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膜脂質の非対称性とタンパク質輸送制御
脂質がかかわる新しい細胞機能

Vol.52 No.9 Page. 563 - 564 (published date : 2014年9月1日 advanced publication : 2014年8月20日)
田中 一馬1, 鉢呂 健1, 山本 隆晴1
  1. 北海道大学遺伝子病制御研究所分子間情報分野

概要原稿

生体膜を形成する脂質二重層にはさまざまな脂質分子種が存在し,これら脂質の振る舞いは細胞の機能発現に重要な役割を果たしている可能性が考えられるが,脂質が低分子であるためにその挙動を解析することが困難であることから,未解明な点が多いと考えられている.真核細胞の生体膜では,脂質二重層間で脂質が非対称に分布することが知られており,膜リン脂質の非対称性と呼ばれている.一般に脂質分子はそれが存在している層内では比較的自由に動くことができるが,自身では二重層間を横切ることはできず,これには何らかのタンパク質の助けが必要と考えられている.細胞膜や細胞内膜の脂質二重層において細胞質側の層とその反対側の層(非細胞質側層)を考えたときに,非細胞質側層から細胞質側層への輸送はフリップと呼ばれ,この反応を進めるタンパク質はフリッパーゼと呼ばれる.したがって,フリッパーゼは脂質の非対称性形成に貢献することで何らかの役割を果たしていると考えられるが,その機能には解明すべき点が多い.

リファレンス

  1. 1) K. Tanaka, K. Fujimura-Kamada & T. Yamamoto : J. Biochem., 149, 131 (2011).
  2. 2) T. T. Sebastian, R. D. Baldridge, P. Xu & T. R. Graham : Biochim. Biophys. Acta, 1821, 1068 (2012).
  3. 3) K. Saito, K. Fujimura-Kamada, H. Hanamatsu, U. Kato, M. Umeda, K. G. Kozminski & K. Tanaka : Dev. Cell., 13, 743 (2007).
  4. 4) U. Kato, H. Inadome, M. Yamamoto, K. Emoto, T. Kobayashi & M. Umeda : J. Biol. Chem., 288, 4922 (2013).
  5. 5) V. A. van der Mark, R. P. Elferink & C. C. Paulusma : Int. J. Mol. Sci., 14, 7897 (2013).
  6. 6) T. Hachiro, T. Yamamoto, K. Nakano & K. Tanaka : J. Biol. Chem., 288, 3594 (2013).


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