化学の窓
アイソトープからアイソトポマーへ
一酸化二窒素発生源解析の高精度解析ツール
Vol.51 No.11 Page. 773 - 776 (published date : 2013年11月1日)
概要原稿
温室効果ガスの一種である一酸化二窒素(亜酸化窒素,N2O)は大気中の濃度が約320 ppbと低いものの,1800年代から上昇を続けており,100年あたりの地球温暖化係数は二酸化炭素の約300倍程度強力であり,京都議定書により削減が義務づけられている.さらに,N2Oは成層圏オゾンの破壊物質であり,Ravishankaraらは,N2Oは21世紀の最大規模の成層圏オゾンの破壊物質になりうると述べている.そのため,N2Oの発生機構の解明および発生抑制技術の開発が求められており,その一つとして安定同位体比分析の一種であるアイソトポマー(isotopomer;同位体分子種)を用いたN2Oの発生機構解析が期待されている.これまでN2Oアイソトポマー分析は特殊な装置を用いたごく一部の専門家だけに可能な特殊技術であったが,近年の分析装置の発展により徐々に一般化しつつある.今回は,質量分析法とレーザー分光法という異なる2つのN2Oアイソトポマー分析手法とその発展について紹介する.
リファレンス
- 1) P. Forster & V. Ramaswamy : “Climate Change 2007 : The Physical Science Basis. Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change,” Cambridge University Press, 2007, p. 131.
- 2) A. R. Ravishankara, J. S. Daniel & R. W. Portmann : Science, 326, 123 (2009).
- 3) P. Smith & D. Martino : “Climate Change 2007 : Mitigation. Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change,” Cambridge University Press, 2007, p. 499.
- 4) M. Hayatsu, K. Tago & M. Saito : Soil Sci. Plant Nutr., 54, 33 (2008).
- 5) 木庭啓介:“流域環境評価と安定同位体”,永田 俊,宮島利宏編,京都大学学術出版会,2008, p. 388.
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