄クラスター[FA/FB])へと電子を流すことで自身は酸化状態(P700+)となる(43)43) N. Nelson & C. F. Yocum: Annu. Rev. Plant Biol., 57, 521 (2006)..PSI内部のFA/FBまで到達した電子は可溶性の電子アクセプターであるフェレドキシンへと電子を伝達する(43)43) N. Nelson & C. F. Yocum: Annu. Rev. Plant Biol., 57, 521 (2006)..しかしながら,暗反応が活性化していない状況や暗反応の活性が環境ストレスなどの外部要因によって低下している場合には,PSI以降における電子の消費が滞り,*P700からの下流への電子の伝達が抑制されてしまう.このような状況においてはPSI内部の電子伝達コンポーネントからO2へと電子が流れることによってO2−, HO·を生成させてしまい,PSIを構成するタンパク質および色素に酸化傷害を与えることでPSIの活性を低下させていると考えられる(24, 44)24) M. Takahashi & K. Asada: Arch. Biochem. Biophys., 267, 714 (1988).44) M. A. Kozuleva, A. A. Petrova, M. D. Mamedov, A. Y. Semenov & B. N. Ivanov: FEBS Lett., 588, 4364 (2014)..これに加えて,1O2の消去剤の効果がパルス法におけるPSI光傷害に効果があることから,*P700の蓄積がPSI内部において還元状態である電子伝達コンポーネントと電荷再結合反応することによって1O2を発生させ光傷害を誘導している可能性も提唱した.PSI光傷害とROSの議論の際にはO2−, HO·, H2O2は話題に上がるが,1O2が議論の場に登場することはほとんどない.しかしながら,PSIにおいてはP700クロロフィルの電荷再結合が起こることで3P700の形成を介して1O2が発生するという事実は,報告がなされている(45~52)45) H. A. Frank, M. B. McLean & K. Sauer: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 5124 (1979).46) A. W. Rutherford & J. E. Mullet: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 635, 225 (1981).47) P. Sétif, G. Hervo & P. Mathis: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 638, 257 (1981).48) V. A. Shuvalov, A. M. Nuijs, H. J. Van Gorkom, H. W. J. Smit & L. N. M. Duysens: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 850, 319 (1986).49) I. Ikegami, P. Sétif & P. Mathis: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 894, 414 (1987).50) P. Sétif & K. Brettel: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 1020, 232 (1990).51) M. Polm & K. Brettel: Biophys. J., 74, 3173 (1998).52) A. W. Rutherford, A. Osyczka & F. Rappaport: FEBS Lett., 58, 603 (2012)..しかも,近年の報告においてはPSI内部の1O2の消去剤として存在するβ-caroteneの量が減少したシロイヌナズナ突然変異体(szl1)では,単離PSIにおいて野生型から単離したPSI複合体よりも1O2の発生が促進されており,PSI光傷害に対する感受性も向上していることが報告されている(53, 54)53) S. Cazzaniga, Z. Li, K. K. Niyogi, R. Bassi & L. Dall’Osto: Plant Physiol., 159, 1745 (2012).54) S. Cazzaniga, M. Bressan, D. Carbonera, A. Agostini & L. Dall’Osto: Biochemistry, 55, 3636 (2016)..これらの事実から考えて,今後はPSIにおける1O2の生成と光傷害の関係に関して議論する余地があると筆者は考える.
Takagi et al.(42)42) D. Takagi, S. Takumi, M. Hashiguchi, T. Sejima & C. Miyake: Plant Physiol., 171, 1626 (2016).の図を一部改編して掲載している.
パルス法を使用した実験において従来ROSの消去に携わっていると考えられてきたCuZn-SODとAPXで構成されるROS消去系ではPSI光傷害を防ぐことができないと明らかになった今,次に考えなければならないことは「O2発生型光合成生物はどのようにしてPSIの光傷害を回避しているか?」という点である.ROS生成によるPSI光傷害発生は光合成の低下,ひいては生育の低下を引き起こすものであるため,その回避システムの発見・提唱は,環境ストレス条件下でのROS傷害緩和という分子育種の発展・応用にも貢献しうる重要な知見を与えることが期待される(34, 41, 55~57)34) M. Zivcak, M. Brestic, K. Kunderlikova, O. Sytar & S. I. Allakhverdiev: Photosynth. Res., 126, 449 (2015).41) T. Sejima, D. Takagi, H. Fukayama, A. Makino & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 55, 1184 (2014).55) M. Suorsa, S. Järvi, M. Grieco, M. Nurmi, M. Pietrzykowska, M. Rantala, S. Kangasjärvi, V. Paakkarinen, M. Tikkanen, S. Jansson et al.: Plant Cell, 24, 2934 (2012).56) M. Kono, K. Noguchi & I. Terashima: Plant Cell Physiol., 55, 990 (2014).57) W. Yamori, A. Makino & T. Shikanai: Sci. Rep., 6, 20147 (2016)..
