解説

細胞創傷治癒
その分子機構と老化との関連

Vol.53 No.11 Page. 751 - 755 (published date : 2015年10月20日)
河野 恵子1
  1. 名古屋市立大学大学院医学研究科
vol53_11

 

概要原稿

この世で最初の細胞が生まれたとき,そこには遺伝情報を司る核酸と,それを包み込む膜が存在したという.そうであれば,膜の損傷を修復する細胞創傷治癒機構は生命誕生の瞬間から必要とされただろう.細胞創傷治癒は進化的に保存された機構だが,その全貌を俯瞰するには至っていない.出芽酵母を用いて細胞創傷治癒機構に関与する遺伝子の網羅的同定を試みた結果,驚いたことに,細胞創傷治癒と分裂老化に関与する生物学的プロセスの多くは共通であり,細胞創傷治癒が分裂老化を導くことが示唆された.既知の細胞老化の原因であるSirtuin,テロメア,Tor,ミトコンドリア,プロテアソームなどの欠損に加え,細胞損傷治癒も細胞老化を促進する新たなメカニズムであると考えられる.

リファレンス

  1. 1) R. Bashir, S. Britton, T. Strachan, S. Keers, E. Vafiadaki, M. Lako, I. Richard, S. Marchand, N. Bourg, Z. Argov et al.: Nat. Genet., 20, 37 (1998).
  2. 2) K. J. Sonnemann & W. M. Bement: Annu. Rev. Cell Dev. Biol., 27, 237 (2011).
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  4. 4) A. J. Jimenez, P. Maiuri, J. Lafaurie-Janvore, S. Divoux, M. Piel & F. Perez: Science, 343, 1247136 (2014).
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  6. 6) K. Kono: unpublished results.
  7. 7) V. D. Longo, G. S. Shadel, M. Kaeberlein & B. Kennedy: Cell Metab., 16, 18 (2012).
  8. 8) Saccharomyces GENOME DATABASE: http://www.yeastgenome.org/
  9. 9) D. A. Sinclair: Methods Mol. Biol., 1048, 49 (2013).


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