Kagaku to Seibutsu 56(5): 338-344 (2018)
解説
ラビリンチュラ類の油滴タンパク質TLDP1によるn-3PUFA蓄積の制御機構油滴タンパク質TLDP1がn-3PUFAの高度蓄積を可能にする
Mechanical Insights into TLDP1 on the Accumulation of n-3PUFA in Lipid Droplets of Labyrinthulea: Accumulation of n-3PUFA in Lipid Droplets by TLDP1
Published: 2018-04-20
ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などのn-3高度不飽和脂肪酸(n-3PUFA)は,心血管疾患リスク低減,血中中性脂肪低下,関節リュウマチ症状の緩和等の機能性が認められ,医薬品やサプリメント原料として活用されている(1).これらのn-3PUFAは海産魚油から製造されているが,実際には海洋細菌,植物プランクトン,ラビリンチュラ類などの微生物が生合成し,食物連鎖によって海産魚類に蓄積されている(2).ラビリンチュラ類の脂質蓄積力は植物プランクトンや細菌を凌駕しており,工業的なn-3PUFA製造に適している(3).ラビリンチュラ類が多量のn-3PUFA含有脂質を細胞内に蓄積できる理由の一つは,高度な油滴(油球,Lipid droplet)形成・維持能力にある.本解説では,ラビリンチュラ類の新規油滴タンパク質TLDP1(4)という切り口からラビリンチュラ類の驚異的な脂質蓄積力の分子基盤に迫りたい.
© 2018 Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
© 2018 公益社団法人日本農芸化学会
ラビリンチュラ類という言葉を初めて聞かれた読者も多いのではないかと思う.この真核性単細胞生物は,広義には原生生物(protist)の仲間で,ectoplasmic network(外質ネットワーク)と呼ばれるアメーバ様の網状構造の中に細胞が存在するラビリンチュラ科(Labyrinthulidae)と細胞外に外質ネットワークを伸長するヤブレツボカビ科(Thraustochytriidae)という2つの科に大別される.外質ネットワークは外部の有機物を分解吸収する役割を果たすが,外質ネットワークに覆われた細胞体が迷宮(ラビリンス)のように見えたことからラビリンチュラと名づけられたと言われている.現在までに,形態,生活環および18SリボソームRNA遺伝子の系統解析によって,ラビリンチュラ科は1属,ヤブレツボカビ科は11属が合理的な属として認められている(5)5) R. Yokoyama & D. Honda: Mycoscience, 48, 199 (2007)..石油に似た炭化水素を蓄積することで注目を集めた,オーランチオキトリウムもヤブレツボカビ科に属するラビリンチュラ類の1属である(6)6) A. Nakazawa, H. Mtsuura, R. Kose, K. Ito, M. Ueda, D. Honda, I. Inoue, K. Kaya & M. Watanabe: Procedia Environ. Sci., 15, 27 (2012)..属によって異なる生活環を示すが,いずれも鞭毛をもった遊走細胞を生じる.大きなくくりでは,コンブなどが属するストラメノパイル(鞭毛に中空の小毛をもつ真核生物の一群で単細胞生物から多細胞生物まで含まれる)に分類される.便宜的に微細藻類と呼ばれることもあるが,葉緑体はもたず,外界の栄養を吸収,捕食する従属栄養生物群である.海洋,特に沿岸域に存在するが,産業利用が期待されている株は,沖縄本島,石垣島などのマングローブ林の海水から単離されたものが多い.