Sejima et al.(41)41) T. Sejima, D. Takagi, H. Fukayama, A. Makino & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 55, 1184 (2014).では,パルス法がROSの発生促進に伴いPSI光傷害を誘導するという報告と同時に,P700クロロフィルを酸化状態(P700+)で維持することができれば,ROSによるPSI光傷害を防ぐことが可能であることを見いだしている(図4図4■全P700量に対するP700+の増加がROS生成を抑える概略図(A)とP700酸化を促進するP700酸化システムの一覧(B)).これは非常に単純明快なROS傷害の緩和システムといえる.光合成駆動中にP700は前述のように基底状態のP700,励起状態の*P700,酸化状態のP700+の三態をとりうる(図4図4■全P700量に対するP700+の増加がROS生成を抑える概略図(A)とP700酸化を促進するP700酸化システムの一覧(B)).光合成研究の分野においてはPSI内部における全P700に対する基底状態P700をY(I),励起状態*P700の割合をY(NA),酸化状態P700+の割合をY(ND)というパラメータで表現するが(58)58) C. Klughammer & U. Schreiber: Planta, 192, 261 (1994).,Y(ND)増加すれば,ROS生成を引き起こすY(NA),および光によって*P700となるY(I)の割合を低下させることができる(図4B図4■全P700量に対するP700+の増加がROS生成を抑える概略図(A)とP700酸化を促進するP700酸化システムの一覧(B)).つまり,ROS傷害発生を抑制しようとする際はROS生成の源となるP700クロロフィルを酸化状態にとどめてしまい,PSI以降が電子であふれる状態をいったんPSIで電子の流れを塞き止める戦略が有効であると考えられる.興味深いことに,Y(ND)は,光合成電子伝達活性が高くなる強光条件下や,暗反応の活性が低下する乾燥条件や低CO2条件下で,野生型のシアノバクテリアから陸上植物まで共通して大きくなる(58~65)58) C. Klughammer & U. Schreiber: Planta, 192, 261 (1994).59) J. Harbinson & C. H. Foyer: Plant Physiol., 97, 41 (1991).60) C. Miyake, M. Miyata, Y. Shinzaki & K. I. Tomizawa: Plant Cell Physiol., 46, 629 (2005).61) K. Shaku, G. Shimakawa, M. Hashiguchi & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 57, 1443 (2015).62) G. Shimakawa, K. Shaku & C. Miyake: Plant Physiol., 172, 1443 (2016).63) G. Shimakawa, K. Ishizaki, S. Tsukamoto, M. Tanaka, T. Sejima & C. Miyake: Plant Physiol., 173, 1636 (2017).64) D. Takagi, M. Hashiguchi, T. Sejima, A. Makino & C. Miyake: Photosynth. Res., 129, 279 (2016).65) D. Takagi, K. Ishizaki, H. Hanawa, T. Mabuchi, G. Shimakawa, H. Yamamoto & C. Miyake: Physiol. Plant., 161, 56 (2017)..強光や乾燥条件においてP700+の蓄積が起こるという事実は,多くの論文で確認されていたことであるが,P700+をあえて蓄積させるその生理学的意義は謎であった.パルス法とY(ND)の関係性から三宅グループは,「O2発生型光合成生物は自身でPSIに電子が蓄積するとROSの生成の脅威が迫ることを理解しており,明反応の活性が暗反応の活性に比べて高くなりすぎる条件においては,ROS生成を抑制する為に,Y(ND)を誘導するメカニズムを有している」という新規のY(ND)誘導の生理学的意義を導き出した.三宅グループでは,このO2発生型光合成生物が持ち合わせているY(ND)誘導によるROS傷害回避システムを[P700酸化システム]と命名した.この先には現在までに明らかとしてきたO2発生型光合成生物におけるP700酸化システムを紹介する(62, 63, 65, 66)63) G. Shimakawa, K. Ishizaki, S. Tsukamoto, M. Tanaka, T. Sejima & C. Miyake: Plant Physiol., 173, 1636 (2017).65) D. Takagi, K. Ishizaki, H. Hanawa, T. Mabuchi, G. Shimakawa, H. Yamamoto & C. Miyake: Physiol. Plant., 161, 56 (2017).66) 嶋川銀河,三宅親弘:光合成研究News letter, 27, 4–15 (2017).62) G. Shimakawa, K. Shaku & C. Miyake: Plant Physiol., 172, 1443 (2016)..
PSI内部の全P700量に対して基底状態で存在しているP700はY(I)[Effective photochemical quantum yieldof PSI],励起状態で存在している*P700はY(NA)[Quantum yield of non-photochemical energydissipation of reaction centers due to shortage of electron acceptors],そして酸化状態で存在しているP700+はY(ND)[Quantum yield of non-photochemical energydissipation due to a shortage of electrons from Plastocyanin]と表現される(58)58) C. Klughammer & U. Schreiber: Planta, 192, 261 (1994)..光合成生物においてはBに示した様なPSIにおけるP700酸化[Y(ND)誘導]を行うメカニズムが複数存在しており,これらがPSIにおけるROS生成を抑制しているため,光合成生物はROS生成の脅威を回避している.
