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シロアリの女王フェロモン
女王が巣内の役割分業を制御する物質を特定
Vol.49 No.6 Page. 370 - 372 (published date : 2011年6月1日)
概要原稿
アリやハチ,シロアリのように複数の個体が協同で繁殖し,繁殖する個体と繁殖しない個体という分業が見られる状態を真社会性(eusocial)と呼ぶ.繁殖分業の確立は,昆虫の社会進化における最も重要な要素である.働きアリや働きバチ(通常ワーカーと呼ぶ)は自分自身の繁殖を犠牲にして女王の繁殖を助け,女王の繁殖を介して間接的に自分の遺伝子を次世代に伝えている.多くの真社会性の生物では,繁殖個体が死亡した場合などには別の新たな繁殖個体が出現する.たとえば,ミツバチの女王が死亡すると,ワーカーの卵巣が発達して産卵を開始する.シロアリの創設女王が死亡した場合,あるいはコロニーが成長してワーカーの労働力に対して産卵速度が見合わなくなった場合,新たな女王がコロニー内のメンバーから分化して繁殖を行なう.これは逆の言い方をすれば,十分な繁殖能力をもつ女王は,他の個体が繁殖することを何らかの方法で抑制していることを意味する.
リファレンス
- 1) P. Karlson & M. Lüscher : Nature, 183, 55 (1959).
- 2) C. G. Butler, R. K. Callow & N. C. Johnston : Nature, 184, 1871 (1959).
- 3) K. Matsuura et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107, 12963 (2010).
- 4) S. F. Light : Univ. Calif. Pub. Zool., 43, 413 (1944).
- 5) K. Matsuura et al. : Science, 323, 1687 (2009).
- 6) K. Matsuura et al. : Plos ONE, 2, e813 (2007).
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