今日の話題
DNA複製をコントロールするクランプ複合体
クランプ分子PCNA上での分子切り換え機構解析の進展
Vol.49 No.1 Page. 9 - 11 (published date : 2011年1月1日)
清成 信一1,
石野 良純1
- 九州大学大学院農学研究院
概要原稿
DNAポリメラーゼが鋳型鎖DNA上に添ってDNA合成を行なう場面を想像するとき 筆者はサーカスの綱渡りの情景を思い浮かべる ピンと張った一本の綱が鋳型鎖DNAであり うまくバランスをとりながら綱の上を決まった方向に向かって進む曲芸師がDNAポリメラーゼである もし曲芸師と綱が命綱で繋がれていれば 曲芸師は落下することを恐れずに より速く綱を渡りきることができるだろう 生体内ではDNAポリメラーゼの連続移動を補助する因子としてDNAスライディングクランプ クランプ分子 と呼ばれるタンパク質分子が存在する クランプ分子は環状構造をとり 中心の穴の半径はちょうど二本鎖DNAが入る大きさで 環状分子がDNA鎖の上を滑るように動く DNAポリメラーゼは自身のC末端領域に存在する特定のアミノ酸配列を介してクランプ分子と結合することによって鋳型鎖DNAからの脱落を防ぐと考えられている 綱渡りで言えば 綱にリング クランプ分子 が通してあり このリングと曲芸師 DNAポリメラーゼ が命綱で繋がれていることになる
リファレンス
- 1) J. B. Vivona & Z. Kelman : FEBS Lett., 546, 167 (2003).
- 2) H. Nishida, K. Mayanagi, S. Kiyonari, Y. Sato, T. Oyama, Y. Ishino & K. Morikawa : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 20693 (2009).
- 3) S. Sakurai, K. Kitano, H. Yamaguchi, K. Hamada, K. Okada, K. Fukuda, M. Uchida, E. Ohtsuka, H. Morioka & T. Hakoshima : EMBO J., 24, 683 (2005).
- 4) J. M. Pascal, P. J. O'Brien, A. E. Tomkinson & T. Ellenberger : Nature, 432, 473 (2004).
- 5) K. Mayanagi, S. Kiyonari, M. Saito, T. Shirai, Y. Ishino & K. Morikawa : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 4647 (2009).
- 6) G. L. Moldovan, B. Pfander & S. Jentsch : Cell, 129, 665 (2007).
- 7) B. D. Freudenthal, L. Gakhar, S. Ramaswamy & M. T. Washington : Nature Struct. Mol. Biol., 17, 479 (2010).
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