Flavodiiron protein(FLV)は,その構造内にMetallo-β-lactamase domainとFlavodoxin domainを基本構造として持ち合わせており,Class AからEまで分類されている(67~70)67) A. Wasserfallen, S. Ragettli, Y. Jouanneau & T. Leisinger: FEBS J., 254, 325 (1998).68) Y. Allahverdiyeva, J. Isojärvi, P. Zhang & E. M. Aro: Life, 5, 716 (2015).69) W. W. Fischer, J. Hemp & J. S. Valentine: Curr. Opin. Chem. Biol., 31, 166 (2016).70) C. V. Romão, J. B. Vicente, P. T. Borges, C. Frazão & M. Teixeira: J. Biol. Inorg. Chem., 21, 39 (2016)..FLVは1993年に嫌気性生物(Desulfovibrio D. gigas)で最初に発見されおり,嫌気性生物がO2による酸化ストレスおよび窒素酸化物(NO)によるニトロソ化ストレスを回避する為に,それらをH2O, N2Oへと還元するための酵素である(70, 71)70) C. V. Romão, J. B. Vicente, P. T. Borges, C. Frazão & M. Teixeira: J. Biol. Inorg. Chem., 21, 39 (2016).71) L. Chen, M. Y. Liu, J. Legall, P. Fareleira, H. Santos & A. V. Xavier: FEBS J., 216, 443 (1993)..
このFLVのうち,Class Cに分類され,基本構造の2つのドメインに加えてNAD(P)H: Flavin oxidoreductase-like domainをもつFLVはO2発生型光合成であるシアノバクテリアに存在している(67)67) A. Wasserfallen, S. Ragettli, Y. Jouanneau & T. Leisinger: FEBS J., 254, 325 (1998)..光合成電子伝達反応においてFLVはPSIで生成される還元力(電子/NADPH)を用いることでO2をH2Oに変換する反応を担っている(67, 68, 72, 73)67) A. Wasserfallen, S. Ragettli, Y. Jouanneau & T. Leisinger: FEBS J., 254, 325 (1998).68) Y. Allahverdiyeva, J. Isojärvi, P. Zhang & E. M. Aro: Life, 5, 716 (2015).72) J. B. Vicente, C. M. Gomes, A. Wasserfallen & M. Teixeira: Biochem. Biophys. Res. Commun., 294, 82 (2002).73) Y. Helman, D. Tchernov, L. Reinhold, M. Shibata, T. Ogawa, R. Schwarz, I. Ohand & A. Kaplan: Curr. Biol., 13, 230 (2003)..FLVがH2O生成に必要な電子をPSIから受け取るため,FLVはPSIの酸化に大きく貢献する(61, 68~75)61) K. Shaku, G. Shimakawa, M. Hashiguchi & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 57, 1443 (2015).68) Y. Allahverdiyeva, J. Isojärvi, P. Zhang & E. M. Aro: Life, 5, 716 (2015).69) W. W. Fischer, J. Hemp & J. S. Valentine: Curr. Opin. Chem. Biol., 31, 166 (2016).70) C. V. Romão, J. B. Vicente, P. T. Borges, C. Frazão & M. Teixeira: J. Biol. Inorg. Chem., 21, 39 (2016).71) L. Chen, M. Y. Liu, J. Legall, P. Fareleira, H. Santos & A. V. Xavier: FEBS J., 216, 443 (1993).72) J. B. Vicente, C. M. Gomes, A. Wasserfallen & M. Teixeira: Biochem. Biophys. Res. Commun., 294, 82 (2002).73) Y. Helman, D. Tchernov, L. Reinhold, M. Shibata, T. Ogawa, R. Schwarz, I. Ohand & A. Kaplan: Curr. Biol., 13, 230 (2003).74) Y. Allahverdiyeva, M. Ermakova, M. Eisenhut, P. Zhang, P. Richaud, M. Hagemann, L. Cournac & E. M. Aro: J. Biol. Chem., 286, 24007 (2011).75) Y. Allahverdiyeva, H. Mustila, M. Ermakova, L. Bersanini, P. Richaud, G. Ajlani, N. Battchikova, L. Cournac & E. M. Aro: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 110, 4111 (2013)..実際にFLVを欠損させたシアノバクテリアにおいては,野生型に比べてPSIに非常に電子が蓄積しやすい状況に陥っており,野生型と比較してROSによるPSI光傷害が発生しやすい(62, 73~75)62) G. Shimakawa, K. Shaku & C. Miyake: Plant Physiol., 172, 1443 (2016).73) Y. Helman, D. Tchernov, L. Reinhold, M. Shibata, T. Ogawa, R. Schwarz, I. Ohand & A. Kaplan: Curr. Biol., 13, 230 (2003).74) Y. Allahverdiyeva, M. Ermakova, M. Eisenhut, P. Zhang, P. Richaud, M. Hagemann, L. Cournac & E. M. Aro: J. Biol. Chem., 286, 24007 (2011).75) Y. Allahverdiyeva, H. Mustila, M. Ermakova, L. Bersanini, P. Richaud, G. Ajlani, N. Battchikova, L. Cournac & E. M. Aro: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 110, 4111 (2013)..