ラビリンチュラ類は,グルコースと酵母エキスなどの簡単な培地で生育し,DHA(22 : 6n-3)などのn-3PUFAを生合成する.ラビリンチュラ類のDHAの合成経路としては,PUFAシンターゼと呼称されるポリケチド様合成酵素複合体がアセチルCoAとマロニルCoAから中間産物を経ずDHAを合成するPUFA合成経路(7)7) J. G. Metz, P. Roessier, D. Facciotti, C. Levering, F. Dittrich, M. Lassner, R. Valentine, K. Lardizabal, V. Knauf & J. Browse: Science, 293, 290 (2001).が知られていたが,筆者らは脂肪酸合成酵素(FAS)によって合成されたパルミチン酸(16 : 0)を起点として脂肪酸鎖長延長酵素(エロンガーゼ)と脂肪酸不飽和化酵素(デサチュラーゼ)が交互に作用することでDHAを合成するエロンガーゼ/デサチュラーゼ経路(スタンダード経路)の存在を証明した(8)8) T. Matsuda, K. Sakaguchi, R. Hamaguchi, T. Kobayashi, E. Abe, Y. Hama, M. Hayashi, D. Honda, N. Okino & M. Ito: J. Lipid Res., 53, 1210 (2012)..また,ラビリンチュラ類の種類によって,PUFA合成経路のみでDHAを合成するI型,PUFA合成経路とエロンガーゼ/デサチュラーゼ経路の両方でDHAを合成するII型およびエロンガーゼ/デサチュラーゼ経路のみでDHAを合成するIII型が存在する(9)9) 伊東 信:海洋と生物,38, 59 (2016)..筆者らは,III型に属するパリエティキトリウムの特定のデサチュラーゼやエロンガーゼ遺伝子を破壊することで,野生型ラビリンチュラ類では合成途上の産物であるエイコサペンタエン酸(EPA, 20 : 5n-3)やn-3ドコサペンタエン酸(n-3DPA, 22 : 5n-3)を大量(5~10g/L培養)に蓄積する脂質代謝変異株を作出している(10)10) 合田初美 他:ラビリンチュラ類の新規高度不飽和脂肪酸合成システムを利用したエイコサペンタエン酸(EPA)の生産,日本農芸化学会2016年度大会(札幌)トピックス賞,2016..
ラビリンチュラ類は,多量のn-3PUFAを合成し,それらをトリアシルグリセロール(TG)やリン脂質のアシル基として保有する.リン脂質は生体膜を構築し,TGは小胞体で合成された後,油滴に蓄積される.ラビリンチュラ類が細菌や出芽酵母などと比較して大量の脂質を蓄積できる最大の理由は,油滴における脂質の蓄積機構が極めて発達しているためと考えられる.油滴は,細菌から植物,哺乳動物まで広く存在するリン脂質1重膜で囲まれた細胞内オルガネラで,エネルギー源となる脂肪酸をTGやステロールエステルとして貯蔵する.哺乳動物においては,メタボリックシンドロームや肥満との関連から油滴に関する研究報告が加速度的に増えている(11)11) A. R. Thiam, R. V. Farese Jr. & T. C. Walther: Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 14, 775 (2013)..一方,ラビリンチュラ類に関しては,油滴が極めて発達しているにもかかわらず,油滴がどのようにして形成・維持されるか,どのようにTGが油滴に蓄積され,分解されるかなどの分子機構についてはほとんど何もわかっていない.動物には,perilipin(Plin)と呼ばれる油滴に特異的なタンパク質が存在し,油滴の機能に密接なかかわりがある(12)12) P. E. Bickel, J. T. Tansey & M. A. Welte: Biochim. Biophys. Acta, 1791, 419 (2009)..現在までに5つのperilipin(Plin 1~5)が同定されており,それらはPATファミリータンパク質とも呼ばれる.植物にもoleosin(13)13) K. D. Chapman, J. M. Dyer & R. T. Mullen: J. Lipid Res., 53, 215 (2012).と呼ばれる油滴タンパク質が存在し,昆虫病原性のある糸状菌にもperilipinのホモログ(14)14) C. Wang & R. J. St Leger: J. Biol. Chem., 282, 21110 (2007).が同定されている.しかしながら,ラビリンチュラ類のいくつかのドラフトゲノムデータベースには,perilipinやoleosinと高い相同性をもつタンパク質は見いだせなかった.
