今日の話題
植物病原性カビの新たな侵入戦略
メラニン化した付着器をつくらずに植物を攻撃する
Vol.49 No.9 Page. 588 - 589 (published date : 2011年9月1日)
晝間 敬1,
吉野 香絵1,
高野 義孝1
- 京都大学大学院農学研究科
概要原稿
植物病害による世界の農業生産被害は全収量の約15% と言われており,その病害の多くは糸状菌(カビ)が犯人である.したがって,植物病原性カビの攻撃から作物を保護することは,農業上非常に重要であることは明白である.
カビが植物に感染するためには,植物表層に降り立ったカビの胞子が発芽した後,なんらかの方法で植物組織内へと侵入していく必要がある.では,病原性カビはどのようにして植物内に侵入していくのであろう? ある種のカビは胞子を発芽させ,その発芽管を伸ばしながら植物表層にある気孔を探り当て,そこから潜り込んでいくことが知られている.きわめて洗練された技である.しかし,多くの植物病原性カビはもう少し手荒い手段をとる.胞子は発芽した後,付着器と呼ばれるドーム状の特殊細胞を形成し,この付着器を用いて植物細胞壁を突き破り,侵入菌糸を形成していく.
リファレンス
- 1) Y. Kubo & I. Furusawa : in “The Fungal Spore and Disease Initiation in Plants and Animals”, ed. by G. T. Cole and H. C. Hoch, Plenum Publishing, New York, 1991, p. 205.
- 2) K. Hiruma, M. Onozawa-Komori, F. Takahashi, M. Asakura, P. Bednarek, T. Okuno, P. Schulze-Lefert & Y. Takano : Plant Cell, 22, 2429 (2010).
- 3) K. Kojima, T. Kikuchi, Y. Takano, E. Oshiro & T. Okuno : Mol. Plant Microbe Interact., 15, 1268 (2002).
- 4) A. Sesma & A. Osbourn : Nature, 431, 582 (2004).
- 5) S. L. Tucker, M. I. Besi, R. Galhano, M. Franceschetti, S. Goetz, S. Lenhert, A. Osbourn & A. Sesma : Plant Cell, 22, 953 (2010).
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