近年では,シアノバクテリアにとどまらず,コケ植物,シダ植物と裸子植物まで,それらのゲノム上にClass CのFLVが保存されており,実際にそれが葉緑体中で光合成駆動中のPSI酸化,つまり「P700酸化システム」として機能していることが報告されている(63, 65, 68, 76~78)63) G. Shimakawa, K. Ishizaki, S. Tsukamoto, M. Tanaka, T. Sejima & C. Miyake: Plant Physiol., 173, 1636 (2017).65) D. Takagi, K. Ishizaki, H. Hanawa, T. Mabuchi, G. Shimakawa, H. Yamamoto & C. Miyake: Physiol. Plant., 161, 56 (2017).68) Y. Allahverdiyeva, J. Isojärvi, P. Zhang & E. M. Aro: Life, 5, 716 (2015).76) H. Yamamoto, S. Takahashi, M. R. Badger & T. Shikanai: Nat. Plants, 2, 16012 (2016).77) C. Gerotto, A. Alboresi, A. Meneghesso, M. Jokel, M. Suorsa, E. M. Aro & T. Morosinotto: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 113, 12322 (2016).78) P. Ilík, A. Pavlovič, R. Kouřil, A. Alboresi, T. Morosinotto, Y. Allahverdiyeva, E. M. Aro, H. Yamamoto & T. Shikanai: New Phytol., 214, 967 (2017)..興味深い点は,同じ陸上植物においても被子植物には,FLVが保存されていないということである(68, 76)68) Y. Allahverdiyeva, J. Isojärvi, P. Zhang & E. M. Aro: Life, 5, 716 (2015).76) H. Yamamoto, S. Takahashi, M. R. Badger & T. Shikanai: Nat. Plants, 2, 16012 (2016)..2016年には,被子植物であるシロイヌナズナにヒメツリガネゴケのFLVを導入した株が作出されたが,FLV導入株においてはPSI酸化が促進されることによってPSI光傷害耐性を得るというポジティブな効果が見られており,一方でFLVを捨てなければならないようなネガティブな表現型は今のところ観測されていない(76)76) H. Yamamoto, S. Takahashi, M. R. Badger & T. Shikanai: Nat. Plants, 2, 16012 (2016)..コケ,シダ,裸子植物のFLVは,シアノバクテリアで観測されるP700酸化活性と遜色ないほどに高い活性をもちPSI光傷害の緩和に貢献しているにもかかわらず,被子植物がなぜFLVを捨てたのか? という疑問は光合成研究分野において興味深いトピックの一つである.ただし,地球で最も繁栄している被子植物の姿を見ると,彼らにとってFLVは必要でないのであろう.なぜなら,これまで述べてきたように,強光や低CO2などの光合成効率が低下するストレス環境下では,必ずP700は酸化され,ROS生成が抑制される.これは,後述するようなメカニズムで被子植物は十分にP700酸化システムを機能できるからと考えられる.被子植物が進化の過程でFLVを保存しなかった理由の考察において,重要な発見がHanawa et al.(121)121) H. Hanawa, K. Ishizaki, K. Nohira, D. Takagi, G. Shimakawa, T. Sejima, K. Shaku, A. Makino & C. Miyake: Physiol. Plant., 161, 138 (2017).でもたらされた.FLVを持つ陸上植物(コケ・シダ・裸子植物)においてFLVは生葉に光を照射した直後にのみ機能し,定常光下ではその活性が無視できるほどに抑えられる.この事実は定常光合成環境下ではFLVは必要とされないことを示す重要な性質である.被子植物はこのFLVの性質を認識し,進化の過程でFLVを捨ててしまったのかもしれない.
図1図1■光合成電子伝達反応とROS発生条件の概略図でも示したが光合成による電子伝達反応はPSIIにおけるH2Oの酸化に始まり,次いでPQに電子を渡し,最終的にはPSIへと伝達される.ここでPSIIからPQを介してCyt b6fへと流れる電子伝達機構に関してもう少し具体的に見てみる(79~81)79) J. F. Allen: Trends Plant Sci., 9, 130 (2004).80) G. Kurisu, H. Zhang, J. L. Smith & W. A. Cramer: Science, 302, 1009 (2003).81) W. A. Cramer, H. Zhang, J. Yan, G. Kurisu & J. L. Smith: Annu. Rev. Biochem., 75, 769 (2006).(図5A図5■PSIIとCyt b6f間で行われるQ-cycleの概略図(A)とRISE誘導時の光合成電子伝達鎖の概略図(B)).PQはPSIIから2電子を受けとると同時に葉緑体ストロマからH+を2分子受け取る.これによってPQは還元型PQ(PQH2)となり,PSIIから解離する.PSIIから解離したPQH2はCyt b6fのチラコイド膜ルーメン側のPQH2結合部位(Qo site)へと結合する.その後,PQH2はCyt b6f複合体を構成する[Fe-S]タンパク質であるRieskeタンパク質へと1電子伝達を行い,2分子のH+をチラコイド膜ルーメン内部に輸送する.このときPQH2はPQセミキノン(PQ·−)の状態となっている.PQ·−がもつ電子はCyt b6f複合体内部のb-type hemeであるbLへと伝達され,続いて同じくb-type hemeであるbHへと伝達される.Cyt b6fのbH近傍にはPQ結合サイト(Qi site)が存在しており,PQはそこに結合することによってbHから電子を受け取ることができる.bHから1電子受け取ったPQはPQ·−となり,もう一度PQH2がQo siteに結合すると,Qi siteにおいてPQH2が再生される.ここで説明したPSIIとCyt b6f間におけるPQ/PQH2の酸化還元サイクルはQ-cycleと呼ばれている.Q-cycleのメリットは電子を循環させることで1分子のO2発生に対するH+の取り込み量を倍加させ,効率よくルーメン側にATP合成の為のH+を蓄積させることが可能となる点である(79)79) J. F. Allen: Trends Plant Sci., 9, 130 (2004)..