筆者らはラビリンチュラ類の優れた脂質蓄積機構を解明するためには,油滴の機能解明が必要であると考え,その端緒として油滴に特異的に存在するタンパク質の同定を試みた.まず,ショ糖密度勾配遠心法で比重の軽い油滴画分とそれ以外の細胞内小器官を分離し,それぞれのタンパク質を2次元電気泳動で相互比較した(図1A図1■TLDP1の同定と油滴タンパク質の構造).その結果,9つのタンパク質スポットが非油滴画分に比べて,油滴画分に特異的に多く存在することがわかった.9つのスポットをElectrospray ionization-linear ion trap-mass spectrometry(ESI-LIT MS)で解析し,得られた部分アミノ酸配列情報に一致するタンパク質をAurantiochytrium limacinumのDNAデータベースを用いて検索した.その結果,最も発現量の多い3つのタンパク質は,等電点は異なっているが分子量はほぼ同じ(約44,000)であり,部分アミノ酸配列も完全に一致した.等電点が異なる理由は現時点では明確でないが,リン酸化などの翻訳後修飾を受けている可能性が考えられる.このタンパク質をThraustochytrid-specific Lipid Droplet Protein 1(TLDP1)と呼称し,解析を進めた(4)4) T. Watanabe, R. Sakiyama, Y. Iimi, S. Sekine, E. Abe, K. H. Nomura, K. Nomura, Y. Ishibashi, N. Okino, M. Hayashi & M. Ito: J. Lipid Res., 58, 2334 (2017)..まず,A. limacinumのゲノムDNAからTLDP1遺伝子(tldp1)をクローニングした.tldp1は395残基の推定アミノ酸をコードし,PATタンパク質に保存されているPAT1領域は見られないものの,ほかの油滴タンパク質に存在する11-mer繰り返し領域,4-helix bundle配列などが存在した(図1B図1■TLDP1の同定と油滴タンパク質の構造).分子系統樹解析からTLDP1は既存のPlin 1~5とは大きく異なる枝に存在する一方,ほかのラビリンチュラ類のTLDP1ホモログと一つのクラスターを形成し,ラビリンチュラ類に特有の油滴タンパク質であることがわかった(図2図2■TLDP1と油滴タンパク質の分子系統樹).つづいて,TLDP1のNH2末端に緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合させA. limacinumで発現させると,GFP蛍光は油滴の周りを取り囲むように発現した(図3A図3■TLDP1の局在(A),tldp1遺伝子破壊株の油滴の形態(B),TLDP1欠損と過剰発現株の中性脂質(TG)量(C)).また,抗TLDP1抗体を用いたウエスタンブロット解析からTLDP1が油滴画分にだけ存在すること,TLDP1がA. limacinum培養の対数増殖期から定常期にかけて,TG蓄積と同調して増加することが明らかになった(4)4) T. Watanabe, R. Sakiyama, Y. Iimi, S. Sekine, E. Abe, K. H. Nomura, K. Nomura, Y. Ishibashi, N. Okino, M. Hayashi & M. Ito: J. Lipid Res., 58, 2334 (2017)..
(A)ラビリンチュラ類A. limacinum mh0186の油滴画分と非油滴画分を2次元電気泳動し,油滴画分に特異的なタンパク質(赤丸で囲んだスポット)を同定した.250, 251, 252がTLDP1である.それぞれの分子量はほぼ同じで等電点が異なる.tldp1遺伝子欠損によりこの3つのスポットは完全に消失するので,これらは同一遺伝子の産物でありリン酸化などの翻訳後修飾を受けていると推測される.(B)TLDP1とperilipinファミリーに属する油滴タンパク質の構造の模式図.文献4から改変して引用.
