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抗原特異的B細胞の分離・培養法の新展開
迅速なモノクローナル抗体作製法への活用

Vol.51 No.10 Page. 659 - 661 (published date : 2013年10月1日)
高橋 宜聖1, 安達 悠1
  1. 国立感染症研究所

概要原稿

B細胞は試験管内での培養が困難な細胞であり,通常の方法では数日間の培養でほぼ100%死滅する.しかし,1975年の細胞融合によるB細胞不死化技術(ハイブリドーマ法)の開発によってB細胞をクローン化することが可能となり,今日まで無数のモノクローナル抗体が作製されてきた.言うまでもなく,モノクローナル抗体は生命科学研究において必要不可欠な検出用ツールとして活用されるばかりでなく,近年ではヒト疾患の治療を目的とした抗体医薬へと応用され,大きな成果を上げている.従来の細胞融合による抗体作製法は,1) 免疫による抗原結合性B細胞の誘導,2) 細胞融合によるハイブリドーマの作製,3) 目的の抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング,という3つのステップから構成される.そのため,免疫に数カ月の期間を要すること,低頻度でしか存在しない目的のハイブリドーマをスクリーニングするために労力を要すること,さらにヒトB細胞の場合,マウスB細胞のように安定したハイブリドーマ作製技術が未確立なことなどが大きな課題であった.よって,少ない出発材料から迅速かつ効率的に目的のモノクローナル抗体作製を可能とする新技術の開発が長年望まれてきた経緯がある.本稿では,ヒト・マウスB細胞の新しい分離・培養技術と,B細胞1個から可能となる抗体タンパク質作製技術を組み合わせ,迅速性と高い効率を兼ね備えたモノクローナル抗体作製法の最近の流れを紹介したい.

リファレンス

  1. 1) J. F. Scheid, H. Mouquet, N. Feldhahn, M. S. Seaman, K. Velinzon, J. Pietzsch, R. G. Ott, R. M. Anthony, H. Zebroski, A. Hurley et al. : Nature, 458, 636 (2009).
  2. 2) T. Onodera, Y. Takahashi, Y. Yokoi, M. Ato, Y. Kodama, S. Hachimura, T. Kurosaki & K. Kobayashi : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 109, 2485 (2012).
  3. 3) T. G. Phan, D. Paus, T. D. Chan, M. L. Turner, S. L. Nutt, A. Basten & R. Brink : J. Exp. Med., 203, 2419 (2006).
  4. 4) F. Klein, A. Halper-Stromberg, J. A. Horwitz, H. Gruell, J. F. Scheid, S. Boumazos, H. Mouquet, L. A. Spatz, R. Diskin, A. Abadir et al. : Nature, 492, 118 (2012).
  5. 5) M. J. Kwakkenbos, S. A. Diehl, E. Yasuda, A. Q. Bakker, C. M. van Geelen, M. V. Lukens, G. M. van Bleek, M. N. Widjojoatmodjo, W. M. Bogers, H. Mei et al. : Nat. Med., 16, 123 (2010).
  6. 6) T. Nojima, K. Haniuda, T. Moutai, M. Matsudaira, S. Mizokawa, I. Shiratori, T. Azuma & D. Kitamura : Nat. Commun., 2, 465 (2011).
  7. 7) J. Wrammert, K. Smith, J. Miller, W. A. Langley, K. Kokko, C. Larsen, N. Y. Zheng, I. Mays, L. Garman, C. Helms et al. : Nature, 453, 667 (2008).
  8. 8) Y. Takahashi, A. Inamine, S. Hashimoto, S. Haraguchi, E. Yoshioka, N. Kojima, R. Abe & T. Takemori : Immunity, 23, 127 (2005).


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