解説

“フェアリーリング”の化学と“フェアリー化合物”の植物成長調節剤としての可能性

Vol.52 No.10 Page. 665 - 670 (published date : 2014年10月1日 advanced publication : 2014年9月20日)
河岸 洋和1
  1. 静岡大学グリーン科学技術研究所

概要原稿

公園,ゴルフ場,住宅街などで,芝が輪状に周囲より色濃く繁茂し,時には成長が抑制されたり枯れたりし,後にキノコが発生する現象は「フェアリーリング(fairy ring,妖精の輪)」と呼ばれている.筆者らは,フェアリーリングを形成するコムラサキシメジが産生するフェアリーの正体(芝を繁茂させる原因)が2-アザヒポキサンチン(AHX)とイミダゾール-4-カルボキシアミド(ICA)であることを突き止めた.また,植物中でのAHXの代謝産物,2-アザ-8-オキソヒポキサンチン(AOH)を得ることにも成功した.これらの化合物(フェアリー化合物)は試したあらゆる植物に活性を示すことから,筆者は「これらの化合物は植物自身も作り出しているのでは?」と考えた.そして,それを証明し植物体内での生合成経路も明らかにした.フェアリー化合物はさまざまな作物の収量を増加させ,農業への応用が期待される.

リファレンス

  1. 1) http://en.wikipedia.org/wiki/File:FairyRingSchoolField.jpg http://en.wikipedia.org/wiki/File:FairyRingSchoolField.jpg
  2. 2) H. Evershed: Nature, 29, 384 (1884).
  3. 3) J.-H. Choi et al.: ChemBioChem, 11, 1373 (2010).
  4. 4) J.-H. Choi et al.: J. Agric. Food Chem., 58, 9956 (2010).
  5. 5) 崔 宰熏,河岸洋和:化学と生物,49, 299 (2011).
  6. 6) J.-H. Choi et al.: Angew. Chem. Int. Ed., 53, 1552 (2014).
  7. 7) A. Mitchinson: Nature, 505, 298 (2014).
  8. 8) F. Zhao et al.: Mol. Breed., 9, 93 (2002).
  9. 9) K. Vaughan et al.: Magn. Reson. Chem., 40, 300 (2002).
  10. 10) T. Asai et al.: Jpn. Agric. Res. Q., in press.
  11. 11) H. Tobina et al. : Field Crops Res., 162, 6 (2014).


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