ラビリンチュラ類では既存の酵母や大腸菌の形質転換法は適用できない.筆者らは,本研究に先立って,ラビリンチュラ類に最適化した形質転換系(プロモーター,ターミネーター,抗生物質耐性遺伝子の選択など)や相同組換えによる標的遺伝子破壊法を開発した(15, 16)15) K. Sakaguchi, T. Matsuda, T. Kobayshi, R. Hamaguchi, M. Hayashi, D. Honda, Y. Okita, Y. Taoka, N. Okino & M. Ito: Appl. Environ. Microbiol., 78, 3193 (2012).16) T. Kobayashi, K. Sakaguchi, T. Matsuda, E. Abe, Y. Hama, M. Hayashi, D. Honda, Y. Okita, N. Okino & M. Ito: Appl. Environ. Microbiol., 77, 3870 (2011)..これらの方法を用いてtldp1遺伝子の破壊株(KO株)およびtldp1遺伝子破壊株にtldp1遺伝子を過剰発現した株(復帰株)を作製した.KO株においては,前述の2次元電気泳動上で見られた,3つの等電点が異なるTLDP1アイソフォームはすべて消滅し,これらは同一遺伝子の産物であることが確かめられた.炭素源のグルコースが十分存在する条件下でA. limacinumを培養すると,均一の大きさの油滴が細胞内にぎっしり詰まった様子が観察できる(図3B図3■TLDP1の局在(A),tldp1遺伝子破壊株の油滴の形態(B),TLDP1欠損と過剰発現株の中性脂質(TG)量(C),野生株).一方,KO株では,野生株と比較して非常に大きい油滴や小さい油滴が出現し,油滴の大きさは極めて不揃いになり,細胞当たりの油滴数も減少した(図3B図3■TLDP1の局在(A),tldp1遺伝子破壊株の油滴の形態(B),TLDP1欠損と過剰発現株の中性脂質(TG)量(C), KO株).KO株における油滴の不均一性と油滴数の減少は,KO株にtldp1遺伝子を戻すと野生株レベルまで回復した(図3B図3■TLDP1の局在(A),tldp1遺伝子破壊株の油滴の形態(B),TLDP1欠損と過剰発現株の中性脂質(TG)量(C),復帰株).これらの結果は,TLDP1が油滴の大きさや数を制御していることを示唆している.解析ソフトを用いて1細胞当たりの油滴の平均個数と油滴の平均直径を測定し,細胞当たりの油滴が占める体積を計算した結果,野生株では25.2±4.6 µm3/cell, KO株では10.0±2.3 µm3/cell,復帰株では48.5±10.6 µm3/cellとなり,1細胞当たりの油滴の体積は復帰株>野生株>KO株の順になった.KO株では油滴の平均直径は野生株よりも大きくなるが,1細胞当たりの油滴数が減少しているので1細胞当たりの油滴が占める体積は野生株よりも小さくなる.一方,復帰株の1細胞当たりの油滴の平均個数と平均直径はどちらも野生株を上回り,油滴の平均体積は野生株を大きく上回った.復帰株では,本来のtldp1のプロモーターとは異なる強力なプロモーター(ユビキチンプロモーター)でtldp1を駆動しているためtldp1を過剰発現していることになる.油滴はTGをはじめとする中性脂質の蓄積器官なので,細胞当たりの油滴が占める体積は貯蔵される脂質量を強く反映していると考えられる.LC-MSを用いてTG量を測定すると,野生株と比較してKO株の総脂質量(総TG量)は大きく減少しており,復帰株では大きく増加していた(図3C図3■TLDP1の局在(A),tldp1遺伝子破壊株の油滴の形態(B),TLDP1欠損と過剰発現株の中性脂質(TG)量(C)).構成脂肪酸分子種別にTG量を比較しても,パルミチン酸含有TG量もDHA含有TG量もKO株では野生株に比べて減少し,復帰株では増加していた.tldp1を欠損するとTG量が減少する分子機構を明らかにするために,KO株におけるパルミチン酸合成酵素(FAS),DHA合成酵素(PUFAS),TG合成酵素(DGAT2)の発現量を野生株と比較したが,これらのTG代謝にかかわる遺伝子の発現量はtldp1欠損によってほとんど変化しなかった.一方,KO株のリパーゼ活性を野生株と比較したところ,リパーゼ活性は有意に上昇していた.また,lipolysis(脂質分解)の指標となる,TGとその分解物のジアシルグリセロール(DG)の量比(DG/TG ratio)もKO株において明らかに上昇した.この結果は,KO株におけるTG減少はlipogenesisの減少ではなく,lipolysisの亢進によるものであることを示唆している.その分子メカニズムはこれから解明する必要があるが,リパーゼが油滴内に侵入することを物理的に阻害している可能性とTLDP1が特定のリパーゼ活性を抑制している可能性が想定される.
