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細胞膜を撹乱する海洋天然物
セオネラミドはステロールに結合し,異常な細胞壁合成を誘導する

Vol.49 No.5 Page. 295 - 297 (published date : 2011年5月1日)
西村 慎一1, 掛谷 秀昭1, 吉田 稔2
  1. 京都大学大学院薬学研究科
  2. 理化学研究所基幹研究所

概要原稿

特異的な生物活性を発揮する化合物を用いて生命現象を解析しようとする化学遺伝学は いまや生物学にはなくてはならない方法論である 興味のある現象や分子の機能に影響を与える化合物を取得することから始まり 遺伝学と組み合わせることで効果的な解析が可能になる しかし生体膜については 質量分析計の進歩によって構成する脂質分子種を包括的に検出することが可能になってきたものの それらの機能解析となると 遺伝学が脂質分子に直接的に適用できないこともあり 克服すべき課題は多い そのようななか 脂質分子と相互作用する化合物や毒素をいかに活用していくか 化学遺伝学の導入はその方法の簡便さからも期待が大きい 脂質と相互作用する分子は ポリケチドやテルペンといった分子量が500程度の小型のものから40 000を超えるシマミミズの毒素であるライセニンまで 構造もサイズもきわめて多様である しかし多くの場合 それらを用いても生体膜脂質の分子レベルでの機能解析は容易ではない 細胞膜と相互作用すると速やかに膜損傷をひき起こすため 相互作用様式の解析が困難なのである

リファレンス

  1. 1) S. Matsunaga, N. Fusetani, K. Hashimoto & M. Wälchli : J. Am. Chem. Soc., 111, 2582 (1989).
  2. 2) S. Matsunaga & N. Fusetani : Curr. Org. Chem., 7, 945 (2003).
  3. 3) C. A. Bewley, N. D. Holland & D. J. Faulkner : Experientia, 52, 716 (1996).
  4. 4) S. Wada, S. Matsunaga, N. Fusetani & S. Watabe : Mar. Biotechnol. (NY), 1, 337 (1999).
  5. 5) C. H. Ho et al. : Nature Biotechnol., 27, 369 (2009).
  6. 6) S. Nishimura et al. : Nature Chem. Biol., 6, 519 (2010).
  7. 7) K. Simons & E. Ikonen : Nature, 387, 569 (1997).
  8. 8) J. Liu, X. Tang, H. Wang, S, Oliferenko & M. K. Balasubramanian : Mol. Biol. Cell, 13, 989 (2002).
  9. 9) A. B. Parsons et al. : Cell, 126, 611 (2006).


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