化学の窓

植物の生物機能を用いた金属回収技術
コケ植物を用いた金属回収技術の開発と展望

Vol.52 No.2 Page. 121 - 126 (published date : 2014年2月1日)
野村 俊尚1, 井藤賀 操1, 榊原 均1
  1. 理化学研究所環境資源科学研究センター

概要原稿

ハイテク電子機器や電気自動車の部品には,希土類元素などさまざまな希少金属が使用されている.それらの生産を基幹産業とする日本では,希少金属は産業のビタミンとも呼ばれ,経済発展のためになくてはならない重要な資源である(1).しかし,希少金属資源の埋蔵地域は地球上に偏在しており,わが国では,現在その多くを輸入に頼らざるをえない.さらに資源保有国では,自国の資源開発と保持の主権を求める資源ナショナリズムの傾向が強まっており,輸出制限などによる国際市場の価格高騰が容易に生じうる状況となっている(1).このような希少金属の供給不足の危機を打開すべく,深海に眠る金属資源の探索や希少金属の代替技術の開発が推進されているが,これらの技術の実用化には,まだ多くの時間を要すると予想される.

リファレンス

  1. 1) 浦辺徹郎:“貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成”,エヌ・ティー・エス,2007, pp. 3–12.
  2. 2) 馬 建鋒:根の研究,7, 105 (1999).
  3. 3) M. J. Haydon & C. S. Cobbett : New Phytol., 174, 499 (2007).
  4. 4) C. Cobbett & P. Goldsbrough : Annu. Rev. Plant Biol., 53, 159 (2002).
  5. 5) 島田幹夫ほか:木材保存,28, 86 (2002).
  6. 6) 藤川陽子:“環境水浄化技術”,2004, pp. 119–136.
  7. 7) 金子達雄,岡島麻衣子:“メタルバイオテクノロジーによる環境保全と資源回収—新元素戦略の新しいキーテクノロジー”,シーエムシー出版,2009, pp. 138–143.
  8. 8) 竹下健二,尾形剛志:“貴金属・レアメタルのリサイクル技術集成”,エヌ・ティー・エス,2007, pp. 443–463.
  9. 9) S. J. Lippard & J. M. Berg:“生物無機化学”,東京化学同人,1997, pp. 41–73.
  10. 10) 山下光雄:“メタルバイオテクノロジーによる環境保全と資源回収—新元素戦略の新しいキーテクノロジー”,シーエムシー出版,2009, pp. 229–234.
  11. 11) 黒田浩一,植田充美:“メタルバイオテクノロジーによる環境保全と資源回収—新元素戦略の新しいキーテクノロジー”,シーエムシー出版,2009, pp. 97–103.
  12. 12) O. Zitka et al. : “Heavy Metal Stress in Plant,” Springer, 2013, pp. 19–42.
  13. 13) J. Park et al. : Plant J., 69, 278 (2012).
  14. 14) E. Indriolo et al. : Plant Cell, 22, 2045 (2010).
  15. 15) 岩月善之助編:“日本の野生植物コケ”,平凡社,2001, p. 10.
  16. 16) 井藤賀 操,川上 智,榊原 均:“メタルバイオテクノロジーによる環境保全と資源回収—新元素戦略の新しいキーテクノロジー”,シーエムシー出版,2009, pp. 58–62.
  17. 17) 井藤賀 操ほか:植物の生長調節,45, 64 (2010).
  18. 18) 井藤賀 操ほか:環境資源工学,60, 84 (2013).
  19. 19) A. J. Shaw : Environ. Health. Perspect., 102, 105 (1994).
  20. 20) K. Satake et al. : Journal of Bryology, 15, 353 (1988).
  21. 21) T. Nomura & S. Hasezawa : J. Plant Res., 124, 631 (2011).


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