現在のところ,TLDP1の機能を次のように推測している.すなわち,ラビリンチュラ類に特有の油滴タンパク質TLDP1は,油滴をとり囲むように存在することでリパーゼの作用から油滴を保護するとともに,油滴同士の不必要な融合を防いでいる(図4図4■TLDP1欠損株の表現型から推定されるTLDP1の生理機能左).TLDP1が欠損すると油滴同士の融合が起きて非常に大きな油滴が生成する一方で,リパーゼの作用で油滴は小さくなり最終的に消失する(図4図4■TLDP1欠損株の表現型から推定されるTLDP1の生理機能右).このようにTLDP1はラビリンチュラ類の油滴の形態とTG代謝を制御している.
ラビリンチュラ類の油滴の大きさは通常均一であるが,TLDP1欠損株では油滴同士の融合が起こり巨大な油滴が生じる(図3図3■TLDP1の局在(A),tldp1遺伝子破壊株の油滴の形態(B),TLDP1欠損と過剰発現株の中性脂質(TG)量(C)).一方,TLDP1欠損株はリパーゼによって分解を受けやすく,油滴は小さくなりやがて消失する.そのためTLDP1欠損株では油滴の大きさが不揃いになるとともにその数は減少する.つまり,TLDP1は油滴へのリパーゼの侵入や油滴相互の融合をコントロールしていることが示唆される.文献4から改変して引用.
A. limacinum 野生株をGY培地(グルコース,酵母エキス,人工海水)で培養すると,グルコースが存在する限りは増殖を続け(対数増殖期),グルコースが枯渇すると増殖が停止し定常期に入る.抗TLDP1抗体を用いたウエスタンブロットで調べると,TLDP1の発現量は対数増殖期までは上昇するが定常期以降は減少する.細胞内TG量もTLDP1タンパク質の発現パターンと同じ傾向を示し,グルコース存在下では増加するが,グルコース枯渇後には緩やかに減少に転じる(4).つまり,グルコース存在下ではA. limacinumのTGの合成は分解を上回っているが,グルコースが枯渇するとそのバランスは逆転する.そのバランスを保っているのがTLDP1と考えられる.TLDP1が油滴表面に存在するとTG分解は抑制されるが,TLDP1の減少に伴ってTG分解が促進される.グルコースが枯渇するとラビリンチュラ類はTG分解によってエネルギーを得る必要があり,TLDP1によるTGの蓄積(リパーゼから油滴を防御)と消費(TLDP1消失による油滴分解の促進)の制御は,きわめて合理的なシステムのように思える.TLDP1によるTG蓄積の制御機構をより詳細に理解するためには,今後,TLDP1の発現制御機構およびTLDP1の翻訳後修飾と分解機構を明らかにする必要がある.翻訳後修飾の文脈では,等電点の異なる3つのTLDP1アイソフォームの存在に興味がもたれる.
ラビリンチュラ類,特に今回使用したAurantiochytrium属は,脂質蓄積能,増殖速度の速さから工業的にDHAを生産する株としては優れている.DHA生産量を上げるために培養条件(酸素供給量や培地組成)の最適化が進められている(17).一方,TLDP1の過剰発現によって油滴の脂質蓄積量を上げるという今回の試みは,油滴タンパク質の機能を解明するという学術的な意義のみならず,DHA高生産株の分子育種という観点からも期待される.
Acknowledgments
A. limacinum mh0186を恵与していただいた宮崎大学の林 雅弘教授,ラビリンチュラ類の分類について助言をいただいた甲南大学の本多大輔教授に深謝します.また,TLDP1のプロテオーム解析を手伝っていただいた,九州大学大学院理学研究院の野村一也准教授,野村和子博士に感謝します.本研究の一部は,農林水産業・食品産業科学技術推進事業のシーズ創出ステージにおいて実施されました.
Reference
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