RISEはこのPQ/PQH2がQ-cycleという電子伝達様式をとることによって起こる.Shaku et al.(61)61) K. Shaku, G. Shimakawa, M. Hashiguchi & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 57, 1443 (2015).においてSynechococcus elongatus PCC 7942のFLVを欠損した変異株(Δflv1/3)においては,上述のようにFLVがH2O生成のために光合成電子伝達鎖上においてPSIから電子を消費できないため,光照射下においては光合成電子伝達鎖上に非常に電子が蓄積する状況となる.この状況において,さらに強力なパルス光をΔflv1/3に照射すると,究極的に光合成電子伝達鎖上の電子の蓄積が促進されるが,その瞬間,光合成によるO2発生が一時的に停止し,それに伴ってP700が酸化されるという現象が確認される(61)61) K. Shaku, G. Shimakawa, M. Hashiguchi & C. Miyake: Plant Cell Physiol., 57, 1443 (2015)..これは何を意味しているかというと,究極的な光合成電子伝達鎖上の還元状態は光合成電子伝達反応をPSIの上流で停止させてしまうという事実を示している.さらなる詳細な光合成電子伝達反応解析の結果,Δflv1/3にパルス照射を行った場合にはPQとCyt b6f間,つまりQ-cycleで電子伝達が停止してしまうことが明らかとされた.Q-cycleは常に光合成電子伝達反応で起こっていると考えると(82)82) C. A. Sacksteder, A. Kanazawa, M. E. Jacoby & D. M. Kramer: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 14283 (2000).,PSIIからPSIへと電子が流れる際は必ず電子はRieskeタンパク質に一つ,bH,bLに一つ電子が伝達されなければならない.しかしながらbH,bLが電子を受け取れる状況になるにはPQが電子を受け取れる状況で待機している必要があるので,PQ-poolが完全に還元条件になるとbH,bLの酸化抑制によるQ-cycleの停止とPQ以降への電子伝達反応の停止が起こる(図5B図5■PSIIとCyt b6f間で行われるQ-cycleの概略図(A)とRISE誘導時の光合成電子伝達鎖の概略図(B)).この現象がRISEである.RISEは光合成電子伝達鎖上が過剰に還元された状況においてPSIで電子が蓄積するのを防ぐ究極的なP700酸化システムであると考えられる.このRISEという現象は現在,シアノバクテリアにおいて報告がなされているが,今後は陸上植物などにおいてもRISEの誘導が行われているか報告を待っている状況である.
光合成電子伝達反応の駆動はチラコイド膜を介したH+勾配の形成とカップリングしており,ATP合成酵素によるATP合成の駆動力として利用されるわけであるが,これに加えてチラコイド膜内腔のH+蓄積がもたらす酸性化(光合成駆動時pH=5.0~)は,光合成電子伝達反応の速度の制御において重要な役割を果たす(83~87)83) D. M. Kramer, C. A. Sacksteder & J. A. Cruz: Photosynth. Res., 60, 151 (1999).84) D. M. Kramer, J. A. Cruz & A. Kanazawa: Trends Plant Sci., 8, 27 (2003).85) K. Takizawa, J. A. Cruz, A. Kanazawa & D. M. Kramer: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 1767, 1233 (2007).86) J. Zaks, K. Amarnath, D. M. Kramer, K. K. Niyogi & G. R. Fleming: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 109, 15757 (2012).87) A. N. Tikhonov: Photosynth. Res., 116, 511 (2013)..陸上植物を例にとると,PSIIにおいては受け取った光エネルギーを熱として散逸させる非光化学的消光(Non-photochemical quenching; NPQ)の誘導を行う(88)88) P. Müller, X. P. Li & K. K. Niyogi: Plant Physiol., 125, 1558 (2001)..チラコイド膜内腔酸性化に伴うNPQの誘導にはPSIIのサブユニットであるPsbSとチラコイド内腔に存在するviolaxanthine deepoxidase(VDE)の2つのコンポーネントが関与する(89, 90)89) K. K. Niyogi, A. R. Grossman & O. Björkman: Plant Cell, 10, 1121 (1998).90) X. P. Li, O. Björkman, C. Shih, A. R. Grossman, M. Rosenquist, S. Jansson & K. K. Niyogi: Nature, 403, 391 (2000)..PsbSは,チラコイド膜内腔側に存在するカルボキシル基に可逆的なH+付加を誘導し,H+の結合によってPSIIのアンテナ構造が変化し,NPQの誘導が行われる(90, 91)90) X. P. Li, O. Björkman, C. Shih, A. R. Grossman, M. Rosenquist, S. Jansson & K. K. Niyogi: Nature, 403, 391 (2000).91) K. K. Niyogi, X. P. Li, V. Rosenberg & H. S. Jung: J. Exp. Bot., 56, 375 (2004)..VDEも同様に内腔の酸性化によってGly-rich配列がプロトン化されることによってその活性が上昇し,ビオラキサンチンはアンテラキサンチンを介して,ゼアキサンチンに変換する(89, 92)89) K. K. Niyogi, A. R. Grossman & O. Björkman: Plant Cell, 10, 1121 (1998).92) R. C. Bugos & H. Y. Yamamoto: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93, 6320 (1996)..ゼアキサンチンは光合成においてキサントフィルサイクルによるクロロフィルの励起エネルギーの熱散逸やPSIIのアンテナに作用することで光エネルギーの熱散逸誘導を加速させる役割がある(93, 94)93) B. Demmig-Adams & W. W. Adams III: Trends Plant Sci., 1, 21 (1996).94) M. Nilkens, E. Kress, P. Lambrev, Y. Miloslavina, M. Müller, A. R. Holzwarth & P. Jahns: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 1797, 466 (2010)..NPQの誘導はPSIIにおける実効量子収率を低下させるために,PSIIから下流に流れる電子の量を減少させることができる(95, 96)95) S. Hubbart, O. O. Ajigboye, P. Horton & E. H. Murchie: Plant J., 71, 402 (2012).96) J. Kromdijk, K. Głowacka, L. Leonelli, S. T. Gabilly, M. Iwai, K. K. Niyogi & S. P. Long: Science, 354, 857 (2016)..
