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植物の生育に深くかかわる根圏微生物のフラボノイド応答
植物の生育促進に働くメカニズム

Vol.52 No.9 Page. 560 - 562 (published date : 2014年9月1日 advanced publication : 2014年8月20日)
広岡 和丈1
  1. 福山大学生命工学部生物工学科

概要原稿

植物の根からは種々の有機化合物が滲出しており,またその周辺に多様な微生物群が生息することで根圏環境が形成される.根圏には通常の土壌に比べはるかに多くの微生物が密集しており,根圏土壌1 gあたりの細菌数は平均108個とも言われる.根から滲出する有機化合物は高分子量と低分子量のものに大別され,高分子量滲出物である粘液質(ムシラーゲ)は,根の保水力を高めるとともに根圏微生物の生息に適した環境を提供している.一方,低分子量滲出物には糖・アミノ酸・有機酸といった直接栄養分となる物質のほかに,各種二次代謝産物が含まれており,それらは根圏微生物にさまざまな作用を及ぼすが,大きな割合をフラボノイドが占める.植物種や生育条件,生育段階によって大きく変動するが,たとえばシロイヌナズナでは根から滲出する二次代謝産物のうち37%がケルセチンを主とするフラボノイドであることがメタボローム解析で示されている.

リファレンス

  1. 1) K. Nagórska, M. Bikowski & M. Obuchowski : Acta Biochim. Pol., 54, 495 (2007).
  2. 2) S. Cesco, G. Neumann, N. Tomasi, R. Pinton & L. Weisskopf : Plant Soil, 329, 1 (2010).
  3. 3) X. Perret, C. Staehelin & W. J. Broughton : Microbiol. Mol. Biol. Rev., 64, 180 (2000).
  4. 4) S. Hassan & U. Mathesius : J. Exp. Bot., 63, 3429 (2012).
  5. 5) V. Lakshmanan, S. L. Kitto, J. L. Caplan, Y. H. Hsueh, D. B. Kearns, Y. S. Wu & H. P. Bais : Plant Physiol., 160, 1642 (2012).
  6. 6) K. Hirooka, S. Kunikane, H. Matsuoka, K. Yoshida, K. Kuma­moto, S. Tojo & Y. Fujita : J. Bacteriol., 189, 5170 (2007).


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