解説

MATEトランスポーターによる薬剤排出機構の解明とペプチド創薬の可能性

Vol.52 No.11 Page. 725 - 730 (published date : 2014年11月1日 advanced publication : 2014年10月20日)
濡木 理1
  1. 東京大学大学院理学系研究科

概要原稿

MATEファミリーは,原核生物,古細菌,真核生物すべてに広く存在する膜タンパク質輸送体であり,ナトリウムイオンあるいはプロトンの濃度勾配を利用してさまざまな異物を細胞外へと排出することで,細胞の恒常性を維持している.そのため病原性細菌やがん細胞においては,薬剤を排出して薬効を低下させる薬剤耐性の一端を担うものであり,近代医療への脅威となっている.したがって,MATEによる薬剤輸送機構の解明および阻害剤の創出が長らく望まれてきた.しかし,MATEは,さまざまな低分子化合物を排出してしまうので,低分子化合物の阻害剤は薬効をもたないというジレンマがあった.今回,われわれは好熱古細菌由来MATEの単体および基質薬剤・阻害活性ペプチドとの複合体のX線結晶構造を高分解能で決定した.その結果,アスパラギン酸残基のプロトン化に伴って,TM1が大きく折れ曲がることで基質ポケットを縮小して基質を排出する機構を発見し,MATEの輸送機構について新たな仮説を提唱するとともに,ペプチド創薬の道を開いた.

リファレンス

  1. 1) M. H. Brown, I. T. Paulsen & R. A. Skurray: Mol. Microbiol., 31, 394 (1999).
  2. 2) K. Damme, A. T. Nies, E. Schaeffeler & M. Schwab: Drug Metab. Rev., 43, 499 (2011).
  3. 3) Y. Yamagishi et al.: Chem. Biol., 18, 1562 (2011).
  4. 4) X. He et al.: Nature, 467, 991 (2010).
  5. 5) Y. Tanaka, C. J. Hipolito, A. D. Maturana, K. Ito, T. Kuroda, T. Higuchi, T. Katoh, H. E. Kato, M. Hattori, K. Kumazaki et al.: Nature, 496, 247 (2013).
  6. 6) C. J. Law, P. C. Maloney & D. N. Wang: Annu. Rev. Microbiol., 62, 289 (2008).


本文はトップページからログインをして頂くと表示されます。