解説
植物病害に対する微生物農薬の研究開発における課題と展望
Vol.51 No.8 Page. 541 - 547 (published date : 2013年8月1日)
概要原稿
植物病原微生物に対し抗生・寄生・溶菌・競合などの機能をもつ微生物を利用した植物病害の防除は生物的防除(バイオコントロール)と呼ばれ,そうした働きをもつ微生物のいくつかは実際に微生物農薬(本稿では,微生物殺菌剤のことを指す)として上市され,生産現場で利用されている.生物的防除は環境保全型農業の実現やIPM(総合的病害虫・雑草管理:Integrated Pest Management)の推進に役立つ防除法であるため,微生物農薬は今後さらに普及されることが期待される.しかしながら,これまでに生物的防除については多くの研究例があるにもかかわらず,微生物農薬として商品化までに至ったものは少なく,微生物農薬の開発や利用拡大には技術上あるいは普及上の問題点や課題が見えてきている.本稿では,植物病害に対する微生物農薬の開発の現状とともに,研究開発上の課題と今後の展開方向について概説する.
リファレンス
- 1) 安井 強:バイオコントロール研究会レポート,12, 28 (2012).
- 2) 日本植物防疫協会:“農薬要覧2011”,2011.
- 3) 里山雅人:バイオコントロール研究会レポート,12, 7 (2012).
- 4) 渡邊 健:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 261.
- 5) 田口義広:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 381.
- 6) 田口義広:バイオコントロール研究会レポート,10, 48 (2007).
- 7) S. E. Lindow : “Biological ice nucleation and its application,” APS PRESS, 1995, p. 239.
- 8) 百町満朗,封馬誠也:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 10.
- 9) 田代定良:バイオコントロール研究会レポート,12, 12 (2012).
- 10) 封馬誠也:バイオコントロール研究会レポート,7, 1 (2001).
- 11) 相野公孝:“微生物の資材化:研究の最前線”,ソフトサイエンス社,2000, p. 117.
- 12) 熊倉和夫:“第25回報農会シンポジウム要旨”,2010 (212).
- 13) 永山孝三:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 388.
- 14) 千田茂樹:バイオコントロール研究会レポート,6, 85 (1999).
- 15) 田口義広,百町満朗,渡辺秀樹,川根 太:日植病報,69, 94 (2003).
- 16) 田口義広,渡辺秀樹,百町満朗:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 361.
- 17) 伊豆 進:月刊バイオインダストリー,9, 18 (2010).
- 18) 對馬誠也:バイオコントロール研究会レポート,12, 1 (2012).
- 19) 丸泉和泉,高原吉幸:バイオコントロール研究会レポート,11, 55 (2009).
- 20) 相野公孝:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 178.
- 21) 清水将文:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 173.
- 22) 久保田真弓,百町満朗:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 158.
- 23) 染谷信孝:バイオコントロール研究会レポート,9, 66 (2005).
- 24) 渡辺 哲:バイオコントロール研究会レポート,9, 25 (2005).
- 25) 荒川竜行,西村光由,小嶋博樹,浅野眞一郎,百町満朗:日植病報,77, 72 (2011).
- 26) M. Hyakumachi, M. Nishimura, T. Arakawa, S. Asano, S. Yoshida, S. Tsushima & H. Takahashi :Microbes Environ.,28, 128 (2013).
- 27) 高橋英樹,荒川竜行,西村光由,安藤杉尋,吉田重信,對馬誠也,百町満朗:日植病報,78, 70 (2012).
- 28) 染谷信孝,仲下英雄:“微生物と植物の相互作用—病害と生物防除—”,ソフトサイエンス社,2009, p. 153.
- 29) 百町満朗:“有機農業研究者会議2011資料集”,2011, p. 9.
- 30) W. A. Chandanie, M. Kubota & M. Hyakumachi :Appl. Soil Ecol.,41, 336 (2009).
- 31) 對馬誠也:土と微生物,64, 64 (2010).
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