これに加えてチラコイド膜内腔の酸性化はPSIIのH2Oの酸化部位であるMnクラスターにおいて可逆的なCa2+の解離を促す(97)97) A. Krieger & E. Weis: Photosynth. Res., 37, 117 (1993)..MnクラスターからCa2+が解離するとH2Oの酸化活性が低下するために,こちらもPSIIから光合成の下流への電子伝達が抑制される.Cyt b6fにおいては,内腔の酸性化に伴いPQH2からRieskeタンパク質への電子伝達反応が抑制される(87)87) A. N. Tikhonov: Photosynth. Res., 116, 511 (2013)..PQH2とRieskeタンパク質間の電子伝達速度は,チラコイド膜上における全電子伝達反応において最も速度が遅いプロセスであるため,内腔の酸性化はP700+の蓄積,すなわちY(ND)誘導を促進させる(98~101)98) Y. Munekage, M. Hojo, J. Meurer, T. Endo, M. Tasaka & T. Shikanai: Cell, 110, 361 (2002).99) G. DalCorso, P. Pesaresi, S. Masiero, E. Aseeva, D. Schünemann, G. Finazzi, P. Joliot, R. Barbato & D. Leister: Cell, 132, 273 (2008).100) A. Kanazawa, E. Ostendorf, K. Kohzuma, D. Hoh, D. D. Strand, M. Sato-Cruz, L. Savage, J. A. Cruz, N. Fisher, J. E. Froehlich et al.: Front. Plant Sci., 8, 719 (2017).101) D. Takagi, K. Amako, M. Hashiguchi, H. Fukaki, K. Ishizaki, T. Goh, R. Sano, T. Kurata, T. Demura, S. Sawa et al.: Plant J., 91, 306 (2017)..
では,このチラコイド膜内腔のH+蓄積はどのように制御されているのであろうか? チラコイド膜内腔のH+制御の方法には2種類存在する.一つは光合成電子伝達反応の制御によるH+取り込み側の制御であり,もう一つはATP合成酵素によるH+流出側の制御である(37, 100~105)37) C. Miyake: Plant Cell Physiol., 51, 1951 (2010).100) A. Kanazawa, E. Ostendorf, K. Kohzuma, D. Hoh, D. D. Strand, M. Sato-Cruz, L. Savage, J. A. Cruz, N. Fisher, J. E. Froehlich et al.: Front. Plant Sci., 8, 719 (2017).101) D. Takagi, K. Amako, M. Hashiguchi, H. Fukaki, K. Ishizaki, T. Goh, R. Sano, T. Kurata, T. Demura, S. Sawa et al.: Plant J., 91, 306 (2017).102) A. Kanazawa & D. M. Kramer: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99, 12789 (2002).103) T. J. Avenson, J. A. Cruz, A. Kanazawa & D. M. Kramer: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102, 9709 (2005).104) K. Takizawa, A. Kanazawa & D. M. Kramer: Plant Cell Environ., 31, 235 (2008).105) K. Kohzuma, J. A. Cruz, K. Akashi, S. Hoshiyasu, Y. N. Munekage, A. Yokota & D. M. Kramer: Plant Cell Environ., 32, 209 (2009).(図6図6■光合成電子伝達反応鎖におけるチラコイド膜内腔側へのH+輸送制御の概略図).H+取り込み側の制御としてはH2OからCO2固定への光合成電子伝達反応(Linear electron flow)とは別の,代替的光合成電子伝達反応(Alternative electron flow; AEF)が提唱されている(37, 106, 107)37) C. Miyake: Plant Cell Physiol., 51, 1951 (2010).106) T. Shikanai: Annu. Rev. Plant Biol., 58, 199 (2007).107) W. Yamori & T. Shikanai: Annu. Rev. Plant Biol., 67, 81 (2016)..AEFは代替的であるがゆえに直接的にCO2固定のための還元力(NADPH)を提供しない.一方で,チラコイド膜上の光合成電子伝達反応を促進させるので,Q-cycleの活性化によるチラコイド膜内腔へのH+取り込みを促進させる(図6A図6■光合成電子伝達反応鎖におけるチラコイド膜内腔側へのH+輸送制御の概略図).現在AEFにはさまざまなものが提唱されているが,高等植物であれば主要なものとしてPSIからチラコイド膜外部においてO2へと電子を流し,O2−生成およびSOD/APXによるO2−消去とAsc再生反応によって光合成電子伝達活性を向上させるwater–water cycle(Mehler-Ascorbate peroxidase pathway),PSIから出た電子をもう一度光合成電子伝達反応鎖上に戻す循環的電子伝達経路(cyclic electron flow around PSI; CEF),PQ-poolから電子を直接O2へと渡し,H2Oを生成させる葉緑体呼吸(Plastid terminal oxidase; PTOX)が挙げられる(37, 106, 108)37) C. Miyake: Plant Cell Physiol., 51, 1951 (2010).106) T. Shikanai: Annu. Rev. Plant Biol., 58, 199 (2007).108) J. Alric & X. Johnson: Curr. Opin. Plant Biol., 37, 78 (2017)..AEFに関しては変異体を用いた実験により,その重要性が主張されることが多いが,AEFの活性評価の難しさにより,野生型の光合成生物において光合成駆動時における貢献度はいまだに議論が続いている状況である.AEFの評価法および速度論的議論に関しては高木・三宅(109)109) 高木大輔,三宅親弘:光合成研究News letter, 24, 97–110 (2014).を参照していただきたい.
