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酵素がマウスの性決定を左右する
ヒストンの翻訳後修飾による性決定遺伝子の発現制御機構

Vol.52 No.4 Page. 216 - 217 (published date : 2014年4月1日)
立花 誠1
  1. 京都大学ウィルス研究所

概要原稿

われわれ人間も含め,多くの哺乳類の性は遺伝的に決定する,というのが通念である.性染色体の型がXYであれば雄に,XXであれば雌になる.Y染色体には雄化に必要な遺伝子が存在するであろうと古くから予測されていたが,その遺伝子は1990年に発見され,Sry (Sex-determining region Y) と名づけられた(1).SRYはDNA結合能力をもつ転写因子であり,雄化に必要な下流因子群の発現を制御していると考えられている.マウスの雄化には Sry 発現の量と時間の厳密な制御が極めて重要である.すなわち,胎児性腺の特定期間に,かつその量がある閾値を超えるように Sry が転写されなければ,雄化はうまく進行しない(2).Sry の発現によって,それまでどちらの性にも分化していなかった(未分化な)性腺は精巣へと分化する.一方で Sry が発現しなかった未分化性腺は卵巣へと分化する.胎児期特異的な Sry の発現はどのようにして生み出されるのか,その仕組みはこれまでよくわかっていなかった.

リファレンス

  1. 1) P. Berta, J. R. Hawkins, A. H. Sinclair, A. Taylor, B. L. Griffiths, P. N., Goodfellow & M. Fellous : Nature, 348, 448(1990).
  2. 2) K. Kashimada & P. Koopman : Development, 137, 3921(2010).
  3. 3) S. Kuroki, S. Matoba, M. Akiyoshi, Y. Matsumura, H. Miyachi, N. Mise, K. Abe, A. Ogura, D. Wilhelm, P. Koopman, M. Nozaki, Y. Kanai, Y. Shinkai & M. Tachibana : Science, 341, 1106(2013).
  4. 4) R. Hiramatsu, S. Matoba, M. Kanai-Azuma, N. Tsunekawa, Y. Katoh-Fukui, M. Kurohmaru, K. Morohashi, D. Wilhelm, P. Koopman & Y. Kanai : Development, 136, 129(2009).


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