光合成電子伝達反応におけるチラコイド膜内腔の酸性化促進の方法は電子伝達活性の促進によってH+の取り込みを促進させる方法(A)と,ATP合成酵素におけるH+流出活性を抑制する方法(B)の2つの戦略が考えられる.(A)で各種代替的電子伝達反応を点線の矢印で示したのは,それぞれの電子伝達経路が発揮する電子伝達速度が明らかとなっていないことを示す.詳しくは高木・三宅(109)109) 高木大輔,三宅親弘:光合成研究News letter, 24, 97–110 (2014).を参照してほしい.
一方で,H+の流出による制御は,近年になってその重要性を議論した論文が多く見られるようになってきた(100, 101)100) A. Kanazawa, E. Ostendorf, K. Kohzuma, D. Hoh, D. D. Strand, M. Sato-Cruz, L. Savage, J. A. Cruz, N. Fisher, J. E. Froehlich et al.: Front. Plant Sci., 8, 719 (2017).101) D. Takagi, K. Amako, M. Hashiguchi, H. Fukaki, K. Ishizaki, T. Goh, R. Sano, T. Kurata, T. Demura, S. Sawa et al.: Plant J., 91, 306 (2017).(図6B図6■光合成電子伝達反応鎖におけるチラコイド膜内腔側へのH+輸送制御の概略図).Takagi et al.(101)101) D. Takagi, K. Amako, M. Hashiguchi, H. Fukaki, K. Ishizaki, T. Goh, R. Sano, T. Kurata, T. Demura, S. Sawa et al.: Plant J., 91, 306 (2017).においては真にチラコイド膜内腔のH+制御を行うコンポーネントを明らかとするためにエチルメタンスルホン酸で突然変異処理を行ったシロイヌナズナから変異体のスクリーニングを行った.その結果,葉緑体局在のATP合成酵素のγ-サブユニットに点突然変異をもつ植物の単離(hope2と命名)に成功した.hope2では,光合成駆動中におけるチラコイド膜内腔のH+蓄積量が少なく,この原因はATP合成酵素を介したH+のチラコイド膜内腔からストロマへの流出が促進されていることが原因であることを突き詰めた.興味深かったのは野生型植物においてCO2固定速度が低下するような条件下においてP700+が見られる際には,ATP合成酵素を介したH+流出が抑えられるという事実の発見であった.つまり,ATP合成酵素は暗反応の活性に対して明反応の活性が高くなってしまうような条件下においてはATP合成酵素を介したH+流出を抑制し,チラコイド膜内腔のH+蓄積を増強させることによって明反応全体をダウンレギュレーションさせる機能が備わっている可能性が考えられた(101)101) D. Takagi, K. Amako, M. Hashiguchi, H. Fukaki, K. Ishizaki, T. Goh, R. Sano, T. Kurata, T. Demura, S. Sawa et al.: Plant J., 91, 306 (2017)..in vitroではATP合成酵素におけるH+流出活性は葉緑体ATP/ADP比やリン酸化により制御されるようであるが(104, 110~112)104) K. Takizawa, A. Kanazawa & D. M. Kramer: Plant Cell Environ., 31, 235 (2008).110) M. Kanekatsu, H. Saito, K. Motohashi & T. Hisabori: IUBMB Life, 46, 99 (1998).111) T. D. Bunney, H. S. van Walraven & A. H.de Boer: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 4249 (2001).112) G. del Riego, L. M. Casano, M. Martín & B. Sabater: Photosynth. Res., 89, 11 (2006).,in vivoで実際にH+制御を行っているコンポーネントに関しては明らかとなっていない.ATP合成酵素がどのようにして明反応と暗反応のバランスを感知し,H+流出活性を制御しているかは今後の明らかにしていくべき課題である.この三宅グループの成果によって,H+取り込み側とH+流出側の制御の議論においては,後者のH+流出側の制御のほうがチラコイド膜内腔のH+蓄積において重要性が高いということを明らかとした.
光合成における初期CO2固定反応は8個の大サブユニット(54 kDa)と8個の小サブユニット(14 kDa)で構成されるRibrose1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase(Rubisco)によって行われる(113)113) H. Roy & T. J. Andrews: In Photosynthesis, Springer (2000). Chapter 3, pp. 53–83..1947年にRubiscoが発見され,その後1965年にRubiscoがCO2を固定する酵素であると発表されてから,約6年後の1971年にRubiscoはO2も基質とし,P-glycolateを生成することが明らかとなった(113~116)113) H. Roy & T. J. Andrews: In Photosynthesis, Springer (2000). Chapter 3, pp. 53–83.114) S. G. Wildman & J. Bonner: Arch. Biochem., 14, 381 (1947).115) P. W. Trown: Biochemistry, 4, 908 (1965).116) G. Bowes, W. L. Ogren & R. H. Hageman: Biochem. Biophys. Res. Commun., 45, 716 (1971)..光呼吸はRubiscoでRuBPとO2を基質として開始される反応であり,その反応は葉緑体,ペルオキシゾーム,ミトコンドリアの3つの細胞小器官を介して完結される(117)117) R. Douce & H. W. Heldt: In Photosynthesis, Springer, (2000), Chapter 5, pp. 115–136..この反応は,その過程おいてRuBPとATPを用いることでミトコンドリアにおいてCO2を発生させるため,光「呼吸」と命名された.前述のように光呼吸はカルビンサイクル中のCをCO2として放出し,さらにはRubiscoにおいてO2がCO2の反応部位と競合する為,CO2固定においては無駄な反応として表記されることが多く,光呼吸活性を減少させ,CO2固定能力を向上させようという試みがなされているのも事実である(118)118) K. Kajala, S. Covshoff, S. Karki, H. Woodfield, B. J. Tolley, M. J. A. Dionora, R. T. Mogul, A. E. Mabilangan, F. R. Danila, J. M. Hibberd et al.: J. Exp. Bot., 62, 3001 (2011)..
このRubiscoにおけるO2との反応は確かに,CO2固定による炭素源獲得には無駄かもしれない.しかしながら,光呼吸にはその重要な役割が備わっていると筆者らは考える.Takagi et al.(64)64) D. Takagi, M. Hashiguchi, T. Sejima, A. Makino & C. Miyake: Photosynth. Res., 129, 279 (2016).では低CO2環境においてO2濃度を変化させることにより,光合成電子伝達反応の酸化還元状態の評価を行った.その結果,CO2固定反応が抑制される低CO2環境ではPSIは高度に酸化されているが,低CO2条件下においてはO2濃度を低下させると,ATP消費速度が低下し,PSIの還元レベルが大きく上昇することを見いだした.この実験事実は低CO2環境においてはRubiscoが大気中に十分量存在するO2を利用することによって光呼吸を駆動させ,PSIでのROS生成を抑制するためにP700酸化システムとして貢献していると認識することが可能である.この結果を基に考えると,Rubiscoの光呼吸活性の消失は葉内が低CO2となるような状況(乾燥ストレス)では,ROSによる酸化傷害に対してその耐性を低下させてしまう可能性がある.一方でCO2濃縮機能を強化し,光呼吸活性の抑制に成功したC4植物は低CO2環境でどのようにROS発生を抑制しているのかは興味がある点である.CO2濃縮機構を強化したことによって,C4植物はC3植物と比べると低CO2環境でもCO2固定反応を維持でき,光合成電子伝達鎖上に電子が蓄積するのを防ぐことができると考えられるが,C3とC4がともにCO2補償点以下の葉内CO2濃度に陥った際はC4のほうがC3よりもPSI光傷害に脆弱かもしれない.
P700酸化システムによるY(ND)誘導は,そもそもROS生成を根元から抑制するために光合成生物が普遍的にもち合わせている生理反応である.P700+の酸化還元電位はP680+の1.2Vよりもかなり低く,約0.4 Vである(43)43) N. Nelson & C. F. Yocum: Annu. Rev. Plant Biol., 57, 521 (2006)..PSIIではP680+の存在時間の延長はP680+自身の酸化力の高さによって,酸化傷害を引き起こしてしまう(119)119) E. M. Aro, I. Virgin & B. Andersson: Biochim. Biophys. Acta Bioenerg., 1143, 113 (1993)..それに比べるとP700+の酸化還元電位は低く,ROS生成の脅威と比較するとP700+を蓄積しておく方が有効なのかもしれない.Y(ND)誘導のROS傷害耐性への有効性を考慮すると,環境ストレス曝露時において迅速にY(ND)を誘導することができるような作物を作出することができればROS生成抑制によって環境ストレスによる作物の減収を抑えることが可能になるかもしれない.一方で,ROS傷害耐性を与えるシステムはP700酸化システムだけではない.Takagi et al.(65)65) D. Takagi, K. Ishizaki, H. Hanawa, T. Mabuchi, G. Shimakawa, H. Yamamoto & C. Miyake: Physiol. Plant., 161, 56 (2017).では,さまざまな野外に生育する被子植物にパルス法を適用することでPSIにおけるROS傷害耐性の評価を行った.その結果,すべての被子植物においてP700+の誘導が行われず,PSIは過剰に還元された状態に陥っているにもかかわらず,PSIのROS傷害の程度が異なることを明らかとした.この結果は,被子植物においてY(ND)に依存しない未知のPSI光傷害緩和メカニズムの存在を示している.つまり,光合成生物においてはまだ明らかとなっていないさまざまなROS傷害回避戦略が隠されているかもしれない.今後,PSI光傷害の研究の発展によって,光合成生物におけるROS傷害回避戦略の全貌が明らかになっていくことを